転生特典が自爆技ばかりなんだが?   作:風馬

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前話でサーゼクスが作詞と書いてましたが実際には作曲だったので訂正しました




第二話 夢と、ヒーローです!

朝、シンプル且つ広大なフィールドで俺と黒歌が相対している

 

濃密な闘気を纏って瞬時に距離を詰める俺に対して黒歌も後ろに下がりながら百を超える分身を生み出しそれぞれが凶悪な仙術・妖術・魔力を籠めた弾丸を複数の魔法陣からガトリングガンの如く打ち出してきた

 

幻覚も含めれば秒間1000発は超えてそうだ―――仮に全部避けようと思ったら鬼畜難易度も良い所だし、その分身や打ち出された弾の一発一発にまで本物と同程度の気配を付与するおまけ付きだ

 

時間を操って自己加速が出来る彼女はそれだけ手数を増やせるからな

 

俺は迫りくる数々の弾丸を目で追うのは不可能と断じて自ら目をつぶって視界を切り捨てた

 

そうしてほんの僅かな違和感から本体の黒歌が居る方向にアタリを付けて他から迫る弾を意識から追い出し、より繊細に本物の弾丸だけを見極めて神器で弾きながら更に距離を詰めていく

 

正直言って恐い。黒歌の分身・気配攪乱技を完全に見切る真似は出来ないので多分本物だろうという曖昧な感覚を頼りに撃ち落としていかなければならないのだ

 

そうして黒歌との距離を半分程度に縮めた時、不意に後ろから違和感を感じて咄嗟にガードする

 

俺の感じた違和感はどうやら正しかったみたいで一発被弾してしまった

 

本当は左歯噛咬(タルウィ)で弾きたかったのだが腕でガード出来た分だけ上々だろう

 

どうやら黒歌は弾を俺の感知圏外から遠回りさせて後ろからブチ中てに来たらしい・・・一方向に集中し過ぎてしまったな

 

「むぅ、硬くなったにゃ」

 

「京都では主に防御法を中心で鍛えたからな」

 

攻撃を神器で弾きそこなったのを直感した瞬間、左腕に闘気を集めて防御力を高めたのだ

 

「でも、単純な破壊力をいなせるようになっただけじゃ攻略出来たとは言えないにゃ!」

 

その言葉と共に左腕に徐々に麻痺が広がっていくのを感じる

 

黒歌の三種混合攻撃の内、相手の気を乱す仙術は同じ仙術使いとして相殺できる。そして夏休みの修行を通して純粋な破壊力を司る魔力の部分もいなす事が出来るようにもなった

 

しかしまだ最後に妖術の部分を如何にかしなければならないのだ

 

身体操作は黒歌より俺に分がある為、黒歌の仙術を相殺しつつも余ったリソースで妖術に対抗しようとするが動きが鈍った左腕の側から容赦なく大量の弾幕が張られる

 

俺が左を向こうが弾幕自体を操作して左から襲い掛かる数を増やしているのだ

 

このままでは押し切られると考えた俺は脳のリミッターを解除して弾幕に対処しつつ一瞬、だが確かに神器を手放し右手で印を結ぶ

 

भै(ベイ)!」

 

薬師如来の力を借りる印で痺れを払い再び空中にあった右歯噛咬(ザリチェ)を掴む

 

それと同時に右足で地面を思い切り踏み付け俺の周り一帯を粉塵で囲った・・・本来なら自分で自分の視界を遮る行為だが俺にはあまり関係の無い話だ

 

「にゃ?まだ距離が在るのにそんな事をして何になるのにゃ?」

 

確かに間合いに入ったうえでの行動なら兎も角まだ黒歌と俺の間には距離がある・・・黒歌が一瞬でも気を逸らさなければだが

 

“ボフッ!”

 

煙の中から俺が煙を纏わせながら左右から(・・・・)それぞれ飛び出した

 

「その程度の幻覚が見分けられないとでも思っているのかにゃ!」

 

若干不機嫌になりながらも黒歌から見て右側の俺に向かって攻撃を放ってくるが彼女の攻撃が当たった瞬間俺の姿が歪んで消えた

 

「嘘!幻覚!?」

 

黒歌が自信を持っていたように相手を惑わすのは本来妖術の十八番だ―――仙術でも同じ事は出来るが黒歌の感知を騙せるレベルのモノは今の俺には作り出せない

 

だからこそ驚いたのだろう。何しろ黒歌が攻撃した幻覚は本物の俺と寸分違わぬ気配を放っていたはずなのだから

 

黒歌の意識が一瞬外れた時に煙の中で気配を絶っていた俺が筋肉のリミッターも外して正面から最短最速で彼女に肉薄した

 

「・・・今回は俺の勝ちだな」

 

「はぁ・・・負けちゃったにゃん」

 

右歯噛咬(ザリチェ)を目の前に突き付けて黒歌の投了で模擬戦は終了となった

 

 

 

 

 

「はあ~、久しぶりに勝てた~!」

 

久々の軽い優越感を手に二人で観客(・・)の元に歩いていく

 

「むぅ、イッキ。最後のアレは一体何だったのかにゃん?イッキの術系の仙術で私を出し抜くなんて納得いかないにゃ!」

 

「答え合わせはご自分で・・・って、痛たたたた。頬を抓るな!―――アレは幻覚の中に神器を潜ませてたんだよ」

 

「神器を?」

 

「ああ、神器は持ち主の生命の根源である魂と融合しているモノだから試しに神器から俺そのモノの気配を出せないかって思ったんだ。後は外面だけ取り繕った幻覚に合わせて神器をぶん投げたんだよ」

 

言ってしまえばコレは奇襲戦法だ。ネタバレした以上今後黒歌には効果半減だろうが、多分黒歌なら次回には気づいてたと思うしな

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

少し離れた皆の所に到着すると小猫ちゃん以外がまだ『ポカン』としている

 

「・・・今の俺じゃ絶対勝てねぇ」

 

最初に言葉を絞り出したのはイッセーだ。禁手化(バランス・ブレイク)に至った今のイッセーならパワーやスピードはそれなりになったが仙術によるフェイントを多用する俺や黒歌との戦いではまだまだ翻弄されて終わるだろうからな

 

俺や小猫ちゃんは近接では幻覚を織り交ぜてるし・・・ケルベロスの時は必要無かったけど

 

「ハァ・・・自分が情けねぇよ。昨日だって夜に木場と模擬戦した時に5連敗したってのに。まだまだドライグの力を使いこなせてないって事か・・・」

 

「それを言うなら私もだイッセー。デュランダル使いだというのに聖剣のオーラの出力ですら私は負けてしまっているのだからな」

 

イッセーに続いてゼノヴィアまで落ち込み始めた

 

どうやら祐斗は聖剣の因子を合計4つも体内に取り込んだ為か因子の総量ですら天然の聖剣使いであるゼノヴィアを上回ってしまったようだ

 

それによりイッセーは禁手(バランス・ブレイク)の状態ですら直線の移動でも祐斗に勝てないらしい

 

「二人については今後の目標にさせてもらいましょう。皆、汗を流していらっしゃい。その姿で取材に出る訳にはいかないわ。その後で朝食を食べたら冥界に跳ぶわよ」

 

リアス部長が"パンッ!"と手を打ち鳴らして朝の修行で疲れた皆に身だしなみを整えるように指示を出し、それぞれがシャワーで汗を流しにいったのだった

 

 

 

 

 

其々の家で朝食を食べ終わった後、一息ついた後で再び集合し冥界のテレビ局に転移する

 

アザゼル先生とはもう少し後で現地で合流らしい・・・黒歌は留守番だ。まぁテレビ局で暇を潰せって方が難しいからな

 

スタッフの方に案内されて局内を歩いていると正面から映像で見た顔が歩いて来た

 

「サイラオーグ!貴方もインタビューの収録?」

 

鍛え抜かれた肉体と野性味のある顔に自信を溢れさせていたのは若手悪魔No.1のサイラオーグさんとその眷属の皆さんだった

 

「リアス、お前も来ていたのか。俺達は丁度今インタビューが終わった所だ―――リアスたちはこれから収録か?」

 

「ええ、私たちはこれからよ―――試合、見させてもらったわ。圧倒的だったじゃない。流石は若手悪魔No.1ね」

 

「俺もお前たちの試合は見させてもらったぞ。どの眷属も高い実力を持っている。コレはゲームでは油断できんな・・・まぁもっとも俺もお前も『王』としては素人同然の振る舞いをしてしまったがな。お前も何か注意を受けたのではないか?」

 

「ええ、アザゼルに揶揄い混じりに言われてしまったわ」

 

「堕天使の総督のアドバイスか―――これも和平が結ばれたからこそだな」

 

お互いにゲームでタイマンを張った事に苦笑しつつも体から戦意が滲み出ている

 

全力でぶつかり合いたいと思っているのが丸わかりだ

 

そこでサイラオーグさんの視線がリアス部長の後ろに居た俺を捉えた

 

「お前は有間一輝か。初めましてだな、俺はサイラオーグ。バアル家の次期当主だ―――あまり詳しくは報道されてないが歴代最強とされる白龍皇を退け、加えて伝説の魔獣ケルベロスや聖書に記されしコカビエルも倒したそうだな・・・レーティングゲームで戦う事は叶わないようだが何時かお前とも拳を交えたいものだ」

 

サイラオーグさんが俺の眼を見ながらリアス部長に向けていたのと同じ戦意をぶつけて来る

 

「初めまして、有間一輝です。俺で良ければ是非」

 

自分はあまり熱血系ではないが、これほど真っ直ぐの闘志をぶつけられたらその想いに応えたくなってしまうな

 

「そうか、その時を楽しみにしよう・・・それはそうとお前は何故ここに居る?リアスたちの付き添いか?」

 

「いえ、俺もアザゼルさんに呼ばれたから来たんですけど内容は聞いてないんですよ。リアスさん達に合わせて来たから指定された時間までまだ少しあるので適当に暇を潰そうと思ってた所です」

 

そこでリアス部長にスタッフの人から声が掛かった

 

「リアス様。眷属の皆さま。もうすぐ収録が始まります。控室の方へお越し願えます」

 

「分かった。直ぐに行くわ―――ではサイラオーグ、また会いましょう」

 

「ああ、またなリアス」

 

そうしてグレモリー眷属の皆は控室に向かっていった

 

「さて、有間一輝。暇だと言っていたが折角だ。一緒に茶でもどうだ?俺の今日の予定はインタビューしか入っていなかったからな。この後は戻って眷属たちとトレーニングでもしようかと思っていたのだが、強敵との実戦を潜り抜けてきたお前の話に興味があってな」

 

サイラオーグさんからまさかのお茶のお誘いですか!う~ん、断る理由も特に無いか

 

「あ!でも俺冥界の通貨とか持ってないので奢ってもらう形になってしまうんですけど」

 

「そんな事は気にするな。そもそも誘ったのは俺なんだからな」

 

サイラオーグさんはそう言って俺の背中を"バシン"!と叩いてきた

 

・・・サイラオーグさん、地味に痛いです

 

 

 

 

所変わってテレビ局の一階にあるカフェで俺とサイラオーグさんと彼の『女王』であるクイーシャ・アバドンさんが席に着いている

 

他の眷属の皆さんは一足先にバアル領でトレーニングだそうだ・・・とはいえ、クイーシャさんは基本的にお付きとしてのポジションではあるが

 

既に朝食と云うには遅い時間で客も殆どいないから席も取り放題だ。俺とサイラオーグさんは珈琲でクイーシャさんは紅茶を頼んだ―――後、飲み物だけというのも味気ないので少々大きめのシュークリームが各自一つ・・・流石に貴族に提供する物だけあってシュークリームはメッチャ濃厚な味で美味しかった

 

テレビ局のカフェに貴族用メニューが普通に置いてある辺り日本とは違うよな

 

「さて、こうして席を交えると何から聞くべきか迷うな・・・お前は人の身でありながら既にそれほどの強さを誇っている。何時から鍛えているんだ?」

 

手始めにという事で無難な質問が飛んでくる

 

「物心付いた時(0歳)からですね。鍛え始めた理由と言えば実際最初から神器も顕現させられたし、この世界が表の世界の在り様だけじゃないって分かって『鍛えておかないと死ぬ!』って強迫観念じみた思いから自主練を始めました・・・まぁ思い返しても普通の子供の思考回路とは言えなかったと思いますけど」

 

何せ前世の記憶があるからな・・・魔王級の強さでも安心はできない世界だし

 

「成程な。今でも同じ理由なのか?」

 

「そうですね。白龍皇とかケルベロスとか実際鍛えてないと死んでましたからその思いは変わってません・・・でも今は違う理由も出来ました」

 

「ほう?それは何だ?」

 

「惚れた女の為、俺の事を好きって言ってくれる娘たちの為って言ったら笑います?勿論、リアスさんを始めとした、友達の為でもありますけど」

 

口にするのは気恥ずかしいけど理由としては結局ソコだと思うしな―――我ながら単純だと思う

 

「誰が笑うものか、命を懸けるには十分すぎる理由だろう。複雑な事情が有ろうが無かろうが、戦う理由なんてものは突き詰めればシンプルなものだ―――そして、しっかりとソコを見据える事が出来る者はいざという時に折れないし、揺らがないものだ・・・かくいう俺も理由を突き詰めれば女の為という事になる。もっともお前のように恋人とかではなく母の為だがな―――俺の原点はそこに在る」

 

サイラオーグさんは珈琲を一口飲んで息をつく

 

「俺のバアル家は代々滅びの魔力を受け継いできた家系だ。だが俺は滅びの魔力を得られなかったどころか魔力そのものすらまるで才能が無かったのだ・・・父親ですら俺を『欠陥品』と呼び、下の家の者にも虐められた。今でこそ気にしてないが流石に当時の俺はこたえたものだ」

 

そりゃサイラオーグさんだって最初から強靭な精神を持ってた訳じゃないよな

 

卑屈になって引きこもりになる方が普通かも知れない

 

「生傷が絶えず、何時も泣かされて帰って来た俺に母は厳しく諭してくれた『魔力の才能が無くとも腕力でも、知力でも良い。努力して結果的に素晴らしい力を得られればそれは何より尊いモノであると』・・・だが、幼かった俺はその言葉を励みにすると同時に不満もあった」

 

「不満・・・ですか?」

 

何と言うかサイラオーグさんには似つかわしくない言葉だな

 

「まぁ単純な話、厳しくされるだけでなく母親に甘えたかったのだ―――今にして思い返すと情けないがな・・・だがある時、偶々夜中に目が覚めてな、母上の部屋から微かに物音がしたのだ。気になって近づくと部屋の中から微かに母上が泣いて謝る声が聞こえてきた―――俺は愕然としたよ。辛い事があっても何時も気丈に振舞う母上が『辛い目に遭わせて、ちゃんと生んで上げられなくて御免なさい』と只管に謝り続けていたのだからな・・・その日から俺は泣く事を止めた。母上の期待に応える為、何より『俺はもう大丈夫』と安心させる為に母上に贈られたこの体を鍛えぬく事を決めたのだ・・・笑うか?」

 

そんな事は無い!・・・ってさっき俺も同じ事聞いちゃったのか

 

「まさか、もしそんな奴が居たらぶん殴りますよ・・・素敵なお母さん何ですね」

 

「ああ、俺の誇りだ・・・フッ、柄にもなく自分語りなどしてしまったな」

 

そう言って自分でも何処か可笑しそうに笑うサイラオーグさん・・・でも確か彼の母親は何だっけ?ずっと起きない病気に罹ってたんだよな?なんか原作ではイッセーの起こした謎の奇跡って事で眠りから覚めてたと思うけど、本当にそうなのかも分からないし何か出来る事とか無いのかな?

 

でも俺が出来るのは仙術で体を診るくらいだ。自己治癒力の底上げとか外傷相手なら兎も角、病気と云われると困ってしまう

 

記憶が確かなら医学の名門であるシトリー領に居るはずだから仙術の治療も既に試してるだろうしな―――仙術使いは少ないけど貴族の伝手なら呼ぶ事くらいは出来たはずだし

 

もしも何とか出来る手段が在るとしたら神滅具(ロンギヌス)幽世の聖杯(セフィロト・グラール)くらいか?・・・まぁ、迷うことなくその案は却下だが

 

それにそんな超絶アイテムがそうゴロゴロしているはずも・・・待てよ?確かアレってあの時説明では・・・いやいやいや!流石に確証も無しに・・・でも提供があの人だからなぁ

 

ええい!『思い立ったが』ってヤツだ、こっちから話を振ってみるか

 

「そうですか、でも公式戦じゃ無いとはいえ初のレーティングゲームで勝利したんです。何かお褒めの言葉でも貰ったんじゃないですか?それとも『もっと精進しなさい』とか?」

 

そう聞いた途端ほんの僅かではあるがサイラオーグさんの気配が揺らいだ・・・御免なさい、俺は今結構卑怯な問い掛けをしてると思います

 

もしかしたら病気に何て罹ってないという淡い期待もあったのだが―――あの様子では多分違うんだろうな

 

サイラオーグさんは目を閉じて重々しく口を開いた

 

「・・・いや、俺はもうここ数年母上と話せてはいない」

 

「サイラオーグ様、その話は・・・」

 

サイラオーグさんが答えるとクイーシャさんが割って入って来た

 

彼女としては何とか話題を逸らしたいのだろう

 

「よい、クイーシャ。リアスの友なら知る機会があっても可笑しくないし、何も後ろめたい事が在る訳でもあるまい?」

 

「はっ、出過ぎた真似を致しました」

 

「そんな事はない、その心遣いには感謝する」

 

・・・き・・・気まずい・・・自分で話題を振っておいて地雷を踏みぬいた気分だ―――実際その通り何だろうけどさ

 

「さて、話の腰を折ってすまなかったな。母上は悪魔特有の『眠りの病』と呼ばれるモノに罹ってしまったのだ。文字通りに只管眠り続ける病で病例も少なく、不治の病とされている・・・方々伝手を辿っているがもしかしたら俺はもう母上とは話せないのかも知れない。だがそれでも俺は立ち止まる訳にはいかないのだ―――悪魔の社会は実力主義と云うが実際には血筋、利権、見栄、嫉妬など様々な理由で位の低い家の者が正しく評価されてないのが現状だ。俺はそれをどうにかしたいと考えている。母上が幼い俺を導いてくれたように、俺もこれからの冥界を担う子供たちが正しく夢を持てる世界を創っていきたいのだ」

 

そう締めくくったサイラオーグさんは全身から覇気が滲み出ている

 

レーティングゲームとしての『王』じゃない。民を第一に考えるこの人には正しく支配者としての『王』のカリスマがあるのだろう・・・低めに見積もっても【カリスマ B】はあるな

 

そんな彼の前に一つの赤い液体の入った小瓶を置いた

 

「サイラオーグさん。いきなりですが此方を試してみる気はありませんか?」

 

「何だそれは?」

 

「とある伝手で手に入れた怪我や万病(・・)にも効くとされる回復薬です―――フェニックスの涙とは似て非なるモノですね。以前俺も使ったので効果は保証します・・・流石に万病に効くというのが何処まで本当かは分からないですけど、体に悪い物ではないので試す価値はあると思います。勿論、事前に分析してもらってからという事にはなるでしょうが」

 

この説明にサイラオーグさんもクイーシャさんもマジマジと赤い液体の入った小瓶(異世界のスッポンの生き血)を見た

 

「良いのか?今言った事が仮に本当だとすれば途轍もなく価値のある物という事になるが」

 

「そりゃあ手元に置いておけば何時か重い病気に罹った時に安心かもしれませんが、そんなの誰にも分からない事ですからね。目の前に困ってる人が居る・・・それが理由じゃ駄目ですか?」

 

「随分とお人好しなんだな、お前は」

 

「別に博愛主義って訳じゃないですよ?『子供たちが正しく夢を持てる世界を創っていきたい』―――そんなカッコイイ事を素で言える貴方になら渡しても良いと思っただけです」

 

コレは俺の本心だ。誰も彼も助けようと思うようなアーシアさん程の優しさは持っていない

 

理由なんて『気に入ったから』で十分だ

 

「分かった、有り難く頂戴しよう。お前の云う通り検証は必要だろうがな・・・後日、謝礼をさせてくれ」

 

「いやいや、謝礼なんてせめて効果が出てからでも・・・」

 

「そんな訳にもいかん。少なくとも怪我は治るのだろう?それだけでもフェニックスの涙ほどの価値が在る―――それに気持ちも大切だ。コレはどうあれお前の善意で贈られた物だ。それに対して『効果が無ければお礼もしない』などと―――そんな不義理な事を俺にさせないでくれ」

 

ああ~、それもそうか。ミルたんに引っ越し祝いに渡された物だから価値という点で感覚が麻痺してたよ・・・そうだよな、普通に考えたらそうなるよな

 

「ああ、でもソレの出所は秘密という事にしてくれませんか?俺もソレを一個しか持ってないですし、ちょっと入手先は秘密なもので・・・」

 

流石に異世界はトップシークレットだし仮に情報が流れたら異世界のスッポンが絶滅するまで乱獲されてしまうからな・・・それ以前に異世界の行き方とか答えられない上にどの異世界かも分からんしな

 

「分かった。決して誰にも喋らんと約束しよう」

 

その言葉を聞き残っていた珈琲を一気に飲み干した

 

「では丁度アザゼルさんも来たみたいなので話はこれで―――そうだ!検証する医者の方には出所は明かせないけど分析して医学に役立てる分には問題ないと伝えておいて貰えますか?」

 

医学の発展自体は良い事だからな

 

将来病気になったらその時はシトリー領でお世話になるかも知れないし

 

「分かった、必ず伝えよう・・・後日こちらから改めて連絡を入れさせてもらおう―――非常に有意義な時間だった。礼を言う」

 

サイラオーグさんが手を差し出してきたので此方も握り返し答える

 

「はい。一日でも早いご回復をお祈り致します」

 

「それは神にか?」

 

「いえ、此処は魔王に祈りましょう」

 

折角神も魔王も実在している世界なのだ。適材適所で祈っても良いでしょう

 

「クックック!神ではなく魔王に祈る人間か・・・お前は面白い奴だな、有間一輝」

 

「節操の無さにおいて、人間の右に出る種族は居ないんですよ?」

 

そう切り返すとまた一段と笑い声を上げ、別れの挨拶をしてからサイラオーグさんは帰って行った

 

何かツボに入ったのかな?

 

「よぉイッキ、こんな所に居たのか―――あの後ろ姿はサイラオーグか?若手の実力者同士が仲良くお茶会ってか?」

 

後ろから声を掛けてきたのはアザゼル先生だ―――気配で分かってはいたけどね

 

「ええ、話していて気持ちのいい人でしたよ。それで何処に行くんですか?」

 

「ああ、こっちだ。着いて来い」

 

そうして案内された先は上役とかが使ってそうな感じの会議室で中に入るとサーゼクスさんが居た・・・マジか、部屋に常備してある感じの結界で気づけなかった

 

アザゼル先生もサーゼクスさんも気配を垂れ流しにしてる訳じゃないからちょっと隠蔽されるだけでも途端に分かりづらくなるんだよな

 

「よく来てくれたねイッキ君。まずは掛けてくれたまえ」

 

サーゼクスさんに促されて席に座り、俺も挨拶をする・・・特に他の人も居ないし、『さん』呼びで良いかな?

 

「お久し振りです、サーゼクスさん。会談の時以来ですね」

 

「そうだね、あの時は本当に助かったよ。覇龍(ジャガーノート・ドライブ)が相手では我らと云えど甚大な被害が出ていただろうからね」

 

「それで、本日の要件は?」

 

「ああ、待ってくれたまえ。実はもう一人呼んでいてね―――そろそろ来る頃だろう」

 

丁度そこで会議室にノックの音が響きサーゼクスさんが許可を出すと「失礼します」とイッセーが入室してきた

 

「あ!サーゼクスさま!それにアザゼル先生にイッキまで!」

 

「急に呼び出してしまってすまないねイッセー君」

 

「よぉーし、これで役者がそろったな。イッセーもまずは座れよ」

 

そうして全員が席に着いたところで早速サーゼクスさんが本題に入った

 

「実は今度、イッセー君を主人公としたヒーロー番組を作ろうと思っていてね。今日はその話し合いをする為に此処に呼ばせてもらったのだよ」

 

「ひ・・・ヒーロー番組~!!?」

 

マジか、確かにイッセーがヒーロー番組をやるのは知ってたけど俺も居たから気付かなかった・・・正直完全に他人事だと思ってたからな

 

「うむ、いきなりこんな事を言われて動揺するのも分かる・・・しかし、コレは冥界の為にも是非とも進めて行きたい企画なのだよ」

 

「前に各地で起きてるテロのせいで情勢不安になってるからお前に明るい話題を提供して欲しいって言ったろ?だがまさか実際のテロの映像を常に使っていく訳にもいかん」

 

そりゃそうだよな。映像の素材集めの為にイッセーを常に戦場に送り込むとか言ったらリアス部長とか一瞬で沸点振り切れるぞ

 

「それで・・・無いなら作ってしまえば良いと?」

 

「その通りだ。今まで冥界では身分関係なく一律に楽しめる娯楽と云えばレーティングゲームくらいしか無かったと云っても良い。だがこの前の和平会談の前に駒王町に遊びに・・・下見に行った時、人間界の様々な娯楽文化に触れたよ―――その中にデパートの屋上で催されていたヒーロー番組のショーが在ってね。息子のミリキャスと同じくらいの年の子たちが瞳を輝かせてヒーローを応援していた。子供の生まれにくい悪魔にとって子供たちというのは本当に大切な宝物なのだよ・・・子供たちの夢の為にこの話、引き受けてもらえないだろうか?」

 

「分かりました。俺なんかが冥界の子供たちに夢を届けられるって言うなら張り切ってやらせて頂きますよ!」

 

イッセーの勢いのよい返事にサーゼクスさんは嬉しそうに目を細めて「有難う」と礼を言った

 

「あの~、そうなると俺はどんな理由で呼ばれたんですか?」

 

俺の疑問に答えたのはアザゼル先生だった

 

「基本は同じだよ。イッセー主役のヒーロー番組にお前にも出演してもらいたい。今まではお前への取材などは他勢力の人間という事で控えられてきたが西日本の妖怪たちとも和平を結んだ今、お前さんの情報も流れ始めている。もっとも、流石に会談から時間が経って熱も冷めてるから話題性はまだ低い方だがな」

 

マジですか。イッセーのインパクト(おっぱいコール)が強すぎて報道がされてないだけだと思ってたよ

 

「この企画は出来るだけ秘密裡に行っていきたいと考えている。他のレギュラーメンバーであるリアスたちグレモリー眷属は魔王の名の下に事後承諾させる事も出来るが流石にキミにまで秘密で勝手にキャラを創ってしまっては西日本から抗議が来てしまうからね・・・それで如何だろうか?この話、引き受けてくれないかい?」

 

成程、俺だけ皆とは立ち位置がちょっと違うから此処に呼ばれたのか

 

それでサーゼクスさんへの答えだが決まっている

 

「分かりました。引き受けましょう」

 

正直言って恥ずかしい気持ちは在るけどあくまでも主役はイッセーらしいし、サイラオーグさんに続いてサーゼクスさんにも『子供たちの夢の為』なんて話を聞いたら断りたくないもんな

 

「決まりだね―――では此処にプロジェクト。おっぱいドラゴン、乳龍帝の設立を宣言する」

 

「へぁあ!!?」

 

「ブッ!」

 

『ち・・・乳龍帝だと~!?おっぱいドラゴンだけでも胸が張り裂けそうだったのに、俺様の赤龍帝の称号にまで浸食してくるなんて、俺は・・・俺は・・・うおぉぉぉぉん!!』

 

魔王の宣言にドラゴンが吼え、一大プロジェクトがここに幕を開けたのだった




今回は黒歌との模擬戦の様子を一度書いてみたかったの書きました
ヒーロー番組の中でイッキがどんなポジションのキャラになるかはまた後で書いて行きます
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