俺達駒王学園2年生を乗せて京都への修学旅行に向かう新幹線の中で俺とイッセーは隣り合った席に座っていた―――まぁ俺とイッセーに松田、元浜は同じグループなので移動も基本的には近くに居るのが当然だと云える
中学生の時の修学旅行の時と(少なくとも男子は)全く同じ構成なのは腐れ縁のようなものを感じると云うかなんと云うか
今は新幹線の席を一部反転させて4人が向かい合って座れるように調整し、俺とイッセー、祐斗、ゼノヴィアが座っている・・・祐斗はクラスが違うから本来別の車両だが軽い日程確認の為に一時的にこっちに来ていた
「そっか、教会にデュランダルを預けてて今は手元に武器が無いのか」
今は丁度ゼノヴィアから『私は丸腰』と報告を受けてた所だ。一応裏に関する事なので周囲に軽めの認識阻害の結界を張って置いたので周囲は此方に意識を向けてはこないようになっている
「ああ、デュランダルの威力を落とさずに勝手に周囲を破壊する攻撃的なオーラだけを抑える術が開発されたらしくてね。まぁ私が未だにデュランダルに振り回されていると大声で宣伝するようなものだから情けない限りでもあるのだがな」
「了解。いざとなったらアスカロンを貸せば良いんだな?」
「というかゼノヴィアは異空間にデュランダル以外の剣をしまったりしていないのか?サブウェポンは持っていた方が良いと思うぞ?」
俺の場合は神器だし、仮に使えないなら格闘術って事になるけどな
「そうだね。僕やイッキ君の持つ剣は神器によるものだから基本的に紛失や破損を気にしないで良いけど、今後デュランダルを調整したりする度に丸腰になるっていうのは少し問題かもね。何時だってイッセー君や僕が剣を貸せるとは限らない訳だし」
祐斗の意見にゼノヴィアは思い悩むように告げる
「もっともな意見なのだが、ただの剣では流石に強度が心許無いし、デュランダル程でなくとも聖剣なんてその辺に転がっている物でも貸し出してくれる物でも無いからな」
確かにな―――メインで使っていくなら兎も角、基本はタンス(異空間)の肥やしにします何て云うなら、貸し出してくれるような場所は無いかも知れん
以前までは
「なら、取り敢えずコレを持っておくか?」
異空間から(コッソリと)取り出したのはよく素振りに使っていた木刀。洞爺湖の名を持つ、またの名を『星砕き』である
「それは確かイッキ君が仙人から譲り受けたという木刀だったね。以前より存在感が増している気がする・・・成程、成長する武器とは珍しいね」
祐斗が色々と盛大に勘違いしているが実はこの木刀は神性を持つ俺が毎日ずっと気を流し込んでいたり、素振りで血豆が潰れたりして僅かながらも直接神性込みの血がしみ込んだりした影響なのか『御神木から削り出した木刀』程度の霊剣的な存在に地味にクラスアップしていたりするのだ
ゼノヴィアが聖剣を扱う要領で使えば少なくとも簡単に壊れたりはしないだろう
「済まない。確かにこれなら京都で普通に持っていても違和感はないだろうな。聞くところによれば学生が京都に修学旅行で赴く際には必ず木刀を購入し他校の生徒と合戦をして観光スポットの優先権をもぎ取るのが習わしだと聞くぞ」
前半は兎も角、後半がかなり物騒な勘違いしてるな・・・頼むから先手必勝で他校の生徒に切りかからないでくれよ?
「さて、万が一の際のイッセー君たちの観光ルートも分かったし、あまり他クラスの僕が此処に居続けるのも悪いからもう行くよ」
「そうだな。私もデュランダルの件は伝えたし、アーシアやイリナ、桐生の所に戻るとするか―――実は桐生から修学旅行における様々な夜のアドバイスがあると言うのだ。修学旅行とは観光だけでなくホテルの夜にも何やらイベントが一杯らしいからね」
祐斗とゼノヴィアはそれぞれ元居た場所に帰っていった
そしてイッセーが首を捻りながら問いかけて来る
「なぁイッキ。俺達の泊まるホテルで夜に何かイベントをやる何て日程に書いてあったか?」
「・・・何でお前は時々そこまでピュアになれるんだよ。天使かお前は?」
桐生さんのアドバイスって時点でお察しだろうに
「何言ってんだ?悪魔だよ俺は」
その後、俺がトイレに行って戻って来ると松田が元浜の胸を揉みしだいている所に出くわした
「うおおぉぉぉぉぉ!おっぱいぃぃぃぃぃ!!」
「松田ぁぁぁ!?貴様一体何をする!?男の乳を揉んで何が楽しいぃぃぃ!?」
「ハ!?俺は一体何を!?なぜかいきなり何でも良いからおっぱいを揉みたい衝動に駆られて!」
松田が急に我に返って自分の犯した奇行に戦慄している
「見て見て!やっぱりあの二人は松田×元浜なのよ!私達の主張が正しいと証明されたわね!」
騒ぎを起こした二人は当然クラスの女子達も見ていたようで一部の派閥が盛り上がっている
「松田・・・お前そこまでおっぱい欠乏症に掛かっていたとは!?・・・・・お・・・お・・・おっぱいぃぃぃぃぃ!おっぱいを揉ませろォォォ!!」
元浜が松田の症状を冷静に分析しようとしていると今度は元浜が松田に抱き着き、彼のおっぱい、もとい雄っぱいを揉み始める・・・まぁ揉める膨らみ何て在る訳も無いのだが
「あふぅぅぅん♡何をしている元浜ぁぁぁ!?お前までおっぱい欠乏症を患っていたのか!」
松田が気持ち悪そうに元浜を必死に剥がしにかかる
「キャアアア!!今度は元浜×松田よ!あの二人って受けも攻めも両方こなしている存在だったのね!ああ!私達腐女s・・・貴婦人(貴腐人)にとって何て尊い在り方!誰の夢も壊さない二人の一線を越えた友情に今なら祈っても良い!!」
・・・このクラスの女子の大半は既に手遅れかも知れない
そうしてひと騒動在ったものの無事(?)に京都に到着し、改札口を出る
「おお!これは凄いな天井がとても高い!中々の解放感だ!」
「見て見て!あそこに見えるの京都タワーじゃない?一度上ってみたかったのよね~」
「九重ちゃんともまた会えるでしょうか?」
教会トリオは瞳を輝かせて周囲を見ているな
「九重とは三日目に合流予定だな。京都のお姫様を四日間も観光ガイドの真似事させる訳にもいかないしね。昨日通信で話した時は張り切ってたぞ?」
「はいはい、初めての京都で浮かれるのも分かるけど何時までも立ち止まってると邪魔になっちゃうから早速ホテルに行きましょうね~」
桐生さんに促されて京都駅から歩いて数分の場所にある高級ホテルであるサーゼクスホテルに到着した。松田や元浜だけでなく同じ学園の生徒の皆も目の前のホテルに圧倒されてるな
「うおぉぉぉぉぉ!何だこれは!?カード!?これが部屋の鍵なのか!?俺たちはもしかして百年後の世界のホテルにでも紛れ込んでしまったとでも云うのかぁ!!?」
部屋の鍵として渡されたカードキーを両手で持って天に翳している
女子と男子では泊まる部屋の階層からして別れていて、男子の泊まってる場所の2階層上が女子の部屋の在る場所だ。そして俺とイッセーに用意された部屋だけはその中間にある部屋の一室となっている
何でも万一何か起きた時に男子女子の関係者が出来るだけ見つからないように無理なく集まれる場所として俺達だけ階が違うんだそうだ―――本来の男子の階層は偶々予約してあった一室が備え付けのトイレや風呂などの水回りが故障した為に俺とイッセーが別の部屋に割り振られたという設定らしい・・・良かった。ちゃぶ台敷布団の部屋じゃない
荷物を置いて整理してから一階ロビーで一緒に観光する皆と合流してから伏見稲荷大社を見て回る。京都への移動で既に時間を使ってるのでじっくり回れるのは1~2箇所くらいだろう
合流後、さっそく伏見稲荷に向かう
お土産屋などに顔を覗かせつつ山を登っているとイッセーが話しかけてきた
「なぁ、やっぱりイッキはこの伏見稲荷にはよく来るのか?ほら、お狐さん関連でさ」
「別にそんな事はないぞ?京都には時折は顔を出すけど伏見稲荷には年始とかに来るくらいだな。遊びに来るのに向いてる場所とは言い難いし八坂さんや九重も俺が此処に来る時にあまりそういう堅苦しい行事に参加させるのは悪いと思ってるのか行事に呼ばれる事も少ないしな」
九重からしてみればただでさえ会える回数は少ないのだから時間の掛かるその手のものは歓迎できるものじゃないのだろう
そんな事を話しつつ特に問題なく観光を終えてホテルに戻り、晩御飯の京料理を食べてから各自の部屋に戻るが下の階から不穏な気配を感じた・・・どうやら松田と元浜がこっそり忍び足で1階に向かっているらしく、その一階には女子の大多数の気配がしているので如何やら風呂場を覗きに行くつもりのようだ
「ハァ・・・行くか」
シトリー眷属も居るのだから必要無いのかも知れないけどエロ馬鹿の行動を感じ取ったら止めに入るのが既に4年と半年の時間染みついた俺の行動の一部になってしまっている
「イッセー、ちょっと出てくるわ」
「ん?おう」
イッセーの気の無い返事を聞きながら下に向かう・・・まぁイッセーが動いたとしてもその時はロスヴァイセ先生が止めるだろう
そうして1階まで降りると大浴場へと続く通路にシトリー眷属の『騎士』の巡さんと『僧侶』の花戒さんにサジが居た。今は女子の風呂の時間だし恐らく此処にいない『戦車』の由良さんと『僧侶』の草下さんは先に入っているのだろう
「よぉ、どうしたんだ有間?男子の入浴タイムはまだ少し先だぞ?」
「そっちも生徒会お疲れ様だな。俺はまぁ日課を消化しに来たという感じかな?」
そう言って徐に近くに在った窓に近づいてから素早く開け放ち、窓の下をこそこそと移動中だった2人組を引っ張り上げて中に引きずり込む
「な!?松田に元浜。お前ら何時の間にホテルの外へ出たんだよ?」
窓の傍を通ってたパイプを猿のように掴まって外に出ていたよ・・・もしも見つかったら普通なら来年度からその学校が出禁をくらいかねない無茶だよな
「まぁた貴様か有間ぁぁぁ!!それにサジも居るのか!お前らは俺達の崇高なる使命(覗き)を何故理解出来ん!?貴様らに性欲は無いのか性欲はぁぁぁ!!女子風呂を覗いてこその修学旅行だろうが!!」
「お前らに心配されなくても人並みの欲くらいは持ってるさ・・・その上で理性的な判断下してるだけだよ。というかお前らは本能に支配され過ぎだ。チンパンかお前ら?」
「うっせぇぇぇ!女子生徒の生まれたままの姿をこの目に焼き付ける事が出来るというのならチンパンでいいわ!あいつ等温泉街とかじゃよく混浴してるんだろ?チンパンに許されるんだったら俺達にだって許されても良いはずだ!」
元浜の抗議を受け流していると松田が人類1万年の進化の歴史を否定しても良いと言ってくる
こいつ等なら本当に覗きが出来るなら人間辞めるかも知れんな
というかそもそもチンパンジーも温泉って入るの?日本猿の印象が強いんだけど・・・
「なら此処は一つ覗かれる側の意見を聞こうか・・・判決は?」
松田と元浜を心底冷え切った目で見ていた巡さんと花戒さんに聞くと「サイッテーです」、「懺悔して下さい」との言葉と共に殴り倒された・・・懺悔を促す悪魔って如何なんだろう?
取り敢えず気絶した二人は仙術で女子達のお風呂タイムが終わるまで起きないようにして生徒会の見える位置のロビーの端の椅子に二人仲良く座らせておいた
「じゃあ俺は戻るな。丁度イッセーも動き出したみたいだしロスヴァイセ先生の応援に行くよ」
「お・・・おう。本当に有間ってあのエロ馬鹿どものストッパー役何だな」
「・・・今からでも代わってくれても良いんだけど?」
「う゛・・・情けないが俺はさっきあいつ等を見つけられなかったばかりだしな。済まんがもう少し実力が付くまで待ってくれ」
そうだよな。松田も元浜も警戒している悪魔3人のすぐ横を気づかれないレベルで気配を殺して移動してたんだもんな・・・頑張れサジ。エロ馬鹿共は日々進化を重ねているぞ
並みの中級悪魔くらいの実力じゃあいつらの気殺を見破れないからな
因みにお風呂を上がった女生徒たちはロビーで肩を寄せ合って眠っている松田と元浜を見て只管黄色い声を上げていたらしいが幸い俺がそれを知る事は無かった
ロビーを後にしてイッセーとロスヴァイセ先生が攻撃的な気をばら撒いている非常階段の方に歩いて行き、二人が戦ってる所まで階段を昇って行くと丁度イッセーが
「衣服を弾け飛ばす技何て環境に良くありません!・・・って有間君!?貴方まで何時の間にそこに居るのですか!?ま・・・まさか貴方まで性欲に駆られた行動を!?もしかして二人とも年頃だからってティッシュの使用量が凄い事になってたりするんじゃないですか!?無駄遣いは先生許しませんよ!」
「何かロスヴァイセさんって怒るポイントが所々妙にズレてませんか!?俺そういう方向から怒られたのは初めてですよ!・・・後ティッシュは沢山使ってます。すみません!!」
何だろうか・・・この目の前で繰り広げられている性と資源の論争は?踏み込みたくないって言うかこのまま帰りたくなってきた・・・でもその前に反論しておかないといけない事もある
「ロスヴァイセ先生・・・」
俺が真っ直ぐ視線を向けて名前を呼ぶと"ビクッ"とたじろいでしまった
「な・・・何ですか?有間君?」
今の俺は多分とても
「俺の家に居る黒歌と白音は元は猫の妖怪・・・北欧的に言うなら細かい事を除けば獣人の一種と言えるでしょう。つまりは鼻が利くんです。そんな俺がティッシュ使えると思えます?黒歌なんて100%襲い掛かってきますよ?」
俺もエロい事は我慢しているけどそれは逆に言えば黒歌にも我慢させている事になるだろう・・・あの性格だから多分合ってるはずだ
そんな中で俺が若い衝動に負けたりしたら彼女はその場でサキュバスにクラスチェンジして静止も虚しく絞り尽くされる未来しか見えないのだ
黒歌だけなら先日サイラオーグさんに貰ったお金を育児金として見ればゴールしても良かったのかも知れないけど今は白音とレイヴェルが居る。2人が居る事に不満などあろうはずも無いが、まぁつまりはそういう事なのだ
「そ・・・そうですか・・・決めつけで罵ってしまう何て教師としてあるまじき事でしたね。本当に御免なさい」
淡々と語る俺の圧力に押されたのかロスヴァイセ先生が謝って来るけど未だに服がはじけ飛んでいる状態なので反応に困るから取り敢えず謝罪を受け入れてから
「イッキ・・・お前・・・」
「何だ?環境に優しくないイッセーは環境に優しい俺に何か意見でも?」
「いや!悪い!何でも無いから忘れてくれ!!」
途中何か話しかけてきたイッセーだったが何故か何も言う事もなく駆け足で部屋に戻って行った
旅行二日目。昨日の夜も特に呼び出しとかがあった訳でもないのでもしかしたら英雄派云々は杞憂なのかも知れない・・・もしかしたら俺が九重や八坂さんと接触していたのが間接的に三大勢力との和平の時期を早めたり対テロリストの協力体制が早めに敷かれていたりしたのかもな
三年坂で桐生さんがアーシアさん達教会組を「転んだら3年以内に死ぬ」と言って揶揄ったりしながらも本日最初のメインともいえる清水寺に辿り着いた
「おお!異教徒の粋を集めて造られた建物だぞ!」
「ええ!異教徒バンザイね!」
取り敢えずお二人は過激な発言を慎んでくれよ。叩き出されるぞ?
「ここにはかの有名な千手観音が祀られているのだ」
「うむ。手が1000本在るという事は一度に500人のおっぱいを堪能できるという事だな。俺も悟りを開いたらおっぱいを揉むための腕が増えるのだろうか?」
「悟りを開いた時点で性欲とは無縁になるだろ・・・いや、その方が世の為になるか?」
こいつ等が悟りを開けば俺の仕事も減るだろうしな
「ねえ皆、あっちに恋愛関係のおみくじやってるみたいだから一つ占ってみない?」
「お!占いか。中学の時の占いじゃイッキを除いて全員が大凶だったからなリベンジといくか!」
エロ馬鹿3人組の中で女っ気のない松田と元浜が率先しておみくじを引きに行ったのだが二人が結果に目を通すと心底驚愕を現していた
「馬鹿な!超大凶なんてものが在るのか?最近では大凶のおみくじですら場所によっては入れてない所も在ると聞いているのに!」
「元浜も超大凶だと!?普通こういうのは仮に入ってるとしても精々一つくらいだろうが!それが何故俺達二人ともが超大凶何て引かなければならないのだ!?」
松田と元浜が驚きと絶望の表情を浮かべているが俺はこの『超大凶』というのに覚えが在ったので素早く辺りを見渡すと褐色の肌に陰陽師の格好をしている男が丁度おみくじ屋の裏手からコッソリと出ていく所だったので後ろに回り込んで肩に手を掛ける
「む?誰だね?私をペンタグラム伯爵と知って引き留めようと云うのか?生憎と私は先を急ぐので・・・なぁ!?またしても貴様かぁぁぁ!?ここ数年私の活動を邪魔しよって!」
振り返ったその顔にはデカデカと五芒星が描かれている彼の名前はペンタグラム伯爵というらしく、京都の全ての神社や仏閣でおみくじの中身を『超大凶』に代えるとか『リア充死ね』という絵馬を付けまくるとか程度は低いけど十二分に迷惑な行為を繰り返し出禁をくらっている人物である
今回松田と元浜が引いた超大凶はこのペンタグラム伯爵がすり替えたものだろう
実は俺が京都に赴くようになってから何故か行く先々で一回はこの人を見つけてしまうものだから対応もかなり手馴れてきた感じがあるんだよな
「はいはい、今警察呼ぶからね。すみません売り子の方。そのおみくじの中身全部この男がすり替えたみたい何でちょっと売るの待ってもらって良いですか?」
「止めろ!離せぇぇぇ!私は誇りある『四覇将』の一人だぞ!公安に屈してなるものかぁぁぁ!」
すると叫ぶ彼の様子に観光客がざわついたのが気になったのか住職の方がやってきた
「何の騒ぎですかな?・・・ああ、また貴方ですかペンタグラムさん。悪戯に人生を費やすその熱意を徳を積む為に向ける事が出来れば良いのですが―――おお!有間さん。何時もご苦労様です。前は確か八坂神社でこの方を捕まえていましたな。後は私が引き受けましょう」
「有難うございます・・・本当に何で寺とかに寄るとこの人と出会っちゃうんでしょうね?」
「ほっほ!きっと神様や仏様が有間さんを頼っていらっしゃるのですよ」
下手に暴れないようにイマイチ体に力が入らないように仙術を掛けてから住職さんにペンタグラム伯爵を引き渡して皆に振り返る
「悪い。ちょっと寄り道しちゃったわ」
「いや、それは良いんだけど有間君ってここの住職さんとは知り合いなの?結構気安い感じに話していたように見えたんだけど」
「あ~、中学の時に修学旅行で京都に来て以来実はちょくちょく京都に一人旅(黒歌随伴)しててさ。色んな所でさっきの人を取り押さえている内に少しずつ住職さんとか神主さんとかと顔見知り程度にはなってるんだよね」
「なぁにぃ!?イッキお前そんなに京都に来ていた何て聞いてないぞ?」
「は!?まさかイッキ。お前一人で京都美人をナンパして回ったり、舞妓さんと宜しくヤッてたりと裏の京都を満喫してたと云うのかぁぁぁ!?」
裏の京都は確かに毎回顔を出してたけどお前らのいう『裏』とは別もんだよ!
それからはゼノヴィアが銀閣寺と金閣寺の姿に一喜一憂したり景色を眺めながら抹茶を飲んでまったりと過ごし、ホテルへと帰って行った
そうしてホテルでの食事も終えた頃、ロスヴァイセ先生がやって来て一階のロビーに集まるように伝えられたのでイッセーと一緒にその場に行くとオカルト研究部とシトリー眷属にアザゼル先生とロスヴァイセ先生が勢揃いする事になった
・・・イヤな予感しかしないんだけど
今まで何も無かったのに急に問題発生ですか?
「よし、集まったな。急な事で悪いが今から妖怪側・・・裏の京都を支配する九尾の狐の屋敷に向かう事にする。詳しい事情は向こうに着いてから話す。じゃあ行くぞ―――イッキ、此処から一番近い裏京都への入り口は何処だ?」
「此処からだと道祖神社ですかね?京都駅のすぐ近くだから時々使ってましたし」
「よ~し、なら案内してくれ。態々遠回りで向かう事もないだろう」
アザゼル先生に促されて皆で夜の京都を移動してホテルから一番近場の神社の入り口に辿り着き、鳥居に触れてオーラを流し込んで鳥居を潜ると江戸時代のような町並みでそこかしこに妖怪が行き来する裏京都に辿り着いた
「何つーか昼間の時も思ったけど、こういった所で手馴れているのを見ると不思議な感じがするぜ。本当に俺の知らない所でよく京都に来てたんだなってさ」
「まぁな。兎も角行こうか」
八坂さんや九重の住んでいる屋敷に向かうと途中で妖怪たちも話しかけて来る
「おうイッキのアニキ!ニュースは見たぜ。異国の神と闘ったんだってな!」
「ははは!流石は俺達全員を叩き潰したアニキだぜ!実はあの時集まった奴らで良く模擬戦したりして鍛えてるようにしたんでさぁ!必要と在れば何時でも呼んで下さいよ!」
うん。何か夏に叩き潰した百鬼夜行の皆さんからは『アニキ』呼びになってたりするのが慣れないんだよな。どこの族の子分だよって話の上にコイツ等の忠誠って俺というよりは九重に向いてるはずだし・・・一応慕われるようにはなってるのかな?ただこのままいくと将来的に九重が『アネキ』とか『姉御』とかって呼ばれる気がするのは何とかしたい
そんな光景に若干引かれながらも大きな鳥居を抜けてこれまた大きな屋敷に辿り着き、屋敷の入り口の所には見知った顔・・・着物姿のレヴィアタンさんが狐の案内人の方と一緒に居た
「やっほー☆皆♪冥界でのパーティー以来だね。待ってたよ♪」
相変わらずテンションの高い御方である
「レヴィアタン様!?どうして此処に!?」
「お仕事で来ていたんだけど実は少し問題が発生したみたいでね。詳しくは中で話しましょう」
少し真面目な雰囲気でお仕事モードになったレヴィアタンさんと一緒に屋敷の奥に通される俺達だがたどり着いた先に居たのはやはりと云うべきなのか九重と天狗さんで八坂さんの姿は無かった
「お初にお目にかかる方も多いようじゃな。私は表と裏の京都の妖怪を束ねる者。八坂の娘―――九重と申す。このような夜分に急に呼び出す事となってしまい申し訳ない」
九重が最初に謝辞を述べ、天狗さんが事の経緯を説明していく
「先日、我らが八坂姫が行方不明となってしまったのです。姫様は須弥山の使者殿と会談をする為にこの屋敷を発たれたのですが何時まで経っても八坂姫が会場に到着しないと連絡があり、調べてみると八坂姫の護衛の一人が重傷を負った状態で見つかりました。その者から話を聞くと『突然紫の霧に覆われ、気が付けば見知らぬ場所で敵に取り囲まれていた』と」
「状況から察するにイッキが前に話してくれた
そうか、九重にはイヅナを通して三大勢力の会談や旧魔王派のテロでの話をしたから護衛の人の話からすぐに
「私が今此処に居るのはね。元々八坂さんと須弥山の会談の後に、私も会談の予定が入ってたからなの・・・なのにいざ来てみたらこの状況って訳。本当にテロリストの人たちには困っちゃうわ。それで今は妖怪側と協力して京都中の調査を行ってる所なの」
「成程、確かに九尾の大将はまだ京都に居るらしいな」
「先生。何でそんな事断言出来るんですか?もうとっくに京都の外・・・それこそ海外とか冥界とかに行っちゃってる可能性は?」
イッセーが連れ去られたのでは?と聞くがアザゼル先生は首を横に振って否定する
「それはない。京都ってのはその都そのものが巨大な力の流れを制御する術式都市でな。その引き締め役の九尾が何の準備も無しに都を離れれば京都全体の気脈に影響がすぐさま出るだろう―――それが無いって事は少なくとも八坂の姫様は京都の何処かには居るって事だ」
「なぁ九重。何でお母さんが攫われたって事をもっと早くに俺たちに言ってくれなかったんだ?知らない仲でもないんだし幾らでも力を貸すぜ?」
隣に座ってたイッセーがそんな事を宣うので取り敢えず頭を『痛撃!ハリセン君』で叩く
「ふんのぉおおおおおおおお!!?痛てぇ!?アザゼル先生の冗談交じりのリアクションだと思ってたのに超痛てぇ!!」
頭を押さえて悶絶してるイッセーを尻目に九重に話しかける
「悪いな九重。俺達が修学旅行って事で気を遣わせちゃったんだろ?―――イッセーも言いたいことは分かるけどもうちょっと考えてから発言しろよ。今はそれでも良いかも知れないけど将来お前も『王』になって眷属を率いるなら、そういった所も覚えて行こうな・・・俺達を此処に呼ぶように言ったのは貴方ですか?」
そう言って天狗さんの方を見ると頷かれた。流石に九重にはそういった政治的な判断とか駆け引きとかはまだ早いだろうからね
「はい。九重様は渋っておられましたが私から進言させていただきました。八坂様を救い出す事が今は第一に優先すべき事であるという事。そしてもし、イッキ殿に何も伝えないままでは後で面倒な輩にまたイッキ殿が難癖をつけられてしまう可能性が高い事を説明し、折れて下さいました・・・皆さまの大切な旅行よりも此方の都合を優先したのは私の判断によるもの。非難の言葉であれば私にぶつけて頂きたい。その上でお頼み申します。八坂姫を救い出すのに皆さまの力を貸して欲しいのです」
彼が頭を下げるのと同時に九重も同じく頭を下げる
「私からもお願いじゃ。母上を助ける為にどうか力を貸して欲しい・・いや、貸して下さい」
「まっ、そういう事だ。若いお前らに言うのも何だがお前らは主戦力だ。捜索などは此方の部下たちが受け持つが有事の際には戦って貰う事になるかも知れん。出来るだけ面倒ごとは俺達大人が受け持つから今は旅行を堪能しろ。高校生の修学旅行は今だけ何だからよ」
『はい!』
皆が返事をしてホテルに帰って行く中で俺だけは屋敷に残って九重と話している
「済まないのじゃイッキ。折角京に来てくれたと云うのにこのような事になってしまって・・・」
そんな落ち込む九重の頭を優しく撫でて声を掛ける
「気にするな・・・って云うのは難しいかも知れないけど敢えて言うぞ。『気にするな』―――そもそも悪いのは全部テロリストであって九重には何一つ落ち度は無いんだからさ」
「しかし!妖怪側で起こった事にお主達を巻き込んで!」
九重は負い目を感じているのか感情的に叫ぶ。だけどその理屈は俺には通用しない
「残念。俺は九重の婚約者だぞ?可愛い婚約者の為にもむしろこっちから巻き込ませてくれよ」
そう言うと九重は一気に顔を赤らめてしまった
「イ・・・イッキよ。お主また少し変わったか?前まではそういう発言は控えめだったはずじゃが―――ぃ・・・嫌ではないのじゃが」
まぁ白音相手に甘々な感じで接したからな。少し自分の中のタガが外れた気はしてる・・・いや、恥ずかしい事は恥ずかしいんだけどね?
それでも今は九重を安心させる為にも正面から引き寄せて腕の中で背中を"ポンポン"と叩いてやる
「八坂さんは絶対に助け出す・・・だから少しは安心してくれ」
「うむ・・・信じておるぞ。イッキ」
あれから少しだけ抱き締めた九重が涙を流したりもしたが、離れる頃にはそれなりにスッキリとした表情になっていたので俺もホテルに戻る事にした
そんなに時間を掛けていた訳でもないので途中でイッセー達に追いついたのだが、初めて九重と出会ったサジなんかには「本当にあんなちっこい子が婚約者なのかよ」とか言われたので本日二度目の『痛撃!ハリセン君』の出番となり、シトリー眷属の他の女の子たちに引きずられていった
確かに現代日本では古くからの婚約者ってのは珍しいけど無い訳じゃないだろうに
因みにアザゼル先生は「アレから如何したんだ?婚約者の立場を使ってちっこい美少女様にキスとかしたのか?カーッ!この鬼畜野郎め」とか言って来たので本日三度目の『痛撃!ハリセン君』・・・をフェイントに使ったボディーブローを入れておいた
背中から衝撃が突き抜けて地面に蹲るアザゼル先生を助ける人は誰も居なかった
こうして修学旅行2日目の夜が過ぎていったのだ
京都においてイッキがそれなりに活動してるという事を描く為にペンタグラム伯爵にお越しいただきましたww