転生特典が自爆技ばかりなんだが?   作:風馬

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書いてる内に何度か濃いめのブラックコーヒーが必要でした・・・もしくはかなり苦めのビターチョコとかでも良かったかも知れませんね

今の自分の限界ギリギリまで砂糖をぶっこんだつもりですww


番外編 小猫と、白音です!

レイヴェルに返事をした翌日、俺の家に一人のお客さんが来ていた

 

そして今は家族全員と客間で相対している

 

「この度、この家でお世話になる事になりました。レイヴェル・フェニックスと申します。急な話にも関わらず私の事を受け入れてくださった事、心よりお礼申し上げますわ」

 

まぁレイヴェルの事なんだけどね

 

流石に貴族の令嬢なだけあって一つ一つの所作が洗練されている感じだ

 

レイヴェルは今までは最初期にゼノヴィアも使っていたと云うグレモリーの所有するアパートの一角を借り受けてたのだが、今回正式に俺の住む家に引っ越したいと言われたので受け入れる運びとなったのだ・・・『一緒に歩んで欲しい』なんて言ったのがまだ昨日だから気恥ずかしいものが在るが仮にここで俺が断るような器の小さい真似はしたくないし、もしも断ったら涙目になって意気消沈するレイヴェルの姿が目に浮かぶようだ

 

リアス部長もレイヴェルの移住の話をしたら凄く微笑ましいものを見るような目で見られた後速攻で諸々の手続きをしてくれた

 

てっきり乙女モードな感じの反応するかもと身構えていたのだが多分そういうのはイッセーか朱乃先輩の前でこそ出している表情なのだろう・・・去り際に「小猫の事も宜しくね♪あの子、寂しがり屋だから目を離しちゃダメよ?」とも言われたけどな

 

「いいえ、うちのイッキとも塔城さん方とも知り合いで既に3人の承諾は得ていると言うのなら親の私達から反対する理由はありませんから・・・それに、お隣の兵藤さんのお宅にも外国人のホームステイのお嬢さんが沢山居ますからね。きっと今はそういう時代に変わりつつあるのでしょう」

 

母さんはそう言うが多分この家とそのお隣さんにしか適応されない時代の流れだと思う

 

一通り挨拶が終わってから今日はレイヴェルの部屋の日用雑貨等を買いに行く予定だ。レイヴェルが今まで居たアパートに在るのは基本備え付けの物が多かったし、元々彼女もそこまで長くこの駒王町に留まる予定では無かったので必要最低限の物しか置いてなかったのだ・・・まぁ貴族基準だからそこら辺の社会人1年生の一人部屋とかと比べたらダメみたいだけど

 

オーディンの護衛をしている時もメイドや執事の居ない初めての一人暮らしで最初はかなり戸惑う事も多かったみたいで翌日に疲れが残ってる感じだったしな

 

「よし!準備も出来たし買い出しに行こうか」

 

「はい!イッキ様!」

 

「私は今日は甘味担当にゃ♪」

 

「・・・・・・はい」

 

黒歌は自分の欲望に忠実な買い物をする気らしい

 

小猫ちゃんは少し元気のない感じだな・・・やっぱりレイヴェルの事を意識しているのだろうか?

 

そうしてそのまま一人で先に玄関の方に歩いて行ってしまった

 

「あの・・・イッキ様。やはり私が此処に来たのはご迷惑だったでしょうか?」

 

レイヴェルが不安そうな面持ちで此方を見上げて来る

 

「そんな事はないよレイヴェル。皆の事を受け入れたうえで不安にさせたのならそれは俺の責任だと思う。何と言うか俺の器が試される所なのかもな」

 

如何するのが正解なのか何て正直分からないけど全員幸せにするって気概を持たないと失礼を通り越してただの下種になってしまうからな

 

「うふふ、イッキもちゃんと言うようになってきたにゃん♪白音は今までイッキに恋人や婚約者が居るって云っても私は元々身内だし、九重は基本京都でその上男女の仲になるにはまだまだ時間があるから余裕があったけど、此処で初めてライバルとも云える娘が出てきて不安になってるにゃ。此処はイッキの包容力が試される所よ?」

 

ほ・・・包容力ですか。改めて言葉にして求められると如何するべきなのか・・・

 

「う゛っうん!!取り敢えず今は買い物を済ませる所から始めようか」

 

無理やり咳をして話題を断ち切り、俺もいそいそと玄関に向かっていった

 

「逃げたにゃ」

 

「逃げましたわね」

 

「まっ、今日明日くらいは様子見して上げるにゃん」

 

後ろから声が聞こえて来るけど逃げたんじゃない!一先ず如何するべきか考えてんの!

 

レイヴェルは流石は女の子と言うべきなのか買い物の大半は服が占めていた。元々服は沢山持っているみたいだが基本的には冥界で買い付けた物だから日本で着る服は日本で買った物にしたいそうだ・・・実家にあるのも大半はドレスみたいだしね

 

荷物持ちは当然と云うべきか俺が担当だ

 

そして今は俺と小猫ちゃんが並んで歩いて少し後ろに黒歌とレイヴェルが一緒に付いてきている

 

「いい?イッキはね、大胆過ぎるエロエロよりはワンランク控えめな日常の中に隠れているようなエロエロの方が好みなのよ。例えば不自然な裸エプロンとかよりも大きめのワイシャツとかを着て『下には何も穿いてないんじゃないか?』と思わせるようなギリギリを目指すのよ。私達の相手はむっつりスケベにゃ!」

 

「ふんふん!勉強になりますわ!では、スケスケのネグリジェよりも下着の形が薄っすらと見える程度の布地のネグリジェの方が喜ばれるという事ですわね!」

 

黒歌の明け透けな俺の性癖話をレイヴェルはさっきから一字一句聞き漏らさないようにしてメモして、更に独自の見解も盛り込んでいる・・・何この羞恥プレイ!?冗談みたいな大荷物を持っているせいで下手に振り返って抗議も出来ないしこの往来で抗議を入れたら行きかう人々にそれが俺の事だとバレてしまう!(手遅れ)

 

と云うか黒歌さん、小猫ちゃんが不安がってるって言ったのは貴女ですよね!?もう完全に俺に丸投げしてるの!?そりゃ頑張るけど態々ハードル上げなくてもよくないですか!?様子見は何処に行った様子見は!!

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「痛い痛い痛い痛い痛い痛い!小猫ちゃんも無言で脇腹抓らないで!!」

 

両手が塞がってるから激痛の中でも下手に動けないし、かと云って痛覚をコントロールするのは男としてやっちゃダメな事何だと直感が告げる!

 

包容力?少なくとも今は無理だって!物理的に!!

 

買い物が終わった後、荷物を家に置いてから駒王町の案内も兼ねて夕方までほぼ丸一日費やした

 

レイヴェルも駒王学園に通う事にしたみたいなので折角の土曜で部活動をしている生徒くらいしか居ない学園を案内もしている所だ。休日の校舎ってのは何時もとはまた別の趣があるよな

 

あ、ちゃんと校舎を案内する許可はソーナ会長から貰ってます―――レイヴェルはまだギリギリここの生徒って訳じゃないからね

 

元々はこの駒王町に来たのは裏方のスタッフの方々の働きぶりを体験する為だったから少なくとも明後日から一週間は可能な限りスケジュールを詰め込んで色々と回るそうだ

 

因みに明日は学園に入る際の諸々の手続きなどがあるそうだ・・・駒王学園に入るだけなら兎も角、レイヴェルが今通ってる冥界の学校の方は一瞬で手続き終了とはいかないだろうからな

 

「私がこの学園に通える何て少し前までは思ってもいませんでしたわ」

 

やはり今度から自分が通う学園とあってキョロキョロと視線が行き来するレイヴェルが感想を溢す

 

「そうなのか?その言い方だと割と厳しい審査とか在ったりする?」

 

「ええ、この町は魔王ルシファー様の妹君であるリアス様が管理する地で更にこの学園はレヴィアタン様の妹君であるソーナ様まで通っている所ですからね。美しい外見も相まってこの学園に通ってお近づきになりたいという悪魔は多いんですのよ?———かと言ってそれらを全て受け入れる事なんて不可能ですので基本的には弾かれていますわ」

 

そっか、悪魔の貴族の学園に通っていればそれなりに交流が持てるはずだからな。それにプラスして転校してでも魔王の妹で次期当主で且つ才能豊かとされる二人の通う学園に来たいと思う悪魔はそりゃ居そうだ

 

そういえばサーゼクスさんってこの学園の理事も務めてたっけ?多分その辺りの対応とかもやってるんだろうな。一般人に選定させる訳にもいかないだろうし

 

まぁサーゼクスさんが直接仕分けてるのか眷属か臣下の方が受け持ってるのかは分からないけどな

 

その後も職員室や保健室、体育の着替えの際のロッカールームの場所など要所だけは押さえて見て回り、残りの細かい部分はレイヴェル自身が学園生活の中で改めて確認していくという事で帰路についた。とはいえ彼女ならただ通り過ぎただけの場所も把握していそうだが

 

「ふふん!当然ですわ。これでもプロのレーティングゲーム経験者ですのよ?まったく見知らぬフィールドで瞬時に地形を把握するのは必須技能ですわ!」

 

貴族悪魔の通う学園では当然と云うかレーティングゲームの講義もあるみたいでそういう戦略的なものの見方に必要な事なども教えてくれるらしい・・・実践できるかは別だろうけどね

 

そうして買い出し及び見学もひと段落したので帰宅して小猫ちゃんは悪魔の活動をしたり、俺と黒歌は基礎トレーニングと模擬戦してレイヴェルがその様子を見たりして過ごした

 

「改めて目にするとお兄様とイッキ様が戦ってお兄様が勝てるビジョンが見えませんわ―――特殊ルールのゲームなら兎も角、真正面からのつぶし合いでは私も含めたフルメンバーでもイッキ様お一人にやられていたでしょうね」

 

フェニックス最大の特徴である不死も仙術とは相性悪いからね

 

「あ~、やっぱりライザーはまだ?」

 

「・・・はい。情けなくとも私の兄ですから早く立ち直って欲しいのですが、今は部屋から連れ出すのすら難儀しておりまして―――無駄に能力だけは高いものですから本気で抵抗されると単独で抑えられるのはお父様と一番上のお兄さまくらいのものでして・・・何かせめて切っ掛けが在れば良いのですけど」

 

身内の醜態を恥ずかしそうに語るレイヴェル・・・うん、ちょっと話題の振り方間違えたかも

 

「まぁ如何にも手詰まりになったら俺がライザーに出会ってみようか?もしかしたらショック療法で何とかなるかも知れないし・・・あまりお勧めは出来ないけど」

 

「にゃははは、確かに逆にトラウマを悪い方向で刺激する可能性の方が高そうね」

 

「い・・・いえ!そんな事でイッキ様の手を煩わせるだなんて!」

 

パタパタと手を振るレイヴェルや黒歌と少し雑談し、軽く頼み事をしてからトレーニングルームを後にして汗を流し終えると小猫ちゃんも帰って来た

 

明日も早朝のトレーニングがあるから早めに就寝するのだが、いつも通り黒歌と小猫ちゃんが部屋に入って来てから入口の所で小猫ちゃんの一歩後ろに居た黒歌が妹の背中を押しやってから扉を閉めた・・・隠す気ゼロの結界を展開して生半可では開かないだろう

 

「黒歌姉様!?何のつもりですか!?」

 

「にゃははははは♪奥手な白音だと2人きりとかじゃないと中々内心を吐露できないでしょ?この機会にしっかりイッキに甘えて不安があるならぶちまけるにゃ♪私は今日はレイヴェルと親睦でも深めておくわよ♪」

 

あははは、確かに『小猫ちゃんと2人で話したい』とは言ったけど超絶強引な手で来たな

 

小猫ちゃんと話す内容?どんな風に声を掛けるか?そんな答えなんて知るか!結局答えが出ないまま悶々としていたら黒歌から『前に私が白音にバカ主の真相を話すときはアドリブだったし、もうそれでいくにゃ!』と言われてしまったのだ

 

確かにちょっとウジウジしてて恰好悪かったかも知れんな。小猫ちゃんと少し話すくらいの時間は幾らでもあったはずなんだから『当たって砕けろ』の精神でいってみるか

 

暫くすると小猫ちゃんは深くため息を吐いてジト目でこちらを見つめてきた

 

「これはイッキ先輩の差し金ですか?」

 

小猫ちゃんの質問に頷くことで答える

 

黒歌がアレだけ露骨にやったなら隠す事に意味は無いだろう

 

「・・・取り敢えず座ってよ」

 

そう言ってベッドの端に腰かけていた俺の隣を"ポンポン"と叩き、小猫ちゃんは俯き気味にゆっくりと近づいて来て少しの逡巡の後で腰かけた

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

気まずい!!当たって砕けろとか言ってたの誰だよ!?俺だよ畜生!!クソ!こういう時ばかりはやろうと思えばモテモテイケメンモードを発動できそうなアザゼル先生が羨ましいな!

 

そんな中沈黙を先に破ったのは小猫ちゃんだった

 

「すみません。黒歌姉様も私より5つも年下の九重も焼き・・・彼女の事を受け入れたのに私だけ何時までもウジウジとしてイッキ先輩の手を煩わせてしまって・・・」

 

小猫ちゃんはどんよりとした雰囲気を滲ませているけど九重は兎も角、黒歌ほどサッパリとした性格の持ち主の方が珍しいと思うけどな

 

「小猫ちゃんはさ・・・レイヴェルの事はどう思ってるんだ?」

 

自然と口が動いた―――多分だけどそこが今一番重要かな

 

「・・・凄いと思っています。自分を高める為に一人で家を飛び出して、プロのレーティングゲームの経験もあります。イッキ先輩と出会って一年半ほど経ちますがそれで漸く私がデートに誘ったのに対して逆プロポーズです・・・私が彼女に勝ってる所何て戦闘能力くらいですがそれもイッキ先輩には及びません。本当の強敵を前にしたら私はまだ守られてるばかりです。だから私は彼女の事が恐いんだと思うんです。自分が置いて行かれる感じがして―――だからですかね、昨日も頑なに『3番目』は私だ何て言って必死に優位に立とうとして・・・イッキ先輩は優しい人ですからそんな順番に意味は無い、誰かを蔑ろにしたりしないって分かってるはずなのに・・・」

 

小猫ちゃんはそこまで話してから再び口を閉じる

 

でもそうか、やっぱりレイヴェルを嫌ってるとかって話じゃ無いんだな―――むしろ彼女を認めているからこそ気になってしまった感じかな?

 

でも、小猫ちゃんが不安を感じてるという点は如何するべきか・・・俺も誰かを蔑ろに何てしたくは無いし小猫ちゃん自身もそれは分かってると言っていた・・・理屈じゃなくて漠然とした感覚なのだろうから「大丈夫、大丈夫」と伝えるだけじゃ足りない気がするし・・・

 

あ~もう!恥ずかしいけど小猫ちゃんの為だ!多少強引にイケ俺!

 

心の中で気合を入れて隣に座ってる小猫ちゃんを"ヒョイ"と持ち上げて膝の上に乗せる

 

振り返ってみれば自分からこの手の行動をしたことって無かった気がするな。黒歌やレイヴェルに告白的なセリフを言ったのも相手に促されてた部分が大きいし、キスとかも自分からした事は無かった・・・理性のタガが外れそうだって言ってたけど頑張れ俺!多少は耐性が付いて来たはずの今なら大丈夫だ!(自己暗示)

 

膝の上に乗せた小猫ちゃんを出来るだけ包み込むような感じで抱きしめる

 

黒歌のアドバイス。包容力(物理)だ

 

「小猫ちゃんはさ、良く膝の上に乗ってこうしているのが好きみたいだけど俺も好きだったりするんだよね・・・何て言うのか独占欲?みたいなのが満たされると言うか湧き上がってくるみたいな感じがしてさ。まぁ恥ずかしいのも在るけれど」

 

「・・・私もこうしている時は身も心もイッキ先輩に預けてる感じがして好きです。それに私だって皆さんの前で甘えるのは恥ずかしいんですが・・・それを差し引いても『私は先輩のものだ!』って感じたくて座っていました」

 

ぐっは!可愛い!何そのいじらしい理由!

 

自分から雰囲気創っておいてもはや俺内心身もだえてるんだけど!!

 

「なら、何時だって今みたいに座りに来ればいいさ。さっきも言ったけどこの体勢で居る時は小猫ちゃんの事を実は凄い意識してるって知ってもらった上でな」

 

「・・・・・はい」

 

小猫ちゃんの気がさっきまでより大分落ち着いて来ているな

 

そう思っていると小猫ちゃんが何だか可笑しそうに肩を震わせて笑い始めた

 

「小猫ちゃん?」

 

「ふふふ、だってさっきまでの先輩、何だからしくなかったんですもん。落ち着いて思い返すと可笑しくなってきちゃって」

 

う゛!そう言われると気恥ずかしさから頬が熱を持つのが分かる

 

「勘弁してくれ、俺だって恋愛初心者組何だから多少空回るのは見逃してくれよ」

 

今まで基本受け身だったのを始めて攻勢に出たんだからさ

 

「小猫ちゃん」

 

「はい?何ですか?・・・っ!!?」

 

声を掛けて振り向いてきた小猫ちゃんにキスをする。如何やらまだ俺は雰囲気に中てられているようだ。そして暫くしてから口を離して告げる

 

「好きだよ。小猫ちゃん」

 

「はい♪私も大好きです、イッキ先輩!!」

 

そうしてお互い自然ともう一度唇が近づいていった時、視線の端っこに黄金と蒼色が微かに見えた気がして、そちらに目線がいくと俺の部屋(3階)のベランダとかも無い窓の外から此方を覗き込む黒歌とレイヴェルの姿が見えた

 

黒歌は俺が気付いたのにも気付いたようだがニヤニヤ顔を崩さないし隣のレイヴェルは顔を手で覆ってるけど指の隙間から綺麗な蒼の瞳が丸見えだ

 

え!?二人とも何時からそこに居たの!?幾ら気を張ってなかったと云っても黒歌は兎も角レイヴェルが俺や小猫ちゃんに気付かれないレベルで気配を遮断するとかって出来るの!?

 

だがよく見れば黒歌がレイヴェルの肩に手を置いているのが見える。成程、黒歌がレイヴェルの分も仙術で気を操って気配を消していたのか。ベランダの無い窓と言っても彼女達なら空を飛ぶ何て朝飯前だし・・・いや!もしかして黒歌が部屋の扉にこれ見よがしに強力な結界を張っていたのは俺と小猫ちゃんにこの部屋が外界から遮断していると錯覚させる為か!?覗きをする自分たちが気付かれにくいようにする為の心理トリックかよ!

 

「・・・先輩?どうし・・・・・」

 

ああ!小猫ちゃんが訝しんで窓の方を見て硬直してる俺の視線を辿って外の二人の存在に気が付いてしまった!部屋の灯りは消してあったけど一瞬で顔を真っ赤に染め上げてるのが分かる!

 

すると外の二人は何も言わずにそそくさと窓枠の外側に消えて行ってしまった

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

本日二度目の無言タイム!しかし、少しすると部屋の扉に掛けてあった結界が解けて黒歌とそれに引きずられてレイヴェルが入って来た。レイヴェルは髪を下ろしている姿が新鮮だ

 

「イッキ、白音。二人とも話し合いはもう済んだのかにゃ?『多分』もう大丈夫だと思って様子を見に来たにゃ!」

 

何と白々しい!何が『多分』だ畜生!バッチリ見ていた上に悪魔の二人なら会話の内容も聞こえていたはずだ!レイヴェルとかさっきから全力で視線を背けて来るしさ!

 

「—————————————————————!!」

 

もはや言葉も無いのか小猫ちゃんが黒歌に喰って掛かるが黒歌は黒歌でそれをひょいひょいと躱す

 

小猫ちゃんも部屋の中で全力で動く訳にもいかないので中々黒歌を捉える事が出来ずにいると業を煮やしたのか今度は大人しく立っていたレイヴェルに標的を移した

 

レイヴェル(・ ・ ・ ・ ・)も黒歌姉様の悪戯に一々付き合わなくてもいい!貴族の娘何て肩書持ってるなら覗き見何て俗な事しなくていい!!」

 

小猫ちゃんは"ズンズン"とレイヴェルに歩み寄り彼女の左右の頬っぺたを摘まんで捏ね繰り回す

 

気恥ずかしさを紛らわす為なんだろうけど覗き見なら主であるリアス部長が先日イッセーと朱乃先輩のデートをストーキングしてるんだけどな

 

「にゃ・・・にゃにふぉにゃはいまふのこねふぉふぁん!!(何をなさいますの小猫さん)」

 

おお~!レイヴェルの頬っぺた柔らかくってムニムニしてるな・・・後さり気に小猫ちゃんがレイヴェルの事を始めてまともに名前で呼んでるし、いい傾向だろう

 

すると小猫ちゃんのムニムニから解放されたレイヴェルが反論していく

 

「もう!いいではありませんか!大体小猫さんはイッキ様にあんなにもムード一杯にキスして貰える何て羨ましいですわ!私何て戦場でのキスとある意味雰囲気は在ったかも知れませんが初キッスはドロッと血液の味ですのよ!?」

 

うん、何か御免。確かにほんのりレモンの味からは程遠かったね

 

このままだと暫く終わりが無さそうだったので二人を後ろから抑えにかかる

 

「ほらほら白音、そこまでにするにゃ。続きがやりたかったら一先ずベッドに入ってからね。そのうち自然と寝付けているはずにゃ」

 

「レイヴェルはこれから寝る時どうする?俺は何時も黒歌と小猫ちゃんと一緒に寝るのが当たり前になっちゃってるんだけど恥ずかしいなら普通に自分の部屋で寝ても良いし・・・小猫ちゃんも最初はそうだったしね」

 

というかむしろ自分の部屋で別々に寝るのが普通ではあるだろう

 

「そ・・・それは・・・その・・・宜しければイッキ様と一緒に寝たいですわ」

 

レイヴェルが俺の腕の中で恥ずかしがりながらも希望を告げる・・・うん、可愛い

 

でもこうなってくるとやっぱり心配になって来るのは俺の理性だ

 

何処かで発散させないと高校卒業まで持ちそうもない!しかし出来ない!何故かって?黒歌も小猫ちゃんもとっても鼻が利くからだ。ぶっちゃけ気づかれると思う。初対面の参曲(まがり)様が一瞬で俺と黒歌が同居してる事に気づいたのだからその嗅覚を侮ってはダメだろう・・・そろそろ本気で悟りを開けそうだ

 

そんなどうしようもない事を考えているとレイヴェルが少し遠慮がちに質問してきた

 

「あの・・・前から気になっていたのですが何故黒歌さんは小猫さんの事を『白音』と呼んでいるのでしょうか?最初は踏み込んではいけない事なのかとも思ったのですが小猫さんは『白音』と呼ばれる事も『小猫』と呼ばれる事も気負いも感じられませんし・・・」

 

レイヴェルの質問に俺と黒歌と小猫ちゃんはキョトンとしてお互いに視線を交錯させる。言われてみれば他人が見たら違和感の在る光景だったかも知れん

 

最初は手配犯だった黒歌の存在を少しでも隠す為に半ば必要に駆られて『小猫』の方の名前で呼んだけど、今までずっとそれで通してきたから完全に慣れ切ってしまっていたな

 

取り敢えずレイヴェルに当時の黒歌と小猫ちゃんのナベリウス家の事も含めたエピソードを語っていく。二人にとってもその一件は乗り越えた過去の話なので待ったが掛かる事も無かった

 

「・・・そうだったんですのね。契約を反故にするなど同じ上級悪魔として恥ずかしい限りですわ。その、もし嫌で無ければ私も小猫さんの事を『白音さん』と呼んでも宜しいでしょうか?・・・あ!イッキ様を差し置いて図々しい事を言ってしまいましたわね」

 

「いやいや、そんな事はないけど・・・小猫ちゃん的には名前の事どう思ってるんだ?」

 

「私は・・・黒歌姉様に捨てられたと思って、その上周囲の人たちに『処分した方が良い』と言われた過去を断ち切りたくてリアス部長に悪魔としての生と一緒に新しい名前をいただきました。リアス部長に貰ったこの名前はとても大切なものです・・・でも、今の私は過去を断ち切りたいなんて思っていません。『白音』という名前も殆ど覚えてませんが、優しくしてくれたお母さまに頂いた私に残る唯一のものです」

 

何方の名前も大切な人に貰った大切な名前だと語った小猫ちゃんはゆっくりと目を閉じる

 

そうして次に小猫ちゃんが目を開いた時にはしっかりとした決意が宿っていた

 

「私はこれから『白音』と名乗っていきます!リアス部長・・・いえ、リアス様に頂いた名前をお返しする事でもうただ泣いていたあの頃の私ではないと伝えたいです!」

 

そっか、そうだよな。大変だった時期の彼女を最初に救い上げて愛情を注いできたのはリアス部長だもんな・・・『もう大丈夫』と伝えられるならそれに越したことはないよな

 

「良し!じゃあ改めてこれから宜しくな。白音ちゃん!」

 

「私も宜しくお願い致しますわ。白音さん!」

 

そう言うと何だか不機嫌な顔をされた・・・何で?疑問に思ってると彼女は一言だけ発した

 

「・・・白音」

 

「え?」

 

「白音で良いです。『ちゃん』も『さん』も要りません」

 

恥ずかしそうに顔を赤らめながらちょっとだけそっぽを向く彼女を見て俺とレイヴェルは思わず互いを見やると何だか可笑しくなって笑ってしまった

 

「何笑ってるんですか」

 

「御免御免!それじゃあ・・・」

 

「「白音」」

 

レイヴェルと息を合わせてその名を呼ぶ。すると「ではこれで」と一言だけ言ってベッドに潜り込んでしまった・・・逃げたつもりかも知れないけどそこ俺のベッドだからね?

 

妹の愛らしい姿を見られたからか黒歌も満足そうな感じだ

 

「4人となると1人余っちゃうわね。ま♪今日の所は白音と新人のレイヴェルにイッキの隣を譲ってあげるにゃん♪その代わり、明日からローテーションだからね♪」

 

そう言って白音の隣に潜り込んだので俺も反対側に寝て、俺を挟んで更に反対側にはレイヴェルが一瞬硬直したもののゆっくりと入り込んで来た

 

「こんな風に殿方と一緒のベッドで眠る何て初めてですわ」

 

「俺だって別に慣れてる訳じゃないさ・・・それじゃあお休み。レイヴェル、黒歌、白音」

 

そうして就寝したのだが翌朝レイヴェルに寝る前に発動させた【一刀修羅】を滅茶苦茶ビックリしたと怒られた―――日課だったから普通に発動させてたよ。その上五感を閉じてたからレイヴェルの問いかけもガン無視状態だったからな・・・・すみませんでした!




ライザー編書くとか言って白音の事書いてたら一話分使っちゃったぜ!このまま今日中にライザー編も書いてやるぅぅぅ!!(徹夜明けテンション)

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