転生特典が自爆技ばかりなんだが?   作:風馬

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今回は本編と過去話の混合です


第6章 停止教室のヴァンパイア
第一話 夏です!水着です!買い物です!!


コカビエル襲撃から数日、放課後のオカルト研究部に何時ものメンバーとは違う人物が立っていた

 

「ゼノヴィア!?何で此処に!?それにその制服はどうしたんだよ!?」

 

教会の聖剣使いであるゼノヴィアだ・・・まぁ編入試験だか学力把握テストだかで昨日から学校には居たんだけどね

 

「私の新しい眷属、『騎士』のゼノヴィアよ」

 

「うふふ、皆さん仲良くして上げてくださいね」

 

リアス部長と朱乃先輩が紹介し、俺と小猫ちゃんも仙術で察知していたのでこの場で驚いているのはイッセーと祐斗とアーシアさんだけだ

 

「神が居ないと知ってしまったんでね。破れかぶれで『悪魔にしてくれ』と頼み込んだんだ」

 

「ふふ♪聖剣・・・それもデュランダル使いが眷属となるなんて頼もしいわ。これで私の眷属も『騎士』の両翼が誕生したわね♪」

 

「『したわね♪』って部長ぉぉぉ!」

 

豪胆な性格の主の器の大きさに付いて行けてないのかイッセーが情けない声を溢す

 

そんなイッセーの反応をよそにゼノヴィアがアーシアさんに語り掛ける

 

「アーシア・アルジェント。私はキミに謝らなければならない―――以前キミが悪魔となったのは信仰心が足りないからだと言ったが、そもそも主がいらっしゃらないと言うのであれば、救いも愛も・・・当然無かった訳だからね」

 

神が居ない・・・改めてそう口にするのも辛そうだ

 

「私も今回の一件で悪魔になる前から、神の不在を知ってしまった事で教会から追放されてしまってね。きっとキミもあの時の私と似たような心持だったんだろう―――本当に済まなかった。なんなら、気が済むまで殴ってくれても構わない・・・」

 

そう言って頭を下げるゼノヴィアをアーシアさんは何の蟠りも籠ってないような優しい瞳で見つめて「それなら、一つお願いをしても良いですか?」と問いかけた

 

「ああ、何だい?何でも言ってくれ」

 

「ゼノヴィアさん。私のお友達になって頂けませんか?」

 

彼女としては意外なお願いだったのか目をパチクリとさせている

 

「それは・・・私なんかで良いのかい?」

 

「私は教会から追放されて、今は悪魔です。辛い事も沢山ありました。でも今は、沢山の大切な人たちが増えたんです!だから、今の私は十分幸せです―――でも、前に部長さんが言ってたんです。『悪魔とは欲を持ち、欲を望み、欲に生きる者』なんだって・・・だから私も、少しだけ欲張ってみようと思います。ゼノヴィアさん。私の大切な人に・・・なって頂けませんか?」

 

「・・・『悪魔とは』・・・か。実は私も先日部長に同じ事を言われたよ。なら、友達としての最初の頼みだ―――今度、この学園を案内してくれないか?」

 

「はい!喜んで!!」

 

アーシアさんは花が咲くような笑みを浮かべ、ゼノヴィアの手を取る。手を握られて至近距離で笑顔を向けられたゼノヴィアも自然と笑みを浮かべていた

 

「うんうん!やっぱり可愛い女の子同士の友情は絵になるよな!」

 

「同意はするけど、口に出すのは野暮ってもんだぞイッセー」

 

他の皆も新しい友情を芽生えさせようとしている二人に暖かい視線を向けている

 

「そういやゼノヴィア。イリナはどうしたんだ?」

 

「・・・エクスカリバーを回収して本部に帰ったよ。彼女は幸い、神の不在を知ることは無かったからね―――それを伝えたら彼女まで異端の烙印を押されてしまう・・・それに、イリナは私よりも信仰心が強いから、真実を知ってしまった時に心の均衡が崩れてしまうかもしれない。だから、彼女に伝えられる事は何もなかったよ」

 

「でも、それじゃあイリナは・・・」

 

「裏切り者・・・去り際にそう言われてしまったよ。まぁ悪魔に転生したのだから今となっては返す言葉も無いのだがね―――しかし、改めて思い返すと敵だった悪魔になると言うのはどうだったんだろう?あの時は深く考えずに転生してしまったが私の選択に間違いは無かったのか?う~む。ああ!お教えください主よ!ッはう!!」

 

沈んでると思ったら、悩みだして祈りだして痛がってるぞ―――本当に忙しないな

 

「あはははは!まぁゼノヴィアももう俺たちの仲間だ。アーシアもそうだったけど最初は色々と不慣れな事もあるだろうし、悩みとか、頼み事があるなら聞くぜ?これから宜しくな!」

 

「そうか、そう言ってくれると私も有難い。それではキミにも早速だが一つ頼み事をしてもいいだろうか?」

 

「応!何でも言ってくれ!」

 

「では・・・私と子作りしてくれないか?」

 

瞬間、リアス部長が紅茶をむせ、朱乃先輩が用意していたお茶菓子を床に落としかける

 

小猫ちゃんは食べていたドーナツの手が止まり、祐斗とアーシアさんは笑顔のまま固まっていた

 

当のイッセーは・・・フリーズしてるな

 

「あ~、ゼノヴィア。すまん、何か聞き違えたのかもしれん・・・もう一度言ってくれるか?」

 

ぎこちなくも再起動を果たしたイッセーがもう一度ゼノヴィアに尋ねる

 

「私と子作りしてくれないか?」

 

そうして再びフリーズするイッセー・・・認めろよ、聞き間違いなんかじゃないって

 

「私は今まで教会の為に尽くす事が人生の全てだった。だが、今の私は悪魔だ。なので悪魔としての目標を持つ事に決めたんだ」

 

彼女はフリーズするイッセーを余所に経緯を説明し始める

 

「先ほどのアーシアとの話にも出てきたが悪魔とは己の欲に従う者。そう考えた時、教会に居た頃に孤児院の赤ん坊や幼子を抱かせて貰った事を思い出してね。アレは良いものだった―――だから私は女としての喜び・・・子供を作りたいと思ったんだ」

 

「はぁ~。まさかそんな答えに帰結するなんて思わなかったわ・・・でも、何故イッセーなの?」

 

頭痛が痛い(誤字にあらず)とでも言いたげな面持ちのリアス部長が何とか話を進めようとする

 

「子供を作る以上、どうせなら強い子に育って欲しいと思ってね。兵藤一誠はその身にドラゴンの因子を宿している。私に子供が出来たならドラゴンのオーラが子供に受け継がれるからね―――初めは神性を持つ有間一輝と何方が良いか悩んだのだが、兵藤一誠は神すらも恐れたとされるドラゴン。赤龍帝の力を宿している・・・潜在的な力では彼の方が上かなと思ったのでね」

 

二天龍だしね・・・世界の強者トップ10でもアルビオンと並んで同列4位には入るだろうしな

 

「いやいや!子作りってのは多分そんな合理性だけを求めたものじゃ無くてだなぁ!」

 

ハーレム王を目指すわりに迫られるとタジタジになってしまうイッセーが何とかゼノヴィアを諭そうとするが「良し!思い立ったが吉日と言うやつだ。旧校舎は基本的には使われていないらしいからね。何処か適当な教室で早速実践するとしよう」と首根っこを掴まれて連れていかれそうになってしまう

 

「なにぃぃぃ!?・・・いやでも、両者合意なら良いのか!?夕暮れの誰もいない教室と言うシュチュエーションで俺は『漢』になっちまうのか!?」

 

驚愕から一転。どんどんとスケベ顔になっていくイッセーだが当然それを看過するはずもない人たちが居る

 

「イッセー!私というものがありながらそんな簡単に他の女に靡かないで頂戴!」

 

「イッセーさんには私が居ますぅ!こ・・・子供だってイッセーさんが望むならすぐにでも!!」

 

リアス部長とアーシアさんがそれぞれイッセーの片腕を掴み引き留める

 

その後はゼノヴィアの「ならば3人で」発言からリアス部長の「もっと慎みと常識を学びなさい」から「そんな事より子作りだ」といった感じに混沌としながら泥沼化していった・・・次の日、イッセーの朝の様子は特に変わりないので『漢』には結局なれなかったみたいだ

 

 

 

ゼノヴィアが転入して来たその週末の日曜日、俺たちオカルト研究部は学校のプールの前に居た

 

去年の夏場が終わってもずっと張ってあった水は濁り切っていて藻が生えており、少なからず異臭も立ち込めている

 

「うっへぇ!汚ねぇ!これを掃除すんのかよ!?ていうかこんなに水が濁るのを放置するくらいならプールの水抜けばいいのに!」

 

「イッセー、プールの水は万一火事が起きた際の消火用として張ったままにしてあるんだよ・・・知っとけ!」

 

「うふふ、付け加えるならプールの塗装が剥がれてしまわない為という理由もありますわ」

 

へぇ、そんな理由もあるのか。そっちは知らなかったな

 

「しかし、何故オカルト研究部がプールの掃除などをするんだ?」

 

「本来は生徒会の担当なのだけれどコカビエルの一件の時、ソーナ達生徒会メンバーが事後処理を全て引き受けてくれたからね。せめてものお礼に今年は私たちがプール掃除をする事になったの―――その代わり、プール掃除が終わったらオカルト研究部で一足早いプール開きよ♪」

 

 

 

 

それから約1時間と少し。この少人数なら本来もっと時間が掛かりそうだがそこは悪魔の身体能力。それにイッセーが早く女の子たちの水着が見たいと言う願望でフルスロットルで動き回った事によりもうプールはピカピカに磨かれている

 

今はもう全員既に水着に着替えて後はプールに水を張るだけだ

 

「朱乃、頼めるかしら?」

 

「うふふ。了解ですわ」

 

朱乃先輩が上空に手を翻すとプールにすっぽりと収まる大きさの魔法陣が出現し、そこから大量の水を出てものの一分程で水を張り終えた

 

凄いよな、この水どっから来てるんだろう?

 

「さぁ!ここからはお楽しみの時間よ。思う存分泳ぎましょうか!・・・所でイッセー、私の水着姿はどうかしら?」

 

白いビキニでイッセーにアピールするリアス部長

 

「はい!とってもエッチで最高です!今の部長はもはや女神かと!!」

 

悪魔のリアス部長に女神の表現はどうなんだ?実際・・・

 

まぁリアス部長もその辺りは気にしないのか普通に嬉しそうだ

 

「イッセーさん!私も着替えてきました」

 

今度はアーシアさんがスクール水着をイッセーにアピールする・・・胸元に大きく『あ~しあ』と書いてあるのは多分まだ日本に来たばかりの彼女が不慣れな日本語を自分で書いた為なんだろう

 

「うんうん!アーシアも可愛いぞ!お兄さんご機嫌になっちゃうよ!」

 

イッセーの評価に顔を赤らめるアーシアさん

 

「イッキ先輩・・・私も・・・どうですか?」

 

そして小猫ちゃんもアーシアさんと同じくスクール水着!・・・・では無く、オレンジと黄色を基本にしたビキニタイプの水着にパレオを巻いてる感じだ

 

無理に布面積を減らした感じではなく、『幼い』とか『エロい』と言うよりは純粋に『可愛い』と言った風だな

 

小猫ちゃんに今思った事を『幼い』、『エロい』のワードは省いてそう伝えると小さく「有難うございます」と返してくれた

 

それから恐らくは教会時代に『泳ぐ』と言う事をして来なかったアーシアさんの泳ぎをイッセーが面倒を見たり(アーシアさんは申し訳なさげと同時に嬉しそうだった)、俺と小猫ちゃんに祐斗とゼノヴィアで水泳勝負をしたり、リアス部長と朱乃先輩が魔力球バレーボール(被害甚大)をしたりした

 

そして今はお昼時。高級ビーチのバカンスのような装備一式で昼飯を食べて、皆今は思い思いに寛いでいる・・・ここって学校のプールだったよな?

 

 

“ドボォォォン!!”

 

 

「うわぁ!祐斗とゼノヴィア、午前あれだけ泳いだのにまだ競争する気かよ?」

 

「・・・同じ『騎士』として速さ勝負で負けたくないんじゃないですか?」

 

イッセーは今リアス部長に午後の日差し対策にオイルを(スケベ顔で)塗ってそこに朱乃先輩とアーシアさんが突撃するという戦場になっているので小猫ちゃんと一緒に少し離れたプールの淵に腰かけてそれらの喧騒を眺めている

 

「あはははっ、それを言ったら小猫ちゃんなんて去年とは雲泥の差じゃないか―――もう少し休んだらまた俺たちもレースに参加する?」

 

「望むところです。今度は負けませんから・・・」

 

でもほんとに小猫ちゃんは泳ぎが成長したよな・・・去年の丁度今ぐらいの時期だっけ?

 

小猫ちゃんのカナヅチが発覚したのって・・・

 

 

 

▽―――約1年前―――

 

 

小猫ちゃんに黒歌の事がばれて、悪魔の契約を使い≪黒歌の事を誰にも伝えない≫と口止めをしてから少し経ち、ちょっと前から小猫ちゃんのお願いで彼女に修行を付けていたのだ

 

内訳としては黒歌が仙術と妖術、俺は体術に仙術(身体操作系)といった感じだ

 

学校が終わって夜の帳が落ち始めた頃に召喚カードで小猫ちゃんを呼び出したら本日の修行内容を黒歌が発表する

 

「じゃあ今日は滝行をするにゃん♪」

 

「はい!黒歌姉様!」

 

気合の入った返事をする小猫ちゃん

 

黒歌との蟠りが解消された事で黒歌に純粋に追いつきたいといった思いが強いのだろう

 

そして本日の課目である滝行・・・これは自然の気の中でも水の気を感じるのと、急速に変化する体温や体に掛かる滝の水圧から自身の気をより鮮明に感じ取りやすくする為の修行だ

 

生物は多量の水分を伴って構成されているので生命エネルギーを扱う仙術を覚えるのに水という要素は中々に重要だと参曲(まがり)様に教わった

 

そして人里離れたそこそこ大きな滝のある修行スポットに黒歌の魔法陣で転移し、軽く人避けの結界を張ってから行衣(滝行の際に着る白い着物)に着替える―――黒歌はその場で服を脱ぎだすから俺は急いで岩場の陰に隠れて着替えた・・・普通逆じゃないかなぁ?

 

「準備できたにゃん♪」

 

「私も着替え終わりました」

 

二人の声を受けて俺も出ていき滝の方に向かう

 

黒歌も小猫ちゃんも白くて薄手の着物だからほんのり肌色が透けて見える気がするし二人の尻尾が丈の短い裾を微妙に捲っているのが非常ぉぉぉぉに!目のやり場に困るが・・・

 

此処の滝つぼ辺りは意外と深い為、ほんの10メートル程とはいえ泳いで滝下の足場にたどり着くが小猫ちゃんは川の膝下くらいまで浸かっている所で立ち止まってしまっていた

 

「小猫ちゃん。どうかした?」

 

「ほら白音、早く来るにゃん」

 

俺と黒歌が呼びかけると何か妙にカクカクとした動きで「いえ・・・私は・・・そう!私はそっちの壁沿いにそちらに行きますね!」と語気を強めて言ってきた・・・何で?

 

確かに滝つぼを迂回して滝の裏側の壁伝いに来れば此処にたどり着く事は出来るけど態々そんな事をする必要があるか?どうせ、すぐさまびしょ濡れになるのだから泳いだ方が断然早いのに・・・

 

だがそんな妹の不審な態度を見て黒歌は一つの可能性にたどり着く

 

「白音・・・もしかして泳げないのにゃん?」

 

「え゛!マジで!?」

 

驚き、小猫ちゃんの方を向くとサッと顔を逸らされてしまった・・・マジなのか

 

「はぁ~。確かに私達があのバカ主の下に居た時は白音も半ば軟禁状態に近かったし、父親も研究馬鹿のロクデナシだったから海やプールに行ったことも無かったけど・・・」

 

妹の意外な弱点を知ってしまって頭が痛そうだ

 

「・・・でも、中学生なら大抵の場合プールの授業って必須だと思うんだけど、小猫ちゃんってその辺りどうしてたの?ひょっとして駒王学園の中等部にはプールの授業が無いとか?」

 

それとも授業で習ってなおカナヅチなのかな?

 

「・・・その、プールはありますが・・・泳いだことは無いんです」

 

「へ?」

 

「にゃん?」

 

泳いだことが無い?

 

「駒王学園の中等部では生徒の多様性を伸ばすと言う名目で体育の授業は内容の選択が出来る時が在るんです・・・テニスとか少ない人数で大きな面積を取るスポーツなんかがそれですね。それで私は泳ぐのに苦手意識が在ったのでプールの授業は避けていたんです・・・」

 

成程、サボっていたのとは違うのか

 

「それじゃあグレモリー眷属としてはどうなんだ?小猫ちゃんの話に聞くグレモリー先輩なら夏休みとかに眷属を連れてプール(貸し切り)なり海(貸し切り)なり行きそうな感じがするんだけど・・・?」

 

「はい。部長には何度か海に連れて行っていただきました―――でも私は大抵眺めている事が多かったですし、部長に促されて海に出る時も浮き輪でプカプカと浮いてるだけでしたから・・・」

 

「でも浮き輪でって言っても沖に行ったり岸に戻ったりする事は出来てたって訳だよね?」

 

浮き輪で泳ぐのって地味に大変だし、それが出来るならすぐにどうにか出来そうかな?

 

「・・・行き帰りは悪魔の翼で飛んでいました」

 

さいですか・・・

 

「う~ん。なら今日は滝行は諦めて泳ぎの練習をするかにゃ。この先泳げないと寒中水泳の修行とか出来ないし、まさか冬場に泳ぎの練習から入るのは私も勘弁して欲しいにゃん」

 

「・・・すみません」

 

自分が苦手をそのまま放置した事で俺たちに迷惑を掛けていると思っているのかしょんぼりとした感じで視線を下に落としてしまった

 

「落ち込まなくてもいいよ小猫ちゃん。苦手なものを率先してやりたい!って人の方が少数派だと思うしね」

 

必要性を感じなければ尚更だ

 

「幸い全然時間は立ってないし、一度家に戻って水着を用意して、それなりに泳げそうな所に転移しようか―――流石に水泳初心者にいきなり着衣泳でスタートさせるのはどうかと思うしね」

 

幾ら薄手の服と言っても水着には敵わないだろう

 

「分かりました。有難うございます・・・ただ・・・」

 

ただ・・・なんだ?

 

「黒歌姉様は水着は持っているのですか?」

 

そうじゃん!仮にも賞金首で逃亡生活を送ってた彼女が水着を持ってるとは思えない

 

「ん?別にこのままでも・・・なんなら裸でも良いんじゃないかにゃ?」

 

良くねぇぇぇぇ!流石に最初の練習で小猫ちゃんが泳ぎをマスターするとは思えないし、黒歌の事だからやってる内に「煩わしいからもう裸でいいにゃ!」とかやりそうだ!

 

そう思ってる中、同じ事を考えていたらしい小猫ちゃんと視線が絡み合い同時に頷く

 

「「黒歌(姉様)!水着を買いに行こう(ましょう)!!」」

 

「・・・なんだか、そこはかとなく貶められた気がするにゃん」

 

何となく不満げな黒歌をよそに俺たちは再び着替えて駒王町に転移して、グレモリー眷属を始めとした人外の気配に気を配りつつ近場の大型デパートの水着売り場に向かっている

 

勿論、黒歌はいつぞやの修学旅行の時の人間モードだ

 

「そう言えば黒歌ってその服と寝間着の着物以外のは持ってないのか?何時も魔力で浄化してたから問題自体は無いんだろうけど・・・」

 

女の子は沢山の服を持っている!(偏見)というイメージがあるのだが・・・

 

「ん~、私は元々そんなに着る物に拘りは無かったわね。昔はレーティングゲームの試合があるたびに割と服は傷んでいたし・・・私以外の眷属は実験の後遺症でボロボロの奴が多かったから大抵私の所にしわ寄せが来たからにゃ~」

 

後遺症でボロボロとかって普通に闇が深い発言捻じ込まないでくれませんかね?

 

「なら、この際水着だけじゃなくて現代風の服も幾つか見繕ってく?魔法陣に収納すれば邪魔にもならないだろうしさ」

 

というか美少女の着物姿が目立って結構視線を向けられるし、小猫ちゃんも相まって周囲の男たちから心の舌打ちの音が聞こえてくるようだ

 

それに何時もと違う衣装に身を包んだ黒歌を見てみたいという俺自身の願望も入ってるけどね

 

「そうねぇ、折角の機会だしそうしようかしら?」

 

そんなやり取りをしている間に女性ものの水着コーナーにたどり着いた

 

「・・・じゃあ俺は適当にこの辺りで時間を潰しているから終わったら連絡してくれ」

 

そう言ってその場で踵を返しその場を立ち去る

 

 

“ガシィ!!”

 

 

・・・前に猫又姉妹に両腕をそれぞれガッシリと掴まれてしまった!

 

「イッキ~?そんなヘタレな選択を私が許すと思ってるのかにゃ?」

 

「イッキ先輩、ここまで来てまさか逃げるなんてしませんよね?」

 

おいぃぃぃ!黒歌は思いっきりニヤニヤしてるけど小猫ちゃんも無表情のようで少し口角上がってるよね!?流石姉妹!絶対にこの状況を楽しんでやがる!!

 

そうして男の敵地(水着コーナー)に引きずり込まれた―――せめて一緒に居るのがどちらか一人なら逆に堂々としてればいいのかもしれないけど、二人の美少女に挟まれた野郎一人に対して男女問わず周りの視線が痛いんですけど!?

 

今回は黒歌の水着選びという事なので小猫ちゃんも俺と一緒に選ぶ側に加わり意見を出していく―――まぁ男の俺の出せる意見なんてビキニタイプ、シンプル過ぎない、あんまり露出が過ぎないようにする(確信!!)くらいしかないのだが・・・

 

「イッキ先輩、何故最後の意見だけ力強く言うんですか?」

 

「にゃはは♪イッキは直接的なエロより間接的なエロの方がお好みなのよね。例えば・・・こういう水着は逆に苦手なんじゃないかにゃ?」

 

そう言って黒歌が俺の方に突き出してきたのは所謂スリングショットの水着だ。それももはやそれは紐だろうと言える細さの・・・

 

「うん。無いな」

 

「・・・イッキ先輩が真顔です」

 

「・・・迷うことなく即答したにゃ」

 

うっせぇ!これでもイッセー達に『チラリスト』なんて不名誉な称号貰ってるんだよコッチは!肌色成分が多ければ男が皆無条件で絶賛すると思うなよ!

 

その後結局黒歌が選んだのは緑を基本に南国の花が描かれたビキニタイプの水着だった

 

会計を済ませて今度は普通の服が売ってるコーナーに3人で向かう

 

「これで水着はよしとして次は現代風の服だったわね・・・あんまり着ないと思うけどそれでもいいのにゃ?」

 

「良いと思うけど?それに案外着てみたら好きになるかもしれないし、試す価値は十分有るんじゃないか?」

 

「なら、今度はさっきよりもちゃんとした意見を考える事にゃ!いきなり水着は難易度高かったとしても、それ以外なら問題ないでしょ?」

 

まぁ水着コーナーでは若干上の空だったからな・・・

 

「了解。今度はしっかり吟味させて頂きますよ」

 

「それならいいにゃ♪」

 

黒歌はそう言ってとあるコーナーの前で立ち止まった・・・ランジェリーショップの前で

 

 

“ガシィ!!”

 

 

「ハッハッハ!イッキ♪何処へ行こうというのかにゃ?」

 

すかさず踵を返した俺を黒歌が捕まえる。おい、今のセリフ何処の大佐だよ!?

 

「いやいやいや!舌の根も乾かない内からアレだけど!勘弁してくれ!さっきの水着コーナーより数段難易度高いじゃねぇか!?と言うか黒歌・・・下着は?」

 

「こんな公衆の面前で女性に下着の事を尋ねられるイッキなら大丈夫にゃ♪・・・それとイッキ。女性の着物は下には何も着ないのが普通よ?」

 

マジで!?そもそも持ってないの!?そりゃあブラジャーをしているようには見えなかったけど下もかよ!?

 

「現代風の服を着るなら下着を付けないと言うのは逆に変でしょ?ねぇ♪白音♪」

 

「・・・確かに、黒歌姉様を『スカートの下に何も穿いていない人』にする訳にはいきませんね・・・という訳なのでイッキ先輩。しっかりと黒歌姉様の下着を『吟味』して『意見』を言って下さいね」

 

ああ・・・そうだよな。水着コーナーで敵に回った小猫ちゃんが今回は味方に付いてくれるなんて事は無いよな・・・

 

そして俺は再び猫又姉妹に男の死地(ランジェリーショップ)に引きずり込まれ、何とか最後まで戦い抜く事が出来たのである

 

その後ファッション雑誌の女子大生風の衣装を参考に黒歌の服を選び(試着の際は髪を降ろしていた。曰く、あの髪型は着物系だからこそ映えるもの)買い物は終了したが未だに『じっくりと吟味』させられた俺が今日は使い物にならないという事でその日は解散の運びとなったのだ

 

 

△―――現在―――

 

 

「―――あの時のイッキ先輩を揶揄うのはとっても楽しかったですよ?」

 

「うん。小猫ちゃんが実は黒歌にも劣らない悪戯好きなのはよく分かったよ・・・だからその聖母の微笑みたいな笑顔は止めてくれない?」

 

はたから見たらそれがSっ気顔とは誰も気づかないんじゃないか?

 

聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)を持っているのはアーシア先輩ですよ?」

 

「確かにアーシアさんは二重の意味でそれを持ってるけど、そうじゃなくてさぁ!」

 

「ふふ♪冗談です。でもその後イッキ先輩と黒歌姉様が私の泳ぎの練習に付き合って下さって私も泳げるようになりましたから、感謝しています」

 

「悪魔の身体能力があれば最初は多少強引なフォームでも泳げるようになったのは嬉しい誤算だったけどね。泳ぐという事自体に抵抗がなくなれば後はちょっとの修正で何とかなったし・・・」

 

その代わり初めのうちはバタ足のたびに水中で手榴弾が破裂するような水しぶきだったけどね

 

「よし!それじゃあそろそろ俺たちも泳ぎに行きますか!」

 

そうして俺と小猫ちゃん、祐斗とゼノヴィアは泳ぎで、リアス部長と朱乃先輩は殺人水中バレーボールで、イッセーとアーシアさんはそんな二人に挟まれて紛争地帯ばりの命の危機を感じてそれぞれヘトヘトになるまでその日は遊び倒したのだった




黒歌と小猫の水着は画像検索でヒットしたやつを採用しました


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