転生特典が自爆技ばかりなんだが?   作:風馬

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恋愛パート、難しいナリィ(´Д⊂ヽ


第一話 京都の、呼び出しです!

朝の明るさを瞼の奥に感じて目を覚ますと目の前に黒歌が居た

 

それだけなら何度か在ったけど、今までと少し違う所も在った

 

「おはようにゃ、イッキ♪」

 

黒歌は既に目を覚ましていて俺の顔を覗き込んでいた所だ

 

「おはよう・・・何で俺はここ(ベッド)に?昨日寝た時は俺は床で寝たと思ったんだけど?」

 

「連れてきたにゃ♪・・・それとイッキ、もう床で寝るのは禁止するにゃ!」

 

朝一番からいきなり今までのライフスタイルを否定された!

 

「う゛・・・いやでもそれは・・・」

 

「イッキが今まで誘っても一緒のベッドで寝なかったのって私が『子種が欲しい』としか言わなかったからでしょう?勿論それは今も変わらないし、ずっと態度を変えなかった私も悪いけど私と白音の為にあれだけ動いてくれた貴方に何も感じない程私も薄情じゃないのにゃ」

 

「それは・・・つまり?」

 

「ここまで言わせといて最後まで私に語らせるつもり?」

 

そう言ってほんのりと頬を染めながら此方を覗き込んでくる黒歌・・・確かに、流石にここでヘタレる訳にはいかない

 

今まで曲りなりにも一緒に暮らしてきて彼女の一挙手一投足には何度もドギマギとさせられたし、小猫ちゃんに仙術を教えるのを如何に効果的にするかを真剣に相談してきたり、揶揄ってくる時の底抜けの笑顔とか・・・まぁ理由なら幾つも思い浮かぶ

 

なら、俺の言うべき事は一つだろう

 

覚悟を決めたと言っておきながらも、ちょっとヘタレた俺は顔を合わせて言うのが恥ずかしくなり、黒歌を抱き寄せた

 

「好きだよ・・・黒歌」

 

「そこは『愛してる』の方が好感度高かったにゃ」

 

まさかのダメ出し!?思わず抱きしめていたのを離して黒歌の顔を見ようとすると、俺が何か言う前に黒歌が顔を近づけてきてキスしてきた

 

時間にして10秒も無かったと思うけど、顔に熱が昇って来てるのが分かる

 

「にゃっはははは♪イッキは相変わらずこういうタイプの不意打ちには弱いわね♪」

 

確かに反論できない・・・正直ちょっと頭が働いてない気がする

 

「気持ちも確かめ合った事だし、早速だけど子作りするにゃ♪」

 

すると黒歌が俺の上に乗ってきていきなり『子作り』宣言してきた!・・・別にいきなりって事は無いのか?

 

「いや、黒歌!これから学校があるから!それに、流石に高校生の内は子供はまだちょっと早いって!せめて最低限養育費を稼げないと俺が心労で潰されるから!!」

 

子供だけ作って育児も費用も母親に丸投げとかちょっと・・・否!かなり不味い!

 

そんな心の叫びを伝えると凄く不満そうな顔をされたが一応の納得はしてくれたみたいだ

 

よくぞ耐えたぞ俺の理性!だてに数年間強制賢者モードを強要された訳じゃなかったな!

 

「・・・はぁ、それで?大学卒業まで待てって言うのかにゃ?」

 

「逆にそれは俺の理性が持たないかな?高校卒業したら八坂さんかアザゼル先生辺りから仙術使いとしての割のいい仕事を割り振ってもらえれば良いんじゃないか?」

 

後一年ちょいと期限を定めれば俺の理性も何とかなるだろう

 

「それは結構にゃ♪コレで後約6年お預けなんて言われてたら今この場で問答無用に押し倒してた所だったにゃ♪」

 

それは良かった。よくぞ決断したぞ俺のちょっと情けない理性よ!!

 

そのまま黒歌は俺の上に覆い被さってきた

 

"ムニュ!"っと潰れた胸の感触がヤバいと思いながらも暫くそうしていると黒歌がふと思い出したように此方に顔を向けてきた

 

「・・・そう言えば、こうして私に告白したのなら、ちゃんと白音と九重への態度もハッキリさせないとダメよ?」

 

・・・ぐぅ!日本人として生まれ育った者として『三又とかそれでいいのか?』と問い掛けてくるような質問を・・・別に隠れて浮気とかじゃ無いんだが・・・と言うか

 

「黒歌はそれで良いのか?」

 

「・・・私は白音も好きだし、九重も気に入ってるからそれでも良いけど、ちゃんとイッキの口から伝えないとにゃ―――白音もそうだけど九重も今は純粋な好意だけど遠くない内に違う意味での『好き』になるわよ?」

 

う~む。どうにもそういった所が緩い女性が多いよな・・・もしかしたらイッセー周辺だからなのかも知れないけど

 

「まぁでも私もイッキがあの赤龍帝ちんみたいに『ハーレム!ハーレム!』言うのは流石に気に喰わないし、増やすとしてもせめて後1人くらいにして欲しいにゃ!」

 

「いや!増やすとか言うなよ!!そんな予定は無いって!!」

 

絶対これ告白直後にする話題じゃないよね!?そう思ってると黒歌に「甘いにゃ」と返された

 

「強い雄の周りには雌が集まるものにゃ。赤龍帝ちんが傍に居るって言っても放って置いたらドンドン増えるわよ?」

 

そんなものか?正直自分にモテ期到来とか実感湧かないのだが・・・

 

「まぁ今はこれ以上ここで議論しても意味ないわね・・・そう言えば今日は終業式だったわね。お昼には帰って来るのにゃん?」

 

確かに、明日から夏休みに入るからな・・・夏休みの予定とかどうしよう?特に決めてないけど

 

「そうだな、終業式の後もオカルト研究部に少し集まるように言われてるけど・・・そうだ!折角だし黒歌もグレモリー眷属と今の内に顔合わせくらいしておくか?」

 

多分リアス部長を筆頭に皆夏の間は冥界行きだと思うし、この機会を逃すと暫くチャンスが無くなるからな・・・

 

「え~!顔合わせとか面倒だにゃ~!」

 

ええい!駄々を捏ねるなこの怠け猫め!!

 

「でも、黒歌も小猫ちゃんの件でリアス部長には感謝はしてるんだろ?頭を下げろとは言わないけど、お礼くらいは言っといた方が良いんじゃないか?小猫ちゃんの話だと毎回夏休みは冥界に帰ってるみたいだし、今日を逃すと一月後だぞ?」

 

そう言うと黒歌は『イヤな所を突くな』と言わんばかりの目でこっちを見てきたが、暫くして諦めたように溜息をついて了承してきた

 

「・・・分かったわよ」

 

凄く不服そうだな・・・とはいえいきなり部室に黒歌が現れても驚かれるだろうしリアス部長に連絡を取っておくか―――黒歌と話したり抱きしめたりしている内に既にそれなりの時間になっているからな・・・今日の朝練は中止だな。そう思いながらもリアス部長に連絡を取る

 

≪あらイッキ、おはよう。朝から連絡してくるなんて珍しいわね。どうかしたのかしら?≫

 

「おはようございます。朝からすみません。実はですね、今日の部活で黒歌を連れて行っても良いでしょうか?一度ちゃんと皆に紹介しておきたいですし」

 

≪黒歌を?それは願ってもない事だわ。私は明日から冥界の実家に帰るから何処かで一度挨拶はしておきたかったのよ≫

 

「分かりました。では放課後に会いましょう。———失礼します」

 

≪ええ、楽しみにしておくわ≫

 

リアス部長の返答を聞き、そこで通話が切れた

 

「聞いての通りだから、終業式が終わったタイミングでイヅナを通して連絡入れるから来てくれ」

 

「ん、了解にゃ」

 

だがそこで黒歌が「そういえば」と話を振ってきた

 

「昨日は聴きそびれたけどイッキ、また【神性】上がってるにゃん?」

 

「ん?ああ、十中八九ヴァーリの覇龍(ジャガーノート・ドライブ)と闘ったせいだろうな」

 

あれから暫くして気づいたが1.5ランク上がって【神性 C+】って感じだ

 

「ただ、何となく神器の感覚からいって【神性】はコレで頭打ちっぽいんだよな―――神器が禁手(バランス・ブレイク)したらまた上昇するかも知れないけど、こればっかりは至ってみないと分からんな」

 

「ふ~ん。ならさっさと至るにゃ!今でも十分高いけど、やっぱりより【神性】が上の方が子種の質も上がるにゃ!」

 

『子種の質』とか言うなよ!生々しいな!!

 

でも、俺の禁手(バランス・ブレイカー)って如何なるんだろうな?というかもう殆ど神器を発現させてから17年近く経つんだが・・・今更だけどちょっとサジの気持ちが分かった気がする

 

そんな事を感じつつ登校して行った

 

 

 

 

 

学園に登校し、終業式が始まる前の教室では皆が既に夏休みに何処に遊びに行くとか部活の試合の事とかを話し合ってもう夏休みモードに入っている

 

「お前ら!明日から待ちに待った夏休みだ!青い海!白い砂浜!輝く太陽!!そして、それを彩る女の子たち!!今年の夏こそ小粋な彼女をGETして俺たちは大人の階段を上るんだぁぁぁ!!」

 

「応さ!夏と言えば海にプールに夏祭り!サンオイルに水着に浴衣が俺たちを待ってるぜ!」

 

「この俺のスカウターにも磨きが掛かるってもんだぜぃ!」

 

松田の熱いソウルにイッセーと元浜も追従する

 

「変態トリオが叶いもしない夏の計画?よくやるわね」

 

「何だと!?俺たちの夢に向かった壮大で偉大な計画を笑おうとは!?」

 

「消えろ!桐生藍華!メガネ属性は元浜で間に合ってるんだ!」

 

意気込んでいる所に水を差されたのに腹を立てイッセーと松田が食って掛かる

 

「ふん!そんな奴と一緒にしないで欲しいわね。属性が汚れるから」

 

「何だと!?元浜のメガネはただのメガネじゃねぇんだぞ!女子のスリーサイズから先端の輪の直径まで測定が可能なんだ!!」

 

「まさか、その能力がアンタだけのものだとでも?」

 

そう言いつつ先ほど反論してきたイッセーに「ほうほう、成程成程」と近づいて行きその耳元でコッソリと囁きかける

 

「長さは・・・(ごにょごにょ)・・・幅は・・・(ごにょごにょ)・・・臨戦態勢時は・・・(ごにょごにょ)」

 

「な・・・俺の男の尊厳に関する元浜以上の詳細なデータ!」

 

戦慄するイッセーたちに対してドヤ顔を決める桐生さん―――だがそこで元浜も反撃に出る

 

「フ!それしきか?ならば新しく進化した我がスカウターの力を魅せてくれる!桐生、貴様の今日の下着は〇〇ブランドの紫の下着だな?」

 

「な!?まさか元浜お前!透視能力を身に着けたのか!?」

 

「一体いつの間に!?」

 

イッセーたちが元浜の謎の進化に驚いているのを眺めつつ俺はと言えば今朝の黒歌のキスが頭の中を駆け巡っていた・・・ヤバいな今日一日は頭の中がピンクで染まってそうだ―――そんな風に内心ニヤついてのがダメだったのか桐生さんの目線(スカウター)が此方を捉えた

 

「おやおやぁ?コレはコレは・・・」

 

そう言って思いっきり俺の顔を覗き込み面白そうな表情を浮かべる彼女

 

「その魂にマーキングされた女の香り・・・有間君貴方、彼女が出来たでしょ?」

 

「ぶほっ!?」

 

え・・・なに?魂の香りって!?恐!そんなの分かるもんなの!?

 

「ふふん!私のスカウターは元浜の透視能力みたいな物質面に縛られる領域に存在しないの。相手の男女の機微に関するアストラル体すら見抜けるのよ!・・・でも有間君、童貞臭さは抜けてないみたいね」

 

ほっとけ!・・・後凄いな!この教室の一角で行われる一般人による異能力バトル!・・・一般人ってなんだっけ?

 

「イッキィィィ!!彼女が出来たとはどういう事だぁぁぁ!!」

 

「昨日の今日って事は黒歌さんか!?黒歌さんなのか!?いや待てよ・・・と言う事はもしかして小猫ちゃんがお前の義妹になると言うのか!?」

 

「ぬぁにぃぃぃ!!小猫ちゃん(マイ・エンジェル)が義妹ぃ!?どういう事だ!嘘だと言え!!殺されたいのか貴様ぁぁぁ!!」

 

イッセーお前、余計な事を・・・まぁ今更黒歌と小猫ちゃんが姉妹というのを隠す意味も無いけどさ―――後元浜、誰がマイ・エンジェルだ誰が!!

 

結局終業式が終わるまでの間、エロ馬鹿3人組に追い掛け回された・・・途中からリアス部長たちと何時も一緒に居るイッセーも俺と一緒に追われる側になっていたが・・・

 

 

 

 

 

学校自体は終わったそのタイミングで俺とイッセーはオカルト研究部に避難した

 

「ったく、松田も元浜もスゲェ形相で追い掛け回しやがって」

 

「そのセリフ、最初にアッチ側だったお前には言われたくないな・・・」

 

そこで部室の扉が開いて祐斗が入ってきた

 

「二人とも元気だね。走って旧校舎に向かってる姿が見えたけど、競争でもしていたのかい?」

 

「おう、木場。別にぃ、イッキの騒動に巻き込まれただけさ」

 

「お前にだけは言われたくないぞイッセー」

 

暫くそんなやり取りをしている内に大体のメンバーが集まり、不毛と感じたのかイッセーが祐斗に話を振る

 

「そういや木場!お前は夏休みの予定とか決めてんのか?というかグレモリー眷属って夏休み中の活動とかって如何してるんだ?」

 

ソファーで本を読んでいた祐斗は「ああ!」と納得した様子で本を閉じる

 

「そっか、イッセー君は初めてだったね。僕たちは・・・」

 

そこまで言いかけた所で部室の扉が開かれた

 

「皆、揃ってるわね」

 

リアス部長と朱乃先輩が入室してきた

 

それから程無く全員(・・)でテーブルを囲って夏休みの予定の話に移る

 

「さて、夏休みの予定だけど私達グレモリー眷属は冥界の私の実家に来てもらう事になるわ。新しく眷属に為った皆も家族に紹介したいし、そうでなくとも毎回の事なのよ―――皆、長期旅行の支度をしておいてね」

 

ん?グレモリー眷属って事は俺はどうなるんだ?

 

そう思ってリアス部長に質問をしようとしたら先にアザゼル先生から声が掛かった

 

「俺も冥界に行くぜ」

 

いつもリアス部長の座ってる椅子に腰かけているアザゼル先生に皆が驚いてる

 

「な!?アザゼル・・・先生。何時からそこに!?」

 

「ふふん!この俺の気配を感じ取れもしないようじゃ、まだまだだな―――そっちのお嬢さんもそう思うだろ?」

 

アザゼル先生が窓の方に目を向けると「そうねぇ」と返ってきた

 

「流石に今のままじゃ白音を預けるのに実力面での不安が残るわね」

 

窓枠に腰かけていたのは黒歌だ。見知らぬ彼女の登場に皆の多くが一瞬身構えるが逆にちゃんと顔を知っている人も此処にはいる

 

「あ!?黒歌さん!」

 

「やっほー!赤龍帝ちん。数か月ぶりかしら?」

 

そう。中学の修学旅行で顔を合わせてから駒王町では町中で不意に遭遇する時は別段隠れてなかったのでアレから何度かは出会ってるのだ・・・その度に怨嗟の涙と共に追い回されたり、殴りかかられたりしたけど・・・

 

「いや『赤龍帝ちん』って、イッセーで良いっすよ」

 

「そう?ならそうするわね」

 

皆もそんなやり取りを見て彼女が小猫ちゃんの姉の黒歌であると理解したようだ

 

「そう、貴女が黒歌ね。直接会うのは初めてかしら?リアス・グレモリーよ」

 

挨拶をするリアス部長に黒歌は「ふ~ん」と顔を近づけていく

 

「弱いわね。でも素質は悪く無さそうだし、ギリギリ及第点って事にしておいて上げるにゃん」

 

煽りよるコイツ・・・リアス部長も「な!」と口元引くついてるし

 

「こら黒歌!今朝がたリアス部長に小猫ちゃんの件でのお礼を言うって言ってたのはどうしたんだ?出会い頭にケンカを売るとか真逆な事すんな!」

 

「黒歌姉様。揶揄うにしても場と空気を読んでください」

 

俺は後ろから黒歌の脳天に軽くチョップを入れ、小猫ちゃんからはダメ出しされた

 

「うぅ~。こういうのは初めに"ビシッ!"と上下関係をハッキリさせるべき何だけどにゃ」

 

一つの群れのヒエラルキーの頂点に立ちたいという獣の本能かよ!?

 

リアス部長も黒歌が俺と小猫ちゃんに怒られたことで取り敢えず溜飲を下げてくれたみたいでその後眷属の皆と一通りの挨拶を交わしていく・・・イッセーは黒歌の揺れる耳と尻尾を見て「マジで小猫ちゃんのお姉さんだったんですね!」とかテンション上げていたが・・・

 

そうして暫くの間わいわいと過ごして落ち着いて来た頃、懐からイヅナが飛び出してきてそこから聞きなれた声が聞こえてきた

 

≪イッキ!今日は終業式だったからもう学校は終わっておるじゃろう?実は母上から夏の予定で少し話したいことが在るそうなのじゃが、今良いかの?≫

 

聞こえてきたのは九重の声だ。イヅナには連絡を取る時に周囲の状況を見るように言ってあるが、この場にはもはや関係者しか居ない為大丈夫と判断したのだろう・・・とはいえ流石に俺の耳元で通常の電話くらいの声量で回りに聞こえないようにイヅナが軽く結界を張ってるが・・・黒歌と違って気配りが出来る奴だよ、お前は

 

一応皆にはジェスチャーで断りを入れて返答していく

 

「九重、こっちは式は終わったけど今はまだ部室で皆と集まってる所だな。とは言えここに居る皆は既に色々と事情は知ってるから問題は無い・・・それで、八坂さんの要件ってのは?」

 

≪む!まだ学校に居ったとは、もう少し時間をずらすべきじゃったか・・・要件については今、母上と代わるのじゃ≫

 

するとイヅナから今度は八坂さんの声が聞こえてきた

 

≪イッキ殿、こうして話すのは少し久しぶりですが、そちらはお変わりありませんか?・・・もっとも、九重からよく話は聞かされておりますが≫

 

「はい、ご存じでしょうが三大勢力の会談なども在ったので『変わりなく』とは言えないかも知れませんが、元気ではあります」

 

最近は滅茶苦茶情勢動いたからな

 

≪そのようじゃの。三大勢力が和平を結んだ事は既に各神話体系に知れ渡っておるからの―――さて、まだ学校に居るとの事じゃから早速本題に移ろう・・・実は此方の方で少しばかり問題が起きての、京の方でも対処は可能なのじゃが折角なのでイッキ殿に問題の解決を依頼したいのじゃ≫

 

「問題・・・ですか?」

 

≪流石に通信で詳しい内容は伝えられんが、この件はイッキ殿が一番適任だと思うておる≫

 

・・・詳しい内容が聞けないのでは判断しづらいが、八坂さんの方で対処は出来るという事は緊急性は高くないのかな?しかし、重要そうな内容ではあると・・・とはいえ、今まで何だかんだ良くしてくれてる八坂さんの頼みだしな。ここは引き受けよう

 

「分かりました。そちらには何時頃向かえば良いでしょうか?」

 

≪すまぬが、正直解決にどの程度日数が掛かるか予測が立てにくいので早い方が良いじゃろう≫

 

うげ!先行き見えないマラソンレースは面倒だな・・・いや!それだけ大切な事だと思って気を引き締めて行こう!

 

「なら、早速明日にでもそちらに向かいます。幸い夏休みの予定はまだ立ててなかったので調整の必要も無いですし」

 

≪うむ。では明日に直接話すとしようかの―――それではコレで失礼する≫

 

≪イッキ!また明日なのじゃ!会えるのを楽しみに待っておるぞ≫

 

「分かった。また明日な」

 

別れの挨拶をし、そこでイヅナの通信は切れ、それを見計らってイッセーが声を掛けてきた

 

「イッキ、今のは?ずっと使い魔に話しかけてたように見えたけど?」

 

「今のはイヅナを介した通話機能みたいなもんだよ―――それはそうとリアス部長。俺は明日から京都に行く予定が出来ました」

 

「あら、今の通信で?それにしても明日とはまた急ね」

 

「いえ、そこは俺が『明日でも大丈夫』と言っちゃったせいですがね」

 

するとそこでアザゼル先生が話に割り込んできた

 

「何だイッキは京都か・・・できればお前も冥界に連れていきたかったんだがな。昨日言ったろ?サーゼクスからお前らを強くしてくれって言われてるって―――まぁお前さんの場合は神器を詳しく調べることがメインになるだろうが・・・つーか調べたくってワクワクしてたのに俺のこの気持ちをどうしてくれる!」

 

知るかよ!この神器オタク未婚総督!!

 

「まぁ今更言ってもしょうがねぇか・・・なら黒歌はどうする?小猫の指導をする上で、お前さん以上の適任は居ないと思うんだが・・・冥界かそれとも京都か―――どっちにするんだ?」

 

「ん~、そう言う事なら白音と冥界に行くにゃ♪今まではイッキがこの子を召喚しても数時間ずつしか修行の面倒を見れなかったし、できれば一度集中的に鍛えておきたいにゃ」

 

黒歌がソファーに座っていた小猫ちゃんを後ろから抱きしめながらそう言う

 

「『白音』ってのは確か小猫の旧名だったか?・・・ともあれ了解だ。そう言ってくれると此方もやり易い―――仙術の講師役なんてそうそう見つかるもんでも無いからな、正直助かるぜ」

 

「では決まりね。出来たらイッキも客分として招きたかったけど、予定が在るなら仕方ないわ―――なら、今日はこの辺りで解散してそれぞれ明日の準備をしましょうか」

 

解散という事なのでそれぞれ部室の戸締りをして、いざ帰ろうとした所でアザゼル先生が「ちょっと待った」と俺にある物を渡してきた

 

「・・・鍵?」

 

「そいつはお前さんの新しい家の鍵だ―――因みにイッセーの家の隣に新しく建てた」

 

ブホッ!今トンデモナイ事言いませんでした!?・・・でも確かに思い返せば寝ている間にリフォームとかもされてなかったけど!まさかの改築ではなく新築ですか!?

 

「イッセーの周りに女が多い方が此奴のやる気UPに繋がるって言ったろ?それにお前さんやイッセーの御両親のような一般人も守る事を考えたら近くに住んでいる方が何かと都合が良いんだよ」

 

「成程、セキュリティ方面の配慮ですか。それだと流石に文句も言えないですね・・・でも、イッセーの家の周りって別に空き家って訳じゃなかったですよね?その人たちはどうしたんですか?」

 

「いいか?大人には大人の共通言語ってのが在るんだ。この国では主に福沢諭吉が喋るがな・・・勿論中には渋る奴らもいたが、札束で『おうふくビンタ』をかましてやったら直ぐにニコニコ顔になったぞ?」

 

聞きたく無かったよ・・・そんな若干SMの入った買収の話

 

若干げんなりしながらも新しい我が家とやらに着く―――どうやら俺の元の家の荷物とか小猫ちゃんの私物とかは既に運び込んであるそうだ

 

後はデカい!隣のイッセーの家と同じ高さ(地上6階)だ!・・・そうだった、この可能性を考えておくべきだった!

 

「あの、アザゼル先生・・・こんなにデカい家にする意味在ったんですか?」

 

絶対に持て余すと思うんだが

 

「ああ、この家は俺の所の神の子を見張る者(グリゴリ)で建てた物でな。ほら、隣のイッセーの家が悪魔の建築だろ?『それ以下の建物を造るなんてありえない!』って意見が出てな・・・かと言って逆にそれ以上のもんを建てたら今度はイッセーの家が増築して鼬ごっこになるだろ?だから一先ず高さは合わせたんだ―――ちゃんと地下も3階まで在るぞ?」

 

「そんな悪魔と堕天使の見栄の張り合いに家を巻き込まないで下さい!!」

 

「はっはっはぁ!良いじゃねぇか、立派になったんだからよ!取り敢えず軽く案内してやるよ、中に入りな」

 

いや此処仮にも俺の家なんですよね!?

 

イッセー達も一度中を見てみたいとの事だったので皆で広い玄関から入っていく

 

両親はまだ帰ってないみたいだ・・・どう反応するんだろう?

 

「うっひゃぁぁぁ!スゲェな!俺の家も大概だったけどこっちも負けてねぇぜ!・・・若干SFチックな内装が多いかな?」

 

確かにイッセーの言うように、可笑しくない範囲で男心をくすぐるような内装だな―――設計者の趣味が透けて見えるようだ

 

だが、玄関の先にあるリビングで可笑しなものを見た・・・具体的に言えば壁に在る赤いボタンで『緊急脱出用』とプレートが張ってある

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「ポチっとにゃ♪」

 

「なに押してんのぉぉぉ!?黒歌さぁぁぁん!!?」

 

すると直後から家全体から”ズゴゴゴゴゴゴ!”と振動が鳴り響てきた

 

「いやぁ、だって気になるじゃにゃい?」

 

そこはまずアザゼル先生に確認しようよ!?

 

「というか俺の家に何を仕込んだんですかアザゼル先生!?」

 

「くっくっく!そのボタンを最初に押すとは黒歌も中々いいセンスをしているようだな。やっぱり赤いブザーは鳴らしてナンボってのを良く分かっていやがる」

 

顎に手を当て『うんうん!』と頷いているアザゼル先生(マッドサイエンティスト)―――コイツぶん殴って良いかな!?

 

「なに、外を見てみろよ」

 

そう言われて皆で外を見ると青い空と白い雲が見えた・・・それ自体は可笑しくない。可笑しいのはそれ『しか』見えないという事だ!

 

慌てて窓際に走り寄ると眼下に広がる駒王町!

 

「い・・・家が飛んでるぅぅぅ!?」

 

「飛んでる・・・飛んでるぞアーシア!!」

 

「はいぃ!ゼノヴィアさん!とっても良い眺めですぅ!!」

 

「あ・・・あらあら、コレはまたトンデモナイですわね」

 

イッセーを筆頭に皆が騒いでるが、俺は逆に放心しかけていた・・・というかアーシアさんとゼノヴィアは反応が無邪気過ぎるだろ

 

「アザゼル・・・一般の人々にコレが見つかったらどうするつもりなの?」

 

もはや『先生』を付ける事も忘れてリアス部長が問うと「問題無い」と返してきた

 

「このロマンの一つ!『空飛ぶ家』を実現させる為に、この家が飛ぶときは超高価な資材を溶かして認識阻害を張れるようになっている!他にも迎撃システムも組み込んであるから駒王町くらいなら10分で火の海に出来るぞ!!」

 

「『出来るぞ!』じゃねぇぇぇ!!何俺の家を魔改造してんの!?」

 

昨日言ってた『ギミック』ってのはこういう意味か!

 

「安心しろ、ちゃんと後で取説を渡しとくからよ。ちゃんと頭に叩き込んでおけよ?先生からの夏休みの宿題だ!」

 

それから家はちゃんとイッセーの家の隣にすっぽりと収まり直し、アザゼル先生は取説を俺に押し付けて風のように去って行った

 

イッセー達は自分の家に帰って行ったけど去り際に俺の肩を“ポンっ”と叩いて行くのは虚しくなるのでやめて欲しかったが・・・

 

 

 

 

 

それから夕方過ぎ―――両親もそれぞれ帰って来て今はリビングで皆でテーブルを挟んで挨拶を交わしている

 

「あらあら、福引で豪邸のハウスシェアなんてものが当たったと聞いた時は初めはどうしようかと思ったのだけれど、息子の部活で仲が良い子が同じシェア相手と聞いた時はこういうのも良いかな?と思ったのよ。でもまさかこんな可愛い上に美人姉妹だなんてね」

 

どうにも新築に一緒に住む理由としてハウスシェアリングという形になったそうだ・・・日本では馴染みが無いけど、海外では割と普通にあるみたいだから理由としてはそこまで苦しくない・・・のか?

 

「しかし、良かったのかな?塔城さん達・・・うちのイッキは年も近いし、何か間違いが起きないとも限りませんが」

 

間違いって・・・まぁ父親として最初に確認しておくべき事項ではあるんだろうけど

 

「それなら問題在りません。私とイッキは付き合っていますので、人はそれを『間違い』では無く『正解』と呼びます!」

 

そこは『問題在りません』だけで良かったぞ黒歌!それと例え夫婦の営み(意味深)だったとしても態々それを『正解』なんて呼ぶ奴居ねぇよ。人間の常識捏造すんな!

 

「まぁ!黒歌さんがうちのイッキと!?イッキ、貴方彼女が出来たなら紹介してくれないと!」

 

「い・・・いや、黒歌と正式に付き合いだしたのって今朝の話だし!」

 

「そうなんです。イッキったら数年前からアプローチしていたのに、ようやくだったんです!」

 

「なんと!イッキがそんな優柔不断な奴だったとは!」

 

「ええ、貴方。昔から手の掛からない子だと思っていたけれど一度しっかりと教育し直す必要があるかも知れませんね」

 

『よよよ』と擬音が見えそうな臭い演技をする黒歌。しかも両親もそれに気づきながら乗ってくる始末だ

 

どうやら俺の味方は何処にも居ないようだった

 

一通り弄り倒された後は自室(前の軽く6~7倍は在る)のベッドの上でアザゼル先生のこの家のガイドブックを読んでいた―――この家、絶対に要塞の間違いだろ?レーザー砲とか積んであるぞ・・・後、備考欄に小さく【ロボットハウス、鋭意製作中】って書いてあるけどもう見なかった事にしよう

 

すると黒歌が部屋に入ってきた

 

「ノックくらいしろよ。『親しき中にも礼儀あり』だぞ?」

 

「え~。そんな礼儀は知ったこっちゃないにゃ!それにそもそも仙術で分かってたでしょ?」

 

「まぁな、言ってみただけだ」

 

正直、黒歌に言っても無駄だろうし本気で言ってないからな

 

「ならいいにゃ♪イッキもそんな分厚い説明書を読んでたら朝になるわよ?今日はもう寝るのにゃ!」

 

そう言いつつ黒歌はベッドに潜り込んで抱き付いてきた。空調は効いてるが夏場という事もあって黒歌の寝巻は薄く、肌色成分も多い。彼女の柔らかい体と体温で頭の中がイケナイ方向に傾きそうになる

 

「えっと、折角小猫ちゃんも同じ家に居るんだし、そっちで一緒に寝たら?」

 

「勿論白音も此処に来る途中で誘ったんだけど、まだ少し恥ずかしいのか一人で寝るって言ってたにゃん♪―――それにどうせ明日からは私と白音は冥界に行って修行で殆ど一緒になるなら今日はイッキと一緒に寝るにゃ♪」

 

む・・・しかし大丈夫だ。俺には【一刀修羅】先生による強制お休みモードがある!それなら朝までぐっすりだ!

 

そう思い日課だった寝る前の【一刀修羅】を発動させ、瞑想に入ろうとした所で俺は重大な過ちに気づいた―――【一刀修羅】は感覚すらも引き上げる技、それを黒歌が密着した状態で発動させた事で彼女の肌触りとか吐息とか心臓の音とか匂いとか色々と入ってきたのだ!

 

結局その日の瞑想は何も上手くいかないまま効果時間が切れてそのまま眠る事になった

 

・・・これからこの修行どうしよう?




九重パートに入る前に黒歌にヒロインしてもらいました

一応言うとイッキは別に九重に恋愛感情はまだ抱いてませんよ?真っ直ぐな好意を向け続けられたら5~6年後にはヤバいだろうとは思ってますが

後、もし黒歌が『自分だけを見て!』というタイプならそれに沿っていたでしょう

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