第一話 原作主人公との出会い
黒歌と出会い、晴れて中学生になってから1月ほど経った
クラス内でも初めのうちは皆どこかぎこちなかったが、それも少しずつ解消されていき大体の人がそれぞれ馬が合う奴とでグループを作っている
そして俺はと云えば窓際一番後ろという素晴らしい席を獲得した———のだが・・・
「見ろよ。現像してきたぜ、前の休日の戦果だ。この子とか可愛いうえにおっぱいも大きいぞ!元浜!この子のスリーサイズはいくつだ?」
「上から83、60、82!!うおぉぉぉぉナイスバディ!!どこだ松田!どこでこのお姉さんとエンカウントしたんだ!?」
「なぁにぃ~?その写真俺にも見せろ!脳内保存して今夜さっそく使用する!!!」
「うるっせぇぞこのエロ馬鹿どもがっ!!!」
俺の席の右側に原作主人公、【おっぱいドラゴン(予定)】『兵藤一誠』
前の席には【エロメガネ】、【スリーサイズスカウター】、【ロリコン】の『元浜』
右斜め前には写真部であり【エロ坊主】、【セクハラパパラッチ】の『松田』
という天の采配ともいえる席となっていた・・・原作キャラと出会えたとはいえ、ここまでになると欠片も嬉しくない
クラスメイトの憐みの視線が痛いし、女子たちのエロ馬鹿3人組に向ける気持ち悪いものを見る視線が自分にも向けられるような錯覚すらするのだ
「なんだよイッキ、我慢することなんてねぇんだよ。見ろよこのおっぱいを!今月号の『THE☆おっぱい山脈~アルプス山脈をも超えて~』は素敵なおっぱいが盛りだくさんだぜ!」
などと言いつつ雑誌をこちらに向けてくる。それに対して目を逸らしながら怒鳴る
「見せつけて来んな!何度も言ってるだろうが!エロ談義をするのは構わないからせめて女子たちの居ないところでやれ!!」
つーか何だ!アルプス山脈を越えるおっぱいってそれもうただの巨人族じゃねぇか!
「何言ってやがる!!エロこそ至高!エロこそ正義!!エロによって人類は存続してきたんだぞ、誰にはばかることがある!!!」
もうヤダこいつら・・・エロ以外の話題はないのか?いやまぁ漫画やゲームの話もするけれどいつの間にかそれもエロい目線で語られるんだよな。まじで勘弁してくれ・・・
「ほらほらどうしたの?気弾の制御が乱れてるにゃ。ちゃんと集中して」
学校が終わり(精神的に)疲れながらも帰宅。体を動かすトレーニングを終えて今は自分の部屋で黒歌に仙術の気弾の修行を見てもらっている・・・のだが学校ではずっと『おっぱい』という言葉に囲まれているからかどうにも目の前の彼女を意識してしまっていまいち集中できない———あのエロ馬鹿どもが!
気弾を掌の上に浮かべるくらいなら部屋でも出来るし、俺の部屋は認識阻害や防音、黒歌や家族以外が入ってきた時の迎撃トラップなどで軽く要塞化している・・・ついでにベッドも占拠されたので俺は毛布にくるまって床で寝ているし、美少女が同じ部屋ということで意識して眠れないかもという懸念も在ったが寝る前の【一刀修羅】瞑想で体力を使い果たしてすぐに眠ってしまうため幸い問題にならなかった
修行の方は付きっ切りという訳でもなく、時々アドバイスを貰えたり、分からない部分を質問したりするくらいだ―――彼女としてもそこまで俺に世話を焼く必要もないと思っているのだろう
今修行しているこの気弾は仙術よろしく直接的な破壊力には乏しいものの遠隔で相手の気を乱すことができる
ちなみに黒歌は原作のように仙術・妖術・魔力をミックスしているそうで、なんでも仙術で相手の気を乱し、妖術で毒や呪いを流しこみ、魔力で破壊力も持たせている三点セットでお得な術だそうだ・・・えげつない、さすが最上級悪魔クラスは格が違った
修行も一息ついた後、ふと気になったことを聞いてみた
「そういえば今更何だけど、この町の拠点はなんで俺の部屋だったんだ?認識阻害や人避けの結界を張れるなら廃墟とかアパートの空き部屋とかを根城にするってイメージがあるんだけど・・・」
実際、原作でもはぐれ悪魔なんかは廃墟とか洞窟とかにいた気もするし、監視するためってだけじゃ理由としては弱い気がするんだよな
「にゃ?それは当然監視以外の理由もあるにゃ―――イッキの思った通り秘密裏に拠点を築くときは基本はそうするけれど、その土地の管理者たちもそれは当然わかっているのにゃ。そういう人の住まない場所は時々パトロールされるし、精度の高い隠蔽を施せば同業者が気付かずに入ってくる場合もあるのにゃ」
なるほど、権力を大っぴらに使えない場合は仕方ないから廃墟などで『妥協』しているのか・・・
ああ、それと黒歌は自分のことを『元妖怪のフリーの悪魔』という風に言っていた。さすがに最初から『指名手配犯で追われる身です』とは言わなかったが、『面倒な連中に追われている』とは聞いている
まぁ彼女であれば早々見つかったりはしないだろう
ともあれ今は何が起きてもなんとかできる実力が重要だ。そう思いながらも一日の締めくくりの【一刀修羅】を行い、そのまま疲労感に任せて眠りについた・・・完全に眠りにつく前に少し寂しげな声が聞こえた気がした
[黒歌 side]
「やっと眠ったようね・・・」
この少年『イッキ』と出会って一ヵ月と少し、拠点が確保出来ればそれで良かったから最初に提示した仙術の修行を見るというのも、ちゃんとするつもりもなかった
間違ったことを教えるつもりはなくとも時折口をはさむ程度のもので、仙術という危ない力を見るというには些か以上にいい加減といえるだろう
だが彼は驚くほどの精度で気の流れ、特に自分自身の気を制御することに長けていた
なぜなのかと思ったが最初の日の夜にその理由が明らかになった———彼が「【一刀修羅】」と呟いた瞬間に彼の力が爆発的に膨れ上がったのだ
もし先に【一刀修羅】とやらの説明を受けていなかったら思わず一帯を吹き飛ばすような攻撃を加えていたかもしれない
最初に見つけたときに振っていた神器の能力なのかとも思ったが、どうにも違うようで気が付いた時には自然とできていた能力らしい
一分とはいえ自身の能力や感覚を何十倍にも引き上げることができるらしく、その『感覚を引き上げる』という能力の副産物として自分の体の状態を鋭敏に感じ取れるようになり、仙術に目覚めたのもそのお陰らしい
もっとも一分を過ぎれば疲れ果てて動けなくなり、途中で発動を止めることもできないと聞いたときはそのリスクの大きさに呆れもしたが
相手の気を乱したり整えたりするような修行は今までやっていなかったらしいが生命の気の流れを感じ取るという下地はしっかりしていたため、私の少しのアドバイスでグングンと仙術の練度が増していってるのが分かる
白音のほうも昼間の学校から夜の悪魔の活動まで探ってみたけど特に大きな問題はないようだ
もっとも昔はよく笑う子だったのに今はほとんど感情を表に出さない様子なのは見ていて悲しいものがある
「いつか、私の事なんか忘れて昔みたいに笑えるようになってくれないかにゃ~?」
そういって彼女は寂し気な言葉をこぼした
[黒歌 side out]