「初めましてになるっスかねぇ?お兄さん?仮にも同じ施設で同じ遺伝子から生まれた者同士、かなり特殊かもっスけど僕らは兄妹って事になると思うんすよ。生まれはこっちが後みたい何で、取り敢えず兄の暴挙は妹の責務として止めさせて貰うッスよ」
且つて教会のシグルド機関で生まれた阿修羅の兄と純白の翼を持った妹がここに激突する!
[木場 side]
アジュカ・ベルゼブブ様の魔獣への対抗術式があと少しで完成するという時に首都リリスで英雄派も動き出したとの連絡が入ったので僕たちグレモリー眷属にイリナさんはリリスのとある高層ビルの屋上に転移の座標を指定され、すぐさまそこに急行する事になった
イッキ君はタナトスがどんな手法で襲ってくるか分からない為一旦待機
だけど、グレイフィア様やバラキエルさんに炎駒さん、そして黒歌さんにイッキ君自身も非常に高い戦闘能力を持っている―――よっぽどの事がない限りは大丈夫だろう
イッキ君はタナトスを倒さないと冥府の神ハーデスが各勢力間の間で明確にサマエルの件で罰せられるまでは家にも帰れそうにないから可能なら倒しておきたいと休憩中に言ってた
確かに最上級死神が駒王町で暴れるなんてシャレにならないからね
理不尽に狙われているイッキ君が面倒がるのも納得だ。それに僕だって・・・いや、グレモリー眷属の全員が今回のハーデスの行いには腹を立てている
これはイリナさんやレイヴェルさん、黒歌さんにも言える事だけど、例え眷属で無かろうと彼らは僕たちの大切な仲間で親友だ。そんな彼を狙われたなら怒るのは至極当然の事
もしも次またハーデス神に出会ったとしても、それが例え公式の場であっても敵意を抑えられるか自信が持てないかな
白音ちゃん何て「あの骸骨、何時か絶対バラバラにして
特にイッキ君が直接狙われている状況は恋人の白音ちゃんからすれば少なくとも僕以上には不快に思ってるのかも知れない
そうこうしている内にグレモリー城の転移の間に辿り着いた
「皆、転移先には既にギャスパーが居るそうだから合流してからソーナ達の救援に向かうわよ」
! そうか、ギャスパー君は自らの力と向き合う為に
因みにレイヴェルさんはイッキ君と一緒だ。彼女は家の人が参戦を認めてくれたけどあくまでも避難誘導などがメインだ。明らかに敵との交戦が予想される場所にまで連れて行く事は出来ない
そうして転移が終わると直ぐにギャスパー君が駆け寄って来た
「皆さんやっと合流出来ました!堕天使の方々に此処で待っていたら良いと言われて待機してたんですけど心細かったですぅぅぅ!」
ギャスパー君も揃ってグレモリー眷属もフルメンバーだ。やっぱりこういうのは揃うとそれだけでも心強くも感じるね
「ギャスパー、修行の成果。期待してるわよ」
「はい!頑張ります!!」
リアス部長の言葉に何時もとは違う力強い語気で返事をするギャスパー君
如何やら何か得るモノが在ったようだね。リアス部長じゃないけど僕も期待させて貰うよ
“ドドドドドドオォォォォォォォン!!”
その時、かなり遠くに連続した爆炎が上がる様が見えた
そしてそっちに仙術の探知を飛ばしたであろう白音ちゃんが固い声で告げる
「あそこからシトリー眷属、それから大量の一般人の気配を感じます!」
一般人の気配!?やはり巻き込まれてしまっていたか!誰かを守りながらの戦いは普通の戦いよりもはるかに難しい。急がなければ!
「分かったわ。皆、急ぐわよ!」
『はい!』
それぞれが悪魔の翼を生やして(イッセー君は
しかし途中で僕たちがどうしても無視出来ない影がとあるビルの屋上に現れた
「おや?これはこれはグレモリー眷属の皆さん。早速キミたちと出会えるとは僕も運が良い」
その場に転移して来たのは英雄派の幹部である魔剣使いのジークフリートと霧使いのゲオルクだった。何故ここに?
「ソーナ達の救援が優先だけど捨て置くことも出来ないわね。二手に別れましょう」
リアス部長がそのまま指示を出そうとする前にジークフリートが話しかけてきた
「その必要はないよ、リアス・グレモリー。ゲオルクは直ぐにジャンヌ達と合流するはずだったし、まぁそれは僕も何だけどそっちの聖魔剣使いには例の疑似空間で手痛い目に遭わされちゃった上に勝負が有耶無耶になっちゃったからリベンジしたいと思ってたんだ・・・ゲオルク、頼むよ」
「全く、曹操を筆頭に英雄の子孫たちは我が強くて困るね。気分で作戦を変えるんだから」
溜息を吐きながらゲオルクは手元に魔法陣を展開させ、僕たちが警戒すると同時に強烈な閃光を放ってきた―――しまった!思わず魔法陣を注視してしまって視界が鈍る!
すると今まで何度か感じた"ぬるり"とした感触に包まれたかと思えば僕とジークフリートの二人だけが全く別の場所に転移していた
「安心しな。此処も首都リリスの中だよ。さっきまで僕らが居た場所とは正反対だけどね。キミを倒したら僕もこの都市の破壊活動をするのがお仕事の内でさ」
「そんな事、させるものか」
僕は聖魔剣を構えると向こうも5本の魔剣と一本の光の剣を構える
一対一の決闘がお望みらしいけどそれはこっちも願ったりだ
そこで僕の耳元に通信用魔法陣が展開され、リアス部長の声が聞こえてきた
≪祐斗、聞こえる?今どこに居るの?≫
「部長。此方はジークフリートとリリスの別の場所に跳ばされたようです。敵はジークフリートのみのようですし、此処で確実に彼を倒してそちらと合流します」
≪・・・分かったわ。こっちはゲオルクも居なくなったし、予定通りソーナ達の方に向かうわ≫
「はい。そちらもお気を付けて」
通信を切るとジークフリートが話しかけてくる
「最後の挨拶は済んだのかい?」
「そっちこそ、この前闘った時の感触からすればもう僕の方が強いと思うけど?仲間との別れは済ませてあるのかい?闘う前なら遺言くらいは聞いてあげるよ」
流石に油断できる程の実力差がある訳でも無いからね。殺す気で行かないと此方が危ない
「いいや、その必要は無いよ。此処で死ぬのはキミの方だからね」
彼はそう言うと懐からピストル型の注射器を取り出した
アレは確かあの空間でレオナルドという少年に死神が使った物と同じ物!
「コレはキミたちがかつてシャルバ・ベルゼブブと戦った時に彼が流した血液を回収して培養、その上で数多の犠牲を伴う研究の果てに完成させた神器の強化薬さ。シャルバ・ベルゼブブは小者ではあったが血筋だけは神器を生み出した聖書の神と対をなす本来の魔王のもの。相反する二つを組み合わせる事で強化する・・・ある意味キミの聖魔剣に近いかもね」
「・・・僕の聖魔剣はかつての同士と今の仲間への誓いと想いの結晶だ。そんな悍ましい薬何かと一緒にして欲しくはないね」
酷い侮辱だ。頭に熱が昇って行くのが自分でも解る
「そうかい、それは失礼したね。だがキミの感情と現実に此処に在る薬は別の話だ。本当は自分の力だけでキミを倒したいと思うがグレモリー眷属の成長は著しいからね。多少のポリシーは捨てて、遠慮なく使わせて貰うとするよ」
そう言って彼は素早く自らの首筋に針を突き刺し、薬を注入する
すると変化は直ぐに訪れた
ジークフリートの全身が痙攣し、顔中に血管が浮かび上がる。この時点で相当な負荷を体に強いる薬である事が窺える
そして彼の背中から生える四本の神器の腕が太く、長くなっていき、指の形は崩れて持っている魔剣と終には融合するような形となった
「今打った薬は『
今までの彼は阿修羅のようだったけど、今の彼はまるで二足歩行の蜘蛛の異形といった面持ちだ。悪魔の僕が言うのも可笑しいかも知れないけど完全に化物だよ
「この状態になると神器の力が不安定になるけど僕としては嬉しい誤算って云うのが在ってね。神器の『ドラゴン』という力も一緒に曖昧になるのかこのグラムを全力で振るっても反動が来ないようになるのさ。コイツは相手がドラゴンなら例え持ち主であろうと気遣ってくれるような殊勝な剣じゃないからね。僕の最強の武器であるグラムは僕の最強形態とは果てしなく相性が悪かったが、それも解消された。コレが僕の本当の全力ってやつさ!」
そう、確かに僕は今までの戦いで彼が魔帝剣の力を振るっているのを見た事が無い
グラムの能力はゼノヴィアのデュランダルのような破壊力とイッセー君の持つアスカロンのドラゴンスレイヤーの力を併せ持っている
僕の『
それにしても不味いね。今の彼にグラムの呪いが届かないという事は恐らく僕の創り出す龍殺しの魔剣なども効果が望めないという事だ
無いよりはマシかも知れないけど彼を倒すには純粋に剣士としての技量が試されるという事・・・イッキ君のようなトンデモ剣技を使えるだけの技量が有ればとも思うけど、此処で無い物ねだりしても仕方がない
改めて聖魔剣を構え直した僕は一気に彼の懐に飛び込み斬り掛かる!
彼の図太くなった腕は相当に筋力が引き上がってると見るべきだろう。スピード特化型の僕は手数と膂力に勝るであろう今の彼相手に後手に回れば一瞬で詰められると見るべきだ!
下手に距離を取ろうにも、その時は斬撃の嵐が飛んでくるだろうからね
“ガギィィィィィィン!!”
だが僕の最速の一撃は軽々と受け止められてしまい、続く連続の斬撃もそれぞれの魔剣で防がれる。あの長大な腕で懐にも剣を伸ばせるなんて蜘蛛と云うよりはタコみたいな柔軟性だね!
「凄いな!たった二日程会っていないだけなのに動きのキレが僅かに、しかし確かに上昇している!あの魔獣たちとの連続した実戦を確かに力に変えているようだね」
驚いているみたいだけど至近距離で見る彼の顔は痙攣しながらもイヤらしい笑みを浮かべている。僕の猛攻をまるで意に介していないような余裕の表情だ
「ふんっ!!」
彼が気合を入れた声で魔剣を薙ぎ払うと力を受け流す暇もない圧倒的な力の奔流で体ごと遠くに飛ばされた。今までは欠片も本気を出していなかったのか!!
そのまま彼が持つグラムが僕に向かって振り下ろされた
それに僕は最大限の危険信号を察してなりふり構わず全力で横に避けると巨大な何かがすぐ真横を通過していった
煙が晴れるとそこには巨大な大地の裂け目が遥か後方にまで続いている。まるでゼノヴィアのチャージ砲みたいな威力だ!しかもそれを彼は軽く剣を振るっただけで再現してしまった
ダメだ!早くクロスレンジに持ち込まないと、このままでは彼の斬撃を避けてるだけでこの首都が崩壊してしまう!近くに寄れば余り派手な攻撃は自分も傷つけるから攻撃範囲を絞らなければならないはず!勝機を探すのは闘いながらでいい!
「へぇ、あの一撃を見てまだ闘志を燃やして向かってくる事が出来るなんてね。でもそれで彼我の戦力差が埋まる訳でもないんだよ。残念ながらね」
ジークフリートが振り下ろしてきた魔剣の一つを聖魔剣に全力でオーラを流し込んで強化しつつも受け流す!出し惜しみ何てしていられない!
至近距離で聖魔剣を次から次へと足元や空中から出現させて彼の動きを阻害しようと配置するが今度は体全体に竜巻のような衝撃波を身に纏って聖魔剣を全て破壊し、近くに居た僕自身も全身を引き裂かれてしまった
「魔剣バルムンク。今の僕は剣と一体化しているからね。本来は竜巻状のオーラを剣に纏わせたり撃ち放ったりする剣だけど、ご覧の通り、僕自身がバルムンクになっているのさ!」
攻防一体の風の鎧!アレではもはや近づく事すらままならない!
そのまま彼は凄い速さで距離を詰めて斬り付けてくる!
僕の最大の武器である速度ですら互角が精々の速さだ!
何とか隙を見つけて斬撃を繰り出したけど聖魔剣は体に届く前に粉砕され、剣を振った方の腕はさらにボロボロになってしまった
それから避けに徹するけど徐々に体が傷つき、このままでは勝てない
「この薬は体に掛かる負担が大きいからね。このまま少しずつキミが死に近づいていくのを見てるのも良いんだけど、此処は我慢してケリを付けるとするよ―――ダインスレイブ!!」
彼が叫ぶと同時に僕の後方に半ドーム状の巨大な氷の壁が瞬時に現れた
ダメだ!コレでは逃げ場が無い!
僕は聖魔剣の壁を創り、更に全力で手に持つ聖魔剣にオーラを籠める
さっきはコレで受け流す事は出来たんだ。バルムンクの余波でダメージは否めないだろうけど、その隙を突いて離脱する!彼の薬に使用制限が在るのなら此処は仕切り直すべきだ!
“スパァァァン!!”
「・・・え?」
彼の振るった剣が何の抵抗も無く聖魔剣を斬り裂いて僕の胸元から横一閃に盛大に血が噴き出した
「魔剣ノートゥングにディルヴィング。切れ味重視の剣と破壊力重視の剣の能力を同時使用してやれば聖魔剣など細枝よりも脆くなる・・・これで終わりだよ木場祐斗」
片方の剣にもう片方の剣の能力を付与した!?今の彼はそんな事も出来るのか!?
「ガッハ!!」
血を吐き出してしまった。如何やら今ので肺も傷ついてしまったようだ。血がこみ上げてくるのとは別に何だか息がし辛い気がする
全身を切り刻まれた上に胸元の怪我で力が入らず、すぐ後ろに在った氷の壁に背中を預けるように座り込んでしまった
ダメだ、早く立て!でないと殺されてしまうぞ!
だが力を入れようとした次の瞬間、僕の四肢が細めの氷柱で貫かれて拘束されてしまった
「グゥゥゥ!」
痛みを堪える僕にジークフリートが語り掛ける
「おっと、逃がさないよ。今回は僕の圧勝だったけど、一年も放置すればキミは今の僕と戦える領域まで成長するかも知れないからね。それはそれで楽しそうだけど、レオナルドが再起できるか分からない現状、余り不確定因子を放置し過ぎては英雄派に大打撃を受けそうなんでね」
ジークフリートは僕に近づき、グラムを上段に構える
「せめて一瞬で真っ二つにしてあげるよ。さらばだ!聖魔剣の木場祐斗!!」
“カッ!!”
彼がグラムを振り下ろす瞬間、僕と彼の間に眩い光が走ってジークフリートも突然の出来事に思わず後退する―――何だ?この光は?
疑問が晴れる前に僕の四肢を拘束していた氷柱が破壊され、自由になったのが解る
すると光の中から声が聞こえて来た
「初めましてになるっスかねぇ?お兄さん?仮にも同じ施設で同じ遺伝子から生まれた者同士、かなり特殊かもっスけど僕らは兄妹って事になると思うんすよ。生まれはこっちが後みたい何で、取り敢えず兄の暴挙は妹の責務として止めさせて貰うッスよ」
光の中から現れたのは可愛らしい恰好の・・・もっと言えばレヴィアタン様がプライベートで着ている魔法少女的な格好をした―――フリード・セルゼンだった
「ォうえっ!!」
思わずちょっと
前回は神父服だったけど今の彼があの時の服を着る事が出来ないであろう事は予想できる程度にはマッチョになっている・・・しかもそれがミニスカートの子供向けアニメ的な衣装を身に纏っているのだ。一体彼に何が有ったって云うんだ!?そして彼が何故この場に居るんだ!?
凄く気になるけどそれ以上にアレと関わり合いに成りたくない!
だがそんな僕の願望虚しくフリード・セルゼンは此方を振り向き話しかけてきた
「お久し振りっスねぇ、イケメン君☆割とガチで死に掛けてるみたいだけど回復アイテムは持ってるっスか?」
「え・・・あ、ああ、持ってるよ」
僕は震える手で懐にあったフェニックスの涙を取り出す。さっきは使う暇も無かったし、今は目の前の彼(?)が余りにも衝撃的な見た目で登場したからすっかり忘れてたけど今の内に回復しよう
「それで・・・キミは何故此処に居るんだい?」
結局好奇心に勝てずに聞いてしまった。多分コレが『怖いもの見たさ』ってヤツ何だろう
「勿論!僕チンとキミの間に在る絆を通してキミがピンチだって伝わって来てね!空間を飛び越えてこうして助けに来たのさ!」
「僕とキミの間に変な絆を勝手に設けないでくれ!」
「そんな事ないっスよ。キミの且つてのお仲間さん達の聖剣の因子を僕チンが取り込んで、それを天界が取り出したのは知ってますよねぃ?」
当然だ。僕の同士たちの因子は全て僕の内に眠っているのだから
「天界が僕チンが取り込んだ因子を抜き出す際、僕チンが生来持っていた聖剣の因子も一緒に抜き出しちゃったのさ♪」
・・・え?待ってよ、それってもしかして
「それでキミはその因子を取り込んだ。つまりはそういう事さ☆」
ええええええええええええええええええええええええええええええ!!?
僕はあの時、同士たちだけでなくフリードの因子まで取り込んだの!?
そんな僕の驚愕を余所にフリードはその後の経緯を話し始める
「因子を抜かれて教会から放逐され、
まぁ気持ちは分かるかな?フリードは最初は教会に所属してたんだから彼の残忍性を知る人達が一定数居ても可笑しくないからね
「放逐時に武器も取り上げられ、そもそも光力を籠めてくれる相手もいない状態では流石の僕チンも追い詰められちゃってね。逃げおおせる事には成功したんだけど、大怪我して道端に転がっちゃったんスよぉ。『絶対にあいつ等ぶっ殺してやる』―――そう誓う僕チンはその日、
うん。最後が全く分からない!
「その
いや!それ洗脳されてない!?強いオーラを流し込んで一時的に心が麻痺した状態で魔法少女のアニメを延々と見せたって事じゃないの!?
「でも、その人はただミルキーを愛してるだけじゃ無かったんスよ!志を共にする同士たちと一緒に自らミルキーとなって世界の為に戦う意思を持っていた!それに感動した僕チンは彼らと共にミルキー魔法を使いこなす為のトレーニングを日々行い、同時に困ってる人々に手を差し伸べるミルキー活動で今も悪と戦い続けてるッス!」
少なくとも『ミルキー魔法』にその筋肉は要らないんじゃないかな!?ミルキーを基にしたレヴィアタン様のアニメも時折テレビのCMで見かける人間界のミルキーのアニメもキラキラエフェクトの魔法を放っていたと記憶しているんだけど―――その前回出会った時より全体的に3倍は太く逞しくなったその体つきを見れば『トレーニング』とやらが筋肉に極振りした内容だと寸分の疑いもなく確信できるよ!
そこまで経緯を語った彼は今度はジークフリートに向き直る
今までジークフリートは「酷い鏡を見せられている気分だ」と頭を抱えていた・・・まぁ同じ顔した相手がマッチョな魔法少女になっていればそんな反応にもなるかもね
「兄さん。分かってるっスよ☆今の兄さんは少し前の俺と一緒っス!つまりは抱き締めて、ミルキーの愛を語ればきっと自分の間違いに気づいてくれるってね!」
「そんなはず無いだろう!!?」
後ずさるジークフリートにフリード・セルゼンが仏の如き慈愛の表情を浮かべて両手を広げて一歩一歩近づいていく
「く、来るなぁぁぁ!!」
“ッドパァァァァァン!!”
ジークフリートが我武者羅に魔剣を振るった
真正面にいてその直撃を喰らったフリードは煙に包まれるが直ぐに煙から現れた
全身に怪我を負い、血を流しているにも関わらずハグする為に左右に手を伸ばした格好のままだ。あの攻撃をまるで意に介していない!ダメージは負っているというのに、何という精神力だ!
本当に悟りを開いているとでも云うのか今の彼は!?
「ふふ♪兄さんはヤンチャ者っスねぇ。イイっすよ。先ずは妹として兄さんの全てを受け止めて上げるっス♡このミルキー・エンジェルモードでね☆」
「妹とか言うんじゃなぁぁぁい!!」
ジークフリートのツッコミ虚しく、フリードはそう宣言すると全身を莫大な闘気で包み込み、背中の肩甲骨の辺りから特に高出力の闘気が噴出してまるで純白の翼が生えたような見た目となった
何だかもう色んな意味で泣きたくなってきたよ
「ミルキーは何時だって誰かを助けて巨悪に立ち向かい、守るべきものの前に立つ者!誰もがその姿を見て安心出来る背中を魅せる為に背筋の鍛錬は怠っていないっス!」
背筋って言っちゃったよ!『ミルキー魔法』は何処に行ったの!?
でもそうだね。今の彼の先ほどよりも盛り上がった背中の筋肉を見ていると何物をも通さない絶対の盾を彷彿とさせるよ
「ふざけるなぁぁぁ!!」
普段から冷静な様を見せていたジークフリートがそんな仮面をかなぐり捨ててフリードに斬り掛かって無数の斬撃を全方位から浴びせていく
しかし倒れない!魔帝剣グラムの攻撃でさえ彼の筋肉の表面しか傷つける事は出来ず、他の剣にいたっては弾かれる始末―――光の剣何て既に砕けてしまっている
ジークフリートが一旦距離を取って一息つく
「痛みも、苦痛も、愛さえ有れば全てを受け止められるっスよ♪」
フリードは薄くとはいえ全身を斬られて血を流しているのに未だにイイ笑顔だ
もはや狂気を感じるよ
よく見ると彼の持つ魔剣たちが"カタカタ"と震えているようだ。ずっと岩でも斬り付けていたようなものだろうからね。腕に反動がきたのかな?
そう思っていたが如何やら違ったようで彼の持つ五本の魔剣はジークフリートと一体化していた持ち手の部分から攻撃的なオーラを放って彼の手を強制的に振り払い、空中を飛んで近くに居た僕の影に隠れるように地面に突き刺さってしまった
僕の後ろから剣の柄の部分がそっと彼らの様子を窺うように突き出ている
電柱に隠れてストーキングする人じゃないんだから・・・いや、むしろ親の影に隠れる子供かな?
成程、強力な魔剣や聖剣は時として意思を持ったような反応をすると聞くけどコレはちょっと露骨過ぎないかい?フリードが恐いのは分かるけどさ
ジークフリートも「馬鹿な・・・」と唖然としているようだ
「兄さん、終わりにしよう。兄さんの敗因は
「『
ふわりと近づいたフリードはその太い腕でジークフリートを抱き締め"ゴキッ、メキッ、ゴキャッ"という人体から鳴ってはいけない音を響かせて大地に沈めた
そうか・・・アレがミルキー魔法なのか(遠い目)いや、分かってるよ?そんな訳無いって事くらい・・・ただもうツッコムのも疲れてきた気がするんだ
一瞬思考が別の世界に飛びかけた気がするけどフリードはそんな僕に顔を向ける
“カタッ!”
僕の後ろの魔剣たちが震えている
「はっはっは!少し見ない間に兄さんの魔剣ちゃんたちと随分仲良くなったんスね?情愛の深いとされるグレモリー眷属に籍を置くキミの下なら魔剣たちもきっと良い子に育ってくれるはずっス♪だ・か・ら♡」
そこまで言うと彼は一瞬で僕の背後に回った―――速い!見切れなかった!
彼は僕の後ろの地面に突き刺さっていた魔剣たちの刀身を抱き寄せて優しく声を掛ける
「今度は彼をしっかりサポートして上げるんスよ?今度もし逢った時に仲良くなってなかったらキミたちにもミルキーを教え込んで上げるっスから♡」
ウィンクする彼のセリフを聞いて魔剣たちは"ガチャガチャ"と震えまくる
多分だけど人間なら高速で頭を縦に振っているような感じだと何となく判る
それを見て満足そうにした彼は立ち上がり天使(闘気)の翼で空中に舞い上がる・・・闘気で空って飛べるんだ
「それじゃあ僕チンはもう行くっスよ。ミルキーの助けを求める人々は世界中に居るっスからね。ここも大変みたいだけどきっと大丈夫☆魔剣君たちもキミの力になってくれるみたいだし、もしもまた本当にキミが死に掛けたらまた助けに飛んでくるっスよ♪」
何か最後にトンデモナイ爆弾発言を残して彼は何処かへ消えていった
「・・・僕が死に掛けると彼が召喚されるみたいだね。如何やら僕は強くならなくちゃいけないみたいだ。いや、本当に二度と彼とは会いたくないな。キミたちも手伝ってくれるかい?」
無機物である剣に語り掛けるなんて傍から見たら変な光景だろうけど魔剣たちは力強いオーラを僕に送ってくれた
如何やら僕は魔剣自身から全力のバックアップを受けて剣を振るえるようになりそうだ
この件が終わったら一度、フリードの分の聖剣の因子だけを選別して抜き取る事が出来ないかアザゼル先生に相談してみようかな
そう思いつつ皆の居る場所に急いで向かったのだった
・・・因みに後日、「無理」と言われた
[木場 side out]
純白の翼(転生天使とは言ってない)
一体いつからリント・セルゼンだと錯覚していた?
お気づきの方も多いでしょうがフリードはワンパンマンのプリプリプリズナーをひな型にしていますww