第一話 魔法使いとの、契約です!
九重がオーフィスのお社を建てに来てから少し経った頃、俺は今イッセーから愚痴というよりは相談みたいなのを受けていた
「それで?最近女の子がベッドに寝ている間に侵入してくるから朝起きるとベッドから転がり落ちてる時が在るって?」
俺も人の事は言えないのかも知れないけどコイツの悩み相談を他の男子が聞いたら血で血を洗うバトルアクションが展開される事間違いなしだぞ
「ああ、女の子たちと密着して寝られるのは素直に嬉しんだけどさ。朝起きると広いベッドもぎゅうぎゅう詰めになっててさ。寝てる間は良いとして途中で目が覚めると改めて眠れるスペースが無いんだよ。それにゼノヴィアなんかは寝相が悪くてベッドから蹴り落とされる事もあるし・・・一応俺の部屋なのに主の俺がベッドを占拠されて床で寝るってのも可笑しな話だろ?」
イッセーの言い分は分かるし、正しいとも云えるけどこの場合は相談する相手を間違えたな
「俺、中学3年間と高校1年間の計4年間は黒歌にベッドを占拠されて冬場でも固い床で毛布に包まって寝てたんだけど・・・」
中学の修学旅行が終わった辺りから黒歌は一緒に寝ようと誘って来てたから後半の2年間は俺の意地みたいな処もあったけどさ
「・・・マジか?」
「マジだよ―――アレだ、イッセー。床で寝るのも男の甲斐性の一つだよ」
「いやイッキ。それは合ってるようで微妙に間違ってると思うぞ」
そう言いながらイッセーは不憫なモノを見るような目を向けて来る―――そんな目で俺を見るな!
「真面目に答えるなら結局ベッドを増設するしかないんじゃないか?ほら、ベッドって複数のベッドを繋ぎ合わせる事だって出来る訳だし、そもそもお前の周りの女性陣はお前に引っ付いて寝たいって事だろうから密着度は変わらないだろうけど蹴落とされるような狭さは何とかなるだろ」
寝ている間に勝手に侵入するなら順番決めてローテーションにしても意味ないだろうしな
「あ~、そうだなぁ。今度リアスにも相談してみるか・・・幸い『おっぱいドラゴン』関連でお金には余裕がある訳だしな。必要経費って事でグレイフィアさんお金降ろさせてくれるかな?」
そう言えばコイツ・・・というよりグレモリー眷属のサイフは基本的にグレイフィアさんが握ってるんだったっけ?
皆それなり以上にはお金自体は儲けていても一般的な高校生のお小遣い程度が振り込まれるようになってるんだとか
将来への備えとか子供の内から余り多くのお金を持たせるのは良くないとかって理由みたいだ。逆に俺の方はと言えば八坂さんとかが管理してたりする訳じゃない
もしも俺が豪快にお金を使ってたりしてたら別だったかも知れないが幸い俺の庶民根性は大金程度で動かされるモノじゃなかったようだ
まぁ余りお金を貯め過ぎても経済的に良くはないだろうから使う時にはスパッと使う覚悟は持っておく必要があるだろうけどね・・・差し当たり車とかか?マニアみたいに何台も買ったりしなくとも軽自動車って選択は無いだろう―――いや、軽自動車自体は普通に便利そうだけど彼女が居る身としてはちょっとね
そんな事を話していたらイッセーの背後から松田と元浜が近づいて来たので周囲に雑談に聞こえる認識阻害を解く
そして近づいて来た二人はイッセーの後頭部にダブルで拳骨を落とした
「痛ってぇぇぇ!?突然何すんだお前ら!!」
「うるっせぇ!イッセー!オカルト研究部に新しく入った一年の転校生の金髪美少女レイヴェルちゃんとその情報だけでもムカつくのに登下校も同じ時間で一緒の方向に歩いてるとの情報は上がってんだ!どうせまたアーシアちゃんみたいにお前の家にホームステイしてるとか羨まけしからん事になってるんだろう!?本っ気で嘘だと言えイッセー!!」
「違げぇよ松田!そんな雑な推理で毎回俺を取り敢えず殴るのは止めろって!レイヴェルとは彼女が転校してくる前から知り合いではあるけど俺の家に住んでたりはしねぇよ!!」
「その言葉、信じて良いんだろうなイッセー?」
「ああ、当たり前だろ元浜。何せレイヴェルが住んでるのはイッキの家なんだから!と云うかお前らイッキの方も疑えよ!」
「イッセー!!お前そこは否定するだけで良かっただろ!」
態とだよな!今の情報漏らしたのは絶対に俺に矛先向ける為に態と情報流したんだよな!?
「ぬぁあにぃいいいい!!?その反応をするって事はイッセーの言ってる事は本当なのか!?畜生!何でだ!この学園のマドンナが全員何故イッセーとイッキの周囲に集まって行くんだ!?特に新しく入って来る女の子たちは皆オカルト研究部とか美少女比率がドンドン高まってやがるじゃねぇか。俺達も入部させろォォォ!!」
しまった。俺の態度がこいつ等に確信を与えてしまったか・・・いや、こいつ等なら関係なしに確信してただろうな。イッセーが口に出した時点でアウトだったか
「アンタらも毎度毎度嫉妬しながらよく飽きないわよねぇ。見ている側としてはちょっとマンネリ化してきたわよ?」
「喧しいぞ桐生!俺達は真剣だ!真剣に女の子にモテたいだけなんだァァァ!!」
松田、渾身の魂の叫びだけど聞こえてたクラスの女子は遠巻きに蔑んだ目を向けるだけだった
「う~ん。有間君がモテるのは分かるけど変態三人組の中で兵藤だけがモテるのはやっぱり顔じゃない?一応アンタら三人の中じゃ一番真面な顔してるし、最近は鍛えてるのか良い意味で野性味が出て来てるって意見もあるからね」
「本当か桐生!?遂に俺にも伝説のモテ期がやって来てるのか!?」
イッセー・・・今のお前がモテ期じゃ無かったらなんだってんだよ。ほら、クラスの男子がお前の発言を聞いて殺気を送り始めたぞ
「まっ、アンタら二人も本当にモテたいならその変態を何とかする事ね。生まれ変わっても直りそうにはないけどさ」
"ニシシシ"と笑う桐生さんの言葉に松田と元浜は悔し涙を流すのだった
「あっ、それで有間君がレイヴェルさんと一つ屋根の下って話は如何なったの?」
この後、松田と元浜に滅茶苦茶追い回された
放課後、部室にてリアス部長から連絡事項があるとの事だった
「吸血鬼側から連絡が有ったの。話の内容は今の段階では明かされなかったけど暫くしたら使者が来るそうよ」
それを聞いたギャスパーの顔が少し曇る。ギャスパーとしては自分を迫害した吸血鬼にいい思いは抱けないだろうからな
「それはまた・・・今の段階で今まで各勢力との話し合いに応じて来なかった閉鎖的な吸血鬼たちが態々使者を送って来るとは厄介ごとの匂いしかしませんね・・・」
「如何いう意味ですか?ロスヴァイセさん?」
イッセーの質問に答えたのはアザゼル先生だ
「今、吸血鬼の領土から一つの噂が流れて来てるんだよ。何でも
「成程、あの引き籠りの吸血鬼たちが外と繋がりを持とうというにはそれぐらいの爆弾が必要なのかも知れないな」
教会時代から吸血鬼と対峙して来たであろうゼノヴィアが呟くけどその爆弾はとっくに導火線に火が付いた状態ですよね
「一応まだそうと決まった訳では無いけれど、十中八九面倒ごとでしょうね。それに吸血鬼側が三大勢力ではなくて態々私達を会談相手に指名してきたのも気になるわ」
「まっ、今は情報が無いからこれ以上考えても仕方ない。全員、気構えだけはしとけ」
アザゼル先生が吸血鬼の話を締めくくり、リアス部長が次の話に移る
「そろそろ私達悪魔は魔法使いとの契約期間に入るのよ」
「魔法使いとの契約・・・ですか?」
この世界の魔法使いは自分の決めたテーマを生涯かけて研究する人達とされている・・・ある意味Fateの魔術師と在り方は近いのかも知れんな。向こうは自分の決めたテーマと云うよりは家が代々受け継いできたテーマって感じだけどね―――後、魔術師は漏れなくイカれてるのがデフォだけど
「これは主である私が一定の年齢に達したからね。同時に眷属の皆にも魔法使いと契約を結んで貰う事になるわ」
リアス部長が皆を見渡して続ける
「魔法使いが悪魔と契約する理由は大きく分けて三つ。一つは用心棒として。バックに強力な悪魔が居れば相手先といざこざが起きた時に折り合いがつけやすいのよ」
「ヤクザみたいですね」
イッセーのストレートな物言いにリアス部長も苦笑しながらも否定はしなかった
「二つ目、悪魔の持つ知識や技術、または人間界では手に入りにくい素材などを入手する為。要は彼らの研究のお手伝いね。特に裏の素材とかは魔法使いが真面なルートで手に入れようとすれば物凄く価格がつり上がるの。裏の素材を研究対象にしている魔法使いなんかじゃ死活問題になるわ」
お金の問題ですか・・・何時の世も世知辛い事情は付いて回りますね
「最後は最初の理由と少し被るけど箔を付ける為ね。強力でその上有名な悪魔なんかと契約する事が出来ればそれだけでも魔法使いとしての発言力が高まるし、トラブルが起きた時や相談事においても契約先の悪魔の伝手で広い範囲の悩みをカバー出来るからね。『人間に知恵を与え、対価を得るのが悪魔』―――私達悪魔が研究者である魔法使いと契約を結ぶのは利益もあるけど『聖書に記されし悪魔』としての在り方を体現している部分も大きいわ。だからこそ私達悪魔にとってこの契約は仕事であると同時に種族としての義務でもあるの」
ああ、悪魔にも研究者は普通に居るのに態々人間と契約してるのにはそういう意味も在るのか。要は悪魔としての信仰心を集めるのに必要な事って訳だ
余りハッキリとした描写は無いけど裏の世界の住人にとっては人々の信仰心というのは文字通り糧になってるんだろう
例えばだけど今から世界中の人々がクリスチャンになったら不安定な『システム』が補強されたり天使たちがパワーアップとかするのかな?
「まさか私が魔法使いに呼び出される側になるとはな」
「そうね。召喚で呼び出されるの何て基本は悪魔や魔物、妖怪などが大勢を占めてるわ。だからこそ、皆にはきちんとした契約を結んで貰いたいの。一度契約すれば簡単に契約を破棄なんて出来ないし、魔法使いにとって契約がステータスであるように悪魔からしても程度の低い魔法使いと契約すれば品位というものを疑われる事になるわ―――最高の取引相手を選びなさい。私達も出来る限り相談に乗るからね」
「そういやリアス。その選考について何だが一人アドバイザーを紹介したいと思っててな。リアスたちが手伝うつってもこの中で魔法に関してガッツリ詳しいのがロスヴァイセだけだと大変だろう?取り敢えずもう呼んであるから先ずは会ってくれ」
アザゼル先生はそう言って指を打ち鳴らすと部室の床に魔法陣が広がって水色を基調とした尖がり帽子の魔法使いと灰色の狼が現れた
「皆さまお久し振りです。この度、アドバイザー役を申し付かりましたルフェイ・ペンドラゴンです。一応敵同士という事ではありますが宜しくして頂ければ幸いです」
ヴァーリチームの魔法使いのルフェイ(とフェンリル)が現れて"ペコリ"とお辞儀をしながら挨拶するのを見て皆反応に困ったような表情だ
敵意はお互いに持っていなくとも一応相手はテロリストの肩書を持ってる訳だしね
「・・・アザゼル。何故彼女を?」
「なに、向こうのヴァーリ・・・と云うかアーサーに頼まれてな。アーサーの奴は自分から強敵を求めてヴァーリと行動を共にしてるみたいだがルフェイはそんなアーサーを心配してついて来ただけだから可能な限り危険な場所に置きたくないんだろう。ルフェイが何時か表側に戻れるように少しずつこうやって良い印象を持たれるような機会を持たせたいのさ」
「お兄様は昔から私に過保護何です。私も自分の意思でお兄様たちについて行くと決めたのですが・・・ただ、今回は『おっぱいドラゴン』さんの家に行けると云うのともう一つ・・・」
そこでルフェイは一度言葉を区切ってソファーに座っていたオーフィスに抱き着いた
「オーフィス様にもこうしてお会いしたかったものですから。お久し振りです。オーフィス様」
「ん、ルフェイも久しい」
抱き着かれたオーフィスも
「あっ!勿論魔法使いとしてアドバイザーの仕事はキチンとやらせて頂きますので皆さま如何か宜しくお願いします!」
リアス部長は二人の様子を見て溜息を吐く
「貴女には魔獣騒動の時も助けられたし、オーフィスも懐いているなら無碍には出来ないわね。良いでしょう。暫く貴女が滞在する事は認めるわ―――ただし、分かっているとは思うけど目立つような行動は控えるようにね」
こうして彼女が魔法使いとの契約における臨時アドバイザーとして兵藤家に泊まる事になった・・・因みに食事時だけは転移魔法でヴァーリ達の下に帰って食事の用意をするそうだ。こと食事に関しては何一つ信用されてないヴァーリ達だった
そうして少し経った頃にリアス部長が時計を確認する
「そろそろね。もう直ぐ魔法使いの協会のトップのお方が連絡を下さるの。失礼のないようにね」
それを聞いた皆はそれぞれ姿勢を正す。すると部室の床に魔法陣が広がった
「アレはメフィスト・フェレスの紋章だね」
祐斗がその紋章を看破した数秒後、魔法陣の上に立体映像で高級そうな椅子に座った赤と青の混ざった頭髪をピッチリと固めた強面の男性が映し出された
髪だけでなくその瞳も右目が赤で左目が青のオッドアイで中二・・・もとい妖しい雰囲気を纏ったダンディな方だった
≪こんにちは。リアスちゃん。久しぶりだねぇ≫
中身は大分気さくな方のようだけどね。皆の緊張の度合いが少しだけ下がった感じがする
「お久し振りです。メフィスト・フェレスさま」
≪うんうん。日を追うごとに美しくなっていくねぇ。キミのお母さんもお祖母さんもひいお祖母さんも皆美しい方ばかりだったよ≫
「有難うございます―――皆、此方が魔法使いの教会の理事であり、
≪やあやあ初めまして。魔法使いの組織の一つ『
彼は皆を見渡して挨拶し、最後にアザゼル先生に顔を向け話しかける
「応、これもまた時代の流れってヤツだよ。まっ、俺としちゃ自分の趣味に費やせる時間が増えたんで今の立場を存分に満喫させて貰ってるけどな」
≪程々にしておきなよ?やり過ぎるとシェムハザ君が無表情で折檻しに来るだろうからね≫
二人の気安い会話を聞いていたイッセーが「お知り合いなんですか?」と質問する
「まあな。コイツは初代四大魔王と折り合いが悪くて人間界に引っ込んだのを
≪先代の魔王たちは頭が固くてその上『ああしろ、こうしろ』と煩くてねぇ。その上成果だけ限界まで搾り取ろうとするような奴ばかりだったから早々に縁を切ったんだよ。だからこそ、今の四大魔王には好感を持ってるよ。まぁ僕はもう人間界で独立してるから先日の魔獣騒動とかも傍観決め込んじゃってるんだけどね≫
"HAHAHAHA"とでもいった感じに笑う彼に皆は困ったような表情を浮かべるばかりだ。独立して立場もある彼がおいそれと手を貸せないのは分かるけど反応に困るといった感じだろう
≪まぁそれでも現政府とはビジネスパートナーとしては良好な関係を結ばせて貰ってるよ。そういう訳で雑談もそこそこにお仕事の話に移ろうか。キミたちと契約したいと言ってる魔法使い達の詳細なデータを送らせて貰うよ≫
彼がそう言って指先で魔法陣をクルクル回すと部室の開けている場所に魔法陣が展開され"ドバドバ"と大量の書類が次から次へと転送されてきた
見ればそれは履歴書のようで魔法使いの写真と得意分野や研究テーマなどが明記してある
誰宛の履歴書なのかも書いてあるので皆で仕分けしていくがそれでもそれぞれの前に書類の山が出来た位だった
一番履歴書がテンコ盛りだったのはリアス部長でこの結果にはアザゼル先生も納得の面持ちだ
「まっ、この結果は当然だろうな。リアスの眷属は全員人気が高いが主であるリアスと契約出来ればその眷属、そしてグレモリー家の力も引き出せると考えるヤツは多いだろうし、そもそもリアス自身も才能有る悪魔だ。お近づきになりたい奴らは多いだろうさ」
リアス部長以外では書類の量の順番的にロスヴァイセさん→アーシアさん→白音→イッセー→祐斗→朱乃先輩→ゼノヴィア→ギャスパーの順だった
ロスヴァイセさんは半神であり北欧の魔法に詳しいから、アーシアさんは癒しの力の研究がしたいから、白音は仙術と妖術を扱えるからでそれ以降は言ってはアレだがレア度順な気がするな
例えば白音の仙術とか珍しい植物の量産とかも出来る訳だし研究も捗るだろうけど、今まで極一部の者しか扱えなかった聖剣使いで悪魔になって日が浅いゼノヴィアとか『箔を付ける』という意味なら兎も角研究の手伝いとかは難しいだろうからね
そう言うとゼノヴィアも「確かに、今の私では護衛や素材集め以上の事は求められても困ってしまうな」と納得した感じだ
「ああ、でもイッセーは知名度だけじゃなくて研究の協力の面でも選ばれてるかもな」
「は?俺が?言っちゃなんだけど悪魔としては一応先輩だけどゼノヴィア以上に知識不足な処ってあると思うぞ」
まぁゼノヴィアは元々教会の戦士だからそれなりに裏の事は知ってるだろうな
「そこはほら、ドラゴンって素材の塊じゃん?人間ベースのお前じゃ鱗とかは無理でも『ドラゴンの血を寄越せ~』って研究者は少なからず居そうだけど?」
途端にイッセーは凄くイヤそうな顔をしたな
「止めてくれよ。幾ら何でも体を売りたくはないぞ・・・ああ、いやでももしも素敵な白衣のお姉さんに報酬(おっぱいタッチ)と引き換えの献血を求められたらちょっとくらいなら・・・」
「イッセー!」
「はい!真面目に選びます!」
イッセーの思考がイヤらしい方向に跳びそうになったのをリアス部長が一喝して引き戻す
如何やらちゃんと躾が行き届いているようで何よりだ。最初期のイッセーなら未練を顔に残していた事だろうからな―――さて、そろそろ
「メフィスト会長。誰もツッコまないままここまで来ちゃったんですけど質問良いですか?」
≪うん。キミは有間一輝君だね。遠慮なく聞いてくれたまえよ≫
「何でこの選考書類、俺宛のが混ざってるんですか?」
そう!何故か俺向けの履歴書があるんだよ!数はギャスパーのものより少し少ないけど十分『山』と表現出来る数がある!・・・何で?
≪ああ、それはねぇ。先日の冥界騒動を通してキミの知名度も魔法使いの間でかなり高まったんだよ。それでキミの事を詳しく調べる人も出て来る訳だけどキミが演じている『邪人』という設定が魔法使いの教会でも広まってね。勿論キミが人間だという情報も流れてるけどまぁ噂なんてのは面白いものが優先されるものだからねぇ。ダメ元でキミに書類を出した魔法使いが一定数いたって事さ。面白そうだから今回ついでに送らせて貰ったよ≫
いやいやいや!面白そうだからって理由でこんなもん送り付けないで下さいよ!
「そもそも今回の選考は悪魔と契約する為のものでしょう!?目的からしてズレちゃってるじゃないですか!」
≪いいや、そんな事は無いんだよ。魔法使いが契約者を求めるのは後ろ盾と研究の協力が欲しいからだ。必ずしも悪魔である理由は無いんだよ。キミは実力、知名度共に問題無いし、妖怪にも悪魔にも伝手が利くからねぇ。ぶっちゃけ契約を結べたら万々歳だと思うよ?まぁその書類は冗談で送ったものだから無視しても良いけど、興味があるなら目を通してくれたまえ≫
そんな事言われても普通に困るんですけど!?あ~、でも捨てる前に軽く見てみるか。契約結ぶ気なんて無いけど暇つぶし代わりにはなるかもだし
≪今回の分の書類はそれで全部になるよ。まぁキミたちに見合うような魔法使い何てほんの一部だろうし、今回決まらなかったらまた次回に持ち越しだね。優秀ではあっても諸事情があって今回の選考に参加出来なかった魔法使いとかも一定数は居るからね≫
そこにリアス部長が契約にはお互いの利益が合わなくなった場合や不慮の事故、寿命の違いによる死亡での契約解除や短期契約などで魔法使いとの契約はこの先何度もある事が補足説明される
「うっへぇ。その度に俺達はこの書類の山と格闘しなくちゃいけなくなるのかよ。確かにいい加減な気持ちでは選べないな。出来るだけ長期でしっかりとした利益の出る契約相手じゃないと―――毎度毎度こんな選考してらんないぜ」
イッセーがげんなりしてる様を見ていたメフィスト会長は今度はレイヴェルに視線を移した
≪そこのキミはフェニックス家の者だね?≫
「は、はい。レイヴェル・フェニックスと申しますわ」
突然話しかけられて驚きながらもレイヴェルは返事を返す
≪キミはフェニックスの涙が裏ルートで取引されていた事は知っているかな?≫
「はい。ですが取引に携わった不逞の輩は既に粛清したと聞きましたわ」
≪コレは魔法使い側でも一部の者しか知らない情報何だけどね。裏ではフェニックスの涙がまだ流通してるんだよ―――それだけならまた新しく取引の任に着いた者が流してると思う事が出来たんだけど、どうにも取引されているのは偽物のフェニックスの涙らしいんだ≫
「偽物の涙・・・ですか?それでは回復効果の無いただの液体と変わりないはずです。まさか!」
そこまで云った処でレイヴェルの表情が驚愕に彩られる
≪うん。そのまさかでね。偽物の『涙』は本物と寸分違わぬ回復力を有しているんだよ。ほら、コレがその偽物の『涙』さ≫
メフィスト会長は懐から小瓶を取り出した
≪この偽物が闇マーケットに流れるのに前後して
「それはつまり、フェニックスのクローンが造られてるって事ですかね」
俺の言葉にレイヴェルだけでなく他の皆の視線が突き刺さるけどコレって原作知識云々言わなくても思い付ける事だと思うんだよね
「クローン・・・ですか?」
言葉を震わせるレイヴェルには心が痛むけど後で真実を他から聞くよりはマシだと判断して続ける事にする
「確認するけどレイヴェル。フェニックスの涙を生み出せるだけの血を持った家の人が拉致されたとか行方不明なんて話は聞いてないんだよね?」
「ええ、そのような事になったら私の下へも連絡が来るはずですわ・・・ですが、それにしてもクローンだなんて」
「クローン技術は最近の人間界では広く知られている技術だ。クローンを題材にした色々と倫理観に訴えかける映画とかだって数多くある位にはな。その上相手は外道のテロリスト。英雄派だってシャルバの血液の培養とかもやっていたんだから十分あり得る話だろう―――悪いなレイヴェル。嫌な話を聞かせて」
隣で沈んだ顔をしていたレイヴェルの頭を撫でる・・・彼女は頭を撫でられるのが好きだからね
「いえ、イッキ様。確かに聞けば納得できる内容でしたわ。可能性・・・という事になりますがお父様には今の話は私の方から伝えておく事にしますわ」
「もしそれが本当だとしたら絶対に許せないわ!主の御名の下、断罪して上げるんだから!生命を弄ぶような真似、主がお許しになるわけないんだから!」
人一倍正義感が強いイリナさんが立ち上がって宣言する
「一応言っておくけどイリナさん。英雄シグルドの薬物漬けクローンを生み出して戦場に送り込んでいたという、はぐれ魔法使いよりも先にクローン技術を悪用してたのは教会だからね?」
「ぐはふぅぅぅぅぅぅぅ!!?」
あ、イリナさんがフリーズした―――と思ったら同じく教会出身者のゼノヴィアとアーシアさんも固まったな
「私の・・・私の信じていた教会はテロリストにも劣る畜生が跋扈していたのか・・・ふふふ、教会で剣を振るっていた時ですらすぐ隣の異臭にも気付けなかったとは情けない限りだ」
特に断罪の剣を振るっていたゼノヴィアのダメージが酷いな
だがコレでレイヴェル一人に圧し掛かっていた重い空気が分散されたから良しとしよう―――すまん。教会トリオよ
「俺の方でも情報を集めてみよう。それにしても流石はイッキだ。やっぱり外道の考えは外道には分かるもんなんだな。『餅は餅屋』って訳だ―――レイヴェルも心配すんな。イッキが傍に居るなら魔王級の奴でも襲って来ない限りは問題すら起きんだろう」
誰が外道だ!人間の悪意を考えればクローン程度は普通の範疇だろう!それと最後に思いっきりフラグ立てていくな!
≪あははは、僕としても貴重な意見だったよ。僕たち悪魔や異形の者はその存在自体が貴重なサンプルと見られる時代になって来ちゃったのかもね。これからはそう云った面でのセキュリティも強化していかないとダメそうだ。ついでに此方でも秘密裡に探りを入れる事にするよ―――最後に物騒な話が挟まっちゃったけど魔法使いの契約の件も宜しく頼むよ≫
「はい。本日はお忙しい中、有難う御座いました」
リアス部長のお礼の言葉を最後に≪またね~♪≫と軽い感じに通信が切れた
状況的にやっぱり先手は取られそうなんだよな―――だからと言って何もしない訳にはいかないし、原作のように魔法陣で調べて終わり何て事で済まなかったらとか冗談じゃない・・・いや、確かギャスパーが酷い目に遭ってたっけ?うん。何とかしてはぐれ魔法使い共は一人でも多く葬ってレイヴェルのデータとかも渡さないように出来れば良いんだけどな
取り敢えず、やれる事はやっておきますか
こうして不穏な話は在ったものの、メフィスト会長との話し合い自体は無事に終了したのだった
クローンの事を考えたら教会も同じくらいヤベェ事してたっていうのを思い出しました