既に【
しかし、ただ闇雲に『報復』の能力を発動させても意味がない。相手は依然として空を飛んでいるのだから、今の自分の傷を相手に『写した』としてもそれでは落とすことはできないのだ―――――自分が『翼を引き裂かれる』的なダメージを受けていれば話は別だったが、あいにくと人間として生まれた身だ・・・というかこちらも空を飛べていればここまで追い込まれていない!「空を飛んでる奴はそれだけでほとんど最強」とは誰のセリフだったか・・・
こちらは左腕はほとんど動かず、移動は『できなくはない』というレベルだ。あいつに届く攻撃といったら
しかし、今ならば真正面から相手のスキを作り出すことができる。目には目を歯には歯を!たっぷりと『報復』してやる!
一つ一つではダメならば組み合わせればいい!!
立ち上がり、全身を強化しながら右腕を引き絞る。それを見た奴はボロボロの俺を嘲る
「ふん、苦し紛れにその無様な剣でも投げつけるのか?そんなもので俺様をどうにか出来るとでも本気で思っているのか?どうやら頭の巡りまで下等だったようだな」
それを聞いた俺は痛みを我慢して如何にも自信があるかのような笑みを浮かべる
「そうでもないさ。お前にはこの神器の能力をまだ見せていなかったよな?いくぞ、この一撃は
そう言いながら全身に怪しい青白い紋様を浮かび上がらせた
分かりやすいハッタリだがこれで相手が回避よりも迎撃を意識してくれたらいい。動く的に当てられる自信なんて持ち合わせていないからな・・・それに『【
「逆しまに死ね!【
紋様を浮かび上がらせた俺と投げられた
特に左肩は穴が空いてるしな、アホみたいに痛いのは
「ぐぅぅぅぅっ!!」
奴は痛みで呻いているが既に投げられた
即死だったのだろう。堕天使は地面に落ちてピクリとも動かない
一撃で死ぬとは限らなかったので息つく間もなく
「・・・っぐ!・・・はぁ・・はぁ・・・さっさとここを離れないと・・・」
“パアァァァッ!!”
そうして踵を返そうとした時、斃れた堕天使のすぐ横に魔法陣のようなものが展開され、そこに別の男が現れた
「突然気配が消えたので何事かと思ってきてみれば、よもや人間、それも子供などに殺されているとはな。堕天使の面汚しが」
クソッ!新手が来るのが早すぎだろう!?今のは転移魔法陣か!!この世界の人外は空を飛ぶのとかテレポートとかよく言われる『使えたら最強』系の力をポンポン気軽に使いやがって!!!
内心毒づいていると新手の堕天使の耳元に小さな魔法陣が現れた。そしてこちらに視線を向けながら喋り始める
≪ああ、おまえか。どうやらあのバカは神器持ちの人間に殺されたようだ≫
≪・・・・・・・・・≫
≪いや、お前は来なくてもいい、この人間は既に満身創痍だ。すぐに殺して後始末をしたらそちらに合流しよう≫
≪・・・・・・・・・≫
≪ではな≫
「さて、後始末が面倒なのだ。さっさと殺すとしよう。神器持ちを相手に慢心してこのバカの二の舞などゴメンだからな」
来るんだったら二人まとめて来いよ!そうしたら二人まとめて【一刀修羅】で倒せるのに!!
「もう一人も呼んだらどうですか?どうせなら二人まとめて潰してやりますよ?」
「立っているのがやっとの貴様にか?その必要はない。先も言った通り、さっさと死ね!」
そう言って手元に光の槍を生み出しつつ投げつけてきた―――考えるヒマも無しかよ!このままじゃ死ぬ!!
「【一刀修羅!!】」
瞬間、世界がスローモーションと化した。ただ脳のリミッターを外した時とは比べ物にならないレベルで全てがゆっくりに見える
右足にはいまいち力が入らないが左足は健在だ。そして文字通り一足飛びで光の槍の真横を通過しながら堕天使に接近しその首を半ば切断した
「・・・ごぼっ」
堕天使は少しだけ声のような音が漏れて首から血を吹き出して倒れた
そしてそのまま俺は剣を構えて周囲を窺う。二人目のこいつは一人目を倒してすぐに現れたのだ。【一刀修羅】の効力がまだ残っているうちにまた転移して来たらあちらがこちらを認識する前にぶった切ってやる!!
だが意気込み虚しく数十秒経っても誰も現れなかった。警戒しているのか?ならばさっさとこの場を去ろう
こいつらの張っていた結界は消えているようだから堕天使の死体二人分は見つかったら騒ぎになるだろうがどっかの勢力が後始末してくれるだろう。記憶改ざんという手もあるようだし、今の俺に出来ることも無いしな
そうして足を引きずりながらもその場から離れようとしたら丁度【一刀修羅】の効力が切れてしまい、能力の反動で一気に体が鉛のように重たくなる
怪我も相まって右足なんて足かせ鉄球でも付いているかのようだ。そのせいで足がもつれて倒れてしまった
「ぐっ!」
倒れている場合ではない。今はとにかくこの場から距離を取らなければ!
しかし、やっぱりこの世界はモブには優しくないようだ
「まったく、二人とも殺られてるじゃない。これだから男どもは口先ばかりで役に立たないのよ」
今度は女性の堕天使がグラウンドの入り口から歩いて入ってきた
二人目がすぐに死んだから距離をとって転移して様子を見つつこっちに来たってことか!
変に頭回すんじゃねぇよ畜生!慢心してさっさと来ればよかったのに!
「と言っても完全に役立たずのまま死んだ訳でもなさそうね。ふふふっ♪ボーヤ、お姉さんが相手をするまでもなくもう足腰立たなくなっているようね。すでに蟲の息じゃない」
そのままこちらに近づいてくる。そして光の槍を出して俺の首に押し当ててきた
「言い残す言葉はあるかしら?」
それに対して俺は口の端を無理やり引き上げて笑みを浮かべる
「ああ、あんた達3人ともなんだかんだで慢心してくれてありがとう。ここまで近づいてくれるとは思わなかったよ」
そう言った瞬間そいつは顔色を変えてすぐに槍を振りかぶり・・・
「【じばく】」
瞬間、ものすごい轟音と衝撃が全身を叩いた
「・・・・・カフっ!」
耳がキーンとなってうまく聞こえないし、全身をデカいハンマーでぶっ叩かれたように痛い。衝撃が体の内側に響いてる感じだ。骨も折れているか最低ヒビくらいは入っているんじゃないか?
砂埃が舞うなか周囲を見渡してみると自分を中心に半径15から20mほどのクレーターができていた
「・・・おおぅ」
流石は【じばく】、一瞬で全てを使い果たす威力200%はダテではなかったようだ
あの女堕天使は・・・仙術もまともに発動できない今確認は取れないが流石に倒せただろう―――と云うかそうでなくては困る。具体的に言えば死ぬ
終わった・・・クレーターの中心でヤムチャのごとく倒れているのを他人に見つかったら確実に面倒になると思うがもう動けない
考えるのも億劫になってそのまま意識を落としそうになったとき声が聞こえてきた
「クソが!『這いつくばってる人間1人だけだからアンタ達は後始末の準備をしていなさい』とかいって出て行った上にあっさり殺されやがって!」
「お前ら、取り囲め!クレーターの内側には入るなよ!死にかけだからって油断するな。光銃の一斉射撃で始末しろ!!」
・・・クソが!はこっちのセリフだ!!目も霞んでいるけど黒い服を着た奴らが10人くらいは見える。はぐれエクソシストか!!
畜生!実戦経験の無さがどこまでも足を引っ張ってくれるな!『人外』が3人だけだからって『敵』が3人だけとは限らないってのに!!
・・・あぁ、クソッ
・・・・ここで終わりか
・・・・・もう打つ手がない
でも、だからって死にたくはない。悪あがきですらないが、もしも望みが叶うなら・・・
「・・・助けて」
「ミルキィィィィィィィィ・サンダァァァァァァァァァクラッシャァァァァァァァァァァッッーー!!」
気絶する寸前、なにか聞こえた気がした
最初は堕天使倒して終わりのつもりだったのに気が付いたらミルたんぶち込んでました。