第一話 2学期、始まりました!
夏休みが明けて2学期が始まってから既に数日、今日は俺達のクラスに新しく転校生がやって来るらしい・・・そういう情報って何処から仕入れて来るんだろうな?
朝のホームルームが始まり担任の先生が早速その話題を切り出す
「え~、妙な時期ではありますが、このクラスに新しく転校生がやって来ました。海外からの帰国子女のようですが日本語に問題はありません。では、自己紹介をどうぞ」
先生が廊下に向かって声を掛け、一泊置いてから栗毛ツインテールの美少女が教室に入ってきて男女が共に色めき立つ
イッセーとゼノヴィアは驚きの、アーシアさんは喜びの表情をそれぞれが浮かべている
黒板に大きく自分の名前を書いて振り向いたその人物はハキハキとした声で自己紹介に入った
「紫藤イリナです。皆さんこれから仲良くして下さいね♪」
胸元の十字架を踊らせながら彼女はそう言ったのだった
「紫藤イリナさん。貴女の来校を歓迎するわ」
放課後、オカルト研究部でリアス部長がそう告げた。朝のホームルームが終わってからも軽く挨拶はしたのだが流石に裏の事情も含めてガッツリと話す事は出来なかったので詳しい話はまた後でという事になったのだ
コカビエルの時やトップ会談の時には特に繋がりの無かった俺やギャスパーもそうだが他の皆も以前は半ば敵対者として出会っていたからな
「今まで悪魔も沢山滅してきたりしたけど、これからは仲良くして下さいね♪」との事だ・・・前半のセリフ要るか?
「俺は要らないと言ったんだがな・・・
アザゼル先生が天界のお人好し加減に呆れつつイリナさんに確認を取る
「あ、分かっちゃいます?その通りです!ミカエル様の祝福を受けた私は転生天使として生まれ変わったのです。エクスカリバーは今は手元に無いけれど、この力を平和の為に振るっちゃいます♪アーメン♡」
"クルッ"と一回転しながら天使の翼と輪っかを顕現させてキメポーズを決めるイリナさんに皆が驚きを露にするがアザゼル先生だけは納得したといった感じだ
「転生天使?そんな現象があるのですか?」
「今までは無かったさ。三大勢力で和平を結んでそれぞれが持つ技術を交換したからな、悪魔のイーヴィルピースの技術を基本に置いて再現したって所か―――神の消滅で純粋な天使は生まれなくなったからな。僅かづつでも数を増やせる悪魔や堕天使よりも天使たちはその辺の事情はかなり切羽詰まってたはずだからな。あのミカエルですら内心"ホッ"としてるはずだぜ?」
「って!アザゼル先生!神の消滅とかそんなトップシークレットをそんな気軽に!」
祐斗の質問にサラッと神の消滅というワードを入れて話すアザゼル先生にイッセーが驚くがアザゼル先生は何でもないように言葉を返す
「何言ってんだイッセー。神の不在を知るお前たちの居るこの場所に派遣される以上はその辺りの事も伝えられているはずだぜ?でないと肝心な時に連携が取り辛いからな・・・つぅかそもそも三大勢力の和平会談の時に最初にサーゼクスが神の不在について言及してたろうがよ―――まさか記憶処理されたなんて事はねぇんだろ?紫藤イリナ」
「はい。私は既に主が居ないという事を認知しています」
先程までの明るい雰囲気から一転、硬くなった表情でイリナさんが告げる・・・が、それから段々と表情が崩れて最後には泣き出してしまった
「ああ~!世界の中心!我らが父が!全ての生みの親たる主が身罷われていただなんてぇぇぇぇ!最初にミカエル様にお聞きした時は七日七晩寝込んでしまったのよぉぉぉ!今だってこうして口に出すだけでも心が張り裂けそうになってしまうわぁぁぁ!うわぁぁぁぁん!!」
「分かるぞイリナ」
「分かります」
ゼノヴィアとアーシアさんが泣き崩れるイリナさんの肩にそれぞれ"ポン"と手を置いて慰める
「うぅぅぅ、ゼノヴィアには裏切り者とかアーシアさんには始め魔女だとか色々と酷い事を言ってしまってゴメンなさいぃぃぃ!」
そう言って"クルッ"反転して二人に抱き着くイリナさん
「私は全然気にしてませんから、宜しければお友達になって下さいね。イリナさん」
「私もだ。気にするな、イリナ。また一緒になれて嬉しいぞ・・・それはそうと、そろそろ離してくれないか?胸に下げてある十字架がチクチクと痛いんだ」
アーシアさんもゼノヴィアも十字架のダメージで抱き着かれた事に笑顔を浮かべつつも何処かその笑顔が引き攣っているようだ
「あ!御免なさい!つい何時もの調子で―――そうよね、悪魔は十字架がダメよね。次からは十字架を外して抱き着く事にするわ」
「ああ、そうしてくれると助かるよ」
「主はもういらっしゃらないけど、主への愛を忘れた訳じゃないわ。アーシアさん、ゼノヴィア、今日貴女達に出会えた事への感謝を籠めて・・・「「アーメン!!」」」
おお、教会トリオの初『アーメン』。無事に仲良くなれそうで何よりだ
それからイリナさんが転生天使の仕組みである『
そして一通りの説明が終わった後、イリナさんが祐斗に向かって語り掛ける
「そうそう、木場君。私が今日此処に来たのは貴方にコレを渡す役割もあったのよ」
そう言って魔法陣から三つの光輝く結晶を取り出した
「ッ!それは、同士たちの!?」
「ええ、フリード・セルゼンの中に取り込まれていた貴方の同士たちの聖剣の因子の結晶よ。本当は私も二学期の始まりに合わせてこの町に来るはずだったんだけど、丁度因子の抜き取り作業が終わりそうだったからコレを運ぶ意味もあって今日転校する事になったの。受け取って頂戴」
差し出された聖剣の因子を祐斗はその両手で受け取り、その輝きを暫く見つめた後でゆっくりとその胸に掻き抱いた
「あの時も、この前も、僕を助けてくれて有難う。これからはずっと一緒に居よう」
“パァァァァァ!!”
祐斗のその言葉、想いが切っ掛けとなったのかコカビエルの時と同じような暖かな光が部室を照らし出し、三つの因子は祐斗の中に吸収されていった
「祐斗、体の方は問題ないか?何なら仙術で診とくけど・・・」
「大丈夫だよ、特に違和感は感じないかな―――逆に力が溢れて来るような感覚だよ」
確かに、祐斗のオーラが一回り以上は大きくなった感じだ
「ほぉ、まさか全部の因子を体に取り込むとはな・・・心が通じ合った者同士の因子だからこそって感じか―――天界でもまだ複数の聖剣の因子を取り込む事は出来てないんだろ?」
「はい。でもあのフリード・セルゼンから聖剣の因子を抜き取る際に図らずも複数の因子を取り込んだ体のデータが得られたから、そちらの研究も進みそうだと他の天使の方々も仰っていました」
ああ~、フリードの奴は自分の知らない所で被検体になってたのか
「よし、祐斗。お前も今度
うん。それはそう何だけどそれって祐斗が直接天界に行けば良いんじゃ?
・・・面白いデータを取りたいんですね、アザゼル先生
それからシトリー眷属の皆にもイリナさんが挨拶をしに行って部活が終わればイッセーの家で歓迎会をした。生徒会の面々も誘ったのだが予定が合わなかったので一先ず何時ものメンバーだ
「それでは皆さん改めまして、教会・・・天使側の使者として参りました紫藤イリナです。この町の平穏の為にも頑張りたいです。宜しくお願いします!」
今はイッセーの家の歓迎会でイリナさんが出だしの挨拶をしている・・・因みにイリナさんもイッセーの家に住むそうだ
まぁ俺の家もイッセーの家もまだまだ空き部屋が多いからな
イリナさんの挨拶に皆も拍手をもって応える
「長年争ってきた仲だ。和平を結んだと言っても不満を持つ者も多い。お前さんらのように個人的に親しくできる間柄というのは今はまだ希少だからな」
少し離れた所に立っていたアザゼル先生がグラスを傾けながら少し目を細めて言う
「だが・・・俺の知らない所で幹部の奴らが他勢力の女と宜しくやってたっていうのが気に喰わん。和平を機にどいつもこいつも我先にと籍を入れやがって、今
おお~い、アザゼル先生?呪詛が漏れてますよ呪詛が
「アザゼル先生って・・・モテないんですか?」
「な!?イッセー、テメェ!冥界合宿の時に俺が過去にハーレムを形成しまくった事を言ったのをもう忘れたのか!?お・・・俺は趣味に生きる男なんだ!・・・女なんて作ろうと思えば幾らでも作れるさ!何ならイッセー、お前が望むなら今日中にお前に堕天使の綺麗処をあてがってハーレム王にしてやろうか?」
「今日中にハーレム王!?スゲェ!コカビエルは明日にはハーレム王って言ってたのに先生の手に掛かれば当日ハーレム王ですか!?・・・流石、堕天使の総督はダテじゃなかったんですね!」
そんな所で評価すんなイッセー。後アザゼル先生もドヤ顔すんな!
「でもぉ、それって独り身って事実は何も変わってないって事にゃん?」
「黒歌の云う通りだな。ハーレムと結婚は別枠だからな・・・部下からの信頼の厚いアザゼル先生が周囲の人たちに結婚の相談をされなかったのは・・・」
「おい、イッキ。何故そこで言葉を区切る。そして何故そんなに憐憫の籠った眼差しをこっちに向けて来るんだ?言いたい事が在るなら聞くぞ?」
アザゼル先生?どうして手に持ったグラスに罅を入れてるんですか?
「大丈夫ですって先生。『女なんて幾らでも作れる』んでしょう?」
多分今の俺は慈愛に満ちた瞳をしているんだろう・・・多分、そう多分
「答えになってねぇぞコラァァァ!!」
「先生!彼女も婚約者も居るイッキ相手じゃ分が悪いです―――イッキは後で必ず血祭に上げるとして今は別の話題にしましょう!」
「そうか・・・そうだな。後でイッキの為に血を抜きやすい溝の彫ってある細い槍を何本か用意して、刺す時は急所をさけて・・・限界を超えて血を絞れるようにあえて輸血させながら血を抜き取るか・・・」
本人の前で血祭の計画練るの止めてくれません!?しかも内容が無駄にスプラッタだし!
「そうそうイッセー。この間冥界に行ってきたんだがお前さんの人気が出てきているぞ」
「え!?マジですか先生!ついに俺にもファンが!?・・・でもどうしてですか?正直この前のレーティングゲームでは大して活躍出来なかったんですが」
「いやなに、レーティングゲームは真剣勝負ではあるが、あくまでもゲームだ。その前のコカビエルとの戦いやヴァーリとの戦いを映した番組でお前の紹介シーンが特に子供相手にバカ受けでな」
アザゼル先生が指を鳴らすと俺達の後ろにあった身長よりも大きいテレビに映像が流れ始めた
『部長のお乳を突かせてください』
「んなはぁ!?」
突然流れ始めた映像にイッセーがあんぐりと口を開ける
『部長!右の乳首と左の乳首!どっちを押したら良いですか!?』
『コレは、部長のおっぱいの分!!』
『ふっざけんなぁ!リアス・グレモリーのお乳は俺のもんだぁあああ!!何時か絶対にあの素敵なおっぱいを揉んで!摘まんで!弾いてやるんだよぉぉぉ!!』
「ちょ・・・ちょっとアザゼル!何でライザーとのレーティングゲームの映像まであるのよ!?」
「サーゼクスからの提供だよ。安心しろ、何を掛けてゲームしたかまでは広まっていないし、このアップシーンだけじゃそもそも分からんだろう。冥界には今まで娯楽が少なかったし、最近では
アザゼル先生はグラスを傾けてお酒を飲みながらそう言う
「ま・・・マジですか」
「因みに作曲はサーゼクスだ」
「マジですか!?」
「何をやっているのよお兄様は・・・」
まさかの魔王の作曲という事でイッセーは驚愕し、リアス部長は頭が痛そうだ
『おっぱいドラゴン・・・二天龍の片割れ、赤き龍の帝王と畏れられたこの俺様があのアホくさい相棒の使い魔と同じ呼ばれ方を?・・・ふ、フフフフ』
ドライグの声に深く影が差しているな
「そう言えばお前さんらに今度、取材の申し込みが入ってるだろ?」
「取材・・・ですか?」
「ああ、皆にはまだ話して無かったわね。若手悪魔同士のレーティングゲームを全眷属が一度は戦ったから改めて今後の意気込みを聞きたいと申し入れがあったのよ」
「て・・・テレビの取材ですか!?」
「うわぁぁぁぁん!そんな大勢の人の前に晒されるなんて僕にはまだ荷が重いですぅぅぅ!!」
「も・・・もしかして悪魔らしく普段どんな悪い事をしているかなどを質問されるのでしょうか?ど・・・どうしましょう?今からでもご近所さんに朝に宅配される牛乳を飲んでしまったりとかしていくべきなのでしょうか・・・はぅう!私は何て恐ろしい悪徳を思いついてしまったのでしょうか!ああ、主よ!お許しください!」
ギャスパーの反応はいつも通りとして、アーシアさんが変な方向に力を入れようとしている―――確かに宅配された牛乳が空になってたら人によってはブチ切れるとも思うけどさ
それとアーシアさんが悪事を働くのは天地がひっくり返っても無理じゃないか?
「それで、その取材がどうかしたのかしら?」
「いや何、イッキも一緒に取材に連れていきたいと思ってな」
「はい?俺は若手悪魔同士の戦いには関係ないですよね?」
「ああ、別にお前に取材を受けろって話じゃねぇ―――それとは別に他の奴も交えて話したい事があるんだよ。もっともあのヴァーリを退けたお前さんにも冥界からかなりの数の取材の申し込みが入ってるんだが・・・お前さん受けたいか?」
「いえ、是非とも遠慮させて下さい!」
ギャスパーじゃないけど変に晒しものにはなりたくないしな!
翌日、今日は来る体育祭に向けて誰がどの種目に出るのかを決めている最中だ
「はいは~い!私、借り物レースに出たいで~す♪」
イリナさんは持ち前の明るさで既に教室に溶け込んでいる。あの社交性の高さは素直に凄いよな
今は競技の大半を占めるレース系に誰が出るかの話合いだ
種目はスプーンレース、メドレーリレー、ムカデ競争、借り物レース、障害物競争、パン喰い競争に二人三脚、最後に学年対抗リレーだ
因みに俺はスプーンリレーだ。身体操作には自信があるからな。繊細さが求められるスプーンリレーが丁度良いだろう・・・何なら走りつつお手玉しながらゴールも目指せるだろうし
「オッケ~。借り物レースはコレで決まりね・・・兵藤、あんた二人三脚に出なさいよ」
司会進行役だった桐生さんがイッセーに二人三脚に出ろと言う
「はぁ!?何でお前が勝手に決めてんだよ!」
「だって、二人三脚以外のイロモノ系のレースは全部埋まっちゃってるのよ?アーシアはまだ決まってないし、まさか彼女に学年対抗リレーに出させるつもり?アーシアもイッセーと引っ付いて走りたいわよね?」
「は・・・はいぃ。でもイッセーさんの足を引っ張るかも知れません。私の事は気にせずにイッセーさんはご自分の出たい競技にお出になって下さい」
健気で何処か寂しそうな笑みを浮かべながらアーシアさんがそう言うと教室中からイッセーに対して鋭い視線が突き刺さる
「い・・・いや~、俺も丁度二人三脚に出たいと思ってたんだよ。一緒に走ろうぜ!アーシア!」
「そうなんですか?嬉しいですぅ!」
アーシアさんの輝かんばかりの笑顔を見て主に男子達から舌打ちが聞こえてくる
美少女シスターのアーシアさんの想いは応援したいけどイッセーには破滅して欲しいという葛藤が彼らの中で渦巻いているのだろう
微かに『爆ぜろ』とか『もげろ』とか聞こえてくる中で体育祭のメンバー決めは終わったのだった
そして午後からは学年を跨いで体育祭に向けた練習が各自執り行われる事になった
3学年が体育とか珍しいがこの駒王学園は学校行事にかなり力を入れているし場所にしたって新校舎のグラウンド、旧校舎のグラウンド、体育館とこれだけでも十分なスペースを確保できる上に、内容によってはテニスコートだって使えるだろう
俺達2年生は新校舎のグラウンドで各種測定したりしている
「新しく転校してきた活発系美少女のイリナちゃんとゼノヴィアちゃんの競争は大変に目の保養ではあるのだが・・・イッセーに元浜よ、どう思う?」
「うむ。流石にあそこまで高速で動かれるとおっぱいの動きが把握しづらいな」
「やっぱり"ゆっさゆっさ"と揺れる様を堪能できる方がいいな」
「俺としてはこのご時世にまだブルマが基本な所にツッコミを入れたいんだけどな」
今じゃ小学生でもブルマは殆ど見られないだろうに・・・
「何を言う!確かにスパッツも良いがブルマのあの食い込みに勝るモノは無いだろう!?」
「というかイッキはさり気に自分の好みを押し付けたいだけではないのか?」
うるせぇ!ブルマはもはや絶滅危惧種だという事実を元に発言しただけだ!・・・決して俺の趣味趣向の話ではないんだよ!
そんなやり取りをしていると記録道具を持ったサジが俺達を見つけて近寄って来た
「よぉお前ら、何してんだ?」
「揺れるおっぱいを観察中だ!」
「あ・・・相変わらずだな。まぁ実害はないから良いか・・・所でお前らは体育祭はどの競技に出るんだ?因みに俺はパン喰い競争だ」
「俺はスプーンリレーだな」
「ふふん!俺はアーシアと二人三脚だぜ!」
「くっ!相変わらず羨ましい奴だな。俺だってできれば会長と密着しながら走りたかったさ!」
悔しがるサジだがそもそも学年から違うから流石に無理だろうに・・・とそこでサジの腕に包帯が巻かれているのが目に留まった
「サジ、その腕はどうしたんだ?怪我ならアーシアさんに頼めば治してくれると思うぞ?それとも3年遅れの中二病か?」
「ちげぇよ!コレはな、実は兵藤達とレーティングゲームをした時に赤龍帝の血とオーラを吸い続けてたのが変に作用したみたい何だよ」
そう言って俺とイッセーに包帯を取って左腕を見せてくれるサジ
松田と元浜は体操服姿の女の子たちを脳内保存するのに夢中で遠くに離れている
そこには黒い入れ墨のような蛇が何匹か左腕自体に蜷局を巻くように絡みついている・・・そしてその蛇たちの瞳の部分にはイッセーの
「・・・サジ、お前やっぱり中二病を発症したんだな」
「だからちげぇって言ってんだろ!」
「いやだってお前のそれ、その内『くっ!我が左腕に封じられし邪悪なる龍の封印が!』とかガチで言えるじゃんか・・・サジ、黒邪の龍王はヴリトラの称号だしお前もこの際何か名乗ってみるか?・・・そうだな、闇の龍王ブラック・サタンで必殺技はダークブレス零式で逝こうか」
うん。実にカッコイイ!アザゼル先生なら称賛してくれるだろう
「誰がそんなこっ恥ずかしい名乗りをするか!つーか何で零式!?後絶対に『いく』の字が間違ってるだろうが!!」
そりゃ零式が最強だからだよ。だって宇宙からブレス放って来るんだぜ?ファイナルなファンタジーではそこそこお世話になったしな
『う゛ぅ、ヴリトラが羨ましい・・・俺の宿主など『おっぱいドラゴン』なのだぞ?『ブラック・サタン』など最高ではないか・・・』
おおっとぉ!ドライグさんがあまりにも相方の二つ名が酷いからか中二病全開の『ブラック・サタン』に魅力を感じ始めてしまっているぞ!
「待てドライグ、戻って来い!その先は
必死に呼び止めたのが功を奏したのかドライグは『は!?俺は一体何を?』と
その日の放課後、俺達は部室に集まって若手悪魔の行った各々のゲームを見る事になった
因みに此処にはイリナさんと黒歌も居る・・・何でもイリナさんは独自に怪しさ満点の部活を立ち上げようとしているらしいが現在部員一人で部として認定されてないので取り敢えずオカルト研究部に居るみたいだ
次に黒歌だが家に居ても暇だし、かといって今更学校に通う気も無いらしいので放課後の部活に顔を出している。ならば昼間などはゴロゴロしているのかと言えばそうでもなくて、どうやらアザゼル先生に適当に暴れられる案件を気が向いた時に受けているみたいだ・・・流石は戦闘種族、血気盛んである
アザゼル先生としては
それから流れる若手悪魔同士のゲームの映像をこれから戦う事になる相手という事もあって皆真剣な表情で喰い入るように見ている
今見ているのはバアル眷属とグラシャラボラス眷属の試合なのだが、なんというか地力が違うな
主も眷属も多少の相性の悪さは力でねじ伏せられる位の差があった
最後には眷属全員が倒されたグラシャラボラスのゼファードルが『王』同士のタイマンをしろと吠えてサイラオーグ・バアルがそれに応え、すべての攻撃を弾きながら前進してゼファードルの防御陣ごと拳一発で突き破って試合終了となった
「凶児と呼ばれ、忌み嫌われたグラシャラボラス家の次期当主候補がまるで相手になっていない」
祐斗が固い表情で呟くけどもはやそれ単なる悪口じゃね?それだけ周りに迷惑を掛けられる位の実力があるって言いたいのだとしてもさ
「彼は若手No.1よ。少なくとも今の私達では策も無く正面から戦ったなら勝つのは難しいでしょうね・・・私の『王』としての資質、采配が試される所ね」
困ったように笑いながらもリアス部長は静かに瞳を燃え上がらせている―――負ける気など欠片も無いようだ
するとイッセーが俺に質問をぶつけてきた
「なぁ、イッキはあのサイラオーグさん相手に勝てるのか?」
その質問には皆興味をそそられたみたいで視線が此方を射抜く・・・と言ってもなぁ
「少なくとも今の試合映像の実力なら問題なく勝てると思うぞ」
「勝てるのかよ・・・というか何だその言い回しは?」
「いやイッセー、あの映像に映ってたサイラオーグさんが全力を振り絞って戦ってるように見えたか?あんな余裕綽々で勝った映像だけじゃ判断材料が足りねぇよ」
少なくとも原作の彼よりは強いと思っているが俺はまだ彼に直接会った事も無いしな
「イッキは自己評価が低いわね。白龍皇の
「・・・イッキ先輩は強いです」
黒歌と小猫ちゃんはそう言ってくれるがこの世界、インフレが酷いからな
せめて素の実力で魔王級は欲しい所だ
「ははは、それでもあの映像に映ってる彼に勝てると言えるだけでも凄いと思うよ」
と言ってもあの映像のサイラオーグさんはおそらく手足に枷を付けてるし変則的だが
そう考えればまるで本気じゃないって事になる
「今回の若手悪魔は全員が最後に『王』同士の一騎打ちをしている。リアスもサイラオーグも自軍優勢にも関わらずタイマン張りやがって・・・バアルの血筋は血気盛んなのかね?」
リアス部長は若気の至りを指摘されて恥ずかしそうだ
「あのグラシャラボラスの者はどの位強いんだ?」
サイラオーグさんの強さはあまり参考にならないとしてゼノヴィアが質問する
「今回の六家に限定しなければ決して弱くは無いわ・・・と言っても本来の当主候補が先日事故死してね。彼は代理としての出場なの。それから・・・」
リアス部長が言葉を続けようとした時、部室に転移魔法陣が広がった
「・・・あの紋章はアスタロトね」
「え!じゃあ!?」
アスタロトの者が来るとリアス部長が見抜くと先日のアーシアさんの手にキスをした一件を思い出したのかイッセーが激しく反応し、アーシアさんがイッセーの手を握り僅かに陰に隠れる―――彼女としては珍しい反応だがいきなりの求婚に加えて未だに毎日大量のプレゼントやラブレターが届いてるらしいからな・・・やっぱりストーカーだな
「御機嫌よう皆さん。ディオドラ・アスタロトです。アーシアに会いに来ました」
終には押しかけ属性も追加しちゃったよこの
ニコニコと笑うディオドラの登場に皆の纏う空気が重くなっていくのだった
今部室ではソファーに対面しながらリアス部長とディオドラが座っている
リアス部長の後ろには眷属の皆が立っていて俺と黒歌、アザゼル先生は少し離れた場所で事の成り行きを見守っていた
朱乃先輩は『女王』として紅茶を淹れているが何時もの笑顔は完全になりを潜めている
「回りくどい事は無しにして単刀直入に行きましょう———本日は眷属のトレードをお願いしに来ました。こちらが求める駒は当然『僧侶』です」
「いやぁん!僕の事ですかぁぁぁ!?」
一瞬不快感から視線が鋭くなったリアス部長も後ろから聞こえてきた悲鳴に毒気を抜かれたのか若干肩を落としている
「な!?ディオドラ、テメェまさかの両刀使いだったのか!?誤解のないように言っておくけどギャスパーは男の娘だぞ!」
「イッセー、察してやれよ。昔から貴族とか生まれた時から欲しいモノは大抵手に入れられる人たちは変な趣味趣向に走る事が多いのは歴史が証明してるだろ?アーシアさんを狙っていると思わせつつ、本命がギャスパーだったとは俺も予想外だったけど」
既にストーカーとして十分な実績を積み重ねている彼に遠慮する事も無いので弄り倒させてもらう
するとギャスパーがディオドラの前に歩いて行き深く頭を下げた
「ご・・・御免なさい!僕は貴方とお付き合いは出来ません!」
あれよあれよの内に男の娘に告白もしてないのに一方的にフラれる事になったディオドラは口元を引くつかせて額に血管が浮き出てしまっている
「・・・リアスさん。随分と愉快な眷属をお持ちのようですね」
「ええ、自慢の眷属たちよ。貴方にはギャスパーは渡さないわ―――用が済んだなら、どうぞお帰り頂けるかしら?」
ディオドラの皮肉をシレっと流して帰れというリアス部長。可愛がってるアーシアさんを連日困らせているディオドラにはかなりの塩対応だ
眷属を大切にするリアス部長にとってアーシアさんをトレードで手に入れようとするディオドラの姿は不快に映るのだろう
「いいえ、僕が要求する眷属は「言っておくけどアーシアも、他の誰であってもトレードに応じる気なんて無いわよ」」
もはや最後まで言わせずにディオドラの言葉を途中でぶった切るリアス部長
「・・・それは彼女の能力が素晴らしいから?それとも彼女自身が魅力的だからですか?」
「両方よ。私はアーシアを妹のように思っているわ。アーシアは私にとって『家族』なの」
アーシアさんは今のリアス部長の言葉を聞いて感動している
そしてディオドラが目を閉じて一息つき、紅茶を飲もうとする直前微かに黒歌から妖気が漏れた
「成程、ではこうしましょう。若手悪魔同士のレーティングゲームで僕があなた達に勝ったらアーシアを頂きたい」
「へぇ?先日、アガレス眷属に負けておいてよくそれだけの大口が叩けるわね?」
へ?ディオドラがアガレスに負けた?
「大体好きな女性を手に入れようというのにさっきから貴方はアーシアを商品としか扱ってない、そんな所も気に入らないわ」
俺の内心動揺を余所に暫くにらみ合っていた両者だが不毛と感じたのかディオドラはその場で立ち上がりアーシアさんの方を向く
「アーシア、キミは如何だろうか?僕はキミの為なら強力と噂されるグレモリー眷属さえも打ち破って魅せよう」
そう言いつつアーシアさんの前で片膝をつき、その手を取って再び彼女の手の甲に口づけをしようとした所でイッセーにその手を強く掴まれた
「アーシアは嫌がってるだろ。今後、アーシアには指一本触れさせねぇよ」
そういうとイッセーの手を強引に振りほどき、掴まれた所をハンカチで拭っている
「止めてくれないかな。薄汚いドラゴンに触られるのはチョットね」
イッセーがその発言に怒りを覚えて反論しようとした所で部室に渇いた音が響いた
「イッセーさんにそんな事言うのは止めてください!」
まさかアーシアさんが手を出すとは誰も思ってなかったのか全員が驚愕して動きを止める中一番早く起動したのは叩かれた頬が気付けになったのかディオドラだった
「いきなりの事でキミも動揺しているみたいだね。今日の所は引こう・・・だけど、僕がグレモリー眷属に勝った時キミは僕の伴侶となるのが正しいと知るだろう」
一触即発とも言える雰囲気の中アザゼル先生が割って入った
「お前ら、丁度良い。ゲームの日取りが決まったぞ―――グレモリー対アスタロト、五日後にゲーム開始だ」
ディオドラが帰って行った後、気になった事を黒歌に尋ねる
「なぁ黒歌、途中一瞬妖術使ったのは何だったんだ?」
「ああ、アレはね、あのお坊ちゃんの紅茶に一日遅れの時限爆弾をプレゼントしたのにゃ」
「爆弾?」
「とぉぉぉってもトイレが恋しくなる爆弾にゃ♪」
いやそれ下剤なんじゃ・・・
「効果は三日三晩は続くにゃ♪」
ゲーム開始寸前までディオドラはトイレの神様(悪魔)になるのか・・・全く同情出来ないな
原作のディオドラがあまりにも馬鹿らしいタイミングで『蛇』を使っていたのでちょっと自粛させてみました