ヴァーリが呪文を唱え終えた瞬間、禍々しくも荒々しい莫大なオーラが駒王学園を包む結界の中で弾けた―――サーゼクスさんやミカエルさんたちが手分けして俺たちを守る結界と学園結界の補助に回らなければ周囲一帯が吹き飛んでいたかも知れない
ヴァーリ自身は今までの
「おいドライグ!何だよアレは!?アレも
『いいや、相棒。アレは
イッセーの質問にドライグが流石に驚愕しながらも答える・・・確かに、命の危険と暴走の隣りあわせの
『詳しい説明は後だ相棒!相棒の
だがそこでヴァーリが動き出す
「キミの力と覚悟に敬意を表し、
そう言ってゆったりとした動作でその右手の先に手加減とは何なんだと叫びたくなるレベルの凶悪な魔力弾を生成し、イッセーに撃ち放った
「ッチィ!!」
おっぱいブーストが掛かってた時なら兎も角、今のイッセーがアレを受ければ最悪即死してしまいかねない!———咄嗟にイッセーと魔力弾の間に割り込み全力で闘気を纏った左腕を薙ぎ払い、魔力弾を後方に受け流す
学園結界の一部を貫通していったけど上空の方に逸らしたから大丈夫だろう・・・飛行機や衛星を破壊したりしてないよね?
ただ、今の防御のお陰で左腕が骨折及び全体的に裂傷が走ったな
「お・・・おいイッキ!お前のその腕ボロボロじゃねぇか!?」
「しょうがないだろ!?今のお前じゃアレは防げなかったぞ?」
心配してくれるイッセーには悪いが事実だろう
俺の言葉に少し悔し気だったイッセーだが、そこで
「な!?コレは!?」
「さっきあんな
「い・・・イッキ?どうした?」
大丈夫、安心しろイッセー。安全な所に送り届けるだけだから・・・なんで安心させる為の俺の笑顔でイッセーが顔を青くしてるのか、全く分からないな~
「リアス部長!ヘイ!パース!!」
「え、ちょ、待っ!!」
男子高校生を女性に投げつけるとか普通なら無理だが、リアス部長は上級悪魔で体も鍛えているから問題無いだろう。イッセーの言葉に成りきってない制止の声を無視してリアス部長の元へ放物線という軌跡を描いて送り届ける
「うぉぉぉおおおおあああああ!!イッキ、テメェェェェェ!!」
「危ないイッセー!」
投げられたイッセーは慌てながらもちゃんとリアス部長がキャッチしてくれたみたいだ
イッセーが遠くで何やら文句を言ってるが聞こえないふりをしてヴァーリに向き直る
「悪いがヴァーリ、選手交代だ」
「ククク、構わないさ。キミとまた闘り合いたいと言ったのは俺の方だしね―――だが、俺の
勿論だよヴァーリ・・・流石に無策なら
「ああ、お前のその状態は実は結構ギリギリなんだろ?今すぐ逃げ出したくなる程の荒々しいオーラだけど、逆に言えばそれだけその力を制御出来てないって事だ・・・イッセーからアスカロンのダメージを受けた直後にやるべきじゃ無かったな。後一発でも大きなダメージを受ければ
「確かに今の俺は力の制御に意識の大半を向けているのは認めるが、今の俺にどうやってダメージを与えると言うのかな?」
「お前の方こそ、この間戦った時の事をもう忘れたのか?俺の持つ神器、【
さっきのお前の放った魔力弾で俺の左腕は奇しくもボロボロなんだ!今のお前にこのダメージを許容できるだけの余裕はまだ残っているのかな!?
神器を顕現させ、全身に神器を発動させる時の紋様を浮かび上がらせる
「この『力』は原初の【報復】の呪い!例え神でも防げないぞ!」
「ック!!」
ヴァーリが動き出そうとしているのが見えるがもう遅い!!
「【
俺の叫びと共に俺に浮かんだ青白い紋様が一層強く輝いた!
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
・・・・・あれ?
「お・・・おいイッキ?今何かしたのか?何も起こったように見えないんだが・・・?」
え!?何で不発!?ヴァーリが何かした?・・・いや違う!あいつも困惑してるみたいだ―――だったら何でだ?前に一度発動した時は問題なく発動したよな?なら、何がダメだったんだ!?
落ち着け!落ち着いて思い返せ!多分何処かに答えがある!
1.【
2.防ぐことは神であろうと難しい!
3.自動ではなく任意発動!
4.発動は対象一人に対して一度きり!
発動は対象一人に対して一度きり!!
発動は対象一人に対して一度きり!!!
「このクソッタレの三流神器(宝具)がぁぁぁぁ!!」
思わず手にしていた
でもさ!ヴァーリと戦ってからもう何日も経ってるんだぞ!それでも発動しないって事はマジで相手の人生一回につき一度しか発動しないって事!?クールタイム長すぎだろう!?運営に文句が殺到するレベルだぞ!?
【
最後にそんなボケは望んでないんだよ!!どうすんだよコレ!?
「どうやら予想外の事が起きたみたいだが、俺にとっては僥倖だ。このままやらせてもらうぞ」
今一度攻撃態勢に入ろうとするヴァーリ・・・ってヤバ!
「【一刀修羅】!!」
【一刀修羅】を発動させ、全力で横に跳ぶと同時にさっきまで俺が居た場所を濃密な魔力弾が通り過ぎていった―――マジか!今のヴァーリは動きがぎこちない
今の攻撃だってテレフォンパンチみたいで至極読みやすい攻撃だった・・・その上で全力回避してギリギリとか基本性能上がり過ぎだろう!?
どの道このままではヴァーリの懐に入る事なんて出来ない!ならばどうする?【一刀羅刹】か?・・・いやヴァーリもかつて戦った土蜘蛛も同じ
【一刀羅刹】の攻撃を咄嗟に回避してしまうかもしれない・・・
それなら、届かない【一刀修羅】でも、一か八かの【一刀羅刹】でもない・・・その間を取って懐に入るまで!!———名前は修羅道と地獄道の鬼の間だから、畜生道と餓鬼道だよな?だったら勝利に喰らい付くという意味も込めて
「【一刀餓鬼】!!」
【一刀修羅】の60秒から持続時間を20秒に縮める!強化率は3倍だ!!
プラプラしている左腕は邪魔なので仙術で固定して再び右手に
たどり着くまでに全身の骨がギシギシ鳴るし、内出血が色んな個所に滲んでいるけどそのままヴァーリを斬り付ける―――流石に一撃で真っ二つとはいかないけど鎧に大きな傷が出来た
「クッ!ちょこまかと!!」
ヴァーリよりも小さく、その上思うように体を動かせないヴァーリが何とか俺を捉えようとするがその尽くを避けて龍の鎧を剥ぎ取っていく
関節部分など装甲の薄い所なら既に僅かにヴァーリ自身の肉体にも刃が届いている
あーちょっとヤバいな。充血が行き過ぎて血の涙が出てきた
一番斬りかかり易い腹部の装甲も大分削れたしコレで決めるとしよう!!
【一刀餓鬼】の残り時間はおよそ3秒!それを一撃に込めた渾身の回し蹴りを後一息で崩れそうになっていた腹部の装甲に叩き込んだ
「ぐっはぁぁぁ!!」
「いっヅぅぅぅぅぅ!!」
ヴァーリは吐血しながら吹き飛び、俺は最後の蹴りの反動で右足が数か所折れた・・・下手したら足の裏とかバッキバキじゃない?感覚無いけど・・・
ヴァーリは吹き飛んだ先で血反吐を吐き、
紙一重だったな・・・ヴァーリの
「はぁ・・・はぁ・・・クッフフフフ!最高だ!お互いもう戦えそうにないが関係ない。ここ迄来たら最後までとことん戦おう!!」
はぁ?ふざけんなよこのバトルジャンキーが!俺は右足と左腕を中心に全身ボロボロだし、ヴァーリだって俺の斬撃で全身の関節部分・・・即ち体を動かすのに必要な可動域をくまなく斬られて最後の蹴りで内臓がかなり傷ついてるはずだろうが!―――だがヴァーリがそう意気込んだ所で学園を包んでいた結界が破壊され、一人の男が降り立った
「よぉヴァーリ。迎えに来たぜぃ!・・・って、随分とボロボロだな?」
「美猴か、何しに来た?」
やっと来たのかこの畜生野郎!!俺怒ってもイイよね!?こいつ今まで何処で油売ってたんだ!?
「北のアース神族と一戦交えるから帰って来いってよ。んで、その伝言を届けに来ていざ結界を破壊しようしたらいきなり結界が強化されちまってよ。今まで入るに入れなかったンだよ―――まぁお前さんの
はい。その白トカゲのせいです!!
「まっ、そういう訳だからさっさと帰るぜぃヴァーリ。お前さんの治療もしないと流石に神とは戦えないだろう?それとも一人寂しくベッドの上で待ってるかぃ?」
「それはゴメン被りたいな。こちらは十分に楽しんだ―――ここは引くとしよう」
「やいテメェ!後からいきなり出てきやがって!テメェは何なんだ!!」
戦っていた俺たちそっちのけで会話に興じる二人にイッセーが問い詰める
「そいつは美猴。闘戦勝仏の末裔だ―――分かり易く言うと、西遊記で有名なクソ猿。孫悟空だ」
「そ・・・孫悟空?こいつが!?」
イッセーの疑問にはアザゼル総督が答えたので俺もここは一つ茶化してみるか
「イッセー、どうせならサインでもねだったらどうだ?ドラグ・ソボールの主人公、空孫悟のモデルだぞ(子孫だけど)」
「いや、ねだらねぇよ!コイツ敵なんだぞ!?つーかイッキはもう喋るなって!全身血まみれじゃねぇか!!」
心配してくれてるようだが問題ないさ!今はさっきまでの美猴への怒りも消えて何だか頭がフワフワしてるんだ
「大丈夫だって、心配すんな。全身の血が抜けたからなのか今なんか頭がスッとなって何だか妙にハイな気分に・・・」
「アーシアァァァァァ!!治療!!コイツちょっとヤバい領域に堕ちかけてるぅぅぅ!!変なテンションになってるぅぅぅぅ!!」
「は・・・はいぃぃぃ!!」
そんなやり取りをしていると美猴とヴァ―リが語り掛けてきた
「カッカッカ♪そっちも随分と楽しそうだねぇ♪ま!これから宜しくな、お二人さん♪」
「次に会う時は今日以上に激しくやろう。お互いにもっと強くなってな。有間一輝、兵藤一誠!」
そのまま二人は美猴が足元に生み出した闇に沈んでいった
二人が去ってから暫く、俺はアーシアさんの治療で怪我自体は直ぐに回復した
そして今は小猫ちゃんの仙術で体力を回復してもらっている最中だ
近くにあったベンチに膝枕で・・・小猫ちゃんの膝枕、超柔らかい・・・気を抜くと顔が少しニヤケそうになるのを堪えている―――イッセーの同類にはなりたくないってのともう一つ、今は小猫ちゃんの説教中だからだ
「イッキ先輩、今回も無茶しましたね。前の爆発の時もそうでしたが、今回も一秒ごとにどんどん先輩が血まみれになっていくのはとっても心臓に悪かったんですよ?」
小猫ちゃんがジト目でこっちの心を抉って来る
「ゴメン・・・あー、その・・・今度は何を奢ればいい?」
そう言ったら片方の頬を抓られた
「あいたたたた!」
「私が何時も食い意地が張ってると思われるのは心外です・・・今回は納豆パンプキンパイで手を打ちましょう」
うん。確かに今のはデリカシーの無い言い方だったかもしれないけど、結局頼んでるんじゃん!?しかも何?納豆パンプキンパイって?何で毎回チョイスがそんな斜め上なんだよ!?
「・・・一人で頼むのは勇気がいるので」
・・・そりゃそうだ。後、心読まないで
「イヤです」
「拒否られた!?」
そんなやり取りをしている中で三大勢力の天使、堕天使、悪魔の共同作業で破壊された学園が元に戻っていく
イッセーはミカエルさんにアーシアさんとゼノヴィアの二人が祈りを捧げてもダメージを受けないようにして欲しいと頼み、ミカエルさんもそれを快諾したようだ
そして各々が事後処理を終わらせて家に帰って行った
翌日の放課後、部室のリアス部長の椅子を堂々と占拠しているアザゼルさんが居た
「かくかくしかじかで、今日から俺がこのオカルト研究部の顧問になる事となった」
そんなアザゼルさんに顔を引きつらせながらリアス部長が怒りながら問う
「『かくかくしかじか』だけで分かる訳ないでしょう!?ちゃんと説明しなさい!!」
確かに、本当に彼は『かくかくしかじか』としか言ってないのだから分かる訳がない
「いやなに、セラフォルーの妹に頼んだらここに配属されたのさ」
その言葉に皆の視線がソーナ会長に集中する
「でなければ代わりにお姉様がこの学園に来ると脅され・・・せがまれまして・・・」
「ようするに、オカ研を売ったのね?」
半目で問いかけるリアス部長を無視してソーナ会長は「では、失礼します」とそそくさと退室していった―――逃げたとも言う
「あの・・・その腕はどうしたんすか?」
イッセーの方はといえばアザゼルさんの無くなったはずの左腕が気になるようで問いかけると、途端に上機嫌になって解説する
「コレか?コイツぁ神器研究のついでに造った万能アームさ!一度こういうのを装備してみたかったんだよな。ふふん♪」
そういって俺たちに見せつけるように次々と左腕を変形させ、最後にロケットアームにして部室の中を縦横無尽に飛び回らせ、俺たちの反応をひとしきり楽しんだ後、腕を元に戻した
「ま!そういう訳でな・・・それと、俺がここに居るのにサーゼクスから条件を出されてる」
「条件?」
「ああ、お前らの事を鍛えてやれってな。特に悪魔は神器の研究が進んでないからな・・・俺の研究成果をお前らでじっけn・・・・お前らに叩き込んでやるさ」
今殆ど実験って言いかけたよなこの人!?
「いいか?これからは俺の事はアザゼル先生と呼べよ!———ああ、そうだ。イッキ、祐斗、お前さんらの褒賞の事だ」
そこで次に彼は会談の褒賞について切り出してきた
「まずは祐斗。お前さんの同志の因子だがな、フリードの奴が三つも強引に体に入れたせいか取り出すのに少し掛かりそうなんだとミカエルから連絡が在った。だがまぁ作業自体は絡まった糸を少しずつ解いていくような感じみたいでな。時間が掛かる以外の問題は無いそうだ」
「はい。分かりました」
説明の途中、少し不安げだった祐斗も問題無いと聞いて安心したようだ
「次にイッキ。黒歌の件だが「黒歌姉様!?どういう事ですか!?」」
昨日の会談の場に居なかった小猫ちゃんが突然上がった黒歌の名前に驚いて喰い気味に反応する
「なんだイッキ?お前話していなかったのか?」
「いえ、まだちゃんと話が通るかは分かってなかったので・・・万が一ダメだったらぬか喜びさせるだけに終わってしまいますからね」
「ったく、お前さんは弱気なのか大胆なのか分からんな・・・まぁいい、サーゼクスから正式に通達が在った。『SS級はぐれ悪魔、黒歌の手配書を本日をもって破棄する』だとさ―――さて、そろそろ焦れてるそこの小猫にも事情を説明してやんな」
確かに・・・小猫ちゃんの無言の視線で物理的に穴が空きそうだ
そうして小猫ちゃんには昨日の会談の褒賞から恩赦の顛末を語る事になった
「そうですか・・・これでやっと黒歌姉様も追われる心配が無くなるんですね」
小さく「よかった」と呟く小猫ちゃんにアザゼル先生から声が掛かる
「どうやらその様子からして小猫、お前さんはコイツが黒歌と繋がっていた事を知ってたんだな?当時の事件とやらの顛末についてもだ」
「はい・・・一年ほど前から・・・」
「あらあら、一年前と言うと丁度小猫ちゃんの実力がグングンと伸び始めた時でしたわね」
「成程、そういう事だったのね」
2大お姉様方は得心がいったという感じだ
「あ~、リアス部長。報告義務を怠ったとかは言わないで上げてくださいね?そもそも小猫ちゃんは報告したくても出来なかったので・・・」
「出来なかった?」
信賞必罰。それはそれ、これはこれとして小猫ちゃんに軽い罰則が有っても可笑しくないので一応フォローしておく
当時小猫ちゃんと出会った時の経緯や悪魔の契約の内容について皆に説明した
「―――成程ね。まさか悪魔の契約をそんな風に逆手に取るなんて、またあくどい手段を講じたものだわ」
リアス部長が呆れたように呟くなか、アザゼル先生はニヤニヤしてる
「つまりだ。纏めるとイッキは動揺する女子中学生を力で脅し付けて自室に連れ込み、詐欺まがいの方法で心身を縛り付ける契約を迫ったって訳だ」
「間違ってませんけど!言い方に悪意満点ですよ!?無罪を主張します!!」
アザゼル先生はそんな俺の反論を余所にリアス部長に問いかける
「なら、此処は小猫の主であるリアスに委ねようか・・・判決は?」
「
NOOOOOOOOOOO!!
「ふふ♪冗談よ。小猫の事は感謝してもし足りないわ」
「い・・・いえ、自分がやりたかっただけですし・・・」
そこでリアス部長がふと思いついたように言った
「そう言えば、貴方を一度下僕に勧誘した時に言ってたやりたい事って言うのはひょっとしてこの一件の事だったのかしら?」
ああ、そういえばそんな事も言ったっけ・・・
「そうですね。悪魔に転生すれば何かしら功績を上げても主の功績と同一視され易いみたいですし、何か適当に大きな取引材料を持って直接交渉した方が可能性はあるかな?と思ってました」
「そう、そういう事だったのね。全く、貴方を下僕に出来ないのが残念だわ」
「あの部長?何でイッキを部長の下僕に出来ないんですか?」
その質問に答えたのはアザゼル先生だった・・・何かまたニヤついてない?イヤな予感がするんだけど・・・
「それはな、此奴は関西を束ねる九尾の狐の娘の婚約者だからだよ―――裏の有力者の婚約者を勝手に下僕にしたら即問題になるからな・・・因みに調べによると婚約者の名前は九重。年齢は10歳、今年で11歳だな!」
それを聞いてイッセーを筆頭に婚約者の件を知らなかった皆が大なり小なり驚きをみせる
「はぁ!?イッキに婚約者!?いやいやそれよりも相手が10歳っておいイッキ!お前はいつの間に
「誰が
全部言い終わる前に小猫ちゃんのアッパーが顎に突き刺さった
「じゃれ合ってる所悪いがな・・・恩赦の件についてはお前さんが黒歌に直接伝えてやれ。つーかどこに居るのか分かんねぇんだよ。仙術を使うっていっても隠れんの上手すぎじゃねぇか?」
顎を抑えて悶絶しているとアザゼル先生に黒歌への伝言を頼まれた
「まぁ黒歌はまともに戦ったとして模擬戦でも20回に1回勝てればいい方ですからね」
「マジで!?黒歌さんってそんなに強かったの!?」
もうね、ヤバいよ。時間を操れるようになってから『加速装置!』とかリアルで出来るからね
戦慄しているイッセーを余所にアザゼル先生からの伝言は続く
「後コレが最後になるがサーゼクスの奴が前に赤龍帝の家に泊まった時に眷属同士のスキンシップの重要性を認識したらしくてな。特にお前さんは力の有無にダイレクトに関わりがある。よって『魔王サーゼクス・ルシファーの名において命ず。グレモリー眷属女子部員は全員兵藤一誠と生活を共にする事』・・・ただし、小猫!」
「・・・なんでしょう?」
「お前さんは姉が自由の身になったばかりだ。姉と同じ場所で生活したいと言うならそれでも良いとの事だ」
そっか、家族水入らずというのも配慮してくれてるんだな
「イッキ先輩のお家でですか?」
「・・・おいイッキ、まさかとは思ってたが黒歌はお前の家に住んでるのか?」
あ゛!バレた!って今更か・・・違う!問題はそこじゃない!
「イッキィィィ!!婚約者の次は黒歌さんがお前の家に住んでるとはどういう意味だぁぁ!!」
ほらこうして過剰に反応する奴がいる!取り敢えず無視するか
「黒歌は俺の部屋を拠点にしているだけで家族は流石にその事を知りませんね。ちょうどいい空き部屋とかも無いですし、小猫ちゃんが住むには適さないかと・・・」
「は~ん。だがそれは今までの話だろ?黒歌の手配が切れた今なら、イッセーの家みたいにホームステイという形にする事もできるはずだ―――まぁ取り敢えず今日の所は一旦帰って恩赦の件と家の件を相談してみろ。お前さんが一人で結論を出す事もないだろう・・・まぁ明日の放課後までにどうするのか決めてくれ」
「・・・分かりました」
そこで今日の部活は終わり、皆は帰宅して行った
イッセーの家の大所帯はリアス部長がサーゼクスさんに家の改築を頼むと呟いていたが恐らく改築という言葉を著しく逸脱したナニカに為るんだろう
「ただいま、黒歌」
「お帰りにゃ、イッキ」
家路につき、自室に入るとベッドでゴロゴロしている黒歌がいた
う~ん。この話題を自分から切り出すのは何だか気恥ずかしいものが在るな
でも、黙ってる意味も無いし、仮に黙ってたとしても小猫ちゃん経由で直ぐにバレる事だしな
「黒歌。黒歌の手配書だけど破棄されたから・・・」
「にゃ?何を言ってるのにゃ?」
そりゃそういう反応になるよな
とは言え既に一度口に出した事なので改めて会談での恩赦の話と、つい先程正式に黒歌の手配書が破棄された旨を伝えた・・・後、小猫ちゃんや黒歌の住処の事情も含めて
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
ち・・・沈黙が痛い・・・だがそこでゆったりと黒歌の声が響いた
「ねぇ・・・会談で願い出たって言っても別にその場で思いついた訳じゃないんでしょ?何時から『そういう事』を考えてたの?」
そういう事・・・か、それならあの時だな
「やっぱり初めてこの部屋で黒歌と小猫ちゃんが出会った日からかな?あの日から漠然とだけど如何にかしたいとは思ってたよ」
「・・・そう」
俺の答えに小さく返事をして少々俯く彼女・・・おんやぁ?コレは・・・
「黒歌・・・もしかしてテレてる?」
俺の問いかけに“ビクッ”と肩を震わせる・・・ヤバい、コレはニヤニヤしてしまう
ほんのり頬が赤くなってるのを微妙に顔を逸らしてるのがかなりグッとくる
“ズビシィィィ!!”
「目が!目がぁぁぁ!!」
調子に乗って覗き込もうとすると黒歌の水平チョップが俺の目を捉えた
ちょっと前に小猫ちゃんがイッセーに同じ事してたよね!?本当に似たもの姉妹だな!?
「ちょっと調子に乗り過ぎにゃイッキ!・・・ありがと」
小さかったけど確かに聞こえてきたお礼の声に頑張ったかいは在ったんだなと思い直す
「それで、家の件はどうするのにゃ?私も白音と一緒に暮らせるならそうしたいけど、この家に空き部屋と言える所は無いわよね?流石に3人でこの部屋に住むのはちょっときつ過ぎるにゃん」
確かに、両親は結構書斎やら天体観測器具やらの趣味の物で半ば倉庫にしている所が多いのでこのままでは無理だ
「ちょっとアザゼル先生に電話してみるか・・・」
あの人なら相談に乗ってくれるだろう。それでいざ電話で用件を伝えてみると
≪成程、そういう話ならこっちに任せておけ・・・小猫の方には話は通ってるのか?≫
「はい、可能なら黒歌と一緒の家に住みたいと言っていました」
≪分かった。こちらで手配しておく・・・さぁ!楽しくなってきたぞぉぉぉ!!前々から取り込んでみたかったあのギミックを“ガチャ!ツーツーツー”≫
アザゼル先生ぇぇぇ!?何!?最後にいきなり上がったあのテンションにもう不安しか感じないんですけど!?ギミックって何の話ですか先生ぇぇぇ!!
一抹どころか全面的に不安しか感じなかったがその後何度電話を掛けても繋がらないので、その日はもう諦めて眠る事になった
「ああ、マジで不安だ。おやすみ、黒歌」
「おやすみにゃ、イッキ♪」
完全に眠りに落ちる前、ほんのりと頬に柔らかいものが当たったような気がした
次章は『冥界合宿のヘルキャット!!』ではなく『婚約騒動のお稲荷さん!!』とか書けたらと思います
黒歌も襲って来ず、小猫は既に仙術使い、イッセーは禁手に至ってるとぶっちゃけやる事ないので九重ヒロイン回ですねwww