転生特典が自爆技ばかりなんだが?   作:風馬

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第五話 じばくと、巻き添えです!

「光が・・・」

 

「アレは恐らく結晶に眠っていた祐斗君の同志たちの魂でしょう。この戦場に漂っている様々な力の波動と祐斗君自身の心の震えが彼らの魂を解き放ったのですわ」

 

朱乃先輩の説明が入る中、徐々に光は形を変え人の姿となっていく

 

「皆・・・」

 

祐斗が自分の周りに現れた人たちに唖然としながら声を溢す

 

「皆、僕はあの日からずっと思っていたんだ。僕だけが生き残ってしまって良いのかって!僕だけが日常を謳歌して良いのかって!・・・でも今、君たちの想いが伝わってくる。君たちは・・・ただ僕に・・・幸せに・・・」

 

先ほどまでの悲しみや絶望からの涙では無く、喜びや感動から祐斗は涙を流す

 

そして彼の同志たちの口から歌が聞こえ始める―――決して大きくはないのに、それでも確かに戦場の全てに確かに響き渡る歌だった

 

「聖歌・・・」

 

あの様子を見て涙してしまったであろうアーシアさんがポツリと溢す

 

本来、悪魔が聖歌を聞けば酷い頭痛に苛まれるはずだが、誰一人としてそんな物は感じていないようだった

 

「・・・よう、どうしたイッセー?そんなに涙流して?」

 

「うっせぇイッキ!テメェも泣いてんじゃねぇか!」

 

「お前程滝みたいに流してねぇよ」

 

原作知識で既に知っていたはずの光景?そんな小さな事がどうでも良くなる位には今の祐斗たちはとても暖かなものに満ちていた

 

そして、祐斗の同志たちの声が此方にも聞こえてくる

 

『聖剣を受け入れよう』

 

『僕らは一人ではダメだった』

 

『でも、皆が一緒なら大丈夫』

 

『例え、神様が見ていなくたって』

 

『例え、神様が居なくたって』

 

『僕たちの心は何時までも』

 

「『ひとつだ』」

 

彼らの言葉が重なった瞬間、今まで感じた事の無い特異な波動が放たれた

 

「暖かいです」

 

小猫ちゃんの感じたようにとても暖かく、それでいて静かで且つ力強い波動だ

 

暖かな光に包まれていた祐斗がゆっくりと瞼を上げる

 

「・・・バルパー・ガリレイ。同志たちは僕に復讐なんて望んではいなかった。だけど!ここで貴方と言う悪意を打倒しなければ第二、第三の僕たちが生まれてしまうだろう。あの悲劇を経験した者として、この場で貴方を見過ごす事など出来はしない!」

 

祐斗の宣言を聞いたイッセーが木場の想いを後押しする為に声を上げる

 

「木場ァァァァァ!!アイツらの想いを!願いを!無駄にするんじゃねぇぞぉぉぉ!!」

 

「やりなさい祐斗。貴方はこのリアス・グレモリーの眷属。たかだかエクスカリバー如きに負ける事など許さないわよ!」

 

「木場さん!」

 

「祐斗君。貴方なら大丈夫ですわ」

 

「祐斗!勝てよ!」

 

「ファイトです。祐斗先輩」

 

イッセーの叫びに触発されて皆で祐斗に呼びかける―――俺だけ未だにお姫様抱っこなのでイマイチ恰好がつかないけど・・・少しは回復したし、小猫ちゃんもそろそろ降ろしてくれないかなぁ?

 

「・・・もう少しだけ、このままで」

 

何か言う前に答えるのやめて!!

 

「皆・・・有難う。僕は主の、そして仲間たちの剣となる。同志たちよ!あの時果たせなかった願いを、想いを今こそ果たそう!僕たちの想いに応えろ!魔剣創造(ソード・バース)!!」

 

片手を天に突き上げ、そこから聖なる波動と魔の波動が噴き出し、一つに混じり合う

 

双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)。同志たちから受け取りし聖の力と僕自身の持つの魔の力。その双方を有するこの力、受け止めてもらう!」

 

「聖魔剣だと?馬鹿な!?相反する二つの要素が混じり合う事など起きようはずが無い!!・・・フリードォ!!」

 

聖魔剣という現象に驚愕しながらも自らの危機を察したのかフリードを呼ぶ

 

「呼ばれて飛び出て僕チン参上☆つーか、さっきからお宅らが展開していた反吐が出そうな感動シーンのお陰で(さぶ)いぼアレルギーで頓死しちゃいそう!さっさとテメェらズタズタに切り刻んでェ★気分爽快リフレッシュ♪しちゃいますぅぅぅ!!」

 

「・・・キミの中に在る同志たちの力も、これ以上悪用される訳にはいかない。バルパーと同じく、君もここで倒れてもらう」

 

そう言いつつ祐斗がゆっくりした足取りでフリードに向かって歩いて行き、その横にゼノヴィアが並ぶ

 

「リアス・グレモリーの騎士よ、まだ共同戦線は生きているか?」

 

「そうだと思いたいね」

 

「ならば共に破壊しよう。あのエクスカリバーを・・・」

 

「良いのかい?教会の戦士であるキミがそんな事を言ってしまっても?」

 

「もはやアレは聖剣でも何でも無い―――エクスカリバーも、もしも意思が在るならバルパーの手が加わったなんて過去は消して欲しいだろうさ」

 

「・・・判った」

 

「おやぁ?お宅ら二人だけでこの俺様と戦うつもりなのぉ?ひゃっはははは!あんたら二人にあのツインテールっ子を加えて、改悪前のエクスカリバーちゃんを使ってた俺様にやっと互角だったあんたらが!?OK.OK♪自殺志願だって言うなら俺様も丁寧に三枚おろしにして差し上げますよ☆」

 

「そちらがエクスカリバーを強化したと言うのであれば、此方はそれ以上の物を用意するまでのことさ」

 

ゼノヴィアは手にした破壊の聖剣(エクスカリバー・ディストラクション)を地面に突き刺し、右手を真横に向ける

 

「ペトロ、バシレイオス、ディオニュシウス、そして聖母マリアよ。我が声に耳を傾けてくれ」

 

その詠唱と共に空間に黄金の光と波紋が生まれ、そこから鎖で雁字搦めにされた蒼く美しい幅広の剣が現れる―――黄金の波紋から出てくる鎖や聖剣ってもしかしなくとも凄くバビ〇ンっぽいな

 

「この刃に宿りしセイントの御名において、我は解放する!聖剣、デュランダル!!」

 

ゼノヴィアが空中に浮かぶ聖剣の柄を握りしめ、力強く宣言する事によってデュランダルを拘束していた鎖が荒々しいデュランダルのオーラに中てられて粉砕し、完全に聖剣を引き抜いた

 

「馬鹿な!デュランダルはエクスカリバーに並ぶ聖剣!私の研究ですらまだそれを扱える領域まで達していないというのに、貴様!一体何所で調整を受けた個体だ!!」

 

「調整とは言ってくれるな―――私はそいつやイリナとは違う、数少ない原石というやつだよ」

 

「真の聖剣使いという訳か―――そういった素体を調べた事は無かったな。その体を調べれば私の研究もまた1歩進むかもしれん。フリード!そいつの死体は可能な限り綺麗に手に入れろ。死体の状態に応じて追加報酬をくれてやる!」

 

「わぁお!頑張った分だけボーナスが貰えるんすか☆ボスといい、バルパーのじいさんといい、僕チンってば本当に上司に恵まれとりますなぁ♪」

 

フリードがエクスカリバーのオーラを高めて二人に切りかかろうとした時、聖剣のオーラが目に見えて弱くなった

 

「あ・・・?おいおいおい!何で聖剣にオーラが流れていかねぇんだよ!折角コレからって時にどうなってんだコレは!!?」

 

フリードの体を巡っていた聖剣のオーラが急激に力を減少させた事により奴も目に見えて狼狽し始める

 

「フリード。因子の結晶を三つも体に入れた事がアダとなったようだね―――今、この戦場では同志たちの魂が目覚めている。そしてキミの中にある因子は元は僕の同志たちの力、三つも因子を入れた事により彼らの意思の影響をより強く受けるようになったんだろう。この場でキミに刃を向けているのは決して僕と彼女だけじゃ無いって事さ!」

 

祐斗が聖魔剣をフリードに突き付ける

 

「ここに来ての超展開!そんな怖気が走る設定いらねぇんだよ!クソ共が!!」

 

フリードが憤怒の形相を隠す事も無くエクスカリバーの刃先を枝分かれさせながら伸ばし、二人を串刺しにしようとする―――しかし、聖剣のオーラが不安定なせいか技に切れが無い

 

辺りに金属音が響き、伸ばされた刃先がデュランダルの一撃で粉砕された

 

「所詮は折れた聖剣。このデュランダルの相手にはならない!」

 

フリードがエクスカリバーを元の形に戻すが刃先の辺りには大きくヒビが入っていた

 

同時に祐斗が駆けだし、フリードはそれに対応するため天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)の力を発動させ高速戦闘に入る

 

「そんな剣で!僕たちの想いには勝てない!!」

 

縦横無尽に動き回りながらも互いの剣をぶつけていくが、一合、また一合と剣が衝突する度にフリードの持つ剣が欠けていく

 

そして遂に祐斗の斬撃がフリードをエクスカリバーごと切り裂いた

 

「マジ・・・ですか・・・」

 

フリードは奇しくもエクスカリバーが盾となったようで、派手に切り裂かれながらも致命傷には至らなかったようだ―――とは言え、もう動けないだろう

 

「皆、見ていてくれたかい?僕たちの想いはエクスカリバーを超えたよ」

 

静かに、しかし力強く勝利の宣言をした

 

祐斗はその場で深く息を吐き、"キッ"と残るバルパーを睨みつける

 

「バルパー・ガリレイ。今こそ覚悟を決めて貰おう!」

 

しかし、当のバルパーは祐斗の言葉など耳に届いてないと言う風情でブツブツと呟いている

 

「あのような特異な現象・・・聖と魔、それが混じり合うとしたらそれは・・・そうか!そう言う事なのか!聖と魔、片方だけでなく双方のバランスを司るものが居ないのであれば説明はつく!つまり、魔王だけでなく対となる神―――」

 

 

“ズドン!”

 

 

バルパーの言葉が終わる前にその腹に光の槍が突き刺さり、バルパーの肉体を文字通り塵に変えた

 

「バルパー、お前は優秀だったよ。そこに思考が至ったのも優れているが故だろうな」

 

バルパーを消滅させた張本人であるコカビエルがゆっくりとその高度を落としてくる

 

「小猫ちゃん、マジでそろそろ・・・」

 

「はい、これ以上の回復は望めそうにありませんね」

 

漸くお姫様抱っこから解放された―――途中から皆の俺を見る目が生暖かった気がする・・・

 

「コカビエル、仲間を殺すとは一体どういうつもりだったのかしら?」

 

「なに、用済みになったから始末したまでの事だ。ここから先は俺様自ら相手をしてやろう。リアス・グレモリー」

 

そのままコカビエルが地面に降り立った

 

「エクスカリバーは折れ、貴方の切り札だったケルベロスも既に死んでいるわ。そろそろ尻尾を巻いてお帰りいただいても良いのだけど?」

 

「フン!その程度では俺様が引き下がる理由にはならんなぁ!」

 

コカビエルはそう言い、未だにこちらを見下した表情で戦意を高めていく

 

可笑しい。なぜあそこ迄余裕があるんだ?リアス部長は魔王たちの代わりに自分たちが戦うと言ったが額面通り受け取ってはいないだろうし、そもそも自分一人で魔王と配下を相手どるのは無理とハッキリ言っていた

 

何時魔王たちが現れるかも分からない中、切り札も無いなら俺なら逃げるね!

 

過去の大戦を生き延びたコイツがその辺りの引き際を見誤るものか?

 

ならば今すぐ魔王が現れても何とかなる何かがコイツには在る?

 

正気を失ってるだけと思うのは簡単だけどそこで思考を止めたらダメだろう―――だけどそれならアイツの次の手は?ケルベロスのようなトンデモ魔獣がそうホイホイ出てくるとは思えないし、他に何か・・・

 

そこまで考えた所である物が視界に入った

 

「リアス部長!コカビエルの次の狙いは天地崩壊の術式です!」

 

「どういう事!?」

 

「あの術式はコカビエルと繋がっています。オーラが臨界点に達した後は奴の意思一つで起爆できる・・・もしも俺が奴の立場なら、町一つ軽く吹き飛ばす聖剣のオーラを高めた一撃。この場に魔王が転移してくる瞬間を狙って作動させますね!」

 

「それでは!あの魔法陣は町を狙ったものではなく!?」

 

「フハハハハ!その通りだとも!折角溜まりに溜まったエネルギーなんだ。出来るだけ有効利用してやらんとなぁ!・・・まぁ俺様の読みが外れてサーゼクスどもが来なかったとしても、お前らを殺せば戦争は起きる。新たな大戦の幕開けを告げる盛大な花火の代わりにでもしていたさ」

 

「・・・ッ!私達だけでなく、我らが魔王まで標的として数えていたなんて、その傲慢、万死に値するわ!」

 

激昂したリアス部長が魔の波動を纏い、周囲に風が吹き荒れる

 

「ならば滅ぼしてみろ!リアス・グレモリーよ!!お前らの前に立っているのは怨敵にして仇敵!ここで尻込みするようでは、お前の程度が知れると言うもの!」

 

コカビエルは光で形作られた剣を握り此方に突き付ける―――まさに一触即発と言った感じだ

 

「・・・イッキ、小猫の回復を受けたみたいだけどどの程度動けるのかしら?」

 

「正直神器無しのイッセーに毛が生えた程度ですかね?気絶するほどでは無くなりましたが、仙術に回せる余力は殆ど無いです・・・」

 

ほぼ枯渇状態だったし、小猫ちゃんの仙術と言ってもコカビエルの奇襲を警戒しながらだったから回復速度は大した事無かったしね

 

「分かったわ。予定通り、コカビエルは私達で相手をする。イッキはアーシアの傍にいてあげて」

 

「・・・了解です」

 

「イッセーは譲渡の用意を!折を見て仲間を強化しなさい!他の皆は時間を稼ぐわよ!!」

 

「「「「はい!」」」」

 

 

 

 

 

 

[イッセー side]

 

 

部長の指揮の下、すぐさま倍化で力を溜め始める

 

それと同時に小猫ちゃんが前に出る―――戦闘中の小猫ちゃんって猫耳と尻尾を生やしてるから何時にも増してラブリーなんだよな!

 

「出し惜しみして良い相手ではありません。最初から全力で行かせてもらいます!」

 

小猫ちゃんの力強い宣言と共にその体が真っ白い光に包まれた

 

数舜の後、光に小猫ちゃんのもので無いシルエットが浮かび上がる

 

『仙術と妖怪変化の応用で一時的に肉体を成長させました』

 

光の中から現れたのは少し小柄ながらも部長や朱乃さんにも決して劣らないスタイルの白を基調にした丈の短い着物に青いミニスカ・・・いや、もしかして袴の一種か?それを着た美女!まさかこれが小猫ちゃんの大人の姿!?小猫ちゃんが将来こんなボンッキュッボンッなスタイルに成長するなんてお兄さん感激だよ!普段の小猫ちゃんは十分ラブリ―だけど擬音で表すならキュッキュッキュッだったからな!

 

 

“ズビシィィィ!!”

 

 

「目が痛い!!」

 

小猫ちゃん(大人モード)の水平チョップが俺の目を捉えた

 

「うぅぉぉぉ!眼球が潰れるぅぅ!!」

 

「自業自得です」

 

俺何も言って無かったよね!?イッキにも時々小猫ちゃんのツッコミが入るけど、何で分かるの!?勘良すぎじゃない!?

 

う~む。それにしても改めてみると凄く良いおっぱい!遠くの方で小猫ちゃんを見たアーシアが崩れ落ちる姿が見られたけど小猫ちゃんがここまで大きく成長するんだからアーシアもきっと大丈夫さ!仮に成長しなくともアーシアのおっぱいの柔らかさは俺が一番分かってるって!

 

「戦端は僕が開かせてもらうよ!」

 

そうこうしている内に木場が一直線にコカビエルに向かって駆けだし、少し遅れてゼノヴィアと小猫ちゃんがそれに続く

 

木場が斬りつけ、反対側からゼノヴィアも斬りかかるが一本は既に手にしていた光の剣で、もう一本も反対の手に新たに作り出した光の剣で受け止めてしまう

 

「聖剣と聖魔剣の同時攻撃か!面白い!!」

 

「そこです!」

 

木場とゼノヴィアがコカビエルの前後を抑えている隙に小猫ちゃんの火車が左右から、そして小猫ちゃん自身は奴の上空からの奇襲を行う

 

前後左右に加えて上からの攻撃だ!逃げ場はないだろう!

 

「素晴らしい!・・・が!一歩足りない!!」

 

コカビエルは背中から堕天使の翼を生やし奴を中心に黒い竜巻でも吹き荒れたのかと思う程に翼を振り回し皆を吹き飛ばしてしまった―――あんなの翼がしていい動きじゃないだろ!

 

「皆!大丈夫か!?」

 

「・・・心配いらないよ、イッセー君。僕と彼女は直前で小猫ちゃんの火車が間に入ってくれたからそれほどダメージは受けなかったからね」

 

「私も大丈夫です、イッセー先輩。幻覚で打撃位置をずらしていたので重い攻撃は受けてません」

 

そうか、良かった!流石は眷属最強の小猫ちゃん!あの一瞬で自分を含めて3人を守るなんて今の俺には到底出来ない芸当だ!

 

「朱乃!」

 

「はい部長!」

 

3人がコカビエルから離れたので間髪入れずにオカ研のお姉様コンビが攻撃を仕掛ける

 

朱乃先輩の放った雷撃を部長の展開した魔法陣を通り抜ける事により増大させ、極大の雷となって降り注ぐ

 

「やったか!?」

 

「馬鹿野郎イッセー!それはフラグだ!」

 

未だに力が回復しておらず、少しフラフラしているイッキが渾身の力で俺にツッコミを入れる・・・お前は大人しくしておけよ、今のツッコミだけで息が切れてんじゃねぇか!

 

だが、イッキの心配(ツッコミ)は的中だったみたいで、落雷で白い煙に包まれていた奴の姿が見えてくる

 

翼を繭のようにして自分を包み込み雷撃を防いでいたみたいだ

 

あの翼、飛んだり攻撃したりだけでなく防御にもつかえるのか!随分と便利だな!堕天使って奴らは皆そうなのか!?

 

「その年にしては中々いい雷だったぞ。流石はバラキエルの娘と言っておこうか」

 

「私は!あの者の娘などでは無い!!」

 

普段の温厚な朱乃さんからは考えられない程の怒気が発せられ、コカビエルに喰って掛かった

 

「木場、バラキエルってのは?」

 

「『雷光』の二つ名を持つ、堕天使の幹部の名前だよ」

 

近くにした木場に聞くと衝撃的な事実を教えてくれた―――朱乃さんが堕天使の娘!?

 

「疎遠とは聞いていたが、まさか悪魔に堕ちていたとはなぁ―――しかし、敵だと言うのであれば是非もない。此処で死んでもらうまでだ!」

 

そう言って奴は光を練り込んだ衝撃波のようなものを放って俺たち全員を吹き飛ばした

 

「ぐぅぅぅ!」

 

クソ!とんでもねぇ威力に加えて光のせいで体が硬直してやがる!

 

「ほら!どうしたぁ!ドンドン行くぞ!」

 

コカビエルが近くに居た木場に濃密な光の弾を放つが木場も俺と同じで光の影響からか、まだ体が動かず倒れたままだ!

 

「させるか!」

 

だがそこでゼノヴィアが間に入ってくれてコカビエルの光球をデュランダルで切り裂いた

 

助かった!けど、何でゼノヴィアが動けるんだ!?あいつも木場と同じくらい奴の近くであの攻撃を食らったのに?―――そうか!ゼノヴィアは人間、それも聖剣使いだ!光が弱点じゃないだけでなく耐性を持ってても可笑しくはない!

 

「教会の者が仮にも悪魔を助けるとはな。主の居ないお前らにとって、その程度の矛盾は許容すると言う訳か?」

 

「コカビエル!主が居ないとはどういう意味だ!!」

 

「おっと!口が滑ったか・・・」

 

「答えろ!!」

 

ゼノヴィアはコカビエルの言葉を無視できないのかキツく問いただす

 

すると程無くしてコカビエルは何が可笑しいのか盛大に笑い始めた

 

「そうか!そうだったな!これから戦争をしようと言う時に、今更隠す意味など無いのだったな!まったく、染みついた習慣というのは簡単には変えられないものだ。良いだろう。未だに神を拝む哀れな信者に教授してやろう―――先の三つ巴の戦争で四大魔王と共に神も死んだのさ!」

 

これにはその場にいた全員が驚愕を露にした

 

「ふざけるな!バカも休み休み言え!我らが主が既に身罷られているなどと、そんな戯言が真実のはずが無い!!」

 

特に教会の戦士であるゼノヴィアは信じられないのか叫ぶように否定する

 

「あの大戦では神だけでなく悪魔は魔王全員と上級悪魔の多くを失い、天使や堕天使も幹部以外の殆どを失った。もはや純粋な天使は増える事すらできず、悪魔とて純血種は希少なはずだ。どの勢力も人間に頼らなければ生きてはいけない程に落ちぶれた。三大勢力のトップ共は神を信じる人間を存続させるためにこの事実を隠蔽したのさ」

 

アーシアとゼノヴィアはコカビエルの話を受け入れられず、その場に崩れ落ちてしまった

 

ゼノヴィアは戦闘中だというのにデュランダルすらも手放してしまい、うわ言のように「嘘だ・・・嘘だ・・・」と繰り返している

 

「主はもういらっしゃらない。では!私達に与えられる愛は!?」

 

「ふっ、実際ミカエルは良くやっているよ。神に代わって天使と人間どもを纏めているのだからな―――祝福を司る『システム』さえ機能していれば、神への祈りも悪魔祓いも、ある程度動作はするさ。最も、(やつ)が居た頃とは比べられんがな」

 

それを聞いたアーシアは精神の防衛本能なのかその場で気絶してしまった

 

傍にいたイッキがアーシアの体を支え、近くの木を背にするように座らせる

 

「だが!俺が気に喰わないのは神も魔王も死んだ以上、戦争継続は無意味だと判断した事だ!一度振り上げた拳を収めろだと!?それで死んでいった同胞たちが報われるとでも言うのか!?アザゼルの野郎も2度目の戦争は無いと宣言する始末だ・・・誰も戦争を起こす気が無いと言うのであれば俺がこの手で戦争を引き起こしてやる!!」

 

コカビエルの独白を聞いていた俺は段々腹が立ってきた

 

「ふざけるなよコカビエル!死んだ同胞が報われない?それで戦争を起こしたら今生きてる仲間まで死なせる事になるだろうが!そんな事の為に俺たちの町を壊させてたまるか!―――俺の野望の為にテメェは邪魔だ!!」

 

「ほぉ?野望か。なんだ?金銀財宝でも欲しいのか?」

 

金銀財宝?ハッ!こいつは長年生きてるくせにそんな事すら分かんねぇのか。男の野望と言えば石器時代よりも前から何一つ変わらない一つの真理!

 

「聞いて驚き、そして慄けコカビエル!俺の夢!俺の野望!!ハーレム王に俺はなる!!」

 

・・・ッフ!皆この俺の壮大過ぎる野望を聞いて声も出ないみたいだな

 

「クックック!赤龍帝はそれがお望みか、ならば俺と来るがいい。お前の望む様々な美女を宛がってやろう―――明日にはハーレム王にしてやるぞ?」

 

明日!?こいつに付いて行けば明日にはハーレム王!?

 

いやいやダメだ!俺は部長の眷属なんだ!あんな奴の甘言に騙されるなんて事があっていいはずが・・・はずが・・・・はず・・・が・・・・

 

「イッセー!」

 

「はい部長!何でもありません!!」

 

危ない危ない!部長に百面相している所を見られちまったぜ

 

「イッセー、そんなに女の子が良いなら、コカビエルに勝てば私が奉仕して上げるわよ」

 

奉仕・・・して上げる!?まさかそんな想像力が刺激される日本語が在ったなんて!?

 

「うふふふふ!宜しければ私も参加いたしますわ」

 

朱乃さんまで!?前回のライザーとの戦いの時はアーシアだったけど今度は朱乃さんによる倍プッシュですか!?

 

「ちょっと朱乃!どう言うつもりよ!?」

 

「あらあらリアス。コレで堕天使の幹部に勝てる確率が上がると言うのであれば安いものではありませんか・・・それとも、別の心配をしているのかしら?私と一緒に迫ったらイッセー君が貴女なんて放っておいて私に夢中になってしまうと?」

 

「・・・いい度胸しているじゃないの朱乃。コカビエルより先に貴女を倒して上げましょうか?」

 

部長ぉぉぉ!?激しい怒りのオーラ(魔力)が全身から噴き出てますよ!?

 

「あらあら、イッセー君が盗られてしまうと言う所は否定しないのかしら?まぁ仕方ありませんわね。イッセー君の大好きなおっぱいは貴女より私の方が大きいですしねぇ?」

 

そう言って“チャポン”と水風船のような音でも聞こえてきそうな感じに自らのおっぱいを主張する朱乃さん―――と言うか二人とも何やってんの!?

 

「フン!私の方が張りもあるし形も良いわ!ただ大きいだけの貴女とは違うのよ!!」

 

その言葉を聞いた瞬間、部長にも負けない怒りのオーラが朱乃さんの周囲を渦巻き、漏れ出た雷撃が辺りを焦がす

 

「あらあら、うふふ!何時もアーシアちゃんとのイッセー君の取り合いで『イッセーはやっぱり胸の大きい方が良いわよね!』と言っていた貴女のセリフとは思えませんわね」

 

二人が言葉の応酬をするたびに怒りに呼応して魔力がどんどん高まってる!!どうすんのコレ!?怖いよ二人とも!?何時もの優しいお姉さま方に戻って!!

 

何時もからは考えられない二人の様子に戦慄しているといつの間にか近づいてた小猫ちゃんに袖を引っ張られた

 

「小猫ちゃん?どうしたの?」

 

「多分、そう遠くないうちにコカビエルが痺れを切らすと思います。その時に・・・」

 

「・・・成程、分かったよ小猫ちゃん」

 

小猫ちゃんから作戦を伝えられ俺も『その時』を待つ事にする

 

この作戦はタイミングが命になりそうだからしっかり集中しないとな

 

そうして案の定と言うべきかコカビエルが戦いそっちのけで口喧嘩を続ける二人に怒声を浴びせる

 

「貴様らぁぁぁ!!俺様を無視して何時まで下らん言い合いをするつもりだ!!」

 

「「うるさい!!」」

 

喧嘩をしていた二人はコカビエルに見向きもせずに高まり切った圧倒的な魔の波動を無造作に手を振るう事で解き放つ―――荒々しい雷と滅びの二つのオーラが空中で混じり合い一つとなった・・・此処だ!!

 

赤龍帝の贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)!!」

 

『Transfer!!』

 

飛距離は短いけどギフトの力はドラゴンショットのように打ち出す事もできるんだ!

 

空中で混ざり合っていた雷と消滅の魔力にギフトの力がぶつかりコカビエルの体を容易く飲み込む極大の魔力砲となる

 

「コレは!!」

 

コカビエルも怒りから驚愕へ瞬時に表情を変貌させ全力で防御する

 

莫大な二つのオーラがぶつかり合い、余波だけで戦場が破壊されていく

 

「うぉお!あぶねぇ!」

 

兎に角全力で距離を取るが、自分のすぐ近くの地面が爆ぜるのを見て冷や汗を流しながら何とか逃げ切った

 

「・・・どうやら少しばかり甘く見過ぎていたようだな」

 

コカビエルが居た場所は戦塵で見えなくなっていたが、そこから奴の声が響いて来た

 

少しずつ煙が晴れ、姿を現したコカビエルは全身の服がボロボロで至る所から血が流れている

 

しかし奴は未だ平然とした面持ちで立っている・・・多分大きな怪我はしなかったのだろう

 

コイツはあれだけ高められた部長たちの攻撃を殆ど相殺してみせたって言うのか!

 

「この後魔王が控えているのだ。これ以上のダメージは看過できんな。この一撃を手向けとし、余興に幕を下ろそうか!!」

 

奴は空中高く飛び上がり両手を上にあげてそれこそ消えた体育館と同じくらいの大きさの光の槍を創りだした

 

あんなもん防ぎきれる訳がねぇ!クソ!どうすりゃ良いんだ!?

 

 

[イッセー side out]

 

 

 

 

 

コカビエルが空中で創り出した光の槍がどんどんと大きさを増している

 

その攻撃から身を守るため皆が一か所に集まりリアス部長と朱乃先輩を筆頭に防御結界を張ろうとしているけど、正直防ぎきれないだろう。それに戦闘狂のヴァーリがコカビエルを止めてくれるのを期待するのはちょっと怖い。この世界はあくまでもDxDによく似た世界でしかないのだから・・・なら、やれる事をしますかね―――都合よくコカビエルも上空に居る事だし

 

「小猫ちゃん、頼みがあるんだけど・・・」

 

「何ですか?イッキ先輩?」

 

「俺をコカビエルの真上辺りにぶん投げて欲しいんだ!」

 

・・・小猫ちゃん?その不可解な物を見るような眼はやめて欲しいなぁ!

 

「イッキ先輩、恐怖で可笑しくなっちゃったんですか?でも大丈夫です。少しくらい情けない所を見せた位で私は見捨てたりなんかしませんから・・・」

 

止めて!?小猫ちゃんの妙な優しさが凄く心に来るから!

 

「違う違う!ちゃんと奥の手が在るんだって!」

 

「でも・・・」

 

「もう時間無いから!お願い!俺を信じてぶん投げてくれ!!」

 

渋る小猫ちゃんの気づかいを今度は素直に嬉しいと思いつつ頼み込む

 

「・・・分かりました。もしもコレで死んだらあの世まで追いかけて殴りますからね―――大丈夫です。あの世(冥界)なんて転移魔法一つで行けますから」

 

仮に俺が死んでも聖書陣営の冥界に魂が行き付く事は無いんじゃないかなぁ?

 

「・・・了解。リアス部長!朱乃先輩!小猫ちゃんが俺を投げたら盾型ではなくドーム状の結界を張って下さい!」

 

「分かったわ・・・託したわよ!」

 

「いきますイッキ先輩!」

 

小猫ちゃんの「ヤァァ!」と言う掛け声と共に俺が打ち出される・・・大砲で空を跳ぶ人ってもし居るならこんな感覚なのかな?

 

風を切りながらもコカビエルのさらに上を陣取ると奴は掲げていた槍を下に降ろし此方を睨みつけてくる

 

やはり殆ど力を無くしていると言ってもケルベロスを倒した俺は十分な警戒対象なのだろう―――だけどもっと警戒して欲しいな

 

「これで終わりにしよう―――切り札ってのは最後まで取っておく物だぞ?コカビエル」

 

そう言いつつ全身に【偽り写し記す万象(ヴェルグ・アヴェスター)】の紋様を浮かび上がらせると目に見えて警戒度を上げた―――やっぱり初見の相手にこの紋様はハッタリとしても機能するよな!

 

後もう一押しだ。優しさが服を着ている俺は親切にも次の俺の行動を教えてやるとしよう

 

コカビエルの方に落下しつつ奴に問いかける

 

「なぁコカビエル。こんなセリフを聞いた事はないか?『爆発は漢のロマン』だって!」

 

「まさか貴様!アザゼルの!?」

 

何か盛大に勘違いしたコカビエルが目論見通り全力の防御結界を張り巡らせる

 

どうやら堕天使の総督殿はサブカルチャーの布教にも余念がないみたいだ

 

「【じばく】!!」

 

人生二度目の【じばく】、コカビエルの結界のお陰で爆発の殆どは上空に向けて立ち上った

 

指向性を持った爆発の破壊力はシトリー眷属の張っていた結界を一瞬で抜き、爆炎は天空高く立ち上る

 

・・・実は【じばく】には単純な破壊力だけでなくもう一つの特性がある

 

それは『相手の防御力を半減させる』と言うものだ――だから俺はコカビエルに警戒を促させて全力で防御して貰った

 

俺の【じばく】の威力がどれくらい上がっているか分からない為、コカビエルの結界を皆に対するシールドの代わりにしたのだ・・・防御力半減の上、至近距離なら倒せると踏んで―――名付けて『コカビエルの盾』!!

 

俺とコカビエルは二人そろって地面に向かって落ちていくが、俺の方は懐からイヅナ達が現れ体の各所に巻き付いてゆっくり地面に降ろしてくれる

 

全身から煙を上げて普通に落ちていったコカビエルはそのまま地面に激突し、グラウンドに広がっていた天地崩壊の術式も消え去った

 

「イッキ!生きてるか!?」

 

「イッキ先輩!」

 

「イッキさん!今治します!」

 

そこで皆が駆け寄ってくれた―――ドーム状に展開した2重の結界は爆風などの余波をちゃんと防ぎきってくれたみたいだ

 

ポケモン由来の【じばく】は自分自身にはそこまで馬鹿みたいにダメージを受けない為(欠損等)アーシアさんの治療で直ぐに回復していく―――と言うかアーシアさん気絶してなかったっけ?いやまぁあの爆発なら跳び起きるか・・・

 

アーシアさんの回復速度はポケモンセンターに匹敵するだろう“テンテンテレテン♪”の効果音で全回復だ―――体力は回復しないけど・・・

 

「イッキ先輩。爆発するなんて聞いてないです!心臓止まるかと思ったんですよ!!」

 

アーシアさんとは逆側で俺に手を翳して体力を回復してくれていた小猫ちゃんが涙ながらに怒ってきた。う゛ぅ!罪悪感が!此処は素直に謝ろう!

 

「御免なさい、すみません!許してください!!」

 

「・・・許しません。許して欲しければ今度駅前の喫茶店の新メニュ―『イカ墨イチゴパフェ・マンゴーDX』を奢ってください」

 

「それは良いけど・・・そんなの食べるの!?」

 

イカ墨が全てを台無しにしてない!?

 

「意外と美味しいと好評みたいなので気になってしまって・・・」

 

あぁ、そうなんだ・・・マジで!?

 

そう思った所で俺たちの直ぐ近くに何かが落下して来るのが見えた

 

 

“ズドォォォォォン!!”

 

 

「なんだこりゃ!?新手か!?」

 

「一体なんなの!?」

 

イッセーとリアス部長が驚きの声を上げる中グラウンドに軽いクレーターを造ったそいつは土煙でシルエットしか見えないが、四足歩行のようで尻尾も生えている。背中に見えるのは・・・アレは翼か?小型のドラゴンのような形をしているソイツを皆が注視していると段々煙が晴れてきた

 

「・・・グッ!クソ!介入しようとした時のあの爆発は一体何だったんだ!?雲の上まで吹き飛ばされてしまったぞ!」

 

『無事かヴァーリ!?まだ動けるか!?』

 

「ああ、アルビオン、何とかと言った所だが動けそうだ。だが流石に今コカビエルとは闘り合えんだろう―――いや、そもそも奴はどうした?」

 

鎧の各所をボロボロと崩れさせながらも何とか立ち上がろうとしているヴァーリの姿だった

 

ああ、四足歩行じゃなくて爆発と落ちた衝撃で這いつくばってたのか!

 

それにちゃんと介入してコカビエルを止めようとしてくれてたんだね!・・・で、シトリー眷属の結界を破壊して乗り込もうとした直前に火山の噴火の如き爆発に頭から突っ込んじゃったと・・・うん!なんかゴメン!

 

ヴァーリはふらつきながらも周囲を見渡し未だに細い煙を上げているコカビエルと【じばく】の爆風に煽られて全身ボロボロになったフリードを発見した

 

「成程、少々観戦が過ぎたか―――もう少し早く介入するべきだったな」

 

「貴方は一体何者なのかしら?」

 

そんな突然の乱入者であるヴァーリをリアス部長は問いただす

 

「リアス・グレモリーか、何、そこのコカビエルが勝手をしようとしているのを止めてくれとアザゼルに頼まれてね。まさかあそこから逆転するとは思わなかったよ」

 

そう言いながらヴァーリはボロボロになっていた鎧を修復させていく

 

「さて、俺としてはそこのコカビエルとついでにはぐれ神父も回収していきたい。仮にも幹部だ。色んな情報を持っているからね―――もしも邪魔すると言うのであれば此処で白龍皇たる俺と戦う事になるが・・・どうする?」

 

そう言ってヴァーリはプレッシャーを跳ね上げる。白龍皇の名を出したのも俺たちの中から戦いの選択肢を無くす為だろう・・・微かに両膝がプルプル震えているのは気付かないのが優しさだろう

 

リアス部長も分が悪いと感じたのか「いいわ。連れて行きなさい」と許可を出す

 

リアス部長は普通に気付かなかったみたいだ・・・いや、戦ったら敗けるんだけど

 

そうしてコカビエルとフリードの襟首を掴んだ所でイッセーの神器の宝玉が点滅し声が発せられた

 

『無視か?白いの』

 

『生きていたか。赤いの』

 

ヴァーリの方は翼が点滅し返答する

 

『折角出会ってもこの状況ではな』

 

『なに、こういう事もあるさ。次の機会を待てば良い』

 

『ああ、ではなアルビオン』

 

『また会おう、ドライグ』

 

二天龍の会話の終わりと共にヴァーリは飛び去って行った

 

その後、シトリー眷属が合流して荒れ果てた学校の修復を請け負い、オカルト研究部員は解散となった・・・祐斗は心配かけた罰としてお尻叩きの刑が待っていたけど

 

帰宅は小猫ちゃんが俺を家まで送ってくれると言うのでお言葉に甘えて転移魔法で俺の部屋に直接帰宅

 

ベッドに居た黒歌を小猫ちゃんが放り投げ、俺を寝かせる

 

黒歌の抗議を受け流しながら俺の額に手を乗せて仙術で回復を図り「今日はもうゆっくり眠って下さい」と言う事なので疲労と仙術の暖かさに直ぐに眠気が襲い掛かりそのまま意識を落とした

 

 

 

 

朝、目を覚ますと両腕に違和感があった。何か重い物が乗っかっているような・・・ぼんやりとした頭で左腕の方を見ると俺の腕を枕代わりにしている黒歌の寝顔が在った。ヤバい、可愛い。至近距離での不意打ちは何度でもドギマギしてしまう

 

でもそれなら右腕の違和感は何なのかと思って反対側を向くと黒歌と同じ構図で小猫ちゃんが眠っていた―――スヤスヤと寝息を立てるあどけない表情。うん、可愛い・・・って!何で小猫ちゃんが!?黒歌は俺と部屋を共有してるけど、小猫ちゃんは自分の部屋(アパート)が在るよね!?昨日帰らなかったの!?一人用ベッドに3人ってかなり狭いよね!?なんで態々!?

 

後、黒歌も小猫ちゃんもすっげぇ柔らかいし、すっげぇ良い匂いする!

 

「ふぁ・・・お早うございます。イッキ先輩」

 

「ああ、うん。お早う―――それで、何で小猫ちゃんが此処に居るの?」

 

正直腕を長時間枕代わりにされていたせいかジンジンと感覚が無くなってるんだけど?

 

「・・・ご迷惑でしたか?」

 

「迷惑なんかじゃないから!決して迷惑なんかじゃないから!!」

 

だからそんな寂しそうな瞳を向けないで!昨日に引き続き罪悪感半端ないから!!

 

「白音が此処に居るのは仙術の治療の為にゃん♪」

 

騒がしくしていた為か黒歌の方も起きたみたいで説明を入れてくれる

 

「あの後、別に眠ってるだけでもイッキは十分回復するから帰っても良いって白音にも言ったんだけど、ちゃんとイッキを回復して上げたいって言うし、それなら二人でやればいいって私と白音でイッキをサンドイッチにして回復させたのにゃ♪」

 

「それで黒歌姉様が昨晩何が起こったのかを聞いて来たので先輩を挟んで話している内に私も眠たくなってきてしまいまして・・・」

 

「・・・それで二人が俺を挟んで眠っていたと」

 

と言うかこの猫又姉妹にサンドイッチされてたの!?何で昨晩の俺はあそこでぐっすり眠っちまったんだよ!?欠片も覚えてねぇよ!!

 

ああでも意識が在ったら在ったで天国(じごく)だったかもな・・・生殺し的な意味で

 

そんな嬉しいのか残念なのか分からない心持のまま学校に行き、小猫ちゃんと一緒に登校したのを元浜に見られて怨嗟の声と共に一日中問い詰められる事になった・・・勘弁してくれ!




コカビエルの尊い犠牲!

ヴァ―リ、星になる!

猫又姉妹サンドイッチ!の三本でお送りしました!

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