転生特典が自爆技ばかりなんだが?   作:風馬

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プリズマイリヤの新映画来ましたね!


第五話 色々、準備中です!

「むにゃむにゃ・・・タンニーンは何時も怒ってるなぁ・・・それで、ダディとワンワンと、ひょっとしてスレイプニル・・・もう『スー』でいいや、スーの事を聞きたいのかい?」

 

あれから爆音で起きたと言ってもやはり半ば眠ったままのミドガルズオルムはそれでも会話自体は出来るようになった・・・というか『スー』なんだ。いやまぁワンワンと同じようにまさか『ブヒヒィィィン』なんて呼ぶ訳にもいかないのも分かるけど

 

「ああ、今回ロキと敵対する事になってな。ミドガルズオルム、お前さんは眠ってたいんだろう?もしもロキが終末を招く事があればお前さんも働かなくちゃいけなくなるぜ?」

 

アザゼル先生が『ロキを放置すると仕事が舞い込むぞ』と言うと面倒くさそうな顔をした

 

「ああ~、それは嫌だなぁ・・・何時か来る時が在ったとしても出来れば先延ばしにしたいや。働きたくないしね。あ、でもぉ、その前に一つ聞かせてよタンニーン」

 

「何だ?」

 

「ドライグとアルビオンは戦わないの?」

 

ミドガルズオルムはイッセーとヴァーリに視線を向ける

 

「ああ、今回はロキ達を倒すのが先決だからな。そういうのはまた今度だ」

 

「へぇ、『敵の敵は味方』って云うのも二天龍には当てはまらない事だと思ってたよ」

 

「今代の二天龍の宿主はどちらも変わり種らしくてな」

 

「ふ~ん。なら早速だけどまず一番厄介なのはワンワンだろうねぇ、牙で噛まれたら大抵死んじゃうし。でも弱点は在るんだぁ。魔法の鎖、グレイプニルなら動きを封じられるはずだよぉ」

 

かなり重要な事を喋ってるはずなのにミドガルズオルムの間延びした声とワンワンとかいう名称のせいでイマイチ緊張が削がれてしまうな

 

「そいつはもう試したらしい。日本に向かおうとするフェンリルをグレイプニルで縛り付けようとしたみたいだが、引きちぎられたようでな・・・だからこそお前さんに更なる秘策が無いか聞くために呼んだんだよ」

 

アザゼル先生が『もう試した』と言うとみミドガルズオルムは首を"コテンッ"と傾けた・・・まぁあの巨体なら実際は"ズシンッ!!"だったんだろうけど

 

「ん~?ダディったらワンワンを強化したのかな?ならこっちもグレイプニルを強化すれば良いと思うよ~?確か秘境に住むダークエルフの長老がドワーフの魔法の品を強化する術を知ってたはずだからね」

 

「なら、アルビオンの神器に詳しい場所のデータを送ってくれないか?ドライグの宿主は頭が残念だからな。座標を送られても理解出来んだろう」

 

「ヒデェぞ先生!仮にもそれが教師が生徒に掛ける言葉かよ!?」

 

「だったらもっと地理のテストで良い点取れよ。1学期のテストは見させてもらったがお前だけだぞ?オカルト研究部で平均点以下を取ったのは―――赤点よりはマシだがな」

 

イッセーの抗議の声は無常な現実の言葉に押し潰された

 

まぁでも駒王学園はリアス部長達が通ってる事からも分かるように成績は良い奴らが多いから平均点やテストの難易度もそれに釣られて高めなんだけどな

 

それに悪魔に為る前のイッセーは女子の比率の高い駒王学園に入った時点で勉強については目的達成してたからやる気は無かったみたいだけどオカルト研究部に入ってからはコツコツと勉強し始めたみたいだがな・・・二大お姉様の監視という名の家庭教師が付いてるから今後のテストで下手な点数取れないって嘆いていたし

 

そうしてミドガルズオルムがヴァーリの神器に座標を送り、ダークエルフ達の住んでいる場所が判明した時点で次の話題に移る

 

「ダディとスーか~。あの二人は明確な弱点とまで言えるのは無いんだよね~。強さはそこそこだけどタフだしね。スーとか戦場を駆け回る事を前提にダディが創ったから多分タフさだけならワンワンに近いんじゃない?ダディならミョルニルの一撃なら防御を貫いて倒せると思うけどスーは一撃だと難しいかもね~」

 

マジか!耐久力フェンリル並みとかって・・・いやでも昨日の戦闘でも皆の一斉攻撃を自分から当たりに行って防いでたからな―――神々の黄昏(ラグナロク)の戦場を駆け回るには必要な能力なのかもな

 

「ふーむ。雷神トールの槌、ミョルニルか・・・だが幾ら非常時とは云え神々の武器をそう簡単に貸し出してくれるかどうか」

 

悩むアザゼル先生にミドガルズオルムは代替案を出してくれた

 

「それならさっきのドワーフとダークエルフに頼んでみなよ~。確かミョルニルのレプリカを持っていたはずだからね~。本物を借りるよりは簡単なんじゃないかな~?」

 

「成程、だがロキにしろスレイプニルにしろミョルニルをただでは喰らってくれないだろうから基本は普通に戦って足を止めた所にぶち当てるしかないか。まぁスレイプニルは操られてるからロキさえ先に倒せれば止まってくれるかも知れんが、当てるチャンスが在れば狙っていくべきだろう」

 

「ダディとワンワンとスーについて僕が知ってるのはこれ位かな~。偶のおしゃべりも楽しかったけど眠くなってきちゃったし、もうイイかな~?」

 

そう言って15m級のドラゴンのタンニーンさんも一飲みにできそうな大きな欠伸をしたミドガルズオルムは徐々に輪郭がぼやけていく

 

「ああ、色々助かったよミドガルズオルム」

 

「うん。じゃ~ね~」

 

アザゼル先生の労いの言葉を受けてミドガルズオルムはそのまま消えていった

 

「何て言うか、変なドラゴンでしたね。俺はてっきり龍王ってのは皆多かれ少なかれタンニーンのおっさんみたいに王様然とした感じだと思ってました」

 

イッセーはタンニーンさんとミドガルズオルムを比べて龍王のイメージが崩れたらしい

 

確かに威厳の欠片も無かったからな

 

「ああ、最初に出会ったのがタンニーンじゃそう思うのも無理は無いな・・・龍王ってのは支配者と言うよりは強さとしての称号の意味合いが強いからタンニーン以外でそういったカリスマが在りそうなのはティアマットくらいか?」

 

「そうだな。あいつは一人で気ままにやる方が性に合ってるようだが、何方かと云えば根は真面目だから案外合っているかも知れん」

 

文句を言いつつ任された仕事はキッチリやるタイプ・・・みたいな?

 

「さて、話し合いを続けたい所ではあるが先ずはオーディンの爺さんにミョルニルのレプリカを貸してもらえるのかどうかを聞かにゃならん。だが、基本はフェンリルをグレイプニルで拘束してロキとスレイプニルを牽制しつつ全員で袋叩きが第一目標になる。神をも喰い殺す牙さえ無ければ最悪は回避できるからな」

 

そう言い残してアザゼル先生はオーディンの居る場所に向かっていった

 

どうやら北欧も神たるロキが日本にフェンリルまで引き連れて攻め入った事が大問題となっているようでオーディンも色々と指示を出したりしているらしい

 

少し待っているとアザゼル先生から通信でミョルニル・レプリカは何とか借りれそうだが届くのは早くても明日になるので一時解散の旨が伝えられた

 

 

 

 

 

翌日、再びイッセーの家に皆が集まっている

 

昨日と違うのはロスヴァイセさんが居て、代わりにオーディンの護衛役としてバラキエルさんがこの場に居ない事くらいだ

 

当のオーディンは日本の神々との会談の警備について向こう側と意見を交わしているらしい

 

神をも砕く牙が殺意満々で会談を襲ってきますなんて日本の神々からしたら冗談じゃないからね・・・色々と譲歩案とか出しているのだろう

 

「オーディンの爺さんからプレゼントだとよ・・・ったく、あのクソ爺マジでコレの存在を隠してやがった。秘密兵器にしたって物騒過ぎるぜ」

 

アザゼル先生が不機嫌そうな顔を隠しもせずに机の上に装飾の施されたハンマーを置く

 

「コレがそのミョルニルってヤツなんですか?」

 

「レプリカだけどな。それでも本物に近い力を持っているはずだ。そいつには神の雷の力が宿ってるのさ。ミョルニルを真面に受けられる奴なんぞ神々にだって殆ど居ないだろうさ」

 

イッセーの質問にアザゼル先生が答える

 

「オーディンの爺さんはそいつをイッセー、お前に預けると言っている。既にバラキエルとこっちのヴァルキリーの姉ちゃんで悪魔でも扱えるように一時的に術式を変更しておいた」

 

「お・・・俺ですか!?何で俺が!?」

 

超絶兵器を預けられると聞いたイッセーが狼狽える

 

「何度も言うようだがそいつはレプリカだ。大丈夫だとは思うが、万が一出力が足りませんでしたなんて事態も考えれば赤龍帝の譲渡(ギフト)の力で威力を上乗せできるお前が持つのが一番確実だからだよ―――ほれ、取り敢えず持ってみろ」

 

アザゼル先生に促されて日曜大工に使うくらいの大きさのミョルニルを手に取るイッセー

 

「オーラを流してみろ」

 

「は・・・はい!」

 

”カッ!!”

 

イッセーがミョルニルに気合を入れてオーラを流した瞬間、ギャグマンガにでも出て来そうなイッセーの身の丈よりも一回りは大きいハンマーへと変わって先端部分を床に落としてしまった

 

「うお!重てぇ!何だコレ!?」

 

イッセーがミョルニルを何とかして持ち上げようと顔を真っ赤にしながら踏ん張っている姿を見てアザゼル先生とロスヴァイセさんが溜息をつく

 

「はぁ~、やっぱりこうなったか」

 

「そうですね。予想はしていましたが」

 

「ど・・・如何いう事ですか?」

 

イッセーが二人の態度に困惑しながら理由を聞く

 

「ミョルニルは元来心の清い者にしか扱えない代物と云われているんだ・・・イッセー、お前・・・スケベだろ?煩悩塗れだろ?エロいだろ?おっぱいドラゴンだろ?もう役満だよ」

 

「ええ!・・・でもそれじゃあコレどうしろって言うんですか!?て言うかそもそも重くて持つことも出来ないんですけど!?」

 

「赤龍帝の鎧を身に纏えば力づくだが持つ事は出来るだろう。雷に関しちゃ譲渡(ギフト)の力を流し込め、多分イケるはずだ―――お前さんはアスカロンだって使っているだろう?」

 

「そうか!聖剣使いじゃない俺はアスカロンの聖なるオーラを増大させて振るってるから!」

 

一瞬どうすれば良いのかといった感じだったイッセーも既に使っているアスカロンと同じ要領で多分何とかなるだろうと聞かされて一先ずは安心したようだ

 

「でもイッセー、そのハンマーって滅茶苦茶重いんだろ?それを当てようとするならどうにかロキの動きを封じてからじゃないとダメなんじゃないか?多分避けられるぞ?」

 

「あ~、そうかもな。まぁ取り敢えずロキとの戦いが始まったら鎧を纏った状態でどれだけ動けるか試しに一発振るってみるよ」

 

一撃で倒せればそれに越したことは無いからな・・・無理だろうけど

 

「なら次は誰が誰の相手を担当するかだな・・・ロキ対策のミョルニルを持つイッセーはロキで良いとして、折角だから二天龍はセットで戦ってみるか?歴史の1ページに刻まれるぜ?」

 

アザゼル先生が何処か面白がるように提案するとヴァーリも口元に薄く笑みを浮かべる

 

「ふっ、確かにそれは面白そうだ。では俺は兵藤一誠とタッグを組むとしよう。ロキを抑えるだけなら問題ないだろうからな・・・アルビオンも構わないか?」

 

ヴァーリが一番因縁のあるアルビオンに意見を求める

 

『俺様は誇り高き白龍皇だ。乳龍帝などと組む気は無い!!』

 

返って来たのは明確な拒絶の意思でこれにはドライグも慌て始める

 

『ま・・・まてアルビオン!乳龍帝はあくまでも宿主の兵藤一誠の称号であって赤龍帝たる俺様には関係の無い事だ!俺様自身はおっぱいになぞ興味は無い!!』

 

『黙れ赤いの!貴様が宿主を甘やかすからそう成ったのだろう!?聞いたぞ!そこの宿主は日常生活から『おっぱい、おっぱい』と人目も憚らずに連呼する変態だとな!』

 

そうか、イッセーが日常でも変態なのは裏の世界でも広まっているのか・・・『おっぱいドラゴン』な時点で今更かもしれないが

 

『ぐぅぅぅ!仕方ないだろう!俺様の意識が目覚めたのは半年ほど前でその時には既に相棒は変態として完成していたのだからな!もはや手遅れだったのだ!一番最初に意識が目覚めた時に聞こえてきたのが『輝けおっぱい』だった俺様の気持ちがお前に分かると言うのか白いの!?最初は本当に混乱したのだぞ!!』

 

そうだったのか、ある意味で言えばドライグもおっぱいで覚醒したんだな・・・目覚ましアラーム的な意味で

 

『そんな気持ち知りたくもないわ!テレビで宿敵を模した『おっぱいドラゴン』なるものを目にしてから何時か此方に飛び火するのではないかと気が気でないのだぞ!』

 

『俺様の方が辛いわ白いの!こっちは実際に呼ばれているのだぞ!?相棒も事あるごとに女の乳房でパワーアップを果たすばかりでまともな成長をしてくれないし、一体何故こんな事になったのだ!う・・・うぉ・・・・うぉぉぉぉぉぉおん!!』

 

『泣くな赤いの!我らは神すらも恐れさせた二天龍だぞ。此方まで悲しくなるではないか!ぐすっ、ひっく、うぐぅぅぅぅぅぅう!!』

 

ドライグが溜まっていた思いの丈を吐き出していたら堪え切れなくなったのか号泣し始め、宿敵のガチ泣きにアルビオンも嗚咽を漏らす・・・ガチ泣き一歩手前だからまだ傷は浅いか?

 

「・・・・・兵藤一誠。こんな時はどうやって慰めるべきだろうか?」

 

「御免なさいぃぃ!!そうですよ!どうせ全部『おっぱいドラゴン』が悪いんですよぉぉ!」

 

イッセーがドライグとアルビオンに平謝りして二天龍が泣き止むまで会議は一時中断した

 

 

 

 

 

暫くして2匹が一先ず落ち着いて来たので会議が再開した

 

「よ~し、ちょっと脇道逸れたがロキの相手はイッセーとヴァーリが務める。んで、残るフェンリルとスレイプニルだな。何か意見はあるか?」

 

アザゼル先生としては昨日語ったようにフェンリルを捕らえてその間にロキとスレイプニルを引き離して一点集中攻撃で撃破を旨とするつもりなのだろうが、恐らく追加で増援が来るから出来ればスレイプニルだけでも倒しておきたいんだよな・・・とはいえ耐久値とスピードにステータス全振りしてるスレイプニルを短時間で倒すにはミョルニル級の攻撃は必要だろうし―――まぁ持ってなければそれでも良いか

 

「じゃあ俺から一つ。この中で魔法に詳しい人って居ますか?」

 

「はい。それでしたら私が北欧式の魔術で宜しければそれなりに収めていますが・・・何かお聞きしたいことでも?」

 

「はい、上手くいけば操られているだけのスレイプニルなら一撃で倒せるかなと思うんですけど、こう云う事って魔法で出来ますか?」

 

ロスヴァイセさんに必要とする魔法とその活用方法を話す

 

聞いてる分だと魔法ではなく魔力だと少し難しそうだからな・・・スレイプニル相手だと特に

 

「成程、タイミングがシビアですが確かにそれならスレイプニルも倒せるでしょう・・・しかし、操られているだけと自分で言いつつ容赦ないですね」

 

そこはアーシアさんに拘束した後で最低限の治療をして貰えば問題ないだろう

 

仮にも神馬だから即死はしないと思うしな

 

「コイツが敵対者に容赦ないのは今に始まった事じゃ無いだろう・・・だがロスヴァイセ、お前さん此奴の作戦を上手く実行できるのか?」

 

確かに、失敗すれば二度と使えない作戦だしな・・・作戦なんて大抵そんなもんか

 

「そう言う事なら黒歌のサポートが在ればイケるんじゃないかな?」

 

黒歌の方を向いて確認すると了承の意が返って来た

 

「そうねぇ、どの道そこのヴァルキリーを守る役も必要になるし―――ついでに頭の中も弄って上げるにゃん♪」

 

「こ・・・恐い表現しないで下さい!大丈夫ですよね!?変な術式仕込んだりしませんよね!?」

 

黒歌の揶揄いにちょっと涙目になっているロスヴァイセさんを余所にアザゼル先生が締めくくる

 

「よ~し、大体決まったな。ロキはイッセーとヴァーリ、スレイプニルはイッキと黒歌にこのヴァルキリーの姉ちゃん、残りがグレイプニルで拘束したフェンリルの相手だ―――フェンリルを倒したら二手に分かれて加勢に入れ。それと会場をもぬけの殻にする訳にもいかんからな、シトリー眷属はディフェンスに回れ、いいな?」

 

『はい!』

 

ヴァーリチームとかを除き皆で返事をする

 

「ああ、そうだサジ。今回の戦いでお前の力が役に立つかも知れん。・・・ソーナ、此奴を少し借りて良いか?神の子を見張る者(グリゴリ)で面白いデータが出ていてな、上手くいけば此奴の大幅なパワーアップが見込めるぞ?」

 

「それは構いませんが、具体的にどんな事をするのですか?」

 

アザゼル先生の提案にソーナ会長が質問して先生は愉快そうに答える

 

「そうだな。まず最初に磔にして鉄球、次にドリルとノコギリで最後に重しを付けた上で水の中に沈める所からだな。時間が無いからフルコースは無理だが、まぁ何とかなるだろう」

 

「ならないっスよ!?それがどうして強さに繋がるって言うんですか!?」

 

アザゼル先生の神の子を見張る者(グリゴリ)でのスケジュールの一部を聞いて堪らず抗議を入れるサジ。しかしアザゼル先生は"チッチッチ!"と人差し指を左右に振りながら否定する

 

「今のは神器の力を引き上げる由緒正しい訓練方法だ!神の子を見張る者(グリゴリ)の算出した確固たる裏付けのあるデータだぞ?」

 

「間違ってますって!俺は研究者じゃないけどその実験結果は絶対に間違ってるってハッキリと云えますよ!?会長もそんな問題だらけの場所に俺を送り込んだりしませんよね!?」

 

神の子を見張る者(グリゴリ)の研究データは当てにならないとソーナ会長に何とか助けを求めようとするサジだが意外な所から声が聞こえてきた

 

「ふむ、懐かしいな。俺も鉄球を受けさせられそうになったりしたものだ・・・あの時、迫りくる鉄球を『半減』で無効化しなければキツイ一撃を貰っていた所だ」

 

「あ~、お前があの遠距離半減技を覚えたのってあの時だったよな。でも、強くはなったろ?」

 

マジ!?ヴァーリが次元を歪ます『Half Dimension』を覚えたのって鉄球に打たれたくなかったからなの!?いやまぁ、巨大鉄球が迫って来たら誰だって必死にもなるだろうけど!!

 

「聞きましたねサジ?あの白龍皇をすら新たな高みへ導いた特訓ならば受けない理由はありません―――シトリー眷属の『王』として命じます。見事神の子を見張る者(グリゴリ)の試練を乗り越えて帰って来なさい!」

 

そうして『王』の命の下逃げ場を無くしたサジはアザゼル先生に首根っこ掴まれて連行されて行った・・・彼の虚しく空中を必死に掻く伸ばされた手が印象的だった

 

「サジ・・・アイツは良い奴だったよ・・・」

 

「そうだなイッセー・・・アーシアさん。どうか元シスターとしてサジの冥福を祈ってやってくれませんか?」

 

サジもアーシアさんに祈られるならきっと本望だろう

 

「はい!・・・サジさん、貴方のあの世(神の子を見張る者(グリゴリ))への旅路に幸多からん事を」

 

アーシアさんの純粋(天然)な祈りはきっとサジに届いた事だろう・・・多分

 

 

 

 

サジが連行されて逝ってからこの状況で普通に学校に通うのも問題という事でハードにならないよう余力を残しつつのトレーニングをして夜になった

 

≪母上から聞いたぞイッキよ。今度は外の世界の神とその配下の魔物が相手じゃとな。三大勢力の和平からなるいざこざにちと巻き込まれ過ぎではないかの?≫

 

丁度暇になったので今は九重と通話中だ

 

「そうかもな。まぁそこは最初に大きな不満分子を潰しておけば後々楽になるって、精々前向きに捉える事にするよ・・・戦わなくて済むならそれが一番だけどな」

 

いや本当に大人しくしてて欲しい

 

ロキ達とか北欧に引っ込んでろと言いたいし、英雄派とか広範囲に悪影響出し過ぎだからな

 

≪全く!手前勝手な理由で殺しやら闘争やらをする連中が多くて敵わん!それはそうとイッキは此度も活躍しておったようじゃな。フェンリルとかいう魔物から北の神を救ったと。日本の神々からもイッキの評価は高いらしいぞ!私も何だか鼻が高いのじゃ!≫

 

おぉ、何か九重が我がことのように喜んでいる

 

自分としては【一刀羅刹】を使っても仕留めきれなかったのに不満を感じる所何だけどな

 

まぁオーディンの救出を目的とした牙を逸らす為のキックだったし、首を狙って切り落とそうとすれば殺すまではいかなくてももうちょっとはダメージを与えられたと信じたい

 

日本の神々からの評価が高めって云うのはおそらくだけど俺が妖怪側という半分日本神話勢力みたいな立ち位置に居るからかな?というか日本神話と妖怪って詳しくはどんな繋がり何だろう?今度機会が在れば八坂さんに聞いてみるか

 

そうして話していると部屋の扉が開いて少し髪のしっとりした黒歌と小猫ちゃんが白い寝間着姿で入って来た―――黒歌は丈の短い着物で小猫ちゃんはシンプルなワンピースと云った感じだ。決してTシャツ一枚っぽい何て思ってはいない

 

「はぁ~、サッパリしたにゃ~♪・・・うん?イッキは九重とお話し中だったかにゃ?」

 

部屋に入って来た黒歌が俺の様子に気づいて質問してくる

 

≪おお!黒歌殿か!その感じだとそちらはお風呂上りだったのかの?≫

 

九重も今は音声通信だけど多分黒歌の「サッパリした」のワードから風呂上りだと気づいたようだ

 

「そっ♪白音も一緒にゃ」

 

「ん。こんばんは、九重」

 

黒歌と小猫ちゃんが近づいてきてイヅナ越しの九重に語り掛ける

 

≪うむ♪こんばんはなのじゃ!・・・それはそうと黒歌殿だけでなく小猫殿も一緒という事は、もしやすると小猫殿もイッキと同衾するようになったのかの?≫

 

・・・うん。九重も男女の仲に興味津々なお年頃みたいだから、こういう質問が割と多かったりするのには少し慣れてきたな

 

≪う~む。私はあまり京都を離れられぬが、今度イッキの家に遊びに行くときは日帰りではなくせめて一泊くらいはしたいのう―――イッキに黒歌殿に小猫殿と一緒に私も寝てみたいのじゃ!きっと楽しいと思うでな!≫

 

何と言うか完全にお泊り会って感じのノリだな

 

「ふふ、そうねぇ、イッキや白音だけじゃなくて九重を一度抱き枕にするのも面白いかも知れないわね。白音はどう?九重を妹みたいに扱うのも新鮮なんじゃないかにゃ?」

 

「妹・・・私が・・・お姉ちゃん・・・?・・・はい!凄く良いです!!」

 

小猫ちゃん?姉として扱われる未来に喰い付き過ぎじゃない!?

 

≪むぅ、しかしそうなると3泊は必要になるがそれは流石に都合がつかぬかのう・・・≫

 

九重が悩まし気な声を漏らす

 

3泊って九重は抱き枕役をローテーションされる事前提で話してるのか

 

確かに2学期は3連休以上の休み何て基本的には無いし、冬休みとかは新年だから京都のお姫様である九重は下準備やら挨拶回りやらで逆に時間は取れないからな

 

勿論、無理やり取ろうと思えば何とかなるだろうけど、時々京都に顔を出したり通信で連絡を取り合ったりとかしているお陰か九重はあんまりその手の我が儘は言わないんだよね。勿論『出来ればもっと会いたい』と時折不満は漏れるけど我が儘と言うよりは愚痴の範疇だ

 

≪まぁそれはまたの機会で良い。それではそろそろ切ろうかの。イッキ、黒歌殿、小猫殿、神との戦いがどんなものだったのか、また次に聞かせて欲しい。ではお休みなのじゃ!≫

 

「うん。お休み九重」

 

「お休みにゃん♪」

 

「お休みなさい」

 

最後にそれぞれ別れの挨拶を交わしていった

 

「ふふふ、『また次』だってね。神が相手でも負ける訳ないって信頼されてるにゃん?」

 

「あ~、フェンリル蹴り飛ばしたって情報は向こうにも伝わってるみたいだからそれでかな?」

 

反動で全身血まみれになったみたいなネガティブな情報は伝わってないと思うし・・・ロキ達が去った後フェニックスの涙で傷は回復してたけど殆ど着ている服、血のシャワーを浴びた後みたいになってて皆に引かれたし、鼻の利く黒歌と小猫ちゃんに微妙に距離とられたのが地味にショックだったんだけど

 

「でも、その期待には応えなくてはいけません。誰かが死んだりするの何て嫌ですから」

 

小猫ちゃんが戦いに向けて気合を入れている

 

そうだよな。多分この3人の中で一番の優しさを持っているのはやっぱり小猫ちゃんだもんな!

 

「・・・ヴァーリチームは?」

 

「・・・・・サラマンダー・富田さん以外は割とどうでも良いです」

 

ドライ!好奇心から聞いておいて何だけど結構ドライなご意見!!

 

まぁ今の時点ではヴァーリチームは完全に敵でテロリストだから仕方がないか

 

はぐれ悪魔とかも普通にぶっ殺すのが悪魔社会だしな

 

それから暫く他愛のない話をして過ごし、自然と眠くなってきた辺りで全員でベッドに入って眠りについた

 

翌朝、トレーニングルームで軽く体を動かしていたヴァーリに宿っているアルビオンが『俺は尻龍皇などでは無い』と只管呪詛のように繰り返していた

 

ヴァーリも多少は窘めたようだが聞こえてなかったみたいだ

 

『何という事だ尻龍皇だと?白いのにまでそのような無体な仕打ちが襲い掛かるというのか!?』

 

「ふぉっふぉっふぉ!乳龍帝と尻龍皇・・・将来2匹を題材にした『かわいそうなドラゴン』という本でも出版してみるのも面白いかの?」

 

『『『かわいそうなドラゴン』!?我ら二天龍が!?うおぉぉぉぉぉぉぉぉん!!』』

 

ロキとの決戦の日の朝、地上最強の天龍の咆哮が世界の始まりを告げた




最後のドライグとアルビオンの始まりを告げる咆哮は”コケコッコー”と同じ扱いでいいですww

今章はヒロイン全員集合という事で九重にもゲストで来ていただきました。流石に通信越しですがwwこのままではキャラが薄いのでレイヴェルにもちゃんとヒロインさせたいですw

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