メフィスト会長との話し合いも終わり、グレモリー眷属の皆が皆山のような書類と睨めっこして数日(俺は流し読み程度)、本日の特訓で祐斗が騎士団に魔剣を持たせてゼノヴィアを圧倒し、デュランダルのチャージ砲撃もグラムで相殺して彼女を項垂れさせていた。『私の取柄のパワーですら並ばれてしまった』とそれは酷く落ち込んで今のままではいけないと今まで手を出していなかったエクスカリバーの各種能力も使いこなそうと努力している
祐斗は祐斗で魔剣を使うと消耗が激しいらしく今は地力を伸ばすのが一番と基本メニューを強化している。何でも魔剣自身が祐斗に協力的らしいがそれでも現状では実戦の中でグラムを三回も全力で振ればガス欠になってしまうようだ
まさか祐斗がそこまで魔剣に認められているとは思わなかったけど聖剣の因子を多く取り込んだからってそんな影響出るものか?(原因:フリード)
ロスヴァイセさんはルフェイと魔法談義でレイヴェルもそこに加わって何やら質問してるようだ。ロスヴァイセさんとルフェイが厳しい顔をしてるけど如何したんだろう?
他の皆も思い思いに特訓に励んでいる姿が見受けられる
俺はと云えば今はイッセーと模擬戦だ。『真・女王』でパワーもスピードも上回ってるイッセーだがドライグとの連携でオーラの移動での先読みが出来なくなってるから前よりずっと戦い難くなっている。別にオーラの先読みが出来ないからといって戦えない訳じゃないが以前と比べて倒すのに3倍以上は時間が掛かるようになった。それだけ慎重に立ち回らなくてはならないからだ
「カーッ!イッキを倒すまで後ちょっとだと思うんだけど、そのちょっとが遠いんだよなぁ」
「俺から見ればイッセーは単に戦闘の相性が良いからここまで戦えてるだけだとも思うけどな」
「ならイッキにとって相性の悪い相手ってのはどんなヤツ何だよ?」
そこは自分で考えたまえよイッセー君。自分の弱点を素直に教える程お人好しじゃないぞ俺は
それからはアーシアさんがオーフィスにドラゴンの知識を教えてもらってたりリアス部長が可能な限り滅びの魔力を圧縮させたレーティングゲームでは禁止技指定されるだろうという新技の練習をしているなど軽い報告を終えてその日の修行は終了した
それからまた次の日、偶にはという事で俺とイッセーにサジと祐斗の同学年野郎組で屋上で弁当を突っついている
「それじゃあ、バスの子供たちを送り出した後、特に問題も起こらなかったんだな?」
俺は話に聞いていただけだが英雄派が子供たちの乗ったバスを攻撃した時の話らしい
「ああ、それどころか手続きを終えて俺達がリリスに戻った時には巨大魔獣は居ないし赤く空が割れてるし、直ぐに戦闘終了の連絡が来たから只管事後処理だったな」
「あの後深夜・・・と云うかほぼ明け方に帰宅しての中間テストは鬼だと思ったな。生徒の俺達やサボり魔のアザゼル先生は兎も角ロスヴァイセ先生とか定時までしっかり仕事してただろうしな」
「ああ、あの時のロスヴァイセさんは家に戻ってから栄養ゼリーだけ口にしてベッドにダイブしちまったよ」
生真面目過ぎるのも考えものだな
「そう言えば匙君。生徒会メンバーと云うかシトリー眷属ももうメフィスト様から魔法使いの書類は送られてきたのかい?」
「ん?ああ、あの書類の山な。実はシトリー眷属に新しく人員が2人増えてよ。その関係で調節があって書類を貰ったのも昨日の夜だぜ。まだ全然目ぇ通せてねぇよ。まっ、会長に聞いた話じゃ俺らが受け取った書類はグレモリー眷属に比べたらかなり少ないみたいだし、この時ばかりは知名度の低さに感謝したね。あ!今言った事は会長には内緒な!会長の耳に入ったら絶対後で『何を腑抜けた事を言っているのですか。修行メニューを倍にして気を引き締めなさい』とか言われるわ」
「あはは、了解だよ。それにしても新しいシトリー眷属には興味が湧くね」
「近いうちに自己紹介の機会もあるだろうから俺から言うのは控えておくな。ただ即戦力だからチームの力と安定性がグッと増した事は確かだぜ」
「なら、あとはサジの龍王形態の安定性が上がれば取り敢えず完璧だな」
ちょっと水を差してやるとサジはガックリと項垂れた
「それを言うなよ有間。俺はこの前のアガレスとのゲームで思いっきり暴走しちまって結構今でも凹んでるんだからさ―――そういや兵藤。お前はアレからリアス先輩と如何なんだよ?」
「アレからって何時からの事だ?」
「惚けんなよ。お前バアル眷属とのレーティングゲームの決勝戦で生中継の中告白してたじゃねぇか―――で、如何なんだ?同じ主を狙ってる身としちゃしっかり聞いてみたいもんだぜ。やっぱり主と眷属ではまだそういう仲になるには早いから『先ずはお友達からでお互いの事を知っていく処から始めましょう』とかそんな感じに躱されたのか?」
聞かれたイッセーはサジに遥か高みから見下ろすかの如くドヤ顔を決める
「ふっふっふ!いや~悪いなサジ君。実は俺とっくにリアスと付き合ってるんだよね」
「ハァ!?マジかよ!?つぅかお前今『リアス』って呼び捨てにしたか!?そんな・・・俺なんて未だに一緒に映画、それも眷属の皆で映画を見たくらいの進展しか無いんだぞ!!」
眷属の皆で映画とかそれを無理やり進展と捉えるサジが不憫過ぎる
「畜生・・・こんなペースじゃ俺の夢『会長とデキちゃった結婚をする』に辿り着くのに数百年は掛かりそうだぜ。俺とお前で何でこんなに差が付いたんだ?天龍と龍王の差か?俺なんてどれだけ会長にアプローチしても全く意図が伝わった事すらないんだぜ!?」
ヴリトラの所為でモテない何て云うのはヴリトラが可哀そうだろうに
「逆に女子からお前にアプローチとかは無かったのか?」
「ねぇよ。この間なんて仁村と花戒に『男子の意見が欲しい』ってランジェリーショップに連れ込まれたんだぜ?異性として意識されてねぇよ」
取り敢えずコイツに同情の余地は無ぇのがハッキリしたな。しっかりモテてんじゃねぇか
「女の子とランジェリーショップだとぉぉぉ!?俺だってリアスたちの誰ともその神聖領域に立ち入った事は無いんだぞ!」
「あはは、過去に何度かその手のお誘いを受けた事も在ったけど流石に困っちゃうよね。勿論丁重にお断りさせて貰ったけどさ」
祐斗は相変わらずイケメンムーヴしてるな
「誘われてる時点で十分俺の敵だ!―――イッキ、まさかお前までそういう経験あるだなんて言わないよな?」
イッセーの醜い嫉妬の視線を受ける・・・黙ってる方が面倒は少ないんだろうけど此処は一つ現実というものを教え込んでやらないとな
「悪いなイッセー。俺は水着コーナーもランジェリーコーナーも中学でコンプリート済みだ」
そう言うとイッセーは固まった後で風化していった
その後、その日の部活で明日の夜に例の吸血鬼たちがやって来るとの情報が入るのだった
件の吸血鬼たちがやって来ると連絡の在った日の深夜、オカルト研究部部室にはグレモリー眷属、ソーナ会長と椿姫副会長、アザゼル先生に俺とレイヴェルに黒歌、そして最後に初見のシスターの方が揃っていた。初見とは云ってもイッセーと教会トリオは先日教会に顔を出した時に出会っていたらしいけどな
見た目は二十代半ば辺りの北欧美人って感じだ
「あいさつが遅れました。私、この地域の天界スタッフを統括しておりますグリセルダ・クァルタと申します。もっと早くに皆さまに挨拶に来れれば良かったのですが結局このような機会となってしまいました。改めてよろしくお願いしますわ」
丁寧な物腰で頭を下げて挨拶をするグリセルダさん
イリナさんが後ろで「私の上司さま何です!」と何故か自慢げに胸を張っている
「話には聞いてるぜ。転生天使のガブリエルの『
不思議の国のハートの女王のような我が儘っぷりは無さそうだけど、二つ名を付けた人は何を思って最初にそう呼んだんだろうな?
「堕天使の元総督殿にそのように認識されているとは光栄の至りです―――さて、ゼノヴィア」
元々彼女が来てから視線を忙しなく彷徨わせていたゼノヴィアがグリセルダさんに名前を呼ばれた事で"ビクッ"と震えて冷や汗まで流し始める
そんなゼノヴィアに近づいたグリセルダさんは後退ろうとするゼノヴィアの顔をガッチリと両手で左右から挟み込む形で掴まえる
「あらあら、如何したのかしら?そんなに私と顔を合わせるのがイヤなのかしら?貴女が勝手に悪魔に転生した事に対する説教は先日したばかりなのに、もしかしてそれ以外でも私に怒られる心当たりでも有るのかしら?」
ゼノヴィアが微妙に変顔になるレベルで掴んでその瞳を至近距離で覗き込むグリセルダさん。此処で白を切る真似をしたらヤバい事になるとは誰でも分かりそうだ
ゼノヴィアもそれを悟ったのか、か細い声で返事をする
「その・・・電話を無視して御免なさい」
「はい。良くできました。折角同じ地域で働けるようになったのだし、番号も交換したのだから連絡くらいしなさい。一緒に食事程度は出来るでしょう?」
「それは・・・どうせ小言ばかりだろうし・・・」
「当然です。貴女は昔から色々と手の掛かる子でした。特に私生活方面はダメダメでしたからね―――今度貴女の部屋を抜き打ち検査させて貰おうかしら?」
「(シスター・グリセルダはゼノヴィアと同じ孤児院で育ってね。ゼノヴィアのお姉さん役的な存在で全く頭が上がらないのよ)」
イリナさんの補足説明が入る中暫くグリセルダさんのお説教は続いたのだった
吸血鬼の来訪予定時刻まではまだ時間が余ってたのでイッセーが純血の吸血鬼について詳しく聞いていた―――純血の吸血鬼は流水を超えられず、銀の武器や十字架や聖水などの神聖なものに弱く、太陽の光を浴びる事が出来ない上に日が差している間は自分の棺で眠らなければ自己回復も図れないと弱点が多いが夜の間は悪魔以上に多様な異能を操れるというメリットもあり、フェニックスとまではいかなくとも高い不死性すらも持っているという事
あとは純血の古き悪魔以上に他種族に対して排他的であるという事などだ
「う~ん。夏休みの時の若手悪魔のパーティーの時に悪魔のお偉方は話が通じない奴らばかりだと感じたけど今から来るのは下手したらそれ以上になる訳か」
「イッセー、今のセリフ絶対公の場とかで言うなよ?確実に面倒になるぞ?」
「分かってるよ。それくらい―――心配すんな」
「言うなら政治的根回しをしっかりして相手を潰せる布石を全て整えた後でな!」
開戦の狼煙であると同時に終戦の合図くらいのマウントを取らないとね!
まぁ云うほど簡単じゃないけどね
「だから言わねぇよ!お前は俺を諫めたいのか嗾けたいのかどっちなんだよ!?」
「吸血鬼か・・・私も連中は好かんからな」
「そう云えば私とゼノヴィアが初めて出会っての合同任務は吸血鬼退治だったわねぇ」
イリナさんが何処か懐かしむように告げる
「そうだったな―――くくく、当時の私達が吸血鬼との会談に臨む今の私達を視たらなんと思うだろうか?」
「ん~、捕えて拷問で吸血鬼の情報を聞き出すか暗殺の為の会談だと思うんじゃない?」
物騒!如何足掻いても敵認定じゃん!殲滅しか頭に入ってないじゃん!!
それを聞いていたグリセルダさんは頭が痛そうにしている。流石に会談を望む相手を殺すのを前提に考えるのは教会としてもダメなんだろう・・・まぁ出会った当初の二人はね
「まっ、お前らが吸血鬼と出会うってので浮足立つのも分かるがもうちっと落ち着けや。心配すんな、そんなお前らの為に今回
アザゼル先生はそう言って魔法陣から重厚そうなアタッシュケースを取り出して皆に見えやすいようにテーブルの上に置いてその中身を開示した
それを見た悪魔の皆は漂うオーラから少し嫌悪感を出し、それ以外の皆も顔を顰めている
と云うかアザゼル先生、完全にネタに走りましたね!?この中でコレにツッコミではなくボケを合わせられるのは俺だけか?イッセーはこういう時ツッコミに走るタイプだしな
「ほう・・・コレは・・・」
俺は努めて低めの渋い声を意識して声を発する。それを聞いたアザゼル先生も口の端を吊り上げて説明に入る
「対化物戦闘用13mm拳銃『ジャッカル』―――既存の弾丸の改造品ではなく
俺はケースの中に在った巨大な拳銃を手に取る。銃身には『Jesus Christ is in Heaven now』(神は天に在り、世は全て事も無し)としっかり刻まれている
「専用弾の詳細は?」
「13mm炸裂徹鋼弾」
「弾殻は?」
「純銀製、マケドニウム加工弾殻」
「弾頭は?炸薬式か?水銀式か?」
「法儀式済み、水銀弾頭だ」
そこまで遣り取りした処でニヒルな笑みを浮かべてアザゼル先生に視線を送る
「パーフェクトだ、アザゼル」
「感謝の極み」
アザゼル先生が俺に恭しく頭を下げる。もしかしたら俺堕天使の総督(元)に頭を下げさせた初めての人間になるかも知れんな
皆はと云えば今のやり取りにポカンとした表情だ
“スパンッ!!”
「・・・何を馬鹿な事やってるんですか?イッキ先輩」
背後から白音にハリセンで叩かれてしまった。その上ジト目を向けられたけど今の俺は割とやり切った感が勝っているぞ。アザゼル先生も似たような感じだろう
「今のってアレよね?ちょっと前にアニメでやってたネタよね?全くイッキは時々変な所でふざけるんだからにゃ」
いや~、目の前であんな風に
「何にせよ、そんな対吸血鬼に特化したような物騒な銃を会談に持ち込む訳にはいかないでしょうに。持っているのがバレた瞬間に破談になるわよ」
「でもコレって武器としては強力なのよね?私は剣士だから使わないけどこれからの教会の主武装の一つになったりしない?」
リアス部長が呆れ、イリナさんが微妙に興味を持ち始めたのをグリセルダさんが「そんなはず無いでしょう」と軽く折檻する
この銃で武装した教会の戦士が装弾数6発という名の無限弾倉で尽きぬ弾幕を張ってくるとかいうヒデェ蹂躙劇にしかならないだろうな
そんな馬鹿な事をやっていると底冷えするような気配が旧校舎の前に現れた
「・・・如何やら来たみたいね。相変わらず吸血鬼の気配は凍ったように静かだわ。祐斗、お願いね。それとアザゼルはその銃をさっさと仕舞って頂戴」
それを聞いた祐斗が招かれない限りは建物に入れない吸血鬼を迎えに行く為に一礼してから部屋を出ていき、アザゼル先生も渋々といった感じに銃をケースに仕舞って異空間に収納する
会談にあたって椅子に腰かけるのはそれぞれのグループの代表たちだ
グレモリー眷属の『王』のリアス部長にシトリー眷属の『王』のソーナ会長、アザゼル先生にグリセルダさんでそれぞれの後ろに眷属や部下が立っている形になる
朱乃先輩だけは給仕が出来るように台車の前だな
「ほらイッキ、お前も座れ」
「え?俺もですか?」
「当然だろう。お前は一応三大勢力ではない関西の妖怪サイドに属してるんだからこの場でお前がリアスの後ろに着くのは体裁が悪くなるぞ」
あ~、言われてみればそうだった
「お前は自己評価が低いせいかこういう処でポカをやり易いから気を付ける事だな。特に冥界の騒動でお前の知名度はかなり広まったと言っていい。一般人且つ九尾の姫さんの婚約者という立場が微妙なのは分かるが、これから先は婚約者という立場を優先して堂々と振舞うべきだ」
そう諭され、いきなりの事で乗り気には成れないものの諦めて椅子に座る
俺はリアス部長の横に座り、俺の後ろに黒歌とレイヴェルが立ち、それと白音がグレモリー眷属の中で俺寄りの立ち位置に立ったな
「お客様をお連れしました」
ドアがノックされ、祐斗が客人を中に通す
入って来たのは深紅の瞳の金髪をウェーブにしたドレスを纏った少女だ
見た目だけで云えば高1か中3辺りだろう。血の気の引いたような青白い肌をしている上に何より生命エネルギーを感じないのは吸血鬼が死者としての側面も持ってるからかな?
少なくとも単純な仙術による生命力の操作は利かなそうだ。その代わり魂の圧が直接的に感じられるからそっちで体が動いてるのだろう・・・死神とは相性が悪そうである
「ごきげんよう、皆様方。特に堕天使の前総督様と魔王の妹君のお二人にお会いできるとは光栄の至りですわ―――私の名はエルメンヒルデ・カルンスタインと申します。エルメとお呼び下さい」
綺麗な礼をしてから促された俺達の対面の席に座る彼女
その後ろには同じく吸血鬼のお付きが男女一人ずつ立っている。取り敢えずそのピリピリした空気を出すのを止めなさいと云いたい
魔王クラスや最上級悪魔クラスが割とゴロゴロしてるこの空間でそれは悪手だから・・・もしかして威圧してるんじゃなくて緊張してるだけか?
「カルンスタイン・・・男尊のツェペシュ派と対立する女尊のカーミラ派に属する家でも最高クラスの家だ。純血且つ高位の吸血鬼と出会うのは俺も久しぶりだな」
「エルメンヒルデ。早速で悪いんだけど聞かせて貰うわ。今まで和議のテーブルに着こうともしなかったあなた達が今回、私達に接触してきたのは何が目的なの?」
開口一番にリアス部長が彼女等の目的を問う
「ギャスパー・ヴラディのお力を貸していただきたいのです」
そんな簡潔な答えにアザゼル先生が眉根を寄せる
「悪いが順を追って説明してくれないか?率直過ぎてそれだけでは理解が出来ん」
「はい。実は今我々吸血鬼の価値観を根底から覆しかねない出来事が起こっているのです。私共と対立しているツェペシュ派から
それを聞いたアザゼル先生は嫌そうに息を吐いた
「やっぱり
「聖杯です」
「ッツ!!よりにもよって
「その通りです。闇の住人たる我らが
聖なる力を信奉する吸血鬼が出来上がるかな?視方によっては聖なる力に支配されてるとなる訳だ
「ツェペシュ派の吸血鬼は完全に暴走しています。我らカーミラ派はそのような暴挙を断じて許すつもりは在りません。同じ吸血鬼として彼らを粛清致します。そして、その為にもそこに居るギャスパー・ヴラディの力を借り受けたいのです。彼もハーフとはいえ吸血鬼ですし、それに眠っていた力が目覚めたと聞きましたので」
ハーフだろうとリアス部長の眷属であろうとギャスパーの力は我々の物だと言わんばかりの物言いにリアス部長の瞳がさっきからどんどん昏くなっていく
表情には出してないけどフェニックスの業火が隣で燃え盛ってるような錯覚すら覚えるんだけど!今は後ろに控えている皆が羨ましいと感じるわ
「あの力は何?
「吸血鬼には時折、特異な力に目覚める者が居ります。近年ではハーフによく視られる現象ですが、一律した能力に目覚めている訳では御座いません。カーミラ派の我々では詳しい事は判りかねますが、彼の生まれたヴラディ家ならば何か掴んでいるかも知れませんわね」
段ボールヴァンパイアからその力を推察出来たらある意味凄すぎだけどな―――それにしてもよくもまぁ今まで語った状況で詳細不明で目覚めたばかりのギャスパーの力を利用しようとか考えたものだよな・・・カーミラ派も絶対頭イカれてるぞ
「問題の聖杯ですが、それを発現させた者は当然忌み子・・・ハーフです。そしてその者の名はヴァレリー・ツェペシュ。ツェペシュ家の系譜の者です」
その名前を聞いた途端、ギャスパーが目に見えて狼狽しながら大声で喰って掛かる
「ヴァレリーが?そんな嘘です!だってヴァレリーは僕のように神器を発現させていなかった!」
「神器は先天的に発現する場合もあれば後天的に発現する場合もあります。確か、そちらの赤龍帝さんも少し前までは一般人だったとお聞きしてますが、それと同じ事です。ヴァレリー・ツェペシュは近年になって聖杯の力に目覚めたのでしょう・・・雑種、もどき、忌み子、混じりモノ、貴方はツェペシュ派の家で辛い幼年期を過ごし、ハーフが一時的に集められる家でそのヴァレリー・ツェペシュとお互いに支え合って生きていたと聞いています。ハーフの彼女が聖杯の力を堂々と振るうとなればツェペシュ派の者達に無理矢理力を使わされていると考えるのが自然です。大切な幼馴染なのでしょう?ヴァレリーを止めたくはありませんか?今の貴方ならそのついでに自分を虐げてきた彼らに復讐する事だって可能なはずですよ。ヴァレリー・ツェペシュを止めた暁には彼女の身柄はカーミラ派で保護しましょう。忌み子の彼女が静かに暮らせるように領地の端にでも住まいを用意させますよ」
買い物に行くたびに石を投げられてずっと家に引きこもり、強大な力を持ってるから逃亡も許されない監視付きの孤独死ルート直行ですね。分かります
「あなた方吸血鬼はハーフの子を忌み子と蔑みますが、そもそも戯れで人間を襲い、子を産ませたのはあなた達です。我々教会の者が今までどれだけ吸血鬼の身勝手な振る舞いで人生を壊された者達と向き合ってきたか―――出来れば趣味で人間と交わらないで欲しいですね」
「それは申し訳ありません。ですが、人間を狩るのが我々吸血鬼の本質。あなた方悪魔や天使も多くは違わないのではありませんか?『人間の欲を叶えて対価を得る』『人間の信仰を必要とする』我々異形の者は人間を糧としなければ生きられぬ『弱者』ではありませんか」
そこまで言うとこの場の『人間』の俺に視線を向けてきた
「貴方が例の最上級死神すらも屠った人間ですのね。貴方が妖怪の姫と婚約していなければ勧誘したいくらいですわね。見方によっては神クラスとも云える人間の血は一度飲んでみたいですわ」
エルメンヒルデ、俺を出汁に煽りよるな。オカ研の皆から怒気が滲み出てきたし、俺の背後の殺気が恐いんだけど!振り向きたくねぇ!
仕方ない。此処は一つ俺が場を和ませるとしようか
「そうですか。折角貴女方が話し合いの場に着いた記念の日ですからね。私の血で良ければ友好の証として提供しましょうか?流石に噛まれるのは問題なのでグラスでという事になりますが」
言った瞬間エルメンヒルデ達以外の全員に「何言ってんのコイツ」的な視線を向けられるが俺はと云えば努めて普段の祐斗を参考にしたキラキラオーラを全力で振り絞る
本家の祐斗とは比べるべくもないがそれを見た皆は文句よりも困惑が勝ったのか口を噤んだな
「あら、宜しいんですの?」
「ええ、私の血程度で貴女方が気分を良くして下さるなら安いものです。まぁこれからの話合いが少しでも円滑に進むのではないか?という打算在り気ですが」
「うふふ、素直な子は嫌いじゃありませんのよ」
「有難う御座います。もし宜しければ後ろのお付きの方の分もご用意致しましょうか?」
「お心遣い、痛み入りますわ」
了承を得た俺は異空間から品の良さげなグラスを取り出す。いや~、遣り取りは幾つか考えていたけど軽い冗談でも俺の血を欲してくれて助かったわ~
三つのグラスに手首の辺りを軽く斬って血を溜めている間にエルメンヒルデは話を元に戻す
「さて、今回我々はそこに居るギャスパー・ヴラディの力を貸して欲しいと最初に言いましたが、勿論タダで何て言うつもりはありませんわ。ちゃんと手土産を持参しました」
エルメンヒルデの後ろの付き人が鞄から一枚の書類を取り出して彼女に渡し、それをテーブルの上に置く。その内容を見たアザゼル先生は溜息を吐いた
「カーミラ派の和平協議についてか―――つまり今日お前たちは特使としてこの席に着いたと受け取って良いんだな?」
「はい。我らの女王は長年続く闘争という状況を憂いております。協議の内容いかんによってはあなた方と休戦協定を結びたいと仰っておりますわ」
「順序が逆だ。お嬢ちゃん。普通は和平の書類が先でギャスパーと聖杯の話は後だろうが。これじゃあギャスパーを貸さなければ和平のテーブルにも着かないと言ってるようなもんだぞ」
アザゼル先生も和平に正面からケンカを売る内容の和平にぶち切れ寸前だ
「三大勢力主導の下、各勢力に隔てなく和議を申し込んでいた我々がこの話を無視すれば我らの信用にすら響きますね。『各勢力に対して協力と平和を訴えながらも実は相手を選んでいるのではないか?』・・・と。それに提示されたのは停戦ではなく休戦、此方の弱みを突かれた形です」
馬鹿みたいに舐められた書面の内容に皆の怒りのボルテージが更に高まる中、俺は三つのグラスに血を注いだものをエルメンヒルデ達の前に差し出して傷口を止血する
「どうぞ、ご賞味下さい」
「あら、有難う。あなた達も飲みなさい。折角の御厚意よ」
エルメンヒルデに促されてお付きの二人もグラスを手に取る
「(おいイッキ!何でこんな奴らにそこまでしてやるんだよ!)」
堪えられなくなったのかイッセーが小声で器用に怒鳴って来るけど直ぐに分かるさ
彼女等は目の前で注がれた新鮮な
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ッ!!?〇△□×!?』
一瞬の硬直の後彼女等は口元を抑えて生気のないはずの顔を真っ赤に染め上げて悶絶する
「おや、如何されました?体調が優れないのであればお手洗いは廊下の端に在りますよ?」
爽やかスマイルでそう言うと涙目になった彼女等は我先にとトイレに向かってダッシュしていった
「・・・っは!ざまぁ」
うすら笑ってやると隣のリアス部長が頭が痛そうに額を手で押さえているな
「イッキ、貴方何をやったの?」
「何って見てましたよね?彼女等の要望に応えて血液を提供して上げただけですよ・・・まぁ【神性】持ちで大事な会談に向けて『ちょっと滝に打たれて身を清めた』俺の血を飲んで大丈夫なのかとは思いましたけど、自分たちから飲んでみたいと言ったんだから大丈夫だと思ったんですよ」
まぁ裏側の住人として【神性】含めてオーラは基本隠蔽してるけどね
「「「ウ゛っげぇぇぇぇぇ!!」」」
遠くの方で余り美しくない音が聞こえる気がするけど気のせいだろう
「・・・何ででしょう?今、心底ホッとしている自分が居る気がします。何か不名誉な称号を回避できたかのような不思議な感覚です」
ロスヴァイセさんは京都で時間一杯俺が仙術治療を施して胃の中ぶちまけなかったですもんね
ゲロ吐きヴァルキリーの称号は今回ゲロ吐きヴァンパイアに取って代わった訳だ
「さて、彼らが戻って来るまでに彼らの出して来た話を検証しましょうか―――リアス部長も少しは溜飲下がりましたか?」
「・・・ええ、その代わり別の意味で頭が痛いけれどね」
「ギャスパーも如何だ?飲みさしで良いなら一杯いっとくか?」
そう言って彼女等が机の上に置いて行ったグラスを指さす
「ひぃぃぃん!絶対イヤですぅぅぅ!」
「にゃっははははは♪それにしても吸血鬼って顔をあんな風に真っ赤にできるなんて思わなかったにゃ。あ~、可笑しい!」
「何はともあれ奴らの提示した事についてだな」
「そうだった!あのエルメンヒルデってヤツ好き勝手言った上にギャスパーを吸血鬼同士の内部抗争に貸せって事だよな!しかも聖杯の力とやらで強力になった吸血鬼相手に最前線に送るって事だろ?悪魔以上に血を尊ぶだか何だか知らねぇけど、やってる事が汚過ぎるぜ」
「アレが純血の吸血鬼としては普通の在り方だよ。吸血鬼の問題には一切外部からの介入を拒むが自分たちの血が大事だから普段忌み子だのと言って迫害してるハーフは最初に使い潰す連中だ。だからと言ってこの俺達を舐め腐った和平の話を無視する訳にもいかん。コレが人間同士の交渉なら話にならんと突っぱねるのが普通だが奴らの要求しているギャスパーは今は悪魔に籍を置き、悪魔の上層部の役人どもは元ハーフヴァンパイアのギャスパー一人の命と引き換えに例え休戦でも結べるなら安いと考えるだろう。当然、サーゼクスは反対するだろうが答えの出ない協議を重ねれば他勢力から『何をやってるんだ』と時間を掛ける程に信用に響いていき、ツェペシュ派の吸血鬼の暴走が他勢力に向いた時、未然に防げる立場でありながらそれをしなかったという理由でも叩かれる事になる」
三大勢力は結構嫌われてる処があるからまだ和平を結んでない勢力からしてみれば例えクソみたいな内容でも吸血鬼側のSOS(失笑)を無視したとして難癖付けて来る訳だ
あ~、政治って面倒クセェ。魔獣騒動の時に悪魔の上役も一緒に死ねば良かったのに・・・我先にと一番に逃げた事は容易に想像できるけどさ
それに後釜もきっと英才教育(笑)を受けたその悪魔の息子とかになるから変わらないか
「ぼ、僕行きます!協定の事とかは僕個人としては如何でも良いです。でも、ヴァレリーは僕の恩人何です!僕は悪魔に転生して優しい主や仲間に囲まれて今は凄く幸せです。そんな中、ヴァレリーが理不尽に辛い目に遭っているというのを聞いた以上は放ってなんていられません!勿論、死ぬつもり何て無いです。必ずヴァレリーを連れて此処に戻ってきます!」
おお!ギャスパーが囚われのお姫様をお城から掻っ攫う宣言をしたぞ。どこの主人公だよ
「俺は一度カーミラ派の領地に赴く事にする。向こうも聖杯を相手取る以上、俺の知識は欲しいはずだ。現状、直接の介入は難しいだろうが手土産持参でいざという時にある程度動ける体勢を作りに行くつもりだ。ギャスパーを向かわせるならその後でも遅くないだろう」
「分かったわ。なら私もヴラディ家に行くことにするわ。かの家の当主とはギャスパーを眷属にする時に少し話したけど野心を抱くタイプには見えなかったわ。恐らく今回のツェペシュ派の動きにも中立かそれに近い立ち位置に居るはず―――ギャスパーのあの黒い力も気になるし、ついでにツェペシュ派の動向に探りを入れてみるわ」
そこでイッセーが「なら俺達も一緒に」というのをリアス部長は諫める
「今の吸血鬼側は緊張状態よ。そこに私が眷属をぞろぞろと引き連れて行っては彼らを無駄に刺激する事になるわ。だから護衛は私の『騎士』を一人、連れて行くつもりよ」
『騎士』一人という言葉にすかさずゼノヴィアが反応する
「任せてくれリアス部長。いざという時はエクス・デュランダルで吸血鬼の根城ごと真っ二つにかち割ってくれる!」
「・・・連れて行くのは祐斗よ」
「お任せください、部長・・・と云うかゼノヴィア。キミは単にさっきまで彼女達に向けていた怒りの思いの丈をぶつけたいだけなんじゃないのかい?」
「全く貴女は・・・話合いの途中に斬り掛からなかったから成長しているかと思えば最後に台無しにするんですから」
祐斗とグリセルダさんに呆れられた視線を向けられるゼノヴィアだった
「皆さん。そろそろ彼女達が戻ってきますよ」
ソーナ会長に促されて全員が元の立ち位置に戻るとエルメンヒルデ達が戻って来てソファーに座る。元々吸血鬼は生気を無くしたような青白い肌色だけど今は青白いの『白』を抜いて最早青いのレベルだ。直前に見た顔が真っ赤だったからギャップが凄い
「急に席を外して申し訳ありませんでしたわ。何故かいきなり体調が優れなくなりまして」
吸血鬼の自分たちが人間の血にやられたとは口にしないんだな
「とは言え、お伝えしたい事はお伝えしましたので本日はコレで失礼させて頂きます。この地にスタッフを残しておきますので質問や連絡が有ればそちら経由でお答えしますわ」
そう言ってそそくさと立ち上がるエルメンヒルデ達にリアス部長も「ええ、今日はあなた達吸血鬼の色んな側面を視れて見識が広まったわ。お大事にね」と声を掛けるとエルメンヒルデ達も帰って行った。祐斗が玄関まで送ろうとしたが断ってオカ研の扉を出て行った直後に全力ダッシュしていったのが気配で伝わって来たので急いで拠点(トイレ)に向かったのだろう
吸血鬼の気配が完全に学園から無くなったところでアザゼル先生がグリセルダさんとイリナさんに視線を向ける
「シスター・グリセルダ、イリナ。お前たちは今回の一件をミカエルにも伝えておいてくれ、吸血鬼と聖杯の組み合わせは流石に不気味過ぎる」
「ええ、分かりました。
「そりゃまた用意の良いこって・・・まぁ
「ええ、あの子暇さえあれば美味しいもの巡りをしているんですもの。使える時には存分に使おうというのが四大天使様方の方針です」
グリセルダさんが困ったように頬に手を当てて溜息を吐いている
「へぇ、それなら何時か七つの大罪の暴食の罪で堕天してきたら幹部として迎え入れてやるって伝えといてくれよ」
「伝えませんよ。そのような事。ただ、今の発言はミカエル様には告げ口しておきますわね」
「うげっ!そいつぁ勘弁してくれ」
グリセルダさんの柔和な微笑みを浮かべながらの告げ口宣言にアザゼル先生は必死になって口止めしようとするのだった・・・結果はお察しであったが
ゲロ吐きの称号はエルメが貰ってくれました。やったねロセさん!
途中のヘルシングネタは吸血鬼って事で一度やってみたかったので盛り込んでみましたwwアザゼルなら造ってくれそうですw