深く・・・深く意識が底に沈んでいく感覚がして暫くするとやっと底に辿り着いた
周囲を見渡すと真っ暗なのに自分の姿や足元なんかは不思議と見える空間だ
で、その足元には赤黒い泥が流れている・・・ちょっと誰かが此処で聖杯の中身を溢しちゃったのかも知れんな―――まぁその場合割と世界が崩壊しかねないけど
「此処はアンタの神器に対するイメージが空間を彩ってるのさ」
そんな馬鹿な事を考えていると前方から上半身が堕天使で下半身が蛇の男が闇から這い出てきた・・・ラミアって魔物の男版に翼が生えた感じだな
と云うかアレってサマエルだよね?拘束具無いけどさ
「よぉ、アンタが俺の宿主って事で良いんだよな?」
「良くねぇからさっさと出てけ!」
話しかけてきたけど誰が宿主だ!こちとらお前のせいで死にかけたんだよ!
「くっくっく!嫌われたもんだな。とはいえ俺様だっていきなり吸い込まれた身だからな。出ていけと言われても自分の意思じゃ出ていけないのさ―――そもそも出ていくつもりも無いしな」
「そうかよ、じゃあ死ね」
この空間では神器は取り出せないみたいなので貫手の構えを取ると向こうも慌て始めた
「おいおい、お前は俺の力を使って
「? だからそうしてるぞ?今のお前は何故か普通に話せるみたいだけど実体のお前は神の呪いで永遠に苦しんでるんだろう?だから此処で魂ごと消滅させてやるのが慈悲かなってさ―――堕天使の部分とドラゴンの部分を引きちぎってサマ/エルにしてやるよ。もしかしたら上半身だけは呪いから逃れられるかも知れないぞ?」
うわ!ちゃんと救いの可能性も残して殺るなんて俺って優しい!
下半身が無くなった程度なら超常の存在ならもしかしたら生き残れるだろうしね!
「何だそのサマ/エルってのは!?ったく、俺があのクソったれの神に封じられてる間に人間も随分と様変わりしたんだな―――それと呪いで今も絶賛絶叫を上げてるはずの俺様が話せるのは此処が神器の奥、深層心理とか魂とか本能とかそんな感じものだけが入り込める空間だからだな。神の呪いも此処には届かんみたいだ。だからこそ俺は此処を離れたくないんだよ。肉体に精神が戻った瞬間また苦痛の日々だからな」
いや、だからこそ綺麗サッパリ消滅させてやれば良いんじゃ・・・
「消滅は勘弁だ!やっと真面に思考が出来る様になった次の瞬間に殺されたくはないね!」
心を読まれた!?
「そりゃ此処が魂が触れ合うような場所だからな。ある程度は読めるさ―――それで如何するんだ?こっちはぺらっぺらの意識体のようなもんだから戦いになれば抵抗できんし、それともやっぱり人間をエデンから追い出した切っ掛けになった大罪人は許せないか?」
「いや、俺ってクリスチャンじゃないからそこら辺は如何でも良いし、それに『最初の人』がエデンから追放されたからこそ今の人間界の在り方があるんだと思えばまぁ解釈は色々だろうけどサマエルは俺達を形作った恩人とも云えるよ―――善悪も判らずにエデンでずっと日向ぼっこしてるよりは良かったんじゃないか?」
そう言うとサマエルはキョトンとした表情の後、面白いものを聞いたとばかりに肩を震わせた
「この俺が人間たちの恩人?それはまた面白い解釈だな」
「まぁ俺は基本無神論者サイドだから人間は猿から進化したって説を押すけどね」
「最後で台無しになったな!一応今の人間の何割かはアダムとイヴの血が流れてるはずだぞ!」
あ、そういう感じなんだ
「それで?サマエルさんよ。お前は消滅したくないって言うけどそんなお前は俺に何してくれるんだ?勝手に俺の神器を間借りしておいて宿代も払わない何て言わないよな?」
「お前は磔にされた罪人からも搾取するつもりかよ!?強欲な人間だな!」
は?当然の権利だろ?
「別に俺は良いんだぜ?出すもん出せないってんならお前が内側に居ても俺にメリット無いし、消滅させるだけだ」
う~ん。この空間に来てから理性がいまいち働かないな・・・本能とか魂の空間って言ってたのはこういう意味か
「わぁったよ。お手上げだ。お前が神器で神の呪いを扱う時は俺も制御を手伝ってやる。アレは俺に向けた呪いであると同時に俺自身でもあるからな。変に暴走したりしないようにしてやるよ」
良し!交渉成立だな!
そうと決まればこんな辛気臭い場所はおさらばだ!
「なぁおい、ちょっと!こっちは数千年ぶりの会話なんだからもう少しおしゃべり・・・」
さっさとこの空間から意識を浮上させるとそんな声が聞こえてきたけど別に放って置いて良いよね?相手は罪人なんだしさ
「都合の良い時だけ罪人ネタを出すんじゃねぇぇぇぇ!!」
サマエルのツッコミ虚しく俺は意識が肉体に戻るのを感じたのだった
後頭部に柔らかい感触と良い匂いに包まれている感覚の中で目を覚ますと黒歌が俺の顔を覗き込んでいるようだった―――どうやら彼女に膝枕されていたらしい
取り敢えず挨拶をしたけど何か黒歌口元ニヤケて頬が少し紅潮してたけど何か変な事考えて無かったか?・・・気になる処ではあるが黒歌も俺が起きたのを見て少し真面目な表情で現状を語ってくれた。案の定と云うべきかまだ疑似ホテルの中でオーフィスの力は割られてしまったらしく、これから脱出するみたいだ
「お~うイッキ。しっかり回復したみたいだな―――神の毒を取り込んで、その上そこらの神クラスの【神性】まで持つようになったか・・・一度お前解剖してみて良いか?」
「断固遠慮します!」
アザゼル先生、さっき黒歌が俺に向けてたのとある意味同じような「ハァハァ」と息遣いが聞こえてきそうなヤバい顔しないで下さい!
心臓に直接電極ぶっ刺すくらいの事は余裕でやりそうだよ今のアンタは!
因みに今の俺は【神性 A】ってところだ。どこぞのA・U・Oには届かなかったけどAランクって半神で死後神になったFateの元祖ヘラクレスと同ランクだよな?十分凄いと思うし、やはり俺の持つ【神性】はこの世界の『神性』や『神核』とかとは少し仕様が違うのだろう
それから作戦開始前に皆が一か所に集まったのだが如何にもこの状況で上機嫌な人が居る
「うふふふふ♪」
「あの・・・朱乃先輩?随分と機嫌が良さそうですね?」
「あらあら、うふふ♪イッキくんのお陰ですわ」
「はぃ?俺ですか?」
間抜けな声が出た気がするけど俺何かやったか?
「あら?覚えていませんの?確かにあの時はイッキくんはサマエルの呪いで大変でしたから覚えて無いのも無理はないかも知れませんわね。いえ、追い詰められていたからこそなりふり構わない提案をしてくれたんでしょうけど・・・ふふふ♪お陰で私もイッセーくんの力になれましたのよ」
すいません。何言ってるのか全然分かんないです!え?俺何かしたの?どんな提案をしたの?
困惑してるとイッセーが肩に腕を回してきた
「イッキ・・・一度しっかりとエロスについて語り合おうぜ。今までは松田や元浜とも語らっていたエロトークにイッキに意見を振ってそれに答えるって感じだったけど、俺は一度お前のエロに対する主張や哲学をじっくり聞いてみたいって思ったぜ!」
イッセー!?お前何その無駄にいい笑顔で割と最低な事言ってんの!?そして本当に俺は一体何を口走ったの!?
「まっ、イッキがむっつりだって言うのは前々から分かり切ってた事にゃ」
「あの熱い物言いにはイッキ様の漢を見た気がしますわ」
「えっちぃのは嫌いです」
ああ!皆の中の俺の評価が変な方向に向いた気がするぞ・・・と云うか白音のそのセリフは何処のたい焼き好きの生体兵器だよ!
「ふぅん。白音がエロエロが嫌いだって言うなら私とレイヴェルでイッキの子種を貰おうかしら?レイヴェルは小柄だけど女の体つきには殆どなってるしね♪」
「私もですか!?わ・・・私はイッキ様が望まれるならその・・・構いませんわ!」
「だ・・・ダメです!私が嫌いなのはオープンなエッチな事であってイッキ先輩と、え・・・エッチする心の準備はもう出来てます!」
や~め~て~!!黒歌は兎も角レイヴェルと白音は学園生活があるでしょうに!ちゃんとそう云うのは十分に満喫しないと後で後悔するよ!
悪魔の生は永いんだから焦る事ないって!
「くくくっ、そうやって狼狽えている処を見ればお前がサマエルを取り込んだ程度で人格が変わったりしてないってよく分かるぜ」
こういう時何処かホッとした感じに話すから憎めないんだよな、この人って
「皆さん、結界がそろそろ持ちそうにありません」
「分かったわ。白音、イッセー、狙いは?」
「バッチリです!砲門は既に白音ちゃんに教えて貰った方角向いてるので後は撃つだけです!」
「では始めましょうか!イッセーの砲撃と共にルフェイ達は転移、その後前衛と後衛に分かれて駐車場を制圧するわよ!」
『はい!』
「では行きます!『
イッセーの『真・僧侶』の二つの砲門から極大のオーラ砲が上下に放たれ、ウロボロスの装置の傍に居た死神諸共反応が消失した
「転移、開始します!」
「イッセー、皆、死ぬなよ!」
「必ずこの状況をミカエル様や魔王様にも伝えて来るわ!」
ルフェイの転移で脱出メンバーは無事に転移したようだ
「よし、後は駐車場の奴らを殲滅して装置も壊せば終わりだ!いくぞお前ら!」
アザゼル先生が駐車場側の壁に大穴を開けて前衛組が突撃・・・する前にオーフィスが外に掌を向けて攻撃を放った―――確かオーフィスの力が不安定だったはずなので確認も含めてファーストアタックは彼女にお願いしたのだ
“ドグオォッォォォォォオオオオオオオオオオンッ!!”
うわっは!今の一撃で駐車場の半分は死神と一緒に抉れたな!
ただ、着弾点はかなりズレてるみたいだ。ウロボロスの像を中心に爆発してたらそれで終わってたと思うんだが実質余波が届いただけだ・・・まぁ余波で既に被害甚大だけど
「上手く力、制御出来ない」
「やっぱりか、オーフィス、因みに今のはどれくらいの力を込めたつもりだったんだ?」
アザゼル先生が聞くとオーフィスは簡潔に答える
「ドライグの魔力弾くらい」
マジかぁ、強化されたとはいえイッセーの魔力量は大した事ないし、通常のドラゴンショットなら中級死神数体を屠れるくらいだろう
それがあの威力で放たれたと考えると本当に不安定なんだな
「分かった。予定通りお前は此処で大人しくしててくれ。下手すればこの空間全てを内側から吹き飛ばす何て事態にもなりかねん。お前は助かるかも知れんが俺らは敵も味方も全滅だ」
それを聞いたオーフィスはコクリと頷いてその場に体育座りした
死神達も初撃の動揺から立ち直ったのか不気味な鎌を手に空を飛んで俺達に襲い掛かって来る
前衛組はそれを見てこの部屋に辿り着かれる前にホテルの外に飛び出していく
因みに今回の後衛組はリアス部長に朱乃先輩、レイヴェル、白音にアーシア、あと体調不良のヴァーリだ―――ついでにオーフィスが待機組だな
まぁ何と云うか超絶攻撃特化固定砲台という脳筋仕様だったりする
死神が近づいて来る前に消滅させる!攻撃は最大の防御!って感じだ
勿論ウィザードタイプのリアス部長や朱乃先輩も攻撃程得意ではないけどそこそこの防御の魔力は使えるのだが二人の消滅の魔力に雷光、それにプラスして放たれる魔法の乱舞、さらには原作よりも大分マシなダメージになってるヴァーリの魔力に北欧の魔法が入り乱れてオーフィス目掛けて飛んでいく死神達が焼き払われる羽虫のように散っていく
オールラウンダーの白音は万一接近された場合も考えてあの場にいるけど今のところ仕事がないみたいだ・・・いや、仙術探知で変な不意打ちを喰らったりしないように警戒してるから働いてない訳じゃないんだけどさ
それにしても敵の防御を打ち砕き、敵の回避を数の暴力で潰し、敵の遠距離攻撃を真正面から迎撃して奥に居る敵を討つという清々しいまでの脳筋プレイである
実力差があり過ぎると無双ゲーになっちゃうのは仕方ないのかな?
だがそれを見たゲオルクも下級の死神では埒が明かないと思ったのか追加で霧を展開し、そこから大量の死神を投入する・・・感じるオーラの強さは上級悪魔くらいだから中級の死神だろう
そう考えると結構大盤振る舞いだよな
敵の中に居たジークフリートは剣士として祐斗が相手をする事になったけど今の彼なら引けは取らないだろうから迫りくる死神達を俺も相手をする
とはいえ俺も結構血を流したので激しく動き回るのは遠慮したいので対雑魚殲滅用の新技をお披露目するとしよう・・・何も秘剣の開発だけを推し進めていた訳じゃ無いんでね!
俺は掌から青白い炎をだし、それを闘気と混ぜ合わせる事で極大の蒼炎に変換して目の前の死神共を焼き払った
「イッキ!お前それもしかして狐火か!?」
同じく死神を相手取っていたイッセーが俺の出した炎を見て驚きながら聞いてくる
「おうよ!イヅナを俺に憑依させて一時的に狐の妖怪の能力を借り受けたんだよ!」
この場では必要ないけど今なら浮遊能力も使えるので以前オーディンの護衛をしてる時に空を飛べる能力が欲しいと話してたのも解消出来てたりするんだよね
「狐火を使う人間・・・イッキは今度は妖怪に手を出したか」
「何だその含みのある言い方は!?俺自身は人間の要素を捨ててねぇはずだぞ!」
別にこれと云って人間である事に拘りがある訳じゃないけど、人間辞めてない内から『非人間認定』を受け取る気は流石に無いぞ!
あとこの狐火も秘剣たちもそうだけどコレは俺の手札を増やしただけで俺自身のオーラ量とかが増えた訳じゃ無いんだよな
勿論鍛錬で少しずつは増加してるけど如何したもんかね?
悩みつつも追加の死神たちを半分くらい減らした処で今までの死神とは比較にならないレベルのプレッシャーを放つ2人の死神が現れた
≪やれやれ、中級とはいえ同胞たちをこうも一方的に倒されると少し複雑であり、また情けなくも感じますね≫
≪仕方あるまい。魔王の妹とその下僕たちだけなら力は有れどまだ甘いところも在っただろうが周囲を固める奴らが逸品揃いだ。此処は素直に相手を褒めておこうではないか≫
現れた死神は他の死神と違ってローブにそこそこの装飾が施されており、手に持つ鎌も刀身まで黒く染まり、更にドス黒いオーラまで纏わせている絶対に触りたくない代物のようだ
「貴様らは・・・」
アザゼル先生が雑魚死神を蹴散らして俺達の近くに降り立ち現れた二人に険しい視線を向ける
黒歌もヤバい気配を感じてか直ぐ隣に降り立ってくれた
≪初めまして、堕天使の総督殿。私はハーデス様に仕えている死神の一人。プルートと申します。以後、お見知りおきを≫
≪同じく、ハーデス様が配下、タナトスという者だ―――本当はプルートのみが此処に来る予定だったのだがサマエルが貴公等に奪われたという事で急遽、私も動員されたのだ≫
「誰が奪うかよ!勝手に俺の神器に引っ付いて来たんだぞコイツは!」
≪報告は受けている。お前が有間一輝だな?正直まだ生きていたとは驚いたぞ―――しかし、此方としては僥倖だ。お前ごとサマエルを回収する事にしよう。神器の研究を特に行っている訳ではない冥府ではお前とサマエルを分離するのは恐らく不可能なのでお前ごとコキュートスに封印する事になるだろうがな≫
冗談じゃねぇよバカ野郎!
「プルート、それにタナトスか。伝説にも残る最上級死神を二人も派遣するとは何処までもやってくれるぜ、あの骸骨爺はよ!」
≪あなた方はテロリストの首魁のオーフィスと結託して各勢力の和平を内側から崩そうと画策いたしました。その罪、万死に値します・・・と、今回はそういう理由を立てさせて貰いました≫
「よく言うぜ。どうせハーデスの事だから俺達悪魔や堕天使が気に喰わないから嫌がらせに曹操達テロリストに手を貸して各勢力が封印してきたサマエルを解放したんだろ?その上、サマエルがイッキの中に偶然入ったからって理由で地獄の最下層にぶち込むとか人間の魂を管理する神としちゃそりゃ如何なんだ?」
≪ふむ。確か人間界にこんな言葉が在るようですね―――『バレなきゃ犯罪じゃないんです』と。まぁそこの彼は不運だったというだけの話です≫
そんなバリバリに悪意が介在する状況を『運』で済ませられるかよ!
≪プルート、お喋りはそろそろ良いだろう。悠長にしていると他の死神共が全滅しそうだ。あまり死神の人材は豊富ではないのだから、これ以上減れば我らにもしわ寄せが増えるぞ≫
≪おっと、それは勘弁ですね。では、私は予定通りに出涸らしのオーフィスを頂きましょう・・・この状況でも参戦してない以上はやはり力が不安定なのでしょう。慎重に立ち回れば私でも捕らえられるでしょうからね≫
「イッセー!『真・女王』になれ!俺と一緒にプルートを殺るぞ!イッキと黒歌はタナトスを頼む!お前らなら連携が取れるだろうし、タナトスはお前狙いみたいだからな。もてなしてやれ!」
もてなしって相手神クラス何ですけど・・・まぁしょうがないか
先生とイッセーの相手も似たようなもんだし文句は言えんだろう
それに彼なら初めてのイッセーとのコンビもちゃんと合わせてくれるだろうしな
≪ふむ。私の相手は人間と元妖怪の悪魔か。向こうの堕天使の総督と赤龍帝に比べたら知名度では劣るが実力はそこそこのようだ。この鎌の錆落とし程度にはなりそうだな≫
如何やら急遽こっちへの派遣が決まった為かこっちの情報は余り持ってないようだな。見下してくれてるようだが油断も慢心もこっちは大好物だ!
「タナトス殿!有間一輝には全オーラを消費して一時的に神クラスになれる力が有る!更には自身の負ったダメージを相手に返す神器の能力もある。油断は手痛い反撃を受けてしまいますよ!」
≪成程、気を付けよう≫
ゲオルクぅぅぅぅぅ!!やっぱりテメェが俺の一番の天敵かも知れないな!勝手にこっちの手の内ネタバレしやがって!(逆ギレ)
「まっ、仕方ないわね。私も今回は本気でやらせて貰うにゃん」
そう宣言した黒歌はオーラを高めて全身に黒炎を纏う。しかし、今回はその先が有った
黒歌から生える『四本目』の尻尾だ!
「『四尾モード』ってところかにゃ?まぁこの先尻尾が増える度に変な名前つけるのも面倒だし、シンプルが一番よね♪」
≪ほう。元々最上級悪魔の中でも強い方と云える力が在ったが今は魔王級と云っても差し支えないようだ・・・コレは良い!思った以上に楽しめそうだ!≫
如何やら戦いを愉しむタイプらしいな。なら、こっちもいきますか
折角至ったんだし、今の俺は体力が足りてないから短期決戦に持ち込むべきだろう
「『
苦節17年。やっとたどり着いた
先ず形はそれなりに変わった
奇形の短剣である
言うなればオーバーエッジ・オルタである―――本来のオーバーエッジを串カツのタレに漬けるように聖杯の泥に漬ければ完成しそうな見た目だ
今まで以上に刀身へのオーラの流れが良いし使い方も頭に流れ込んでくる
そして能力!
・・・クールタイムはまぁ良しとしよう。結局『報復』で付けた傷は俺が治れば向こうも一緒に治るってのに変わりはないみたいだし、強くなったかと問われれば割と微妙なんだけど、それよりも
俺と黒歌は超速戦闘に入る・・・四尾となって各種能力が引き上がって時間を操る術で自己加速している黒歌に脳や肉体のリミッターを解除している俺だけどタナトスは普通に付いてくるんだよな―――【一刀修羅】を使いたい処だけどその前に神器の能力を試したい
上手くいけば倒せるだろう
黒歌が全方位から諸々ミックスした弾幕を幻術付きで放つが大鎌に危険なオーラを纏わせて豪快に振るうと迫りくる攻撃は相殺された
「なら、コレはどうかにゃ!」
黒歌は次に俺達の戦域に先の見えない対死神用の黒い濃霧を発生させる
≪むっ、毒か。多少ピリピリするな―――吸い続けるのは流石に体に悪そうだ。それに視覚以外にも気配阻害の効果もあるか。しかし甘い!≫
タナトスが再び大鎌を振るい、黒歌本体の居る場所に斬撃が放たれる
「にゃ!?如何して私の居場所が!」
≪分かったのか・・・か?私は死神だぞ?相手の魂を見るのは死神の基本能力だ。この霧はまだ相手の魂の気配まで隠蔽出来ていない≫
“ギィィィィィン!!”
黒歌に向かって話し掛けていたタナトスに俺が背後から近寄って一撃を見舞うがそれも普通に受け流されてしまった。これもダメか
≪だからこのような奇襲も通じない・・・しかし、キミは何故この霧の中で私の居場所を探れる?あちらの猫の妖怪に対抗術式でも仕込んで貰ったのか?≫
「いいや、仙術でも頑張れば魂感知は出来るってだけの話だよ!」
そこから始まる暗闇の中での大鎌と二刀の大太刀の乱撃
目は利かないし、音だって実はこの空間で乱反射してるのか四方八方から聞こえて来る
魂感知に関してはタナトスの方が上だろうがデスサイズの魂を刈り取るヤバさは逆にこの空間では鮮明に感じるので打ち合う事が出来る
黒歌も毒霧の濃度を更に引き上げるのに集中してくれたみたいなのでタナトスの動きも鈍ってるからこそだけどな
≪成程、人間としては感嘆する強さだ。しかし、死神に魂の分野で挑むのは間違いだったな≫
突如として腹に衝撃が走り、凄い勢いで霧から吹き飛ばされ、ホテルの壁に激突してしまった
そして俺の妨害のなくなったタナトスは黒歌の霧を衝撃波で霧散させる
≪鎌の動きは良く見えていたようだが私自身の動きは曖昧だったようだな・・・隙を突いて蹴り飛ばすのは難しくなかったぞ。お前の神器の力を考えれば余り痛めつける攻撃は出来ないから手加減はしておいた・・・さて、先に黒猫を始末した方が良さそうだな≫
確かに、派手に吹き飛んだけど俺が受けたダメージはそれほどでもない
何方かと云えば突き飛ばすような感じで蹴られたからな
まぁズキズキと痛いけどこのダメージを『報復』で返しても大した痛手にはならないだろう・・・以前の神器までならな!
喰らって貰うぜ新技を!
「【
≪グハッ!!?何だコレは!?≫
「如何かな?『神の毒』の味は?幾らドラゴンじゃないって言ってもやっぱりキクだろう?」
≪!!そうか、貴様の
御名答、『報復』で相手にダメージを返す時、一緒にサマエルの毒も流し込まれる仕様です
コレなら態とこっちからかすり傷を負いにいって発動させれば大抵の相手は大ダメージだ
ドラゴン相手なら龍王クラスじゃないとほぼ瞬殺、それに・・・
≪これは・・・呪いが際限なく流し込まれているのか≫
そう、元々の『報復』の能力は避ける事も出来ず、さらには俺の傷が治るまではサマエルの呪いが流れ込み続ける
亜種に至る為に【神性】との親和性に能力を振ったから流し込まれる呪いの量は大した事無いが呪いの質が質だし継続の毒のダメージはドラゴンでなくとも無視出来ないだろう?神クラスの力を持つアンタがどんどん体調が悪化していく程度にはさ
ヤバいなこの神器!ついに不遇の名を返上する時が来たのかも知れない!(フラグ)
もう使いどころの難しいポンコツだ何て言わねぇぞ!(フラグ)
凶悪で強力!もうこの先の強敵なんか怖くない!(フラグ)
邪龍軍団?サマエルの呪いなら魂ごと消滅だ!(フラグ)
≪ック!サマエルを回収に来たつもりがサマエルにやられるとは≫
苦しそうなタナトスの近くにプルートが降り立ち、他のメンバーも勢ぞろいする
ジークフリートとか祐斗にドラゴンの腕を2本は落とされたみたいだな
≪タナトス殿、手酷くやられたようですな。総督殿と赤龍帝も思ったよりはやるようです。周囲の死神も殲滅され、他の方々の援護も加わったので此方も仕留められませんでした。一度立て直した方が良いでしょう≫
ああ、他の皆は途中からイッセー達の援護をしたから一番隙の大きいイッセーもデスサイズの直撃は凌げたみたいだな―――こっちは黒歌が中身の見えない霧を展開してたから援護しようにも出来なかったんだろうしね
≪それに、丁度連絡も来ました。冥界を崩壊させる騒ぎを起こせば何処かで機会は訪れるでしょう。サマエルの呪いを抑えなければ死ぬかも知れませんよ?≫
≪・・・分かった。此処は引こう≫
「おいおいちょっと待ちなお二人さん!聞き捨てならねぇ事を言ったな?冥界を崩壊させるだと?そりゃあ一体どういう意味だ!何をし掛けやがった!」
アザゼル先生が光の槍を突きつけて問い詰めるとプルートはドクロの仮面を被っていても分かるような嘲るような笑いを見せる
≪そうですね。此処まで奮闘した貴方たちに敬意を表して余興の始まりを見せて差し上げます≫
プルートが何処かに連絡を取ると直ぐに転移魔法陣がプルート達の後ろに展開した
そこから現れたのは先ほどまでの中級死神よりも一段上のオーラを持つ死神・・・恐らくは上級死神が一人の褐色肌の子供を連れて現れた
「レオナルド!?彼は別の作戦を遂行中のはずだ。まさか連れ出して来たのか!」
≪ええ、まぁサマエルをまんまと奪われた貴方方へのペナルティだとでも思っておいて下さい・・・もっとも、最初から連れ出す気でしたがね。では、始めなさい≫
当のレオナルドは洗脳されているのか周囲の状況に反応を示さない
そんな彼に上級死神は懐から一つの拳銃を取り出した
良く見れば銃口の部分が注射針になっている
「それまで持ち出したのか!?まだ子供の彼には負担が大きい、どんな悪影響が出るか分かったものじゃないんだぞ!」
ジークフリートが焦る中、上級死神はレオナルドの首筋に針を突き刺す
すると途端にレオナルドが苦しみ始め、顔中に血管が浮かび上がる
「何だか知らないけどさせないにゃん!」
黒歌が大量の弾幕を張るがプルートがそれらをかき消してしまう
≪まだコレで終わりではありませんよ。最後までご覧ください≫
プルートの云う様に今度は小型の魔法陣を展開させて彼に近づけるとレオナルドがついに絶叫を上げ始めた
「う゛あ゛あああああああああぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああ!!」
身を裂くような絶叫と共に彼の影がドンドンと膨らんでいき、巨大な人型の姿となる
まだ形が安定していないのか人型の影のような感じだが300メートルはありそうだ
さらに追加で200メートル級の巨大怪物も生み出されていく
恐らく原作と違いあの『薬』の効果で一回り以上はデカく、強力になったのだろう
不味い不味い!確かアレだけでも冥界に大打撃だったのにそれ以上とかアホみたいな被害が出る!
≪彼はアンチモンスターの創造に特化しているらしいので対悪魔用の・・・いえ、対冥界用のアンチモンスターを創って貰いました。ハーデス様は悪魔も堕天使もお嫌いなのでこの辺りで少し滅んで欲しいそうです≫
「はぁ!?ふざけるなよ!こんなもんが冥界で暴れたら見境無しじゃねぇか!何の関係もない子供たちや平和に暮らしてるだけの悪魔だって沢山居るんだぞ!」
≪言ったでしょう?赤龍帝。悪魔がお嫌いだと・・・悪魔というだけで皆殺しにする理由としては十分だとハーデス様はお考えです―――さて、この怪物を生み出したせいでこの空間も限界が近いようですね。それでは皆様、近いうちにまたお会いしましょう≫
プルートは隙を見せないまま恭しく一礼してタナトスと上級死神と共に転移していった
それと同時に巨大怪獣たちの足元にも転移魔法陣が展開する
「止めろぉぉぉおおおお!!」
アザゼル先生の必死の声に全員で一斉攻撃するがアザゼル先生や黒歌、パワー馬鹿のイッセーの攻撃でやっと少し傷つく程度でその傷も直ぐに再生してしまう
「なら!アーシアさん、回復頼む!【一刀羅刹!】」
“ズッバァァァァァン!!”
試しに何処まで通用するかと思って【一刀羅刹】の斬撃を放つが足から脇下の辺りまで切り裂いて後ろに倒れたが傷口自体はみるみるうちに再生していく―――アレでは実質ダメージは無いと云っても良いだろうな
一応オーバーエッジ状になった神器を両手持ちで振るった一撃だったんだけど・・・コレからは両手剣の鍛錬ももっと身を入れないとな―――木刀の素振りやっといて良かった
そんな風に若干現実逃避しているとゲオルクが倒れて放置されたレオナルドを回収し、ジークフリートも傍に立つ
「『薬』に加えて術者の精神をかき乱す魔法で強引且つ一時的に至らせたのか。コレではレオナルドは最悪もう使い物にならないかも知れないな。もっとじっくりとこの子を育てるつもりだったのに、やってくれるよ」
「ジークフリート、兎も角一度本部に戻るとしよう。レオナルドが完全にダメになったと決まった訳じゃない。直ぐに治療すれば何とかなる可能性はある・・・あまり期待は出来ないがな」
ゲオルク達も霧で転移してしまい、巨大なアンチモンスター達も皆の攻撃虚しく転移してしまった
「クソ!全員今すぐウロボロスの像を壊せ!この空間から離脱する!あのアンチモンスターを放って置いたら本当に冥界が崩壊するかも知れん。何としても食い止めに行くぞ!」
「『はい!』」
冥界を混沌と混乱の渦に陥れた魔獣騒動が幕を開けてしまった
俺のバランス・ブレイクは最強なんだ!もう、何も怖くない!!(フラグ)