転生特典が自爆技ばかりなんだが?   作:風馬

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今回はどっちかと言えばグレモリー眷属メインですね


第四話 先手、必殺です!

アジュカ・ベルゼブブの転移によってフィールド内に侵入できた俺と黒歌は今現在上空2000メートルくらいから絶賛落下中だ・・・いや確かに転移先はランダムって言ってたけどさ

 

眼下に広がるのは剣山のような尖った岩がそこかしこに見える広大なフィールドだ

 

「・・・この感覚、参曲(まがり)様の修行を思い出すなぁ」

 

思わず参曲(まがり)様に『空を肌で感じて来い』とパンツ一丁で天空高くに放り出されたあの頃を思い出してしまった

 

「あははは、イッキがもし普通の人間だったらこれでお陀仏だったわね。それで白音たちはどの方角に居るか分かるかにゃ?私の探知範囲内には居ないみたいだけど」

 

確かに、俺も黒歌も探知範囲は大雑把に探すだけなら駒王町一つくらいは余裕でカバー出来る。それでも感知できないとは本当に広いフィールドだ・・・本来はどんな内容のゲームをするつもりだったんだろう?―――早速俺もイヅナに憑依して貰ってその繋がりから小猫ちゃんに持たせたイヅナの気配を辿る

 

「ん~、イヅナの気配は向こうの方だな」

 

そういってとある方角を指さすと黒歌がそっちを向いて「ん~?小っちゃく城っぽいのが見えるからアソコなのかにゃ?」と言うが俺の眼には見えなかった。流石に悪魔は視力が良い

 

俺も仙術で空気を捻じ曲げて疑似望遠レンズを作り出して気配のする方を見ると確かに城のようなものが見えた

 

俺も黒歌もかなり高い位置に居るのに米粒のような大きさって事はかなり離れてるな

 

「黒歌、急いで向かおう」

 

「了解にゃ!」

 

俺は仙術で空中を踏みしめ、黒歌も妖術で空を飛び皆の救援に向かう

 

「・・・そう言えば黒歌って悪魔の翼で空飛ばないよな?」

 

「うん?私は悪魔の翼よりも妖怪としての浮遊能力の方が性に合ってるにゃ」

 

「そうなんだ」

 

道中暇なので襲撃を警戒しつつ他愛のない会話をしながらも高速で移動していった

 

 

 

 

[イッセー side]

 

 

アーシアが連れ去られてしまった

 

今日はあのイケ好かないディオドラって野郎とのレーティングゲームで正式にアイツが二度とアーシアに近づかないようにぶん殴ってやろうと思ってたのに、いざゲームのフィールドに跳ぶとゲームのアナウンスは流れず代わりに禍の団(カオス・ブリゲード)の旧魔王派だとかいう奴らに囲まれてしまった

 

そして俺たちの意識がそれた瞬間にアーシアの足元に展開された転移魔法陣で旧魔王派の奴らと一緒に居たディオドラの下に転送されてしまったんだ・・・多分だけど事前に魔法陣を仕込んでいたんだと思う

 

数日ぶりに見たディオドラは急な病に罹っていたという情報は正しかったみたいで目にクマが出来て頬はこけていたがギラギラと欲望に滾った暗い目は健在で余計に不気味に感じられた

 

そしてディオドラはアーシアを連れて転移して行ってしまったが後を追おうにも千は超えてそうな数のテロリストの悪魔たちに囲まれて絶体絶命という時、北欧の主神だとかいう爺さんが朱乃さんのスカートの中を覗き込みながらも強力な結界を展開し俺達を助けてくれた

 

・・・助けてくれた事には感謝するけど登場シーンで台無しだ

 

こんな時でなければ俺のドライグが火を噴いたかもな!

 

『何故俺なのだ?』

 

比喩だよ比喩!俺の心がって意味だよ

 

どうやらその爺さんの話ではこのフィールドそのものが強力な結界で覆われているらしく爺さんくらいしか咄嗟に助けに来れなかったらしい

 

それに各勢力の要人の集まってる観戦席も同じく旧魔王派の襲撃を受けたようだ

 

つまりアーシアは俺達だけで助ける必要があるという事だな

 

オーディンの爺さんは俺達に強力な守護のオーラを纏わせてくれてグングニルとかいう槍を手に圧倒的な力でアーシアが囚われている城までの道を切り開いてくれた

 

そして俺たちが城に辿り着くとディオドラの声が響き渡った

 

≪よく来てくれたね。グレモリー眷属の諸君―――では早速だがゲームをしようか。ご破算になったレーティングゲームの代わりだよ≫

 

コイツ!自分でゲームを壊しておいてよくも勝手な事をいけしゃあしゃあと言ってくれるな!

 

ディオドラの提案を部長は飲んだ・・・アーシアが人質になってる以上下手にあのクソ野郎を刺激するような事は控えた方がいいとの事だった

 

ゲームのルールは一度出した駒は二度と使えないという事。そしてディオドラの下に辿り着く事だ

 

最初の相手は『戦車』2名と『女王』に予め昇格(プロモーション)した『兵士』8名という大盤振る舞いだった。分かっていた事だが公平なゲームなんて欠片もするつもりは無いらしい

 

それに対して部長はゼノヴィアに『戦車』2名の相手を、そして小猫ちゃんとギャスパーに『兵士』の相手を任せた

 

たった二人で実質『女王』8名相手とか大丈夫なのか?とも思ったけど試合が始まる前にギャスパーには俺の血を飲ませて停止世界の邪眼(フォービドウン・バロール・ビュー)で相手の動きを封じ、その間に小猫ちゃんが仙術と妖術を混ぜた毒霧とやらを動けない『兵士』たちに展開して一瞬で勝負がついた

 

小猫ちゃんは近接タイプだけど冥界合宿を経てかなりオールマイティな強さも身に付けたようだ。基本無表情の小猫ちゃんの前に相手の『兵士』たちが泡吹いて倒れて痙攣してる様は言いようのない怖さがあるけどさ

 

そしてゼノヴィアの方も早急に決着はついた

 

デュランダルと俺の貸したアスカロンを2刀流で構え、爆発的な攻撃的なオーラを滾らせた

 

「私は初めてアーシアに出会った時、彼女にとても酷い事を言った。そんな私の事をアーシアは友達だと言ってくれたんだ!アーシアは私の友達だ!親友だ!私は彼女を助けたい!そのための力を私に貸してくれ!デュランダル、そしてアスカロンよ!」

 

2本の聖剣はゼノヴィアの想いとお互いの聖剣のオーラに触発されてどんどんと力を増していき、ゼノヴィアが剣を振ると前面に居た敵が景色ごと吹き飛んでしまった

 

聖剣のオーラは木場の方が上らしいが木場が同じことをやろうとしてもここまでの威力は出ないらしい―――破壊の権化とされるデュランダルそのものの本質(・・)を使いこなす才能はやはりゼノヴィアの方が上みたいだ

 

そのまま城の奥に進むと今度は『女王』と『僧侶』2名が待ち構えていた

 

アガレス家とのゲームを見る限り『女王』も魔力での攻撃を得意とするウィザードタイプのようだから実質ウィザードタイプが3人だ

 

「此処は私と朱乃が行きましょう。残る『騎士』二人程度なら祐斗一人でお釣りがくるわ―――イッセー、ディオドラは貴方に任せるわよ」

 

「「はい、部長!!」」

 

そうだ、俺だけじゃない。眷属を大切にする部長も親友のゼノヴィアも他の皆も心底腹を立ててるんだ!俺が皆の分も含めてぶん殴ってやらないとな!

 

そうして始まったお互いの極大魔力の正面衝突!

 

ジリジリと部長と朱乃さんが押しているので少し時間はかかりそうだけど問題なく勝てそうだな

 

そう思ってると袖の部分を小猫ちゃんが引っ張ってきて俺に耳打ちする

 

「・・・え、マジでそれを言うの?小猫ちゃん?そんな事しなくても勝てそうだけど」

 

「今はアーシア先輩を一刻も早く助ける事を一番に考えなくてはいけません。早くして下さい」

 

「わ・・・分かったよ―――朱乃さ~ん!その人たちを今すぐ倒せたなら今度の日曜にデ・・・デートに行きましょう!」

 

本当にこんなので良いの?小猫ちゃん・・・

 

“カッ!バチバチバチバチバチィィィ!!”

 

って!極大の雷を全身から迸らせている朱乃さんが居るぅぅぅ!?

 

「うふふふふ!イッセー君からのデートのお誘い!・・・だから、あなた方は邪魔ですわ!」

 

膨れ上がった雷光が一瞬で相手の『女王』と『僧侶』達を飲み込み消し飛ばされていった

 

”ゴゴゴゴゴゴゴ!!”

 

「酷いわイッセー!私というものが在りながら朱乃にだけそんな事を言うなんて!」

 

なんか今度は部長が極大の滅びの魔力を滾らせているぅぅぅ!?もう戦いは終わってますよ部長!

 

「あらあら、イッセー君は『私』を指名したのですわよ?もうこれは確定じゃないかしら?」

 

「ふん!高々デート一回の権利であんなに舞い上がる朱乃が初心なだけなんじゃないの?私なんて今まで何度もイッセーに胸を揉まれているわ!」

 

小猫ちゃ~ん!?戦いは確かに直ぐに決着したけど何か別の戦いが始まっちゃったんですけど!?

 

「思ったより薬が効きすぎたみたいです・・・仕方ありません」

 

そう言って再び俺に耳打ちしてくる小猫ちゃん・・・本当に大丈夫それ?また火に油を注ぐ事にならない?

 

「二人とも、早くアーシアを助けに行きましょう!ケンカを止めてくれないと俺、アーシアとデートしちゃいますよ?」

 

ゴメン!アーシア!勝手にデートとか言っちゃって!

 

「うぐ・・・そうね、今はアーシアが最優先よ。朱乃、この話の決着は戦いが終わったら付けましょう」

 

「そうですわね。アーシアちゃんは私にとっても妹のような存在。早く先に進みましょう」

 

良かった!二人の意見も一致したみたいだし再び全員で次を目指して走っていく

 

「うふふ♡イッセー君とのデート♡」

 

「聞こえてるわよ!朱乃!」

 

走るスピードは全く落とさずまたケンカする二人だった・・・波長はピッタリなんだよなこの二人

 

最後に俺達を出迎えたのは『騎士』の二人だった。此奴らを倒せば残るはディオドラのみ!

 

「あなた達で最後ね。『女王』ではなく『騎士』を最後に残すだなんて貴方たちの主は『王』としての采配が未熟なんじゃないかしら?それとも、何か切り札でも在るのかしらね?」

 

「ならば今すぐに見せて差し上げましょう―――我らが今ここに居る理由を!」

 

そうして彼女達二人の『騎士』は同時に羽織っていたフードを脱ぎ捨てた

 

『騎士』という役割に相応しく二人とも武器は剣だった・・・でもこの感覚、それにあの形は!?

 

「我らは元々教会の者だ。そしてコレはその時使っていた天閃の聖剣(エクスカリバー・ ラピッドリィ)模造品(レプリカ)―――ディオドラ様の下僕となる時についでに持ち出してきたのよ」

 

「例え模造品(レプリカ)と言えど悪魔にとって聖剣の一撃は掠っただけでも大ダメージ。加えて私たちがディオドラ様に頂いたのは『騎士』の駒―――速さに速さを加えた私たち二人の連携連続攻撃を無傷でしのげる悪魔なんて居ないわ」

 

フリードの持ってた天閃の聖剣(エクスカリバー・ ラピッドリィ)模造品(レプリカ)!?本物に比べてどれくらい劣ってるのかは判らないけどそれに『騎士』の特性を加える事で圧倒的な速度を実現したのか!!

 

「成程、ディオドラの対悪魔用の切り札があなた達って事ね・・・それで祐斗、イケるわね?それともイッセーの力も要る?」

 

「ご冗談を・・・僕一人で十分です」

 

そうして一人前に出て聖魔剣を構える我らが『騎士』―――そうだよな、今や木場は小猫ちゃんに次ぐ強さを誇るグレモリー眷属のエース。なんの問題も無いよな!

 

「ふん!全身鎧を着こめる赤龍帝が相手では面倒だと思っていたがお前のような奴は我らの聖剣の格好の的にしかならんさ!精々リアス・グレモリーの采配を呪いながら消滅するのだな!!」

 

お互いが聖剣と聖魔剣を構えて正面から対峙し、一拍置いてから3人の姿が掻き消えて次の瞬間にはお互いの立ち位置が背を向けた状態で逆転していた

 

「な・・・馬鹿な」

 

「疾過ぎる・・・見えなかった」

 

“ズシャァ”

 

「覚えておくと良い。どんな攻撃も相手に当たらなければゼロと同じだよ。キミたちにはまだまだ速さが足りていなかったね」

 

ハハハ、あの速度で足りてないって痛烈な皮肉だな

 

彼女達の持っていた疑似エクスカリバーもきっちり叩き折られてるし

 

だけどこれでディオドラの眷属は全員撃破

 

対して此方はかすり傷の一つも負ってない―――待っててくれよアーシア!

 

俺達は城の中心である玉座の間に辿り着いた

 

玉座にはディオドラが不敵な態度で座っているがそれよりもアーシアだ!

 

アーシアはディオドラの上で手足を棘の石像?のような物で拘束されていた

 

それだけじゃなくアーシア目は赤く染まり泣き腫らした後が見える

 

「テメェ!アーシアに何しやがった!?」

 

「クククク!ちょっとアーシアに思い出話を語って上げただけさ―――何なら君たちも見るかい?僕のコレクションに残そうとちゃんと録画してあるんだよ」

 

そういうと俺達とディオドラの間にスクリーンが投射され奴と囚われたアーシアの会話・・・いや、アレはディオドラの一方的な語りが映し出された

 

それを見た俺は怒りで気がどうにかなりそうな感覚に陥った

 

何せアーシアが教会を追放された切っ掛けになったディオドラの傷を治してそれを教会関係者に見つかった事件は、全てアーシアを教会から追放し絶望させた上で自分の手駒にしようとしたという内容だったからだ

 

「あの後、まさか仮にもアーシアが堕天使の組織に身を寄せるとは思わなかったから一度は彼女の足跡を辿れなくなってしまった時は焦ったけど、まさかリアス、キミの眷属になってるとはね」

 

「黙れ」

 

無意識の内に左腕に籠手が装着された

 

「初めは横から掻っ攫われた事に怒りを覚えたけど今では感謝してるんだよ?何しろ君たちと一緒に居る彼女は本当に幸せそうだったからね―――そんな君たちをこの場で殺す事によってアーシアは最っ高の表情で絶望の海に沈んでくれるだろうさ!」

 

「黙れ!」

 

籠手の宝玉が激しく点滅しているがまるで気にならない

 

「アーシアはまだ処女だよね?やっぱり初物が最高だからな・・・でも、必死に赤龍帝の名を呼ぶ彼女を組み伏せて寝取るのも楽しいのかも知れないねぇ―――そうだ!赤龍帝、君だけはすぐに殺さないでギリギリ生かしておいてあげよう!何時殺すかは僕のさじ加減一つ!アーシアはキミの為に僕に必死になって媚を売ってくれると思うと楽しいと思わないかい!」

 

「黙れエェェェェェ!!」

 

『Welsh Dragon Balance Breaker!!』

 

俺の中で溜まった怒りが禁手化(バランス・ブレイク)という形で弾けた

 

こいつはアーシアの優しさを何処までも踏み付けにするつもりだ

 

これほどまでに怒ったのは初めてに違いない―――俺の怒りのオーラが足元の床を砕いていく

 

「あははは!中々のオーラだねぇ!これが赤龍帝か。なら僕も君たちに真の力を見せて上げる事にするよ!」

 

ディオドラは掌に蛇のような紋章の描かれた魔法陣を展開するとそれを握りつぶした

 

次の瞬間ディオドラの魔力が桁違いに跳ね上がる

 

「これがオーフィスの蛇の力!コレが魔王の血統の真の力さ!君みたいな元下等な人間の薄汚いドラゴンなんて一瞬で・・・」

 

“ドゴンッ!!”

 

「ッグッハアァァァ!?」

 

ただ真っ直ぐに殴りつけに行った俺の攻撃を障壁で受け止めようとしたみたいだが、あっけなく障壁は破れさってしまった

 

何だこりゃ?確かに込められた魔力量は部長や朱乃さんよりも上のはずなのに、こんなにも薄っぺらい何も籠ってない(・・・・・)障壁は初めてだ

 

「ふざけるな!僕は上級悪魔だぞ!誰よりも誇り高い魔王の血筋なんだぞ!お前のような下賤な輩に殴られるなんて事が在ってたまるものかぁぁぁ!!」

 

もはや絶叫しながら手元に強力な魔力弾を作り出したディオドラだがまるで脅威を感じない

 

そんなディオドラに俺は普通に歩いて近づいて行く

 

「はっ!漸く諦めたのか!まぁ僕の偉大なる魔力を前にすれば平伏したくなるのも無理はないけどねぇ!・・・でももう遅い!君には高貴なる僕を殴りつけた事を死を持って償って貰わないとねぇ!まったく馬鹿な奴だよキミは!僕に逆らわなければもう少しだけは長生きも出来たって言うのにさぁ!!」

 

「どうした?さっさと撃てよ?」

 

聞いてるのも馬鹿らしくなってきた俺は挑発とも言えない挑発で魔力弾を撃つのを促すと瞬時に悦に浸っていた顔を怒りに代えて魔力弾を撃ちだしてきた

 

「死ねェェェェェエ!!」

 

“ズガァァァン!!”

 

魔力弾が着弾し俺の周囲が煙に包まれる・・・それで俺が死んだと思ったのかまだ晴れてない煙の向こうから奴の笑い声が聞こえる

 

「あははは!馬鹿め!粉々に吹き飛びやがった!さぁ次はキミたちだよリアス!アーシアの心を甚振る為に赤龍帝を生かしておこうと思ってたけど殺しちゃったからね。大人しくしてるならリアス、君だけは半殺しで許して上げるよ。もっとも何時かは殺すけどねぇ!!」

 

もはや俺の方を見ないで部長たちの方向を向いている此奴には後ろで煙が晴れて無傷の俺が居る事に気づいていないのだろう・・・ここまで滑稽だともはやピエロだな

 

いや・・・こんな事を考えたらピエロを生業にしてる人たちに失礼だったな

 

部長たちの呆れてる表情にも気づかずに未だに高笑いを続けているディオドラの肩に手を掛ける

 

「へぁ?・・・ッブっがはぁぁぁ!!?」

 

振り向いた瞬間に全力で顔面に拳を入れる

 

吹き飛ばされたディオドラは壁に激突し殴られた顔を押さえて転がりまわっている・・・こんな無様な姿をさらしてよくもまぁ部長や会長と同じ貴族を名乗れるものだな

 

転がってるディオドラを片手で持ち上げてもう片方の腕で只管腹を殴りつけて血反吐を吐かせていく・・・途中何か色々喚いていたようだがもはや聞こうとも思わない

 

そして殴りつけても痙攣するだけになった所で最後にもう一度渾身の力で顔面を殴り飛ばし壁にめり込ませた

 

「ウチのアーシアを、泣かすんじゃねぇよ!」

 

もはや聞こえてはいないだろうが言葉を突きつける―――仮にも魔王の身内だから此処で問答無用で殺したら問題になるかも知れないから止めは刺さないけど、もしもまた俺たちの前に現れるような事が在ればその時は容赦なく消し飛ばしてやる

 

「アーシア!もう大丈夫だからな。今、そこから降ろしてやるぞ」

 

「はい!信じていましたイッセーさん」

 

だけど俺はすぐに顔を顰める事になる―――アーシアの拘束がどれだけ力を入れてもビクともしないからだ。マジかよ、こっちはドライグの鎧を纏ってるんだぞ?

 

俺の様子に気が付いた部長たちがそれぞれ拘束物に対して攻撃を放つがそちらも傷一つ付かない

 

「これは・・・」

 

すると小猫ちゃんが何かに気づいたみたいだ

 

「小猫。コレが何か分かったの?」

 

「はい。以前和平会談の時に漂ってきたあの霧と同じ気配を感じます」

 

「ってことはもしかしてコレは神滅具(ロンギヌス)なのか!?おいドライグ、同じ神滅具(ロンギヌス)だろ?如何にか出来ないのか?」

 

『無理だな。以前コレと似たようなのを見た事がある・・・恐らくコレは上位神滅具(ロンギヌス)の一つ、絶霧(ディメンション・ロスト)禁手(バランス・ブレイク)だ・・・俺のような中堅神滅具(ロンギヌス)での太刀打ちは難しい』

 

「何だよ、神様何て歯牙にもかけないとか言ってる割に中堅なのか?」

 

『確かに俺も白いのも本来は神以上の力を持っている。神器に秘められた力という意味でなら上位神滅具(ロンギヌス)にも決して引けは取らんさ。だが、宿主の肉体に依存し、多大な負荷を強いる俺や白いのの神器は習熟が困難なのだ・・・自分で言うのもアレだが使い勝手が悪いのさ』

 

「そうなのか・・・でも結局それって俺の力不足って事じゃねぇか!」

 

『まぁそこまで大きな差が在るという訳でも無い・・・せめて何かあと一つ要素が加われば互する事も出来るだろうさ』

 

「後一つ・・・」

 

クソ!こんな時どうすれば良い!?考えろ、俺が何時も壁に行き詰った時は・・・そうだ!イッキにも言われた事じゃねぇか。何時だって俺の可能性をこじ開けてきたのはエロへの熱意だ!!

 

「皆!試したい事が在ります!下がっていて下さい・・・アーシア、俺を信じてくれるか?」

 

「はい、イッセーさんを疑ったりなんてしません!何度でも私は信じます」

 

アーシアが何処までも真っ直ぐな瞳で俺を見つめて来る

 

へへ!俺だって同じだ。何度だってアーシアを助けてやるさ!

 

「高まれ俺の性欲!解き放たれろ俺の煩悩!!洋服崩壊(ドレス・ブレイク)ブーストバージョン!!」

 

イメージするのは生まれたままの姿のアーシア!服も、手足の拘束も何もない無垢な姿を俺の全脳細胞を総動員してイメージする

 

するとついにアーシアを戒めていた拘束が徐々にひび割れていき、アーシアの服と共に粉々に砕け散った・・・フ!例え神滅具(ロンギヌス)が相手だろうと俺の煩悩の前では紙細工さ!

 

裸になったアーシアに朱乃さんが魔力で服を着せてくれた

 

やっとアーシアをこの手に取り戻せたんだ!そう思うと無性に感動してきて思わずアーシアを抱き締める「アーシアァァァ!!」・・・前にゼノヴィアに先を越されてしまった

 

「アーシア!もし君が居なくなってしまったらと思うと私は・・・私はぁぁぁ!」

 

泣いて抱き締めるゼノヴィアをアーシアも抱きしめ返す

 

「私は何処にも行きませんよ?何時だってイッセーさんやゼノヴィアさん、皆さんが守ってくれますから・・・私は本当に幸せ者です」

 

「ああ!当たり前だ!君を見捨てるなんて出来るものか!」

 

よく見るとここに居る皆が大なり小なり涙ぐんでいるのが分かる・・・へへへ!ちょっと俺ももらい泣きしそうだぜ

 

「さぁアーシア、帰りましょうか私たちの家へ」

 

ゼノヴィアから離れたアーシアを今度は部長が抱きしめる

 

「部長さん・・・」

 

「もう!そろそろプライベートではそう呼ぶのは止めなさい・・・私は貴女の事を妹のように思ってるって前にも言ったでしょう?」

 

「はい!リアスお姉様!・・・あ、でもその前に少しだけお祈りさせて下さい」

 

「お祈り?何を祈るんだ?」

 

「ふふふ♪ナイショです」

 

少し気になるけどまぁいっか―――アーシアの事だからとっても優しい願い何だろうし、追及するのは野暮ってもんだよな

 

アーシアは俺達から少しだけ離れた場所で膝を突き神様にお祈りを捧げていく

 

光が降り注いでいるようにさえ見えるアーシアの姿はいっそ神秘的にも見える・・・いや、可笑しいぞ?アーシアを囲う光がドンドン強くなって光の柱と呼べるものになってしまった

 

そして風が吹いたかと思うと直ぐに光が弱まっていきそこには誰も居なかった・・・アーシア?

 

「アーシア!何処に行ったんだよ、アーシアァァァ!!?」

 

この状況でアーシアが居なくなったって事はまさかまた俺たちはアーシアを目の前で連れ去られてしまったっていうのか?

 

「イッセー先輩、落ち着いて下さい」

 

「小猫ちゃん!だってアーシアが!!」

 

何で小猫ちゃんはそんなに落ち着いてるんだよ!?

 

「あ・・・あの、イッセーさん?私は此処ですよ?」

 

・・・へ?

 

俺だけじゃなく皆が声のした方を向くとイッキに抱き抱えられたアーシアがそこに居た

 

もしかして俺、傍から見たら凄くマヌケな感じに叫んじゃってた?

 

俺は困惑しながらも取り敢えずアーシアが無事な事に胸を撫で下ろしたのだった

 

 

[イッセー side out]

 

 

 

 

 

黒歌と一緒に城まであと少しといった所で俺は空気の層を捻じ曲げた望遠レンズでイッセー達の姿を補足していた・・・既に戦闘の気は収まっていたのでもう一刻の猶予も無いと思ったからだ

 

そして悪い予想は当たるものなのかアーシアさんが祈りを捧げ、その周囲に不自然に光が舞っている様子が見える―――瞬時に筋肉のリミッターを解除して全力の闘気を右足に集中させ、一歩でアーシアさんをその場から離脱させた

 

全力で動きつつ彼女を繊細に掬い上げるのは冷や汗を掻いたが・・・下手こいてたらアーシアさんが「ぐえぇ!」とか言ってたかも知れないし、そんな誰も得しない案件はゴメンだよ

 

グレモリー眷属の皆は俺とアーシアさんが移動したのが見えなかったみたいで必死にさっきまで彼女が居た場所に声を掛けている

 

動揺してないのは多分少し前から俺と黒歌が近づいてるのを感知してた小猫ちゃんくらいだ

 

そうしてまだ状況をちゃんと掴めてなかったアーシアさんが皆に声を掛けて無事を伝える

 

「アーシア!何が起こったのかと思ったわ!イッキが助けてくれたのね・・・でも、どうしてイッキが此処に居るの?」

 

「ああ、あのオーディンの爺さんが言うには救援に来れたのは爺さんだけだって・・・」

 

「それは狙ってあの場に転移出来たのがオーディン様だけって意味だよ。俺と黒歌はアジュカ様の力でフィールド内自体にはすぐに入ったんだ・・・もっとも、かなり遠くに転移したからギリギリだったみたいだけどな。それより皆気を引き締めろよ」

 

「ええ、まだ終わってないにゃん」

 

追い付いた黒歌も皆に警戒を促す・・・まだアーシアさんを狙った輩が居るはずだと皆も気づきそれぞれが臨戦態勢に入る

 

≪ふん!下等な人間が偉大なる魔王の血筋たる俺様の手を煩わせようとはな。まぁいい、この俺が手ずから皆殺しにしてくれよう≫

 

空間に声が響き渡り玉座の上空に転移魔法陣が展開され鎧を着た男が天から降りて来るように足元からゆっくりとその姿を現していく・・・ので、下半身が出た辺りで即座に奴の後ろにジャンプして近づき鎧の膝の裏の関節部分を神器で切り飛ばした

 

「ぐおおおおおおおおおおお!!?」

 

膝から下を切り落とされた激痛に絶叫を上げながら浮遊も維持できなくなった男は床に顔面から落ち、俺はその後頭部を全力で踏みつける

 

・・・此奴は敵の密集する中で態々声を掛けてから目立つ場所からゆっくりと、感知タイプでも無ければ状況の把握も難しいだろうに足元の方から転移してくるとか馬鹿なのか?

 

「う゛・・・う゛ぉぉ・・・」

 

アレ?全力で攻撃したのにまだ意識があるのか・・・ああ、そう云えばオーフィスの蛇で能力だけなら魔王級なんだっけ?

 

「噴!」

 

“ズシンッ!!”

 

半ば床にめり込んでいた頭を再度踏みつける・・・一応幹部的な立ち位置何だし生かして捕らえればいい感じに情報を搾り取れるはずだ。でも下手な真似をされても面倒だし仙術で頭の中をかき乱しながら何度もストンピングする

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!」

 

“ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!”

 

はっはぁぁぁ!どうした?真の魔王様よぉ!『無駄無駄無駄無駄ァ!』って言ってみろよ!!

 

途中から何か楽しくなってきた俺は按摩器のごとく連続で踏みつぶしハイになっていると床が抜けてしまった・・・すこしやり過ぎたか?

 

まぁでもギリギリ死んではいないみたいだから良しとしようか

 

上の階に居た皆も悪魔の翼で下に降りてきたので倒れてる男の髪の毛を掴んで顔を上げさせる

 

「あの、リアス部長。コイツが誰とか分かりますか?魔力は高いんで生け捕りにして魔王様に突き出した方が良いと思うんですけど」

 

「え・・・ええ、顔面が潰れ過ぎて自信が持てないけど資料で見たシャルバ・ベルゼブブ?だと思うわ?現魔王政権に叛意があって禍の団(カオス・ブリゲード)の旧魔王派のリーダー格の一人だったはずよ」

 

・・・あの、リアス部長?それに皆も何でそんなに距離を取ってるんですか?ゼノヴィアだけは「うんうん!やはり初手で勝負を決する事が出来るのが一番だな!」と感心してくれてるけどさ

 

ちょっと納得いかない感じがしながらも気絶した上に魔力も当分煉れないシャルバを朱乃さんが魔力で拘束していくのを眺めているのだった




はい!という訳で前回の最後に予告したようにVSシャルバでした
いや~、全力を賭した熱い戦いでしたねww

・・・冗談はさておきシャルバなんて小物相手にイッキが特典使うような戦いを演じるのも何か違うと思ったのでこんな感じになりました

一章ごとに特典で切り抜けるなんてしてたら直ぐにネタ切れになりますからねwwあと1~2話投稿して次のラグナロクの章では流石にそういう訳にもいかないでしょうけどww

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