転生特典が自爆技ばかりなんだが?   作:風馬

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第四話 3本?、いいえ50本です!?

校舎を抜けてグラウンドまで歩いて行くと濃密な聖なる波動を放つ魔法陣が鎮座していた

 

「あの光は一体何なんだ!?」

 

イッセーが自分の学び舎にある得体の知れない魔法陣に疑問を溢し、それに答えたのは俺たちの上空に浮かんでいる巨大な椅子に座ったコカビエルだ

 

「4本のエクスカリバーを一つにするのだそうだ。あの男の宿願らしくてな。エクスカリバーが統合される時に生じる莫大なエネルギーを使ってこの町を崩壊させる術を掛けるのさ」

 

「先ほどぶりだな、リアス・グレモリー。それでいったい誰が来るんだ?サーゼクスか?それともセラフォルーか?」

 

「お兄様たちに代わって私たちが・・・」

 

リアス部長がそこまで言った所でコカビエルが無造作に光の槍を体育館に投げつけ跡形も無く消滅させた

 

「詰まらんな。まぁ余興にはなるか、それにお前とセラフォルーの妹を殺せば遠く無いうちに出てくるだろうしな」

 

コカビエルの投げた光の槍の威力を見て皆は冷や汗を流す

 

光の攻撃は悪魔の皆には単純な威力以上の脅威があるからな

 

「さて、折角俺様のパーティーにご出席頂いたのだ。丁重にもてなしてやらんとな―――まずは、俺様のペットと遊んで貰おうか!」

 

コカビエルの座っている椅子の下から光が打ち出されそれが当たった地面から天に向かって噴き出る炎が渦巻き、三つの首を持つ凶悪な顔つきの犬が現れた

 

「あれは!冥界の門の付近に生息する地獄の番犬ケルベロス!!人間界に連れて来るなんて!!」

 

アレがケルベロス。地獄の番犬から運動会の障害物役まで手広くこなす犬っころ・・・そう思うとチョット可愛く思えてきた

 

「リアス部長!あのワン公ペットにしてもいいですか!?」

 

「何トチ狂ってんだよイッキ!見てみろよあの獰猛な顔つきを!あいつ絶対に『俺様の牙で貴様ら全員の(はらわた)を食い散らかしてやる』って意気込んでるぞ!正気に戻れイッキ!」

 

イッセーにツッコミを入れられて俺も思い直す

 

「そうか・・・確かに俺じゃああのサイズの犬のエサ代は賄えないかな?」

 

「そこじゃねぇ!・・・けどまぁ納得したなら今はいいか」

 

イッセーが力なく不承不承といった感じで納得するがそこで反対側から袖を引っ張られた

 

「小猫ちゃん?」

 

「イッキ先輩・・・既に猫も狐も居るんですから犬は要らないです」

 

「・・・もしかして、犬嫌い?」

 

「嫌いと言う訳ではありませんが・・・何となく負けたく無いです」

 

無意識に対抗意識があるのかね?

 

「皆!気を引き締めていくわよ!!」

 

リアス部長が気合を入れるが正直ケルベロス相手に時間を掛ける必要はないだろう

 

「リアス部長、此処は俺がいきます」

 

「な!?何を言ってるのイッキ!ケルベロスが5匹も居るのよ!此処は時間を稼いでイッセーのギフトの力が溜まるのを待ってから・・・」

 

まぁ今まで一度も本気で戦った事も無いからリアス部長の反応は当然だと思うけど流石にここで問答しても仕方がない。心配してくれるリアス部長には悪いと思いつつケルベロスに向かって駆けだしていく

 

「イッキ!」

 

リアス部長の声を背後に置き去りにして一番近くに居たケルベロスの首元辺りまで走り顕現させた神器で一閃、三つの首を同時に切り落とす

 

「な!?」

 

「速い!?」

 

イッセーとリアス部長の驚く声が聞こえてくる頃には既に2匹目の下に潜り込み1匹目と同じように首を斬り飛ばす

 

こいつ等では俺の動きに反応できないみたいなので後は同じ事を繰り返すだけの作業だ

 

「此奴でラスト!!」

 

5匹目も変わる事無く切り殺しコカビエルを注意しつつ一旦バックステップで皆の下に帰る

 

「「「「・・・・・・」」」」

 

皆の視線が少し痛いが(小猫ちゃんは俺と黒歌の模擬戦とかを見てて耐性が有るため除外)誰かが口を開く前にコカビエルの笑い声が聞こえてきた

 

「クックックックック!コレは何とも予想外だ。成程、リアス・グレモリーが魔王に代わって相手をすると言った時には力の差も分からんままに突っかかってきたのだと思ったが、その人間がお前たちの切り札だったと言う事か―――これは一本取られたよ」

 

「いえ、別にそういう訳でh「小僧!大変面白いものを見せてもらったぞ。ケルベロスでは些か役者不足だったようだな」」

 

「イッキもケルベr「ケルベロス何て伝説の魔獣と言われている割には大したこと無かったな」・・・もういいわ」

 

すみません、リアス部長。セリフ思いっきり被っちゃいました

 

「ククククク!楽しませてくれた礼だ。一つケルベロスについて教えてやろう。ケルベロスは魔神テュポーンと魔獣の母エキドナの間に生まれた。どちらも強大な神や怪物だ・・・その子供と言うには弱すぎると思わないか?いや、そもそもが地獄の門の付近に『群生』していると言う時点で可笑しな話だ」

 

「一体何が言いたいの!?」

 

「今、地獄の門周辺に居るケルベロスは冥府の神ハーデスが作り出した量産型なのだよ。そして、紹介しよう。本当はサーゼクスかセラフォルーが来てから呼び出すつもりだったコイツこそが原種のケルベロスだ!」

 

次の瞬間再び地面から炎が噴き出した

 

そこから姿を現したケルベロスは先ほどのケルベロス達とはプレッシャーが桁外れだ。それに何よりも違うのはその姿だろう

 

「首が!一体何本在るんだよ!!」

 

イッセーが俺の、と言うより皆の心の声を代弁してくれた

 

「・・・聞いた事があります。ケルベロスは三つ首が有名ですが、一番古い叙事詩では50の頭を持っていると書かれていると」

 

アーシアさんが答えてくれた―――成程、数える気も起きないけど確かにそれ位ありそうだ

 

それに、体つきもデカい。三つ首と比べて倍はあるだろう

 

「普通のケルベロスでも正気を疑うレベルなのに、こんなトンデモナイものを呼ぶなんて!」

 

「俺様は戦争を仕掛けようとしているのだぞ?それにもう直ぐ魔王とその眷属がやって来るのだ。そいつらをたった一人で相手にできると思う程俺も思い上がっちゃいないさ。此奴も生まれたはいいがハーデスの作った量産型のお陰でやる事も無く退屈していたみたいでな、『それなら俺と一緒に暴れてみないか?』と問いかけたら直ぐに乗ってくれたよ」

 

成程な、五大龍王の一角、ミドガルズオルムみたいなもんか

 

アイツもロキに量産型作られてたし、ずっと暇こいてたみたいだし・・・唯一違うのは唆された位で人間界で暴れちゃうような気性の持ち主だったって事だけかな

 

それにしてもコカビエルだけで(フリードは戦力外)魔王とその配下をどうやって相手取るつもりだったのかとは思ってはいたけどこんな隠し玉があったなんて!

 

・・・と言うかこの状況ってもしかして俺のせい?原作ではイッセー達相手にナメプしてたから出してなかっただけって事?―――いやいやいや!流石に俺のせいって事にはならないだろう

 

うん!全部は襲ってきたコカビエルが悪い!(確信)

 

しかしこの状況はどうしたものか・・・俺と此奴が戦ったら余波だけでも皆死にかねないし、本当ならコカビエルとの戦いの為に力は取っときたかったんだけどな

 

取り敢えず、様子見を兼ねてぶつかってみるか!

 

「全員下がってくれ!先ずは一当てしてみる!!」

 

そう言って全力で気を巡らせケルベロスに向かって駆けだす

 

顔は犬だが首は蛇のように長い此奴の自分から見て一番左側の首の根本に狙いを定めて突進するが複数の首が一斉に炎を吐き出してきた

 

それを回避するために脳のリミッター、今回は筋肉のリミッターを解除し一気に懐に入り込む事で躱し、そのまま狙い定めた首を全力で切りつける

 

「クソ!」

 

半分以上は切断できたけど直ぐにでも首の傷が元に戻ろうとしているのが仙術の気配から伝わってくる

 

「もう一発!!」

 

それを待つ義理も無いので残り半分を繋がり掛けの肉もろともに切り飛ばし50在るケルベロスの首の一つを落とし、他の首たちが此方にまた炎を吐こうとしていたのでまた距離を取る

 

「いっ痛ぅぅ!!」

 

火事場の馬鹿力を発揮しつつ剣を振り回したから今のだけでも体が全身ギシギシと軋む

 

今はまだ大丈夫だが俺に対して警戒度を上げたであろうコイツの首をあと49本も落とすのは厳しいかな?―――俺の戦闘力は恐らくサイラオーグ・バアルより少し上くらいだと思うし、要は最上級悪魔クラスだ

 

黒歌にもそれぐらいはあると言われたからな・・・三尾となった彼女には模擬戦ではまぐれ勝ち以外は連敗を喫してるけど

 

対して相手は魔王級。首を落としたと言えば聞こえはいいがこのままではジリ貧でやられてしまうだろう―――そう思った辺りで切り落とした首の断面がボコボコと泡立ち始めた

 

 

“ズボォォォォァァァァァ!!”

 

 

な!?首が生え変わった!再生早過ぎだろ!!

 

「ククククク!ソイツの再生力を甘く見てはいかんぞ。かのヒュドラの兄弟でもあるソイツは首が一つでも残っていれば即座に他の首も再生するのだからな。元来、冥界の門を守る門番だ。しぶとさは折り紙付きと言う訳さ―――さぁ!次はどうする?それとももう万策尽きてしまったのかな?」

 

へぇ―。ケルベロスとヒュドラって兄弟だったんだ・・・って、そんな豆知識に関心してる場合じゃない!コイツ、強さは魔王級だけど、しぶとさは邪龍級かよ!

 

「イッキ!一旦戻ってきなさい!策も無しに倒せる相手じゃないわ!」

 

リアス部長の呼ぶ声が聞こえる―――確かに、あの再生速度では【一刀修羅】でも全てを切り落とす前に再生されるかもしれない

 

ただ【一刀修羅】を発動させただけでは良くて勝率5割の鼬ごっこ(倒しきれなければ相手は全回復)では少しばかり博打が過ぎるし・・・

 

そう思い開幕のブレスから避難していた皆の所に合流する

 

ケルベロスはと言えば心なしかニヤニヤとした顔つきでこっちを見ている―――恐らく久しぶりの戦いで獲物をじっくりと甚振りたいのだろう・・・反撃の企てもこいつにとってはスパイスってか

 

「イッキ。体は大丈夫!?」

 

「怪我は無いですが、ちょっと無理な身体強化したので少し全身が軋んでます」

 

気丈に振舞っても仕方がないので正直に報告する

 

「分かったわ。アーシア、治療を」

 

「はい!」

 

アーシアさんが駆け寄り治癒の力で体の軋みが消えていく

 

「有難う、もう大丈夫」

 

本当に凄いな。大したダメージで無かったとはいえ回復に3秒も掛からなかったぞ

 

「それでイッキ。あのケルベロスを倒しえる手立てを貴方は持っているのかしら?」

 

「・・・無い訳ではないです。ただ、倒しきれると胸を張っては言えないですね」

 

この局面で隠す意味も無いので皆に【一刀修羅】について説明する

 

「そういう訳で、発動時間内に奴の首を落としきれるかどうかって所ですね・・・後、それでケルベロスを倒せてもコカビエルとの戦いでは役立たずになります」

 

「そこまで貴方に負担を掛ける訳にもいかないわ。コカビエルは私達で何とかする・・・でも、その前にまずはあの化け物からね。コカビエルの言うようにあのヒュドラの兄弟だと言うのであれば弱点も似通ってる可能性は高いわ」

 

「あの部長・・・ヒュドラの弱点って?」

 

イッセーがリアス部長に尋ねる

 

「英雄ヘラクレスの『12の試練』は日本でもそれなりに有名だと思うけど、伝説ではヒュドラの首を潰して回る中、仲間が再生できないように傷口を焼いて塞いだそうよ。イッセー、赤龍帝の力は溜まってる?」

 

「はい!あと少しで限界まで倍化できます!」

 

「では倍化が溜まり切った時に作戦開始よ。イッセーはアーシア以外の全員に力を譲渡してアーシアを連れて下がりなさい。私と朱乃は炎の魔力で、小猫は火車で、イッキが切り落とした首の断面を塞いでいくわよ!」

 

「「はい!」」

 

「はい部長」

 

「了解です」

 

成程、伝説相手には伝承で対抗策を練るって事ですか

 

『Boost!!』

 

「来た!いきます!赤龍帝の贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)!!」

 

『Transfer!!』

 

イッセーが俺たち4人にタッチして力を譲渡してくれる

 

おお!流石はドラゴンのオーラ!中々に力強い波動だな

 

「それでは行きます!【一刀修羅】!!」

 

能力を発動しケルベロスを上回るオーラが迸る・・・思えば俺の【一刀修羅】って完全に赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の下位互換だよな。数十倍、ともすれば数百倍の強化をポンポンと連発して『ギフト』以外にも便利機能が幾つも付いている―――やっぱりチートだな!改めて思うと酷いぶっ壊れ性能だ!

 

少し思考が逸れながらもケルベロスに向かって駆けだしていく

 

「私たちも続くわよ!」

 

「はい部長!」

 

「はい」

 

リアス部長と朱乃先輩が掌に炎の魔力を溜めながら、小猫ちゃんは白い炎を纏った車輪を左右に展開して追従する

 

ちなみに小猫ちゃんは猫又モードレベル2(大人モード)には成らずに火車だけを展開している・・・今必要なのは文字通りの火力だけだからな

 

ケルベロスの首たちが今度は直接かみ砕かんとばかりに迫ってくるが、それらを避けざまに切り落としていく

 

直ぐにリアス部長と朱乃先輩の炎の合わせ技と小猫ちゃんの二つの火車が切り落とした首の断面に蓋をするように押し付けて焼く事で傷口を塞いだ―――良し!再生する気配が無い!

 

ただしそれでケルベロスもリアス部長たちも明確に敵と認識したのか攻撃を仕掛けようとするが今の俺なら攻撃のモーションに入った時点でその首を落とす事ができる

 

多くの首は再生してしまったがまた切り落とすと言うのを繰り返していき、着実に焼き潰す首の割合が増えていく

 

中には焼かれた部分を食いちぎって再生を図る個体もいたのには驚いたがギリギリそれも阻止する事ができ、そうして遂に全部の首を同時に切り落とした状態を作り出した

 

「念には念だ!喰らっとけ!!」

 

最後に残った胴体部分を十字に切り裂いた・・・流石に死んだよな?まったく安心できないのが恐い所だと思いつつ警戒し、相手の気を探るが復活の兆候は見られない

 

どうにか倒しきれたみたいだ

 

そう思った辺りで【一刀修羅】の効力が切れる

 

「ぅあ・・・」

 

その場で倒れそうになったのをどうにか堪えた所で小猫ちゃんの鋭い声が聞こえてきた

 

「イッキ先輩!」

 

ギリギリ視界の端で捉えたのは此方に迫ってくるコカビエルの光の槍だった

 

「させないです!」

 

その光の槍の側面に小猫ちゃんが火車をぶち当てる事で軌道が逸れる・・・でもコレ死にはしないだろうけど爆発の余波だけで大ダメージ必至だな

 

【一刀修羅】の後遺症で霞みがかった頭でそう考えた直後、誰かに抱きかかえられて瞬時にその場を離脱する

 

「皆、遅くなってゴメン」

 

「祐斗!」

 

「祐斗先輩!」

 

「木場!」

 

皆の喜悦に満ちた声が聞こえてくる

 

どうやら祐斗が騎士のスピードで俺を助けてくれたようだ――うん、それは大変ありがたいのだが・・・

 

「あ~、助けてくれたのには感謝するけど、そろそろ下ろしてくれない?流石にお姫様抱っこはちょっと・・・」

 

うん!今は自分で立つのも億劫だけど学園の女子達が(いろんな意味で)悲鳴を上げそうな構図は遠慮願いたいのだが・・・

 

「え?どうしてだい?」

 

そんな心底不思議そうな顔すんなよ!学園の女子達に腐女子が湧いてるのって原因の何割かはコイツに在るんじゃないか!?このイケメン王子様がきっと男子女子関係なく爽やか紳士っぷりを振りまいてるに違いない!!

 

「祐斗先輩。仙術で回復しますのでイッキ先輩を渡してください」

 

「うん、分かったよ小猫ちゃん」

 

そうして祐斗から小猫ちゃんに俺が引き渡される。お姫様抱っこで・・・

 

「小猫ちゃん!この構図(お姫様抱っこ)は何とかならないかなぁ!?」

 

「・・・男女でお姫様抱っこするのは別に可笑しい事ではありませんよ?」

 

「いや可笑しいから!普通男がする側で女の子がされる側だから!!」

 

「そうなのですか?私の依頼主には何時もこうしていたのですが・・・」

 

何を頼んでるの!?その依頼主は!!

 

「こんな時だと言うのにグレモリー眷属とは随分と呑気なのだな」

 

「ゼノヴィア!来てくれたのか!」

 

イッセーが驚きの声を上げる

 

まぁ現時点では三大勢力はギスギスにいがみ合ってるんだからゼノヴィアとしては悪魔と堕天使が正面からつぶし合ってる状況は漁夫の利を狙った高みの見物をしてても可笑しくないはずだからな

 

「ああ、どうやら少しばかり遅れてしまったようだが此処からは私も戦わせてもらおう」

 

そう言いつつ破壊の聖剣(エクスカリバー・ディストラクション)を構え、いまだ空中の椅子に座っているコカビエルを睨みつける

 

「まさか人間ごときにケルベロスが殺られるとはな。全くもって予想外!だが面白い!これだから闘争は止められないのだ!」

 

そう言いつつ立ち上がり椅子を消して自らの翼で宙に浮かぶ

 

皆の意識がコカビエルに浮いた時、別の方向から喜びに満ちた声が聞こえてきた

 

「―――完成だぁ!」

 

グラウンドに展開してあった魔法陣から立ち上っていた4つの光の帯が中心で一つに混ざり合い一本の剣が現れる

 

「4本の剣が統合される時に生まれる莫大な力を俺が頂く。奴とはそういう取引をしてな」

 

「その力を使って、天地崩壊の術を掛けたと言うの!?」

 

「フフフフフ!此処から逃げるがいい。魔法陣の中で力を反響させ、あと20分もあれば聖剣のオーラは臨界点に達するぞ」

 

司教の姿をした小太りの男、バルパー・ガリレイが凶悪な顔を浮かべながら心にも無い忠告をする

 

そんなバルパーに祐斗がその殺気を隠すことも無く剣を手に近づいて行く

 

「バルパー・ガリレイ。僕は聖剣計画の生き残り、いや、正確には貴方に殺された身だ。悪魔に転生することでこうして生きながらえている。僕は死ぬわけにはいかなかったからね、死んでいった同志たちの為にも諸悪の根源である貴様を此処で倒す!」

 

手にした剣を振りかぶりバルパーに向かって駆けていく

 

「ダメです!祐斗先輩!」

 

コカビエルが祐斗に光の槍を投げようとしているのを察知した小猫ちゃんが警告を発し、祐斗が僅かに減速した直後、彼の目の前に光の槍が突き刺さり爆発で祐斗を吹き飛ばしてしまう

 

「フン!直撃は避けたか。仲間に感謝するのだな・・・フリード!」

 

「はいなボス!」

 

「統合されたエクスカリバーの力、お前の思うままに振るうがいい!」

 

「了解でござます☆うちのボスは人使いが荒いけど、こんな素敵に改悪されたエクスなカリバーちゃんなんて報酬が貰えると考えると悪く無いって思えてくるっスねぇ!!」

 

そう言って魔法陣の中央に浮かんでいたエクスカリバーを手に取る

 

「う~ん。皆殺しは確定だけどどいつから切り刻んで上げるべきか、僕チン迷っちゃう♪」

 

そうしてフリードが最低な順番決めを行っている中、バルパーが祐斗に向かって歩いて行く

 

爆発だけでなく光の余波まで受けた祐斗は直ぐには動けないようで、悠々と近づいて行った

 

「あの実験の生き残りか、卑しくも悪魔に堕ちていたとはな。お前は私を恨んでいるようだが、逆に私はお前たちに感謝しているのだぞ?お前たちの犠牲のお陰で実験は成功したのだからな」

 

「・・・成・・・功?」

 

「あの時集めた被験者たちは皆、聖剣を扱う為の因子を保有していた・・・正確には人間は誰しも多かれ少なかれその因子を持っている。しかし実験では因子を強化する事は叶わなかった。そこで私は一つの結論に達したのだ!被験者から因子だけを抜き出し、纏めてしまえば良いと!」

 

そうしてバルパーは懐から一つの輝く結晶を取り出した

 

「これはあの時の実験で貴様らから抜き出した聖剣の因子の結晶だ!最後の一つとなってしまったがね!」

 

「!!?」

 

祐斗が驚愕の眼差しでその結晶を見つめる

 

「ひゃはははははは!最初は俺様以外にも夢幻の聖剣(エクスカリバー・ナイトメア)透明の聖剣(エクスカリバー・トランスペアレンシー)の使い手として因子を入れられた奴らが居たんだけどよ!そいつらは聖剣の因子に体がついて行かずに死んじまったんだぜェ☆」

 

「バルパーって野郎!自分の仲間まで実験で死なせたってのか!」

 

「ちょい待ち、ちょい待ちイッセー君!話には続きが在るのさ♪その死んだクソ雑魚どもに入れた因子、もったいないと思わない?だから俺様はバルパーのじいさんに頼んでそいつらの因子を俺に入れ直してもらったんだよね☆流石に暫くは死ぬかと思ったけど、まぁその程度の耐久実験なんて昔から腐るほどやってるし☆今回も俺様はスペシャルな俺様になる事で生き延びたのさ♪」

 

おおぅ!なんだかさり気に別口で教会の闇が見えた気がする

 

そしてそうか、フリードがなんか強くなっているのは因子を3つも体に取り込んだからか!

 

「欲しければくれてやろう。もはやさらに純度の高い結晶を作り出せる段階まで私の研究は進んでいるのでね」

 

そう言ってその結晶を祐斗の前に無造作に放り投げる

 

「そうか。我ら聖剣使いが着任の命を授かる時、あのような物を体に入れられるが、アレは因子の不足分を補っていたという事か」

 

「偽善者どもめが、私を異端として追放しながらも、私の研究成果だけは利用しよって・・・どうせあのミカエルの事だ。因子を抜き出した者たちも殺してはいないのだろうがな」

 

「なら、僕たちの事も殺す必要は無かったはずだ―――研究が成功したと言うのなら、僕らはそれを称賛だってしたはずだ!それなのに、どうして!!」

 

「ハッ!貴様らは所詮は極秘実験の研究材料に過ぎん。用済みとなれば廃棄するのは当然であろう?事実、聖剣の因子を抜き出した後の貴様らはなんの価値も無くなった実験の素材の搾りカスだ。生かしておく理由など何処にも無かったのだよ」

 

邪悪な笑みを浮かべるバルパー。コイツ!本当に聖剣の事しか頭に無ぇ!

 

バルパーの話を聞いていた俺たち全員が奴の醜悪さに苦虫を噛んだような表情を浮かべる

 

特にアーシアさんは目に涙を浮かべて「そんな酷い事を!」と声を上げていた

 

結晶を拾い上げた祐斗がふらつきながらも立ち上がる

 

「僕たちは主の為、教会の為、人々の為になると信じて辛い実験にも耐えてきた・・・それを、搾りカス?廃棄?そんな事の為に僕たちは頑張ってきたんじゃ無いんだ!!」

 

祐斗が結晶を胸に掻き抱いて涙を流しながら叫ぶ

 

そしてその祐斗の想いと呼応するように結晶から暖かい意思を感じる光が溢れ出し、戦場を優しく照らし出した




dxdのケルベロスって意外とモフモフしてそうに見えたんですよねww(錯乱)

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