いよいよ最終試合となった
俺達の居る場所は『おっぱいドラゴン』ファンの集まる場所の為、『おっぱいドラゴン』とヒロインの『スイッチ姫』の共闘という形の試合に声援にも特に気合が入っている
因みにアーシアさんは待機組だ
彼女の役割は後方支援だし仮に試合に出て遠距離回復したら流石にサイラオーグさん達も無視する事は出来ない
彼らを相手に今のイッセー達が守備にも力を回しては逆に勝てないだろう
さっきの試合でリザインした白音の所に行って病室から観戦するというのも有か無しで言えば有りだとは思うがそれはしない
俺達は今日は観戦に来たのではなく応援に来たのだ
ならば最後までこの場所で見届けるべきだろう
両チームが転送された先は広大な平野で白く輝く地面に宇宙空間のような空という何とも幻想的な雰囲気の場所だった・・・と云うか空に光輪が浮かんでいるけど、どっかで人理焼却してない?
いや、疑似空間なんだけどさ
≪さぁいよいよバアルVSグレモリーの決戦もついに最終局面を迎えました!サイラオーグ選手の提案により団体戦となったこの試合!バアルチームからはサイラオーグ選手と初出場の仮面の少年『レグルス』選手!対するグレモリーチームはアーシア選手は控えに回り、スイッチ姫ことリアス選手とおっぱいドラゴンこと一誠選手の出場となります!≫
≪それでは最終試合、開始して下さい!≫
実況による選手の紹介が終わり、
イッセーが
≪リアス、始める前に言っておく・・・お前の眷属、妬ましくなる程にお前を想っている。それ故に強敵ばかりだった―――互いにこの場に居るのは『王』と『兵士』のみ・・・終局が近いな≫
そこまで言ってからサイラオーグさんは今度はイッセーに視線を向けた
≪兵藤一誠、ついにだな≫
≪・・・貴方に恨みは有りません。貴方も、貴方の眷属も誇りとそして敬意を持って戦ってくれました。でも!だからと言ってこの場で無心で貴方を殴れるほど、俺は大人じゃ無いんですよ!仲間の仇を此処で討たせて貰います!!≫
イッセーの感情の全てを吐き出す言葉にサイラオーグさんは嬉しそうな笑みを浮かべる
≪極限とも云えるセリフだ・・・ああそうだな、お前はそういう男だった。先ほどの憤怒に駆られたお前の表情が全てを物語っていた・・・よくぞその怒りを此処まで耐え抜いた!さぁもう遠慮は要らん!お前の全てを俺にぶつけて来い!!≫
『Welsh Dragon Balance Breaker!!』
≪では遠慮なく行かせて貰います!!≫
赤い鎧を身に纏ったイッセーが突貫し、サイラオーグさんもまた突貫する
始まりを告げる攻撃はお互いの顔面を捉えたクロスカウンターだった。いや、お互いの攻撃がヒットしてるんだからカウンターとは違うか・・・クロスパンチング?兎にも角にも最初の一撃、イッセーにとって最も想いの籠る一撃は兜を壊されながらもサイラオーグさんを確かに押し返した
≪今のは倒れていった仲間たちの想いも乗せた一撃です!≫
≪・・・練り上げられた拳だ。気迫が体に入り込んでくるようだ!≫
サイラオーグさんは鼻血を拭いつつも更に戦意を高める
その一方でリアス部長と相手の『兵士』の戦いも始まりつつあった
貴族服を着たオレンジの髪の少年は今まで付けていた仮面を外したかと思えば、どんどんと体格が歪に変化していく
着ていた服も大きくなる体に耐え切れずに内側から破れ去り、最終的には全身を黄金の体毛に包まれた巨大な獅子、ライオンへと変身した
≪まさか、ネメアの獅子か!?≫
アザゼル先生の驚愕の声に実況が続きを促す
≪と、申しますと?≫
≪元々は元祖ヘラクレスの試練の相手何だが、それは後に13ある
そんなアザゼル先生の疑問に答えたのは実況が聞こえていたサイラオーグさんだ
≪その通りだ。所有者は既に死んでいる。俺がコイツを見つけた時は既に宿主は怪し気な集団に殺された後だったからな・・・だが、コイツはあろうことか宿主も無しに獅子に化け、その場に居た敵を全滅させたのだ―――俺が眷属としたのはその時だ。獅子を司る我が母の家の血筋の呼んだ縁に思えてな≫
「サイラオーグ様の母君のミスラ様は元は獅子を司るウァプラ家の出身だったはずですわ」
「そう言えばウァプラは獅子だったわね。まぁネコ科だし好感度にプラス5点にゃ」
「いやいや、それ絶対適当言ってるだろ」
関連があるからって一々好感度上げてたらイッセーとかサイラオーグさんの眷属のラードラさんと親友にならなくちゃいけねぇよ!
≪所有者無しに単独で動く神器だと!?しかもそれが悪魔に転生!?
今滅茶苦茶にしたいとか口走りかけませんでした!?
いや、壊すようなような事は勿体ないと考えてしないだろうけど、目からビームを出す機能くらいは取り付けそうだ!
≪こいつは所有者が居ないせいか力がとても不安定でな。よく見境無しの暴走状態になる為にこの試合でも単独で出す事すら出来んのだ。壁や地面を只管攻撃する何て事にもなり兼ねんのでな・・・此奴を出せるとしたら俺と組めるような試合のみだ。もしもコイツが暴走したら力尽くで抑え込めるのは俺だけだからな≫
≪よぉぉぉし!サイラオーグ!絶対にソイツ連れて来いよ!
アザゼル先生、まだテンション高いまま何ですね
とは云え暴走の危険性を抑えられるなら良い事だ・・・研究所では常にサイラオーグさんがレグルスに付き添うと云う条件さえ出せば問題無いだろう
≪何にせよ私の相手はその獅子という訳ね。敵は
自分に飛び掛かって来る獅子に向かって滅びの魔力を浴びせるリアス部長・・・魔法を覚えたと云ってもリアス部長にとって滅びの魔力以上の攻撃力は存在しない為、一緒になって繰り出す魔法も何方かと云えば破壊力では無く、稲光の強い雷撃とか視界を埋め尽くす炎とか相手の足場を崩したり突き上げたりする地形操作とか、滅びの魔力を中てやすいように相手の動きを何らかの形で阻害するタイプだ
一方でイッセーとサイラオーグさんの戦いもレグルスの説明が終わった事で再開となった
イッセーは右腕を白龍皇の腕に変えて殴りかかる
単純なパワーでは今の両者は拮抗している―――そこに『半減』の力が加われば一気に天秤はイッセーの方に傾くだろう
だからこそサイラオーグさんはイッセーの右からの攻撃を避ける!
時に最小限に躱してカウンターを入れ、時に大きめに躱して仕切り直す
兎に角右の拳だけは避ける!
避ける!避ける!避ける!避ける!避ける!避ける!避ける!避ける!避ける!避ける!避ける!避ける!避ける!避ける!避ける!避ける!避ける!避ける!避ける!避ける!避ける!避ける!避ける!避ける!避ける!避ける!避ける!避ける!避ける!避ける!避ける!避ける!避ける!避ける!避ける!避ける!避ける!避ける!避ける!避ける!!!
≪クソ!マジで全然当たらねぇ!!≫
イッセーは毒づくけど右手以外の攻撃は当たってるし、サイラオーグさんも回避に力を入れなければならない為に反撃の手数は減っている・・・要するに今のところは互角だ
お互いに決定打を欠いて戦いが長引いてるけどそれはリアス部長の方も一緒だな
ロスヴァイセさんに防御術式を習えなかった代わりに魔法を回避に費やしてるから此方もまだかすり傷程度だ・・・とはいえ滅びの魔力の直撃であのライオンは軽傷程度だし、派手に魔力や魔法をぶっ放しまくってるリアス部長が先に息切れするだろうな
だがこの中で一番最初に隙を見せたのはあの場で一番の実力者であるはずのサイラオーグさんだった―――クロスレンジで繰り広げられる息つく暇もない攻防、その中でほんの一瞬、しかし確かに彼は立ち眩みのようなものを起こしたのだ
≪此処だ!『
“バギャァァァン!!”
その不意に生まれた隙を見逃さずに一気に攻勢に出たイッセーが『真・戦車』となり、人体を殴ったとは思えないような大音響を響かせてサイラオーグさんを空中に持ち上げる
そしてそのまま『真・僧侶』となり極大の砲撃を撃ち出した
「イッキ様、今一瞬サイラオーグ様の動きが止まったのは・・・」
「うん。何時もより少なくなった血液でイッセーの右腕を最大限に警戒しつつもあれだけ激しく動いていれば一瞬でも脳に酸素が行き渡らなくなっても不思議じゃないさ」
「ゼノヴィア達の奮闘が此処へ来て活きて来るのね!」
そうして砲撃の直撃を受けて血を流しつつも立ち上がろうとする彼にイッセーが追撃を仕掛けようとしたところでリアス部長の叫び声が響いた
画面がそちらを映し出すと金毛を所々血で濡らしながらも未だに健在なレグルスがボロボロとなったリアス部長の前に立っている
全身を爪で切り裂かれたのか防御術式を練り込まれていた特別性の制服も穴だらけでその真下に見える肌からは大量の血が流れている
ぶっちゃけ半裸一歩手前だ
それからレグルスはイッセーにフェニックスの涙を使うように促す
サイラオーグさんもそれを認め、イッセーが持っていた『涙』でリアス部長を回復させた
「ん~、私ならサクッと殺っちゃうにゃん♪」
「そうだな。俺も獲れる時に獲っちゃうタイプかもな」
「でもでも!それって何だかカッコ悪くない?」
「『王道』を持ってして不確定ながらも高い評価を得るか『覇道』で持ってして無難で確実な実績を得るかですわね」
「状況にもよるだろうけど俺はヒーローでも無ければ英雄でも無いからな。多少一時的に評価を落とそうと勝利を積み上げて世論の方を変えていければ良いさ」
完全に全てを味方にする事は出来なくともそれなりの支持者は付くだろう・・・そんな戦法で戦って負けが込めば一気に『小者だった』と評価は急転直下するだろうけどね
「まぁ少なくとも小賢しい手は使っても卑怯な手は使わないさ」
「リュディガー・ローゼンクロイツ様を筆頭に人間からの転生悪魔は『もう戦いたくない』と評価される方が一定数おりますが、こういう処なのかも知れませんわね」
下賤な元人間なんかに黒星を付けられたくないって考えの貴族悪魔にとっては勝利に噛り付くタイプの敵とは戦いたくないんだろうな
負けたら貴族社会で陰口叩かれまくるだろうし・・・そう云えば将来的にレイヴェルとかも人間の俺と結婚したりしたら悪魔の腐った貴族たちに陰で馬鹿にされたりするのか?
あ、ヤベェ!考えただけでイラつくわコレ!
でもなぁ―――性根の腐った奴らの認識を変えるのは難しいし、分かり易いのは俺が圧倒的に強くなって神クラスくらいの力を冥界に示せたら大分マシになると思うけど流石に考えるだけでも現実的とは言い難いな
おっと、思考が逸れたな。それも大事だけど今はイッセー達の試合の方だ
丁度今、レグルスがサイラオーグさんに自分を身に纏うよう進言し、彼に一喝されているな
でもそれを聞いたイッセーがレグルスの力を使うように促している
≪俺は、いや、俺達は今日!最高の貴方を倒して勝利を掴むんです!全力を出さない相手に勝てたとしてそれが一体何になるって言うんですか!?≫
「にゃはは、泥臭いけど良い啖呵だにゃ♪イッキはああいう熱い展開は苦手かにゃ?」
「いや、俺も好みだぞ?実戦なら兎も角、ゲームとかで特に背負うものが無いなら、あんな風に闘っても良いかもな」
「うふふ、やはりイッキ様も殿方ですのね。先ほどはあんな事を言ってましたが、それは守りたいものを優先するが故の選択であると」
む・・・そんな風に持ち上げられるとは思わなかったな
「・・・俺は弱っちぃ人間だって事に自覚的なだけだよ。全部を守る何て云えないから、せめて手の届く範囲を守ろうとしてるだけだ」
ヒーローなんて柄じゃないからな・・・そういうのはイッセーにでも任せるよ
「ですが、イッキ様がお強くなれば手の届く場所は少しずつ、しかし確実に広がりますのよ?」
「ま♪強くなるのは好きだし、それがイッキの為にも繋がるなら私ももう少し頑張って上げても良いのよ?レイヴェルも守られるだけじゃなくて一緒に誰かを守れるように強くならないとにゃ♪」
「勿論ですわ!!」
う゛・・・将来のお嫁さん達が献身的で泣きそうになるわ
内心ちょっと感動しながらも画面の向こうではサイラオーグさんが全身に獅子を象った黄金の鎧を身に纏った
アレがレグルスの
変身を見届けたイッセーが『真・戦車』となって獅子の鎧を身に纏ったサイラオーグさんに渾身の一撃を叩き込むが、それは片手だけで受け止められてしまった
≪これで限界か≫
その呟きと共にサイラオーグさんの拳がイッセーの腹部に鎧を破壊して突き刺さり、そのまま仰向けに倒れてしまった
鎧も一時的に解除され、中身のイッセーは指先や口の端がピクピクと動くだけでその瞳も完全に焦点があっていない
リザインしてないのは朦朧としてはいるもののギリギリ意識があるからだろう
≪イッセー!!≫
画面の中でフェニックスの涙で回復したリアス部長が倒れたイッセーに近づき、そのまま上半身を抱き起して声を掛ける
≪イッセー!しっかりしてイッセー!目を開けて!≫
≪兵藤一誠。コレで本当に終わりなのか?・・・3分だけ待とう≫
サイラオーグさんもそう言い残し、少しだけ二人から距離を取って見に回る
俺達の周りの席ではおっぱいドラゴンのファンの子供たちが泣きそうになっている
いや、既に泣いてしまっている子供も居る
「おっぱいドラゴン死んじゃやだぁぁ」
「立って、立ってよおっぱいドラゴン!」
そんな中、イリナさんが子供たちに『おっぱいドラゴンは何度でも立ち上がる。だから信じて応援しよう!』と諭してこの応援席から始まったイッセーを応援する声は次第に観客席全体に伝播していく・・・まぁ『おっぱい!』コールなのは色々とダメだとは思うけど
だが会場の皆の想いが届いたのかリアス部長の胸が京都の時のように光輝き、その光を浴びたイッセーがリアス部長の胸に吸い付いたぁぁぁぁぁぁ!?
≪いやぁぁぁん♡≫
一部映像に謎の光が差し込んだがコレに会場は爆発した
え!?そこは光を受けて立ち上がるだけじゃ無かったの!?
≪ああっと!コレはぁぁぁ!?皆さまご覧下さい!未だに焦点が合っていないように窺える兵藤一誠選手・・・もとい『おっぱいドラゴン』がスイッチ姫の破れてしまっていた服の下乳の辺りから顔を突っ込んで遂に吸い付きました!ぶちゅうううっと吸っております!意識が定まっていないにも関わらず、いえ、アレは意識が無いからこそ本能のままに吸い付いているのでしょう!一心不乱です!"チュウチュウ"と擬音が聞こえて来るかのように吸い付いております!≫
いや実況興奮し過ぎだろう。どれだけ詳細に語ろうとしてるんだよ!
≪うおぉぉぉぉぉぉん!うおぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおん!!≫
ほら!宿主の醜態が生中継されている展開にドライグが号泣し始めたぞ!
そして漸く満足したのか(何を?)口を離したイッセーが紅の光に包まれ、光が収まると鎧を変化させたイッセーがそこに立っていた
≪うおぉぉぉぉぉぉん!うおぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおん!!相棒!俺は・・・俺はっ!!・・・うおぉぉぉぉぉぉん!!!≫
≪ど・・・如何したドライグ!?ほら!俺は戻って来たぞ!心配掛けちまったみたいだけどそんなに泣く事無いじゃねぇか!≫
うん。どうやらあの様子だとイッセーはさっきまでの事はまるで覚えて無いみたいだな
確かに意識が朦朧としてるみたいだったけどさ
そこにリアス部長が問いかける
≪い・・・イッセー、その事は良いのよ!気にしないで頂戴!それよりもその鎧は!?≫
≪はい!どうやら俺は『真・女王』となれたみたいです!でもそれだけじゃありません!素の俺自身の能力も格段に引き上げられている状態です―――俺は周囲から散々才能が無いと言われていました。だから、それを補う為の特訓は欠かさなかった。でも、力では無く才能そのものを伸ばす方法は本当に無いのかって疑問に思ったんです!・・・ヒントはピー
ああ・・・死にかけて復活すると戦闘力が引き上がる某野菜星人の体質ね
ドラゴンショットだってその漫画のドラゴン波が元ネタだしな
イッセーの場合は彼の資質・才能を
≪・・・ただ、その為には膨大な量の
≪ふむ、それはだな兵藤一誠“バジュンッ!!”・・・俺から言うのは止めておこう≫
サイラオーグさんが素直にイッセーに教えようとするが涙目のリアス部長の滅びの魔力が高速で顔の横を過ぎ去り兜が一部削れてしまったので言葉を止める
流石にデリカシーが無いと思ったのだろう
と云うかリアス部長。今滅茶苦茶濃い滅びの魔力を放ちましたよね!?
本人は気づいてないみたいだけどさ
≪気にはなるけど今は良いです。この鎧、そうですね『
その宣言にサイラオーグさんが楽しそうに笑い、戦闘が再開するが、真紅の鎧だけでなく素の力も上昇したというイッセーにパワーもスピードも上回られたサイラオーグさんが一気に劣勢を強いられるようになる
≪強い!これ程のものか!だが、此処で簡単に膝をつくようではバアル家の次期当主を名乗れるはずもない!≫
既に何発もイッセーの拳を受けて既に膝がガクガクと震えているサイラオーグさんはそれでも只管に前に進む
だがしかし、だからこそ手加減をせずにイッセーは彼を吹き飛ばし、本日二度目のチャージ砲撃を放ち、サイラオーグさんは爆発の中に消えていった
煙が晴れた時にはクレーターの中心で倒れているサイラオーグさん
ある意味でさっきとは逆の構図だ
そしてそれは観客席も多少ではあるが同じだった
彼が倒れて少し経った頃、子供の一人が叫ぶ
「ライオンさん頑張ってぇぇぇ!」
微かにサイラオーグさんの指が動く
「立ってよライオンさぁぁぁん!!」
腕に、足に、少しずつ力が入っていく
それはおっぱいドラゴンの声援に比べたら小さいものなのかも知れない
しかし、サイラオーグ・バアルにこそ魅力を感じ、応援する子供も確かに居るのだ―――そして彼は自分に届くその小さな声を決して蔑ろにしたりしない
自分を応援する子供の声でおっぱいドラゴンが立ち上がったのなら自分が同じ事をされてこのまま寝ていて良い道理などないと云う事なのだろう
そして遂にサイラオーグはボロボロでありながら先ほどよりもオーラを全身に漲らせて立ち上がった・・・それから先はただの殴り合いだ
殴って殴られて、お互いの鎧が修復も間に合わずに崩れ落ちていき、最後に殆ど生身となった処で鎧の胸部分のライオンの顔、それも半分しかないレグルスが待ったを掛けた
≪もう良い、赤龍帝。我が主は、サイラオーグ様は少し前から意識を失っておられた≫
立ったまま、殴りかかる体勢のまま気絶したサイラオーグさんに感極まったイッセーが彼がリザインの光に消えていくその瞬間まで泣きながら抱きしめてグレモリーチームの勝利が告げられた
試合が終わり、皆で家に戻って来た
祐斗を筆頭に皆酷い怪我ではあったが腹に穴が開いててもその場で治せるアーシアさんの治療の前ではかすり傷に等しい為速攻で退院となったのだ
その際、サーゼクスさんがリアス部長を通じてイッセー、祐斗、朱乃先輩、白音の4人に中級悪魔への昇格の話が有ると告げていった
ぶっちゃけその話に驚いてたのは裏の世界にまだまだ詳しくないイッセーとアーシアさんくらいだったけどな
4人の中では一番弱い朱乃先輩ですら上級悪魔の上位にも喰い込める実力だし、他の3人は最上級悪魔クラスはある・・・もっとも、一口に最上級と云ってもピンキリだけどな
インフレの酷いこの世界では一つ階級が上がるたびに力の上げ幅が大きくなっていくからな
ともあれ今は俺の家の屋上に白音と居る・・・例の約束を果たす為だが口に出して切り出すのは恥ずかしい為何となく自然にアイコンタクトを取り合って屋上まで来てしまったのだ
前回と同じ失態を踏まない為に屋上への通路は外周も含めて結界を張っておいた
因みに白音も自然と結界を張った―――流れるような共同作業だったな
今は夜の為、何とは無しに星空を見上げていると会話を切り出したのは白音からだった
「試合には勝ちました・・・でも、私個人としては負けてしまいました・・・悔しかったです。枷を外した彼が相手では勝ち目は薄いのは分かってました。リアス様たちに後を託せたのも誇らしく思います・・・それでもやっぱり悔しいと感じました」
そっか、最初に病室に向かった時に僅かに目元が赤かったのは悔し涙を流してたからなんだな
「なら、強くならないとな」
『俺が白音を守る!』・・・みたいなセリフは此処では相応しくないだろう
「はい!だからイッキ先輩、私に勇気を下さい」
星空を見上げていた白音の顔が此方を向く
このままキスという流れでも良いのかも知れないけど少し悪戯しよう
「勇気だけで良いのか?」
「・・・やる気も下さい」
「その二つだけ?」
「ッツ!あと根気も優しさも未来も愛情も先輩の全部を私に分けて下さい!!」
あ、ヤバい!自分から揶揄っておいてこんな事言われたら我慢できないわ
白音の細い体を抱き寄せてキスをする
前に遊園地でした時は十数秒程だったが今度は数えてないけど1分以上はしてた気がする。途中から止め時が分からなくなってしまったからな。我ながらどんだけ離れたくなかったんだか
それでも自然と距離が空いてから赤い顔のまま見つめ合う・・・と云うかフリーズし合って動けないだけだなコレ
「えっと・・・今日はもう寝ようか?」
「は・・・はい・・・」
ギクシャクしながらもベッドに戻るとそこにはニヤニヤしている黒歌が居た
まぁ彼女ならこの後根掘り葉掘り聞いてくるのかも知れないけど態々話てやる事も無い
そう思ってると一つのカメラを黒歌は取り出した
「どうどう?良く撮れてると思わないかにゃ~?」
デジカメ式のそこに映っていたのはつい先程の俺と白音のキスシーン!?
え?何で?この家にはガチガチに結界を張ったから例え黒歌でもあの短い間には突破は出来なかったはずなのに!?
「ふふ~ん!イッキは恋愛方面になると途端に警戒が緩くなるわね♪この家の屋上に上がれなくてもすぐ隣に同じ6階建ての建物が在るんだから、そっちから撮らせて貰ったにゃん♪」
すると隣に居たレイヴェルは弁明してくる
「大丈夫ですわ!ちゃんとリアス様たちにも事情を説明して屋上に上がらせて貰いましたから!リアス様は黒歌さんが変な事しないか見張ると言って、他の方々も一緒に付いてきましたが」
「イッキや白音が気付かないレベルの隠密結界を張るのは疲れたにゃ~」
・・・・・いやそれ全員にガン見されてたって事じゃねぇか!!何のフォローにもなってないよレイヴェルさん!?畜生!次が在れば近づけないだけじゃなくて外部から見えない結界にしてやる!
翌朝・・・トレーニングルームでイッセーが俺の顔を見るや血涙を流しながら真紅の鎧となって殴りかかって来た
「畜生ォォォ!イチャイチャ、イチャイチャしやがってェェェェェェェ!!」
「知るかボケェェェ!お前なんて生放送公開告白してただろうがぁぁぁ!!」
取り敢えず朝から死闘だった・・・いや勝ったよ?まだまだ『真・女王』の力が不安定だったからオーラが極端に薄くなる場所を狙ってのカウンターをしまくってやったらダウンしたからね
ただ、流石に単純なパワーとかは抜かされてるから冷や冷やしたけど・・・オーラを集中しての防御法って失敗したら超絶大ダメージだからな
そんな事も在りつつも学園祭がやって来た
旧校舎を改造したオカルトの館はのっけから大盛況だった
一番客を呼び込んだシステムは好きな部員との写真撮影サービス
この学園は元が女子高の影響で女子の比率が高いけどオカルト研究部は基本はアイドルの集まりの為二大お姉様を筆頭に撮影依頼が入る入る!
祐斗のイケメン紳士オーラやギャスパーの男の娘キャラとかも人気は高い
一応俺にも指名は入ったけど数はそこそこだな
まぁ俺に黒歌という恋人が居るという情報はそれなりに流れているみたいだから遠慮されているのかも知れんがな
因みにイッセーは案の定指名はゼロ人だった・・・この辺りは日頃の行いだろう
「イッキ君!3番テーブルにイチゴのマフィン!それと撮影希望だってさ」
「了解!」
慌ただしく駆け回る中、久々に指名も入ったので祐斗が出してきた料理を盆に乗せ3番テーブルに向かう―――そこに居たのは大学生風の私服を着た黒歌だった
「黒歌かよ!」
「ふふ~ん!準備は私も多少は手伝ったけど折角だからお客としても来てみたのよ。後で白音にお祓いでもして貰おうかしら?」
お祓いって・・・そもそも憑り付かれて無いし、黒歌に憑いたり呪ったり出来るレベルの相手とか最低でも魔王クラスは引っ張ってこないと無理だろう
と云うか黒歌は悪魔で化け猫なんだから基本的には祓われる側だよな?
「取り敢えず今はお客何だし写真を撮りましょう?そうね・・・レイヴェル、ちょっと写真お願いできる?」
む?写真は別に顔を寄せ合った2ショットが基本だから(または俺達単品の写真)別に誰かに頼まなくても十分普通に撮れるんだけど―――そう思って黒歌の方を見ると『アーン♡』と形容できそうな感じに口を開けて来ていた
「ほらほら、早く私にマフィンを食べさせて欲しいんだけど?」
「く・・・黒歌さん!?此処でやってるのはあくまで普通の2ショットまでで恋人2ショットは許可されていませんわ!」
うん。それをやったら阿鼻叫喚の地獄絵図になるわ
祐斗の紳士オーラを間近で浴びて耐え切れずに病院送りになる女子とか続出しそう
黒歌が「え~!」と口をとがらせていると白音がやって来て黒歌の頭をお祓い棒で叩く
見ればお祓いコーナーや占いコーナーはお昼の時間なので一時的に閉めたようだ
喫茶店は兎も角、それ以外までフル稼働してたら休憩回しも出来ないからね
「全く、忙しいんですから我が儘も程々にしてください―――イッキ先輩、交代しますのでイッセー先輩と先にお昼に行ってきて下さい」
白音に促され、去る前に黒歌と普通に写真を撮った後でイッセーと休息に入る
女子の方もローテーションで少しずつ抜けて休息に入る形だ
旧校舎の裏側で手早く食べられるお握りを頬張っているとアザゼル先生が現れ、サイラオーグさんの周辺事情を話してくれた
「そんな!サイラオーグさんを支援していた上層部の多くが手を引いたんですか!?」
「そうだ。幸い、サイラオーグの母親のミスラ・バアルは才女と謳われた女性らしくてな。長く床に臥せってたらしいが回復して独自のパイプが在るらしく、まだサイラオーグに付いていても旨味が得られる連中は残った形だ―――もしもサイラオーグだけだったら全員離れていたかも知れんがな。奴は最近になって台頭し始めた若手の為、まだまだパイプ造りが弱いところが在ったからな」
確かにな・・・サイラオーグさんが次期当主になったのってここ数年の話だろうし、独自の強固なパイプを繋げるのは難しかっただろうな
「これが悪魔業界だ。実力主義を謳いつつも血筋とプライドと政治が絡む魔境だよ。お前らも将来裏の世界で上の立場に立つならば、今から覚悟は決めておけ」
確かに、共に京都を守るはずの妖怪と祓い人のいがみ合いとか考えるだけでも面倒臭いしな
難しい顔をしていた俺達を見てアザゼル先生は軽く笑う
「まぁまだ最低でも数年は先の話だ。今は青春を楽しみな―――それが将来の自分の糧になるだろうさ。イッセーの新形態と併せて着実に成長していきな」
「言われてるぞ?朝の模擬戦で俺に負けたイッセー?」
「うっせぇぇぇ!次こそはイッキ!お前に勝つ!!」
ハッ!簡単に抜かさせてやるものかよ!
鬼の形相で襲い掛かって来るイッセーから逃げ回っていると飯を食べた直後の運動で二人とも腹痛で蹲る事になった
それを見たアザゼル先生は今度は楽しそうにカラカラと笑う
「そうそう、お前らみたいな馬鹿が少しずつトップに立っていけば裏の世界も少しは風通しが良くなるだろうさ」
そうして時間は過ぎて夜―――学園祭の最後にイッセーが改めてリアス部長に告白するのを全員で出歯亀するのをイベントの
流石にイッキが絡まない同じメンバーの決戦は代わり映えしなかったですね。もはやドライグを泣かせる事くらいしか出来なかったですww
次章辺りから敵が叩き潰しても問題無い相手ばかりですのでイッキが暴れます・・・次章はまだしも次々章辺りとかカオス回にする予定なのでお付き合いいただければ幸いですww