[イッセー side]
今まで何度も感じた、忘れたくても忘れられない感触と共に周囲の皆以外の人の気配が消えてしまった。この感覚はあの霧使い・・・って事は英雄派か!こんな所で仕掛けてきやがって!
「皆!無事か?」
咄嗟に声を掛けながら周囲を見渡すとレイヴェルから焦った返事が届く
「イッキ様が居ませんわ!」
えええええ!?何イッキの奴またハブられたの!?そろそろ本気で拗ねるぞアイツ!
「あ~、イッキの奴は心配しなくても良いよ。京都の時もアイツだけ遠くに跳ばされてたし、ある意味一番安全だと思う。それより今はロビーに向かおう。そこなら此処より広いし、テーブルでゴチャゴチャもしてないからな」
皆俺の意見には賛成なのかロビーに向かう事になった
そして全員でその場に到着すると奥の方に二つの人影が見える
そして片方が指を鳴らすと俺達の入って来た入り口の後ろの壁から炎弾が放たれた
だが攻撃が当たる直前にオーフィスが二人の間に立ち塞がり、迫りくる炎を片手で掻き消した
「あ・・・有難う御座います」
「有難う、オーフィスちゃん!」
二人にお礼を言われてもオーフィスは黙ったままだけど無口・無表情がデフォルトだからよく分からんな。でも、ナイスだったぜオーフィス!
「やぁ、アザゼル総督にグレモリー眷属の諸君。いきなりの挨拶をさせて貰ったよ―――京都での仕返しってやつさ」
声を掛けて来た方を改めてよく見ればそこに居たのは英雄派のリーダーの曹操と霧使いの確かゲオルクとか言ったか?その二人だった
「へ!だからイッキもこの空間に招待しなかったってか?京都でもお前らはイッキを東京まで跳ばしてたよな?そんなにイッキが恐いのかよ?」
「いやいや、前回彼のデータは取らせて貰ったからね。今回は最初から戦っても良かったんだが、折角なら悪戯の一つでも仕込んでみようと思ってね。京都の時は彼の持つスキルから考えて霊脈の流れを使って疑似空間に侵入したようだけど、今回も入って来れるのかなってね」
イッキの奴、そんな理由でハブられたのかよ!
と云うか大丈夫なのか?アイツの言う事をそのまま信じるなら前回イッキがこの結界の中に侵入した手段はもう使えないって事になるんだが
「ほう、だがイッキが隔離されるでも無しに外に居るってんならサーゼクス達に一早く情報が伝わるだろう。魔王軍が集団でこの結界を外側から崩しに来たなら破られるのも時間の問題だぞ?」
そうか!アザゼル先生が言う通りだ!例えイッキ一人じゃ難しくても援軍の人達と協力出来ればそれこそ時間が経てば味方が雪崩れ込んで来るって事になる!
だがアザゼル先生の指摘に曹操は槍で肩をトントンと叩くだけで余裕の表情を崩さない
「おっしゃる通りだ。有間一輝は先ほどのホテルに居る・・・だが、この空間がそこに在るとは言ってないですよ?確かにこの疑似空間はあのホテルを再現しているが既にこの結界の座標は冥界の遥か遠くに転移している。現実世界のあのホテルを幾ら探ってもこの空間への入り口は見つけられない・・・まぁちょっとした宝探しを彼にはして貰ってる訳です」
はぁ!?裏の空間に隠れた冥界の何処に在るのかも分からないこの結界を見つけろって!?宝探しにしちゃ難易度高すぎだろう!?俺ならそんなクソゲー返品しちまうぞ!これじゃあ幾らイッキでもこの場所を見つけるのは不可能に近いんじゃないか!?
「ふぅん、でもこっちはそんなお子様のお遊びに付き合う義理は無いのよねぇ」
そう思ってると黒歌さんが前に出た。何時もの陽気な感じはそのままに何処か雰囲気がトゲトゲしい―――表面上は笑いながら内心は怒ってるんだろう。楽しい時間に水を差されるのとか本気で嫌がりそうだもんな・・・いや、俺も怒ってるけどさ
「塔城白音の姉の元SS級はぐれ悪魔の黒歌ですか。貴女が過去にナベリウス家に居た時のレーティングゲームのデータと神ロキとの戦いのデータは見させて貰いましたよ・・・それで一体どうするつもりなのかな?解決法が有るのなら是非見せてくれたまえ。次回からはその経路を潰せるようになるからね」
野郎!本当にイッキを追い出したのはただの嫌がらせかよ!その上でデータの収集だけは余念がないとか本気でやりにくい相手だな!
「全く生意気なクソガキにゃん。まっ、イッキの方も最低限の連絡は済んでるだろうし、そろそろ呼びましょうか」
そう言うと黒歌さんは右手の爪を鋭利に伸ばし、左腕を少し切り裂いた
そして傷口の血を指先で掬って左の掌に横一線に付けると印を結んでから地面に叩きつけた!
”ボフンッ!!”
「にゃはは♪忍法口寄せの術!・・・なんちゃってね♪」
「いや黒歌、忍法かどうかは兎も角、割とそのまんまだから」
小気味いい音と共にイッキが現れた
それを見てゲオルクは興味深そうな視線を送る
「ほう、どうやら今のは東洋式の使い魔召喚の術式のようですね」
「そっ♪普通の使い魔召喚じゃなくて血を触媒にしている分強く呼び出せるのにゃ♪」
使い魔召喚!?それってまさかイッキが黒歌さんの使い魔って事!?
「成程、それに使い魔召喚は完全な上下関係の従属契約であれば相手を呼び寄せる強制力も強くなる。普通強者が使い魔としての肩書を持つなどプライドが許さないなんて事は多いが、キミは自分も一つの駒として換算しているのかな?」
「まぁな・・・そこに有用な手段が有るなら使う事に忌避感はないさ」
マジかぁぁぁ!いやでも俺だってリアスの眷属だけど普通に下僕って呼ばれたりもするし、実態は兎も角使い魔も下僕も大して違いを感じられないのは日本人ならではの感覚か?
思考が横に逸れてるうちに黒歌さんの説明は続く
「ふふん♪それにイッキは私の使い魔だけど逆に私もイッキの使い魔なのよ?まさか私がまた首輪付きになっちゃうだなんてねぇ・・・まぁイッキのペットなら悪い気はしないにゃん♪」
なん・・・だと・・・
「いや、その理屈だと俺も黒歌のペットになるんだが?」
イッキが何か言ってたがもはや耳に入らない!
「ペットォォォ!?イッキお前自分の彼女に首輪でリード付けてペットプレイとか何時の間にそんなイヤらしい上級者プレイを嗜むように為りやがったぁぁぁ!!」
「あらあら、ペットだなんてそんなの私の中のSの血もMの血も両方滾ってしまいますわ♪そうでしたのね・・・鞭で叩いたり縛り付けたりするだけが愛情表現の全てではありませんのね。黒歌さん!今度感想を聞かせて下さいな!」
ああ!何か朱乃さんが新しい道を開拓しようとしている!
ペットの朱乃さん・・・ヤバい!想像しただけで鼻血が噴き出そうになるわ!
「成程な、SMプレイにこそ
人を欲に堕とす堕天使の総督たるアザゼル先生の想像を上回る変態プレイだと!?
イッキ・・・時々俺はお前の突き抜けた変態性に戦慄と畏怖を覚えるぜ!
「俺を無駄に変態にするんじゃねぇぇぇぇぇぇ!!」
イッキの叫び声がロビーに木霊する・・・全く照れなくても良いのによ
今度、二人っきりで一度腰を据えてエロトークしようぜ!
[イッセー side out]
黒歌に呼び出された直後から何か周りが俺を変態認定してきたり朱乃先輩の妄想が爆発したりアザゼル先生が全く必要のないところで悔しがってたりとしていた
「ほら黒歌、お前のペット発言から皆可笑しくなったんだし何とかしてくれよ」
「ん~、イヤ!・・・というよりは無理にゃ♪」
楽しそうにしやがって!混沌だけバラ撒いて後は放置かよ!
確かにこの場を治めろと仮に言われたら如何すれば良いのか分かんないけどさ!
因みに今回は黒歌に呼び出されたけど、対外的に使い魔という肩書が知られるのは面倒臭いので基本は秘密だ
それと実は白音やレイヴェルとも同じ契約を交わしていたりする
仮に第三者にバレてしまっても最悪問題無いようにそれぞれの保護者的立ち位置のリアス部長にフェニックス卿、そして総括として八坂さんにも『この契約は対テロリスト用の緊急時における一時的な~』みたいな御堅い文章の契約書も作成する事になったけど必要経費だろう
こういう政治的抜け道手法にこなれているであろう八坂さんやフェニックス卿は兎も角、リアス部長には呆れられたけどな・・・自分をヒエラルキー最底辺の使い魔というカテゴリーに押しやるとか生粋の貴族からしたら中々思いつく手法では無いんだろう
まぁこの手法は俺に疑似的に主が三人居る状態になるので召喚事故が起こり易くなる為、本当に一時的な処置だったりするんだけどな
「成程な、それにしても有間一輝が使い魔とかまた反則だな。レーティングゲームなら使用に規制が掛かる事間違いなしだ―――ああ、そうそう。この間のバアルとのゲームは見させて貰ったよ。皆が皆高い能力を持っている・・・良い眷属を集めたものだね、スイッチ姫」
曹操にスイッチ姫と呼ばれたリアス部長は明らかに不機嫌顔になったな
「褒められてるのか貶されてるのか分からないわね・・・少なくとも貴方にスイッチ姫なんて呼ばれたくはないわ」
「それは残念。これでも俺は京都でおっぱいドラゴンとスイッチ姫のコラボレーションをリアルで拝見したんだがね。ファンの一人には数えて貰えないのかな?」
「・・・貴方、『おっぱいドラゴン』のファンなの?」
「いいや違うさ」
曹操の小馬鹿にしたような態度にリアス部長、かなりイラっとしてるな
「さて、そろそろ本題に入ろうか・・・オーフィス、ヴァーリと共に何処かに出かけたと思ったらまさかこっちに居るとはね。予想の範疇ではあったが、それでも少々驚いたよ。今頃ジークフリート達はヴァーリと闘りあってる頃かな?」
曹操の言葉に皆が訝しんでいるとルフェイが挙手をして状況の説明をしてくれた
「えっとですね。事の発端は二つありました。一つはオーフィス様がおっぱいドラゴンさんに大変ご興味を抱かれたのをヴァーリ様自身も気になったらしく、アザゼル様経由で話し合いの場を提供なされようとした事・・・もう一つは曹操さん達英雄派がオーフィス様に牙を剥こうとしている兆候が見られたので折角なのでこの機会にオーフィス様を囮として炙り出そうとした事です―――もっとも、オーフィス様を本当に囮にする事も無いという事で美猴様がオーフィス様に化けてヴァーリ様と行動を共にし、本物のオーフィス様は秘密裡におっぱいドラゴンさんのお宅にお連れしたという訳です!」
ルフェイの説明を聞いた曹操も槍で肩をトントンと叩きながらも補足する
「その通りだ。俺達もヴァーリがオーフィスを何の策も無しに囮に使うというのには違和感を感じていた。とはいえヴァーリの方も無視出来ない・・・結局隊を二つに分けて俺とゲオルクが赤龍帝の方に探りを入れる事にしたんだ。オーフィスが今代の二天龍に興味を持っているのは分かっていたからな。そしたら案の定だったという訳だ」
「曹操、我を狙う?」
オーフィスが前に出て曹操に問う
「ああ、貴女の力は我々に必要だが貴女自身は我々には必要無いと判断した」
「・・・言ってる事分からない。けど我、曹操に負けない」
それを聞いた曹操は肩を竦める
「でしょうね、貴女は余りにも規格外過ぎる。全盛期の二天龍がタッグを組んだ処で一蹴されるのが関の山だ・・・でも折角の機会ですし、少し試してみますか。ゲオルク、邪魔が入らないように結界を頼む。有間一輝の居る場所でお遊びをするなら保険は掛けないと次の瞬間首が飛ぶからね―――シャルバ・ベルゼブブの二の舞は御免だよ」
「了解」
曹操に返事をすると同時にゲオルクが俺達と曹操達を分断する霧の結界を張った
研究されるのって確かに面倒臭いな
まさに曹操が言ったような事出来ないかな?って考えてたのにさ
次の瞬間、一瞬でトップスピードに乗った曹操が聖槍をオーフィスの腹の中心に突き立てて体を貫通させる―――そのまま刺さった刃の部分に凄まじい質量の光が集約し始めた
「輝け、神をも滅ぼす聖槍よ!」
その言葉と共に集めた光が暴力的なまでに輝き、オーフィスを中心に周囲をも破壊し始める
「あの光(オーラ)は悪魔は掠っただけでも死にそうにゃん」
そう言うと黒歌は俺達の周囲に濃い黒い霧を発生させる
「これは光を緩和させる霧何だけど吸い込んだりしないでね?あの聖槍の威光を防ぐレベルだと悪魔や人間でも体に毒にゃ・・・光力が体に満ちてる天使や堕天使なら永遠にお寝んねにゃ♪」
それを聞いたイリナさんは「ひぅ!」と短い悲鳴を上げて霧から離れる
アザゼル先生なら大ダメージで済むかも知れないけど今のイリナさんなら死ぬかもな
少しすると聖槍の輝きが無くなったので黒歌も霧を解除する
曹操がオーフィスの腹に刺さった槍を引き抜くとポッカリと穴が開いていたが、血が噴き出る事も無く何事も無かったかのようにその穴は破れた服ごと再生される
それを見た曹操は呆れたように息を吐いて言う
「悪魔なら直撃すれば魔王だろうと瞬殺できる位の力は籠めたんだけどね。力ある神仏であろうと致命傷。それを受けても眉一つ動かさない・・・見たかい諸君?コレがオーフィスだ―――グレートレッドを抜かした全勢力で最強の存在。神々だろうと神を滅ぼす
アレか?数時間掛けて倒す無茶苦茶なHPを誇るレイドボスに常に回復するリジェネまたはリホイミが掛かりっぱなしな感じかな?
確かにそれは正攻法での攻略はほぼ不可能だな
「攻撃を仕掛けた俺に反撃もしない・・・理由は簡単だ。何時でも俺を殺せるから。実力差が掛け離れ過ぎているからこそ俺に興味を抱かず、だからこそ反撃もしない。基本的にグレートレッド以外はどうでも良いんだよ。まぁそれ故にオーフィスが今代の二天龍に興味を示したと云うのはヴァーリが関心を持つのに十分な事柄と云えるんだけどね」
そこまで言うと俺達のすぐ傍の床に魔法陣が展開した
「ふぅ、やっと繋がりました」
さっきから俺達の後ろで集中していたルフェイが汗を拭い、フェンリルが魔法陣の中心に立つと魔法陣の輝きが増し、光が弾けた次の瞬間にはそこに銀髪イケメンのヴァーリが立っていた
「ご苦労だったなルフェイ。そして、直接会うのは久しぶりだな曹操―――やっと敵対してくれて嬉しいよ。ようやくお前との決着を付けられそうだ」
「ヴァーリか、コレはまた驚きの登場だな。有間一輝といいお前といい、ゲオルクの結界を一々すり抜けて来るとはな。次は一体どんな方法で転移して来るんだか」
「ふっ、安心しろ。次など来ないさ・・・それにしても此方もまさか此処に居るのがお前とゲオルクの二人だけだとは思わなかったよ。たった二人で俺達を相手取れると思っていたのか?随分と大胆な英雄様だ」
「その通り、英雄だよ。俺達はね―――何、単純に俺達だけで十分だと判断したまでの事さ」
「その自信の源は例の『
曹操はヴァーリの推理を頭を振って否定する
「違う。違うんだよヴァーリ。『
アザゼル先生が曹操の話を聞いて小声で「マジかよ」と呟いている
聖書の神の名前まで出てきたら悪い予想(サマエル)的中って確定ですもんね
「漸くだな。ついに俺達英雄が無限を喰らう時が来た」
ゲオルクが大仰に両腕を広げると奴らの後方に巨大な魔法陣が展開され、そこからドス黒い禍々しいオーラが噴き出した
『これは!このドラゴンだけに向けられた圧倒的な悪意は!!?』
ドライグが戦慄する声が響く中、床に敷かれた魔法陣から徐々にソレは姿を現した
巨大な十字架に磔にされ、全身を拘束具でぎゅうぎゅうに締め上げられ、釘でめった刺しにされた上半身が堕天使で下半身が東洋タイプのドラゴンの姿をした存在だ
”オオオォォォォォォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオ!!”
開かれた口からは血と唾液と共にあらゆる負の感情を含んだ怨嗟の声が響き渡る
「オーフィス!お前を逃がすからちょっと手荒いのは勘弁な!」
それを見た俺はオーフィスに走り寄り、彼女を掴んでロビーのホテルの外に繋がるガラスに気弾を放つと同時にオーフィスをそこ目掛けてぶん投げた
・・・幼女をぶん投げるとか事情を知らない人が見たら袋叩きにあっても可笑しくない光景だな
サマエルの召喚時間には制限が在ったはずだし、完璧にアレを制御出来るとは思えないので取り敢えず距離を離すだけでもそれなりに効果は見込めるはずだ!
“ガシャァァァン!!”
気弾がガラスに大穴を開け、その穴にオーフィスが吸い込まれていく
“ガシャァァァン!!”
オーフィスと気弾が外に出たと思ったらロビーの俺が壊したガラスの反対の位置のガラスから気弾が入って来てその直ぐ後ろからオーフィスがこれまた入って来た
如何やら俺達を逃がさないようにメビウスの輪のように空間が捻じ曲がっていたみたいだ
しかし龍神様ちょっと楽し気ですね!
自分で投げた手前3周目くらいにオーフィスをキャッチして気弾も消す
「う~ん、アザゼル先生。『三十六計逃げるに如かず』とはいかないみたいです」
「見えてたよ。相変わらずお前の割り切りはスゲェな。強くなると自然と困難には逃げずに立ち向かう精神とかが芽生えたりするもんだがな」
ああ、確かに先ずは一当てしてから逃げるかどうかの判断を下すとかそういうアクションが挟まったりするものかも知れないな
「まぁその辺りは弱い人間は脱兎の如く逃げるのが本能に染み付いてるとでも思っといて下さい」
そう言ったら変な顔を向けられた
「お前を人間として『弱い』認定したら俺達人外の立つ瀬が無いじゃねぇか」
アザゼル先生は「まぁいい」と言って意識を『サマエル』に切り替える
「それにしてもまさか本当に『サマエル』の封印を解く何てな。お前らはあのクソ骸骨神様と裏で手を結んだって事か・・・ッチ!何時かあのムカつく面にワンパン入れてやるぜ!」
アザゼル先生、完全にお怒りモードだ。とはいえ確かにこの状況であのハーデスが今頃『ファファファファ』とか変な笑い声上げてると考えると俺もワンパン入れたくなっちゃうけどね
「おや、堕天使の総督殿は『
曹操の紹介を聞いてイッセー達が激しく動揺する
「あの・・・『エデンの蛇』くらいは俺も聞きかじった事は有るんですけど先生の言う『クソ骸骨神』ってのはひょっとしてこの間出会ったハーデスとかいうヤツ何ですか?」
「ああそうだよイッセー。『サマエル』は地獄の最下層、ハーデスの管理するコキュートスに封印されている存在だ。聖書においてドラゴンや蛇が邪悪と描かれる原因となった『サマエル』は神の怒り、憎悪によってその存在自体が凶悪なドラゴンスレイヤーへと変貌した。この世に『サマエル』を超えるドラゴンスレイヤーは存在しない」
「ご説明どうも総督殿。そう、『サマエル』は究極の龍殺しの呪い。しかし余りにも凶悪過ぎる為にただそこに居るというだけで世界中のドラゴンや蛇由来の魔物が全滅し兼ねないという理由で聖書陣営やオリュンポスだけでなく世界中の勢力が使用を禁じる程の代物だ―――かつて二天龍があらゆる勢力圏で暴れていても誰も『サマエル』を使用しようとは思わなかった程にな・・・さて」
曹操の瞳がオーフィスを捉える
「喰らえ」
その一言と共にサマエルの口から黒い触手のような舌が
「にゃ!?」
誰も居ない空間に伸びた舌が向かうと黒歌の短い悲鳴と共に突き飛ばされるような形で彼女の姿が露になり、俺達のすぐ傍に居た黒歌とオーフィスが霧が晴れるように消え去る
それを見た曹操は感心した面持ちだ
「ほう・・・幻術か、気付かなかったよ。だが残念ながらサマエルはドラゴンに向けた神の悪意だ。一種の天罰とも云える。幻術程度で逃れる事は出来ないよ」
ドラゴン相手なら一度発動すればロックオン&ホーミング機能付きって事か!?随分とねちっこいな聖書の神様もよ!
つい先ほどまで黒歌が居たはず場所にはサマエルの舌が伸び、先端が大きく膨らんで球形となっている。そして”ゴクンゴクン”と形容出来そうな感じに伸びた舌を伝って何かが吸い取られているみたいだ。クソ!オーフィスを逃がしたり隠したりは出来なかったか!
それとさっき黒歌が突き飛ばされたのはオーフィスが彼女を逃がしたからか?
「まさか!その黒い玉の中にオーフィスが!?祐斗、斬って!」
リアス部長の命令に祐斗が迷う事無く反応して聖魔剣で細い舌の部分を切断しようとする
「!ッ刀身が!?」
しかし聖魔剣は触手の部分を通り過ぎるとその接触していたはずの刀身の部分がごっそりと消えさってしまっていた。先端部分の刀身が“カランッ”と地面に落ちる
「ならコレは如何だ?」
「こっちもにゃん!」
ヴァーリが魔力弾と魔法弾を、黒歌が浄化の力を宿した黒炎を放つが効果は無し
ドラゴンでもあるヴァーリの攻撃は兎も角、浄化の力でもダメとか流石は神の悪意と感心すれば良いのか呆れれば良いのか・・・どっちにせよ厄介極まりない事には変わりないか
「仮にもドラゴンだってんならアスカロンで!」
イッセーが鎧の左腕の籠手から龍殺しの聖剣の刀身を出すがアザゼル先生がイッセーの前に片手を突き出して静止させる
「イッセー、アスカロンは使うな!最凶のドラゴンスレイヤー相手じゃ何が起こるか分からん!アスカロンが吸収されるかも知れんし、サマエルの神の毒が弾けて敵味方関係なく降り注ぐなんて事態もあり得る!それに奴をドラゴンスレイヤーで本当に殺せるのかも分からん。考えてみろ、奴は神の毒を一身に浴びたドラゴンだぞ?何でまだ生きてるんだと思う?」
イッセーが「えっと?」と答えに窮しているので俺も一緒に考えてみる
「・・・聖書の神がサマエル自身にドラゴンスレイヤーに対する耐性を付与したって事ですか?」
聖杯なんて物も在るんだから不可能じゃないはずだ
「サマエルが苦しみ続けるギリギリのラインだとは思うが、そうだろうよ―――ったく、どの神話の神々にも云える事だが神の怒りはおっかないもんばかりだよ。何はともあれ今はオーフィスの救出だ!奴らにオーフィスが何をされてるのか知らんが碌でもない事だけは確かだろうよ!」
アザゼル先生の言葉を聞いてその場の全員がオーラを高めて何時でも攻撃に移れるようにする
「このメンツ相手だと流石に本気で行かないとダメだろうな。何せサマエルの使用はハーデスに一度しか認めて貰ってないんだ。その上、出来るだけ君たち悪魔や堕天使に嫌がらせをしてくるようにと注文まで付けて来る始末。それさえ無ければこの空間にオーフィスだけを連れ去ってさっさと召喚したサマエルでケリを付けられたんだけどね」
ああ、此奴らが二度目は無いという状況でも俺達を招き入れたのはハーデスの要望って事ね
まぁこいつ等自身の傲慢とかも含まれてるんだろうけど
「・・・先生」
「何だ?」
「この一件が終わったらちょっと冥府でハーデスを消滅させて来ても良いですか?」
了承してくれるなら俺の【じばく】が火を噴くぜ?
「良し!許可する!・・・と言いたいが止めろ。アレでも消滅したら世界にとっても困るってのは以前にも説明しただろう?本音を言えば俺も今すぐにでも光の槍をぶち込みに行きたいがな」
「曹操、此方はサマエルの制御に掛かり切りになる。援護は期待しないでくれ」
「構わないさ。この程度を御しきれないようではこの槍に選ばれる資格など無いだろうからね―――では、始めようか・・・
曹操が力ある言葉を唱えると神々しい輪後光が背中の辺りに出現し、その周囲を七つのボーリング球くらいの大きさの球体が浮かび上がる
「コレが俺の『
「亜種か!『
「俺の場合は『転』のところを敢えて『天』と名付けてみた。そっちの方が格好いいだろう?」
仮にも
確か武力を用いずに正義と話し合いで世の中を治める名君の称号だったと思うんだけど・・・少なくともテロリストが冗談でも名乗って良い名前じゃないだろうに
「気を付けろ。奴の周囲に浮かぶ球・・・『七宝』にはそれぞれ別に特殊な能力が付与されている。どんな攻撃が来るのか分かったものじゃないぞ。俺もその内三つまでしか知らんしな」
「七つ!?二つや三つじゃなくて!?」
ヴァーリの忠告にイッセーが驚愕を示す・・・同じ
「ああ七つだ。それに加えてあの槍には『
ヴァーリがそう評する中、曹操が右手をゆっくり前に向けると漂う球体の一つがその動きに沿う形で曹操の前に出る
「七宝が一つ。『
“ガシャン!! バガン!!”
脳のリミッター解除しておいたから高速で迫る七宝にも反応出来たけど自分を狙った訳でもない初撃は防ぎきれなかったな
一拍遅れて皆が音のした方向を見て驚愕する
「エクス・デュランダルが!?」
ゼノヴィアの持つエクス・デュランダルは外装のエクスカリバーの部分は無残に壊れ、本体のデュランダルもかなり罅が入ってしまっている
「やはり反応速度に一番優れているのはキミのようだね。さて、見て貰ったように
そのセリフ、デュランダル使いの前任者にも是非言ってやってくれよ
「此方も悠長にはしてられないのでな。どんどん行かせて貰うぞ―――『
「させるかよ!」
「僕も行くよ!」
イッセーと祐斗が飛び出すが曹操はそれを槍で捌きながら七宝を操る
そして次の七宝が俺達の頭上に飛んできて眩い光を発した
「っく!あんなモノ!」
「撃ち落として差し上げますわ!」
リアス部長と朱乃先輩が滅びの魔力と雷光を放とうとするが何も起こらなかった
訝しむ二人が再度攻撃を加えようとするがやはり何も起こらない
「
「グアッ!!」
「ガァッ!!」
イッセーと祐斗が曹操に弾き飛ばされた―――直接攻撃は受けてないようだが聖槍のオーラの波動によって間接的にダメージを受けているようだ
「イッセー、祐斗!下がれ!悪魔のお前たちじゃ接近戦に持ち込むのは分が悪すぎる!―――ヴァーリ!俺に合わせろ!」
「やれやれ、俺は一人でやりたいんだがな」
アザゼル先生がファーブニルの黄金の鎧を纏い、ヴァーリも文句を言いつつ追従する
先生が前衛、ヴァーリが中衛で攻めるつもりなのだろう
「おっと、ドラゴン相手なら手札は決まっている―――ゲオルク!」
曹操がゲオルクの名を呼ぶと「了解」との返事と共にサマエルの片腕の拘束が外れて曹操に迫りくる二人に手を向ける。すると二人の居る空間が突如として漆黒の球体に包まれて弾け、中の二人が鎧を解除した状態で現れた
生粋の堕天使でドラゴンの鎧を身に纏っただけのアザゼル先生は片膝を付いて苦し気なだけだがヴァーリの方は口から血を吐いて倒れてしまった
アザゼル先生の持つ人工神器、『
「クククッ、如何だヴァーリ?神の毒の味は?ドラゴンには堪らない味だろう?」
ああもう!皆血の気が多いから制止する間もなく突っ込んでいくな!
普通曹操相手なら弱点の薄い俺をサポートして七宝の能力を解明するのが先じゃね!?
「イッセーと祐斗は先生とヴァーリを引きずって連れ戻せ!白音とルフェイは皆の護衛!黒歌!ファーブニルとヴァーリ、後ついでにアザゼル先生を診てやってくれ!」
「ガハッ!俺はついでなのかよ!」
「一番ダメージ少ないでしょうが!」
そう言いつつ神器を顕現させて俺も曹操に突っ込んでいく
「そう、あの黒歌という元はぐれ悪魔の能力は封じられなかったが仙術使いの彼女はアーシア・アルジェントを封じた今、貴重な回復要員。さらに聖槍を持つ俺を相手に簡単に前線に出す事は出来ない。これで残るはキミだけだ、有間一輝。どうやってなのか人間の耐久力の低さを克服したキミは分かり易い弱点がほぼ存在しない。真正面からねじ伏せる必要があるからね。実はこの戦いは楽しみにしていたんだ」
ああそうですかい!こっちは全然楽しくないけどな!
初手として
「おっと、もう
確かに、祐斗の創造系の神器と違って破壊されたらこっちのHPがグッと減る感じだろうからな
だから奴が俺の神器にぶつけて来ようとしたその球体を
“バギンッ!!”
何かが壊れるような音が響いて
ッチ!惜しい!
「・・・おいおい有間一輝。今ので
「ただの剣術だよ。攻撃する瞬間、体に掛かってる力の全ベクトルを一点に集中する『第一秘剣・犀撃』ってのに闘気の一点集中も掛け合わせただけだ」
いや、殴ったんだから今のは秘剣というか秘拳だったけどさ
俺の攻撃力の無さを補うのに以前某落第騎士の世界最強の空間に留まる斬撃を放ったのを思い出して、もしかしたら主人公の技を再現できるかも知れないと色々練習したんだよ!
『第一秘剣・
攻撃の瞬間、体中の筋肉を弛緩させて足先辺りから順次筋肉を絞めていって体内の力のベクトルを攻撃する箇所に押し出していく感じだ
え?そんなの無理だって?取り敢えず筋肉の筋の1本1本まで意識を巡らせられるようになってから抗議は受け付けます
つまりはゼリー飲料とかのパックやチューブ状の調味料とかを使い切る時に底の方から折りたたんで絞り出す感じに近いかな?
「『第一秘剣』・・・ね。なら京都で見せたあの斬撃にも名前が在るのかな?」
む?そう云えばアレって名前無かったよな?どうしようか?性質としては『第五秘剣・狂い桜』に近いのかも知れないけど、もうそれで良いか?ぶっちゃけ『第五秘剣』って使いどころも原理もよく分からんしさ・・・斬ってから動いたら傷口が開くと云うのは兎も角、特定の動きをするまでは傷口もそのままとか理解不能だし
ああ~、でも流石に違う技なのに同じ名前にしちゃうのはちょっとアレだな
「・・・『第五秘剣・断空』って事で」
「今考えたな」
速攻で気付かれた!?
「『第五』・・・という事は少なくとも俺の知らないトンデモ剣技が後三つは残ってる訳だ。それらを是非引き出させたい処だがキミにはカウンター系の神器の能力も有る。キミと戦う場合は下手なダメージを与えないで一撃で仕留めなくては此方が危ない―――
悪い、それ知ってる・・・本当に知っていれば対処って楽だよね
飛んで来たその球体を左手の
「『第三秘剣・
ヤバいな、主人公の技を使うの楽しい!
しかし今はオーフィスが囚われているのだから悠長にはしてられない
そろそろこっちから攻めないとな
「キミ・・・一々神の奇跡を体術で突破するの止めてくれないかな?『七宝』の能力を頭捻って考えた自分がバカみたいに思えてくるんだが」
「イッキくんの剣技って世界にケンカ売ってるよね?もう
「今のって原理は分かんないけどカウンター技だよな?ヤベェ、今後俺が『戦車』で殴ったらそのまま俺に返って来るのも視野に入れなきゃなんねぇのかよ!?」
ああ!祐斗が遠い目になり掛けてる!流石は黒坊の剣技、イカレテルぜ!
それは兎も角として行かせて貰う!
俺はフロアの天井を砕き、仙術で粉塵を操る事で煙幕を作り出す
一拍置いてから、煙幕の中から5人の俺が飛び出した
「その技は京都で見させて貰った。キミの神器を核にして本物と同等の気配を出すその分身は最大で二つまでしか生み出せない。本体を入れて3人だ。つまりは本物の気配のするキミを3人同時に仕留めればどれかはアタリと云う訳だ!」
曹操が残りの球体を操り、5体の分身の内3人に狙いを絞って打ち出す
攻撃を弾いたものが本体という魂胆だろう。だが、それらの攻撃は
「馬鹿な!」
驚愕する曹操に畳みかけるように未だ晴れていなかった煙幕の中から30を超える俺が飛び出した。如何やらしっかり騙されてくれているようだな。何しろ飛び出た分身全部が本物の気配を放ってるはずなのだから
“カラン!”
軽い音が響いて曹操がそちらに目を向けると金属の破片が落ちている
それを見た曹操は悟ったようだ
「有間一輝!お前は自分の神器をバキバキにへし折ったのか!?」
正解です。曹操の聖槍と違って俺の神器ってオーラを纏わせなければ少し頑丈な剣程度だから最初に一部だけへし折って幻術で気を引いてる間に煙の中でアイスのチューペットでも叩き割るかの如くバッキバキに折らせて貰いましたよ!武器に対する愛着?そんなものが戦闘で役に立つの?
体力は多少消耗するけどコレが俺流の『第四秘剣・蜃気楼』だ!・・・いや、だって原作の目の錯覚で引き起こす幻覚の分身とか仙術で幻術使える俺には必要無いんだもん
まぁHPを消費して分身を創り出すんだからポケモンの【みがわり】に近いのかも知れないけどな
そして曹操の気を逸らしている間に本体の俺はと云えば既にサマエルの喉元辺りまで接近している。触手がダメなら首を落とす!ハーデスの玩具は此処で処分しておきたい
もしもダメなら速攻で標的をゲオルクに変更してサマエルの制御を奪うとしよう
「しまっ!」
曹操が本体の俺に気づいたようだけどもう遅い!
俺の振るった
“ズルッ・・・ズルズルズル”
「・・・へ?」
え?なにこれ?ナニコレ?サマエルが
“ギュオォォォォォォォ・・・・ギュポン!!”
あ、全部吸い取った・・・如何するの?コレ?
予想外過ぎる事態に流石に固まってしまったのだった
曹操「キミの事は研究させて貰ったよ」
イッキ「悪い、曹操の能力全部知ってたわ」