転生特典が自爆技ばかりなんだが?   作:風馬

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第四話 邪龍と、邪人です!?

龍門(ドラゴン・ゲート)から現れたのは浅黒い鱗を身に纏った巨大なドラゴンだ。二足歩行で体つきはやや人間よりな為翼の生えた巨大なリザードマンとも云える姿のドラゴンだった

 

そいつが空間を震わす程の声量で咆哮とも笑い声とも取れる上機嫌な様子で辺りを見ている

 

「グワアアアハハハハハ!龍門(ドラゴン・ゲート)なんぞ久しぶりに潜ったぞ。俺様を召喚しようなんて物好きは当時はもう居なくなってたからなぁ!それでぇ?俺様と闘うのはどいつなんだぁ?居るんだろ?俺様好みのクソ強ぇヤツがよォォォ!!」

 

うん。居ないから帰れって言いたい

 

「グレンデル!?英雄ベオウルフに退治された伝説の邪龍ですわよ!」

 

レイヴェルが驚愕の声を上げるとそれに気付いたグレンデルの視線が俺達を捉える

 

「あん?悪魔が3匹に人間が1匹?もしかしてコイツらが俺の相手なのか?」

 

グレンデルの疑問にフードの男が答える

 

「今回貴方の相手として用意した者達はまだまだ追加でやって来ますよ。その中でもそこの人間が取り敢えず最強とされているので貴方を呼びました。後続の戦士が来るまでまだ少し掛かりますので放っておいたら一番楽しめそうな相手が居なくなってしまう上に援軍も此処に来る理由が無くなってしまいますからね」

 

最強って黒歌の事は?まぁ黒歌は戦闘の回数が少ないしタナトスを屠ったという情報はインパクト大きいだろうからその所為かな。安定した強さという意味でなら黒歌の方が上なんだけど

 

「ぁあ?要はコイツと遊んでいればその内もっと楽しくなるって事か?まっ、そう言う事なら構わねぇよ。おいお前、追加の玩具が来るまでの間に簡単に壊れてくれるなよ?」

 

玩具ね・・・此奴の場合は戦いに関するモノなら取り敢えずは玩具認定なんだろうな

 

拳も武器も血も怪我も殺し殺されも自分が愉しむ為の道具って事かな?

 

さて、ウンザリする敵意と殺気を向けられてるけどこっちはレイヴェルがまだ消耗したままだし、敵は魔王級と龍王級でしかもどっちも強化されてる可能性有りときた。まぁ戦うのはグレンデルだけだとは思うけど此処は俺一人だけで戦ってイッセー達が来た時に全員のフルバーストで決着と云うのが自然な流れか・・・幸いグレンデルの意識は今は俺に向いてるみたいだし

 

「3人とも下がっててくれ。ご指名は俺みたいだから俺が行くよ。もう一人を警戒しつつグレンデルの戦い方も良く分析しておいてくれ。それと白音はレイヴェルの回復も頼む・・・あとギャスパーは今の内に段ボール箱に入っとけ」

 

「はいぃ!お二人の事は僕が守ります!」

 

「・・・はい」

 

「うぅ、張り切ったのが早速裏目に出る何て情けないですわ・・・お気を付けて」

 

白音とレイヴェルは心配してくれてるけどギャスパーは元気よく異空間から取り出したマイ段ボール箱に勢いよく入り込んだな・・・それで良いのか?

 

気持ちを切り替えて3人から離れてグレンデルの正面に立つ

 

「グハハハハ!まさか復活してから最初に戦うのが人間になるとは思わなかったぞ!まぁ良い。要はテメェが強ぇか如何かだ!早速やらせて貰うぜぇぇぇッ!!」

 

全身から荒々しいオーラを解き放ちながら姿勢を低くしたグレンデルはそのまま俺の方に前傾姿勢で飛び出し愚直なパンチを放つ

 

迅い!巨体でありながら鈍重さなんて欠片も感じさせない速度だ!

 

俺はそのパンチに合わせて跳躍し、グレンデルのパンチを避けると共にその突き出された腕を爆走し、奴の顔面を斬りつけたが多少鱗と皮膚を裂くだけに終わった

 

やっぱり硬いか。と云うか一応目玉を狙ったのに躱されたし、反応も上々・・・と

 

俺の能力値は最上級悪魔クラスで此奴は龍王クラスの防御寄り

 

単純な値で負けているから攻撃範囲を狭めて貫通力を高めた技でないと攻撃が通らないんだよな。そして何よりこいつはデカい!

 

相手が人間サイズなら貫通力のある俺の攻撃は当たれば割とそのまま致命傷になるけど攻撃範囲を絞った俺の斬撃は此奴にとってみればカッターナイフで斬り付ける程度のものでしかないだろう

 

即ち俺が【一刀修羅】とかを使わないでグレンデルを倒そうとするならそれこそ数百回程度は斬りつけないとダメな訳だ・・・しかも相手は頭だけでも戦おうとする邪龍と考えればそれでも足りない可能性が高い。ならば長期戦をするのかと云えば能力値で劣る俺の方が無茶で繊細な行動を強要される上にドラゴンと人間ではスタミナでも向こうに軍配が上がるだろう

 

詰まるところジリ貧で負ける公算が高いという事だな

 

特典無しで戦う場合『デカくてタフな敵』が俺にとって一番やり難い相手だと思う

 

そりゃタナトスの方が強いだろうがグレンデル相手だと決定打を打てないからな

 

原種のケルベロス?アレもダメな奴だったよ

 

「何だ何だ?俺様の鱗を切り裂いた割にはこの程度かよ。こんなんじゃ全然足りねぇぞぉ!」

 

そう吼えたグレンデルは少し離れた位置に移動した俺にドラゴンブレスを放ってくる。人間程度余裕で丸呑みに出来るサイズの灼熱の火球が直撃する

 

「ハッ!マジかよ。あの程度の奴が一番ってんじゃコレから来るヤツらってのもあんま期待は出来ねぇかもなっ!?」

 

グレンデルが言い終わる前に後ろから首を斬り付けるがやはり戦闘勘は優れているのか頸動脈までは届かなかったな

 

『第四秘剣・蜃気楼』は禁手(バランス・ブレイカー)する前は一々神器をへし折っていたが今は違う。Fateのエミヤの持つオーバーエッジは峰の中ほどまでが羽毛なような形になっているのだが神器が所有者の意思にある程度応えるならばもしかしてと思って念じてみたら羽が取れたのだ・・・まぁ羽と云っても形だけで金属なんだけど、ともあれコレで『蜃気楼』用に神器を壊さないとダメという事はなくなった訳だ

 

「何だぁ?さっきのは当たったと思ったんだけどよ」

 

「生憎と逃げたり避けたりするのは得意な臆病者でね。足りないと言ってたけどそれなら俺は逃げ回ってる間に今みたいな攻撃を百回でも千回でも叩きつけるだけさ―――その頃にはお前も楽しめるようになってるんじゃないか?」

 

蝶のように舞い、蜂のように刺し、ゴキ〇リのように逃げる!俺の基本戦法です

 

「グハハハハ!言うじゃねぇか!なら、途中でへたばんなよ?この俺様を愉しませる事が出来るまで斬りつけてみせろぉぉぉぉぉ!!」

 

白音たちに矛先が出来るだけ向かないように『楽しもうぜ!』というお誘いを掛けると効果的だったのかさっきよりも鋭い猛攻を仕掛けて来るようになった

 

ああもう!泣いて良い?攻撃を避ける為にも脳のリミッターを解除してるけどコイツの巨体だとカウンターで吹き飛ばす事も難しいしダメージで怯まないから息つく暇がないんだよな

 

俺のカウンター戦法の要もデカさとタフさでゴリ押しかよ!

 

だがそれでも知覚加速している間に兎に角ダメージを蓄積させるしかないんだけどさ!

 

「何だコイツは!こんなにちょこまかと俺様の攻撃を避け切る相手は初めてだ!いいぜ、いいぜぇ!俺様も段々とノッてきたぜぇ!」

 

全身に既に無数の切り傷を受けて青い血を垂らしているグレンデルだが、あくまで傷は表面上のモノだし傷が増えていく事にテンションが上がり始めたのか動作のキレが鋭くなってきた

 

更には俺の頭痛も酷くなってきたので一旦リミッターを元に戻すが、そうなると途端にパワーもスピードも上回るグレンデルの攻撃を躱すのが難しくなる

 

「オラオラあああ!反撃して来いよ反撃ィィィ!!」

 

それが出来れば苦労はしてねぇよ!今は躱すので精一杯なの!

 

するとグレンデルは息を吸い込み下腹部を肥大化させた―――ブレスか!此処は狐火をぶつけて相殺している間にまた『蜃気楼』で距離を取る!

 

だがグレンデルの口から出たのは炎では無かった

 

 

 

グルウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

 

 

 

解き放たれたのは只管に馬鹿デカいドラゴンの咆哮

 

炎が来ると身構えていた時に至近距離から音の爆弾を聞かされた俺は一瞬体が硬直してしまう

 

ただの音と馬鹿にする事なかれ。物理的な衝撃波すら伴うレベルの咆哮はただの人間なら鼓膜が破れる程度じゃ済まない破壊力だ。音響爆弾一斉起爆より質が悪い!

 

そして俺の動きが止まる事を見越していたグレンデルの腕の薙ぎ払いが俺を捉えた

 

“ズッガアァァァァァン!!”

 

「ぐっはぁ!痛ってぇ!!」

 

地面に叩きつけられた俺は軋む体を動かしてその場から離脱する

 

煙で視界は利かなかったが気配でグレンデルが俺のおおよその位置にあたりを付けて踏み付け攻撃を仕掛けて来ているのが判ったからだ

 

「はっ!漸く一発入ったなぁ!いいぜぇ、やっぱり潰し合いってのはお互いに血を流して命のやり取りってのを全身で感じてこそだろうがよォォォ!!」

 

グレンデルが心底ニンマリとしたイヤらしい表情を浮かべてるけど、クソ!こういう処でも体格差の問題が出るな

 

此奴の攻撃はパンチでもキックでも殆ど俺の体全体に匹敵する面積があるから闘気の一点集中防御が使えないんだよな―――曹操の聖槍の方が破壊力の合計値は大きくてもまだ防げるってのに!

 

それに攻撃が当たった時に全身にインパクトが走ると体の中の衝撃の逃げ場が無いから『第三秘剣・円』でのカウンターという名のダメージ軽減も狙えない

 

『秘剣』シリーズは基本的に対人戦用なんだって痛感させられるよ全く!

 

あ~、コレイッセー達がやって来るまで俺の体持つかな?全身を防御した時の俺の耐久力はイッセーよりも低いから今の一撃で結構ヤバい。もう一発同じくらいの攻撃を受ければいろんな箇所にガタが来てしまうだろう

 

【一刀修羅】なら多分グレンデルを倒せるけどユーグリット(仮)が俺を見逃すのに賭けるとか流石にそんなマネはしたくないしな

 

黒歌は今頃イヅナのビーコン頼りに皆を案内してるだろうから呼ぶとしてもやれる事をやってからだな・・・とは云え何か有るか?

 

今の『傷』を返してもグレンデル相手じゃ『効果はいまひとつ』だろうし・・・と云うかそうだよ【偽り写し記す万象(ヴェルグ・アヴェスター)】だよ!正確にはそこに宿ったサマエルだよ!

 

それさえ使えればグレンデルなんて秒殺できるのに結局【神性】が上がってギャスパーの時間停止のような特殊技に耐性が付いただけじゃねぇか!

 

それ以外じゃ悪意の受け皿が広まった処で神の悪意にリソース割いちゃってるし・・・待てよ?

 

俺の【偽り写し記す万象(ヴェルグ・アヴェスター)】の禁手(バランス・ブレイカー)は兎に角【神性】との親和性を上げる事を第一に優先した至り方をした。ならもういっそ【神性】を突き抜ける方向で道を見出すべきだろう

 

「おい、サマエル聞こえるか!前に神の悪意の制御を手伝うとか言ってたけどそれもう要らんから別の対価を寄越せ!」

 

グレンデルの攻撃を何とか捌きながら手に持つ神器に意識を向ける

 

神器の深奥に潜ってるサマエルの返事は期待出来ないが声は届いている感触が有る

 

こういう時はイッセーとドライグみたいに会話が出来ると楽なんだけどな

 

かなり無茶苦茶言ってる自覚はあるが仮に俺が死んだ時サマエルの意識が衝撃で肉体に戻る可能性だって十分在るんだから勿論協力してくれるよね!(ゲス顔)

 

サマエル自身も一応元は高位の天使何だし偶然だろうと神器の奥の方に潜ってるんだからアンリ・マユ的な【神性】も頑張れば引き出せるだろ

 

ほら早くしろよ!こちとら伝説の邪龍の猛攻を絶賛受けてる最中なんだからよ!

 

「なにさっきからブツクサ言ってやがるんだぁ?おいおい詰まんねぇぞ。もう終わりなのか?ならもう死んどけよクソ雑魚野郎がよォォォ!!」

 

「一々短気だなお前は!もうすぐパワーアップするから大人しく待ってろ!」

 

「そいつは良い事を聞いたなぁ!ならさっさと力を出せるようにもっと追い込んでやるよ!」

 

ダメだ、分かってたけど会話が通じねぇ。まさしく狂戦士(バーサーカー)だよな。それも【狂化 EX】だろ

 

マジで厄介極まりねぇ

 

コイツへの愚痴は一旦置いておいて今は【神性】だ

 

今まで俺は【神性】を意識する事はあっても、態々それを高めようとした事なんてのは禁手化(バランス・ブレイク)時以外は無かった―――理由は簡単。ぶっちゃけ特に役に立たないからだ

 

自然と上昇する分だけで十分過ぎたからな

 

だけど今は意識して神器の【神性】に手を伸ばす

 

魂と繋がった神器の【神性】の力の源におおよその当たりを付けてすり寄って行く感じだ

 

そうして少しすると漸く何か繋がった感覚がして俺の【神性 A】が【神性 A+】くらいに引き上がる。良し!流石は【神性】特化型禁手(バランス・ブレイカー)

 

内心ガッツポーズを決めながら『蜃気楼』連続発動で距離を取る

 

これで上手くいかなかったら大人しく黒歌を呼ぶか

 

俺は少しずつ分量を見定めてゆっくりと体に邪気を纏い始める

 

仙術というのは扱いが難しい力とされている。中でも一番の理由は世界に漂う邪気を体に取り込むだけなら仙術の基礎が扱える者ならば誰でも出来てしまい、その邪気に精神を侵食されて狂暴且つ残忍な性格に変貌してしまうからだ

 

だがもしも『この世全ての悪』に対する耐性・受け皿を持っているならば話は別ではないのか?

 

今まで正と邪の内、正しか扱っていなかったがもう半分に手を伸ばせば単純に出力は2倍だろう

 

その上戦闘となれば邪気の方が恐らく強いしな

 

邪気を少し取り込んだ・・・問題無し

 

もっと邪気を取り込んだ・・・影響無し

 

一気に邪気の出力を上げていくが前にサマエルを取り込んだ時に感じた悪意の器の感覚から上限を正確に把握出来る

 

俺のオーラの変化に気づいたグレンデルが初めて驚いた表情を見せる

 

「おいおいおいおい。何だそりゃ?オーラが強まっただけじゃねぇ。馬鹿みてぇに禍々しい邪気を身に纏って人間のテメェが何で生きてられる?呪詛が 呪いが 怨念が 視認出来るレベルじゃねぇか―――お前本当に人間かよ?」

 

「だ・・・ダメですイッキ先輩!仙術に呑まれちゃったりしたら!!」

 

同じ仙術使いとして邪気の危険性を知り、黒歌が且つて邪気に呑まれたと一度は聞かされていた白音が必死に叫ぶけど安心させるように軽い調子で手を振って応える

 

「御免。先に言っとくべきだったけど暴走とかしてる訳じゃないから大丈夫!」

 

仙術と邪気に対してトラウマ級のモノを持っている白音への配慮が足りてなかったな・・・後でちゃんと謝ろう

 

そしてそう!世界に漂う邪気こそが今の俺の第二の動力源!今の俺はアザゼル先生の造った巨大ロボットである『ザゼルガー』の人間バージョンに近いとも云える

 

世界の皆!オラに悪意を分けてくれ!・・・コレは別作品だったか

 

そんなこんなで魔王級・・・少なくとも蛇シャルバよりも単純なオーラ量は強くなった俺を見てグレンデルは喜悦の表情に顔を歪める

 

「クックックック!何が起きたのかは知らねぇが知る必要もねぇな!俺様は強い!そんでテメェも強くなった!なら後はぶっ殺し合いしかねぇよなァァァ!!」

 

今の俺に対する小手調べという事なのかグレンデルは今までで一番のブレスを吐き出す

 

効果範囲も広いので白音たちも射程圏に入っているからそっちも含めて守らないとな

 

「やっぱり炎には炎だろう!」

 

今までの俺の狐火ではグレンデルのブレスは完全に相殺する事は出来ずに精々軌道を逸らす程度だったが今は正面から迎撃する

 

「ひいぃぃぃん!邪龍の邪炎と邪人の邪炎のぶつかり合いですぅぅぅ!どっちもオーラが禍々し過ぎて闇の頂点争いにしか見えませんよぉぉぉ!!」

 

段ボール箱から顔を覗かせたギャスパーがプルプル震えている

 

「ええ・・・事情を知らなければ一目散に逃げるか、関わるにしても戦いが終わった後の漁夫の利を狙って全力で潰して動きを封じた後で尋問という形になりますわね」

 

「『取り敢えず』で討伐令が下っても可笑しくないと思います」

 

ちょっと後輩諸君の俺への評価が酷くないですか!?

 

内心泣きそうになりながら俺はグレンデルに突貫する

 

さっきまで戦っていた俺と速度が急に変化した為かグレンデルの防御が一歩遅れ、懐に入ってライダーキックをかますとグレンデルの巨体が後方に押し出される

 

良し!距離が取れるならヒット&アウェイ戦法も復活だ!

 

「ベッ!イイ蹴りだったぜぇ!もっとだ!もっと!ドンドン来いよォォォ!!」

 

口から青い血を吐き出したグレンデルが来いと言いつつも殴りかかって来るけど、こっちだってさっきのお前の一発で何ヵ所か骨に罅入ってるし、頭も切ったから垂れてきた血で左目塞がってる程度にはダメージ蓄積してるんだからさっさとケリを付けたいんだよ!

 

「『第一秘剣・犀撃』、投擲砲!」

 

剣の柄の底を全力で殴りつける投擲技!投擲って何だっけ?と思ったらダメだ。その悩みはとっくの昔に置いて来た!

 

大剣がグレンデルの腹に突き刺さりそのまま背中から飛び出た辺りで停止する

 

う~ん。腹は皮膚だったから貫通したけど背中の鱗で止められたか―――まぁ実質貫通してるから良しとしよう。グレンデルが腹のダメージに気を取られている間に残る大剣で脇下から斬り上げて左腕を半ば以上切断する

 

「オッほぉぉぉ!痛てぇなぁ!ああコレだよコレ!コレが生きてるって証だぜぇぇぇ!!もっと殴って、嬲って、噛み砕いてお互いの体が消し炭になるまで殺し合うんだよォォォ!!」

 

今までの浅い傷ではなく深いダメージを負った事でテンションが爆上がりしたグレンデルだが、俺に殴りかかる為に勢いよく腕を振り上げたところで左腕が千切れ落ちた

 

「あ゛あ゛!?俺様の腕はこんなもんで落ちる程軟じゃねぇぞ!調整ミスってんじゃねぇのか!」

 

グレンデルが怒りの矛先をローブの男に向ける

 

「いいえ、グレンデル。彼が邪気を纏った後に付けた腹と腕の傷をよく見て下さい」

 

指摘されたグレンデルが傷口に目をやれば切りつけた周囲が黒く染まってドロッとしている状態に気が付いたようだ

 

「・・・こりゃあ、腐ってやがんのか?」

 

「正解だ。攻撃にタップリと呪詛を流し込んだからな。細胞が壊死して体が脆くなってるんだよ」

 

それでも指摘されるまで気付かないとか鈍感と云えば良いのか馬鹿と云えば良いのか

 

「ふむ。邪気に対する耐性ですか・・・邪龍にそんなモノは必要ないと考えすらしませんでしたね。それと如何やらお仲間も来られたようだ」

 

空間の一角に大きめの転移魔法陣が展開してそこにグレモリー眷属とシトリー眷属に黒歌とイリナさんが転移して来た

 

「来たぞ!皆無事か!・・・って何だあの禍々しいオーラを放ってる奴は!」

 

いやイッセー、俺だよ俺。あ、もしかしてグレンデルの事か?

 

「いえ、よく見て下さい。アレは有間君のようです。それとあのオーラ・・・恐らく彼は何者かに乗っ取られていると見るべきでしょう。妖怪には人間に憑依出来る者も多いと聞きます。しかし、彼程の手練れが乗っ取られるなど生半可な敵ではありません。皆さん、気を引き締めて下さい!」

 

「何て悍ましいオーラでしょう・・・まるでこの世全ての不吉を孕んでいるかのようです」

 

やっぱり俺の事かぁぁぁ!?皆揃って戦闘態勢に移らないで!敵は向こうだから!

 

椿姫先輩も微妙に的確な表現しないで!というか黒歌だけは皆の後ろで笑ってるけど何で?

 

「黒歌姉様にはイヅナでイッキ先輩の状態は伝えておきました」

 

うん!その情報全員で共有してなきゃ意味無いって!

 

「誰だか知らねぇけど俺の親友の体からさっさと出て行って貰うぜ!イッキ!ちょっと手荒くなるのは勘弁しろよ。我、目覚めるは王の真理を天に掲げし、赤龍帝なり―――無限の希望と不滅の夢を抱いて、王道を往く―――我、紅き龍の王者と成りて、汝を真紅に光り輝く天道へ導こう!」

 

此処でそんなカッコイイ呪文要らねぇから!俺は乗っ取られたりしてねぇから!・・・あ、そう云えば一応イヅナを憑依はさせてるか

 

って!そうじゃねぇ!!

 

「おい、仲間割れか?一緒に掛かって来るんじゃなかったのか?大乱闘って解釈で良いのか?」

 

「きっと彼らも友人の変わり果てた姿に動揺していらっしゃるのでしょう」

 

変わり果てたって表現止めてくれません?なんだか俺が取り返しがつかない領域に足を突っ込んだみたいじゃないですか!

 

だがそこでグレンデルの翼と尻尾の先端の部分がボロっと崩れた

 

「おや?グレンデル、如何やら此処までのようですね。貴方の体はまだ調整中の為、試運転を兼ねた戦闘でしたがガタが来たようです。邪気の影響でしょうか?予想より早いですね―――ともあれ一度戻りましょう。貴方も再び土くれに成りたくはないでしょう?」

 

それを聞いたグレンデルはギラつかせていた殺気が萎えるように治まっていく

 

「ッチ!折角コレからもっと殺し合いが盛り上がるところだったのによぉ。それを言われちゃ退くしかあるめぇよ」

 

「不貞腐れないで下さい。如何やら白龍皇の方でも苦戦中のようですから最低限体を補修したら向こうにも顔を出しましょう。対ドラゴンのデータも採りたいのでね」

 

「オホ!そういう事ならさっさと行こうぜ。俺は先に戻ってるからよ。ああそれとお前と後ろの奴ら・・・ってドライグまで居んのかよ。惜しいな。まぁ良い次の機会だ。次はアレだ。その、アレだよ、殺すからよ。それまでにくたばるんじゃねぇぞ」

 

萎んだ殺気をこの後すぐ戦えると聞いた途端にまた膨らませたグレンデルはそのまま龍門(ドラゴン・ゲート)で上機嫌に消えていき、それを見届けた男はローブのフードを取り払う

 

中から現れたのは銀髪で長髪を後ろで結んだ優男だった

 

「私の名前はユーグリット・ルキフグスです」

 

その名乗り、特に『ルキフグス』という名前に皆が激しく反応する

 

「・・・なるほど。この町の堅牢な結界を突破し、魔法使い達を招き入れたのは貴方ですね?グレイフィア様と近しいオーラを持つ者であれば警戒網に引っかからなくても不思議ではありません」

 

「姉に・・・グレモリーの従僕になり下がったグレイフィア・ルキフグスに伝えて頂けますか?貴女がルキフグスの使命を放棄して自由に生きるのであれば、私にもその権利は有るのだと」

 

ソーナ会長の質問には答えず奴はそれだけ言い残して転移魔法でこの場から去って行った

 

「さて、では残るは貴方だけですね?有間君の肉体を返して頂きましょう!」

 

その設定まだ続いてたの!?俺は慌てて仙術で邪気を取り込むのを止めて通常のオーラに戻す

 

「大丈夫です!さっきのは俺の新しい技みたいなものなので別に操られてたとか憑依されていたとかじゃないですから!それよりほらっ!空間が端から崩れ始めてますよ!取り敢えず脱出しましょう!何なら魔力で束縛しても良いですから!あとイヅナ、あの生体ポッド2~3個持って来て!」

 

レイヴェルとしては見たくもないモノだろうから後で直ぐに布でも被せるとして、明確な証拠品だからな

 

そうして俺達は転移魔法でその空間を脱出したのだった・・・しっかり俺はソーナ会長にお縄になったけど脱出先で白音たちと黒歌の説明にロスヴァイセさんの探査魔法で白と判定された

 

なお、黒歌はソーナ会長に耳を引っ張られてお説教される事となったが

 

白音も黒歌が逃げ出さないように見張ってる途中でライザーが眷属を引き連れて助けに来たけどもう終わってたなんてオチも付いたけどな

 

イッセー達と魔法使い達の戦い?鎧のイッセーに黒歌も居るんだから蹂躙以外の選択肢ある?

 

 

 

 

 

[アザゼル side]

 

 

ルーマニアに入った俺とリアスと木場は車で山奥の道なき道を走っていた。領土で云えば既に吸血鬼の国に入っているが指定のルートを通らなければたどり着けない為かなり大回りになっている

 

一応領土の入り口で吸血鬼から地図は貰ったが、後は自力で行けとボコボコの道に送り出すとか何とも素敵なお出迎えをしてくれるぜ

 

ルームミラーを覗けば物憂げな表情をしているリアスが映る

 

「やっぱり日本に残してきた彼氏が気になるか?」

 

「・・・気にならないと言えば嘘になるわね。朱乃やゼノヴィアは押しが強いし、アーシアやイリナは天然なところが在るから流され易い面も在るからね―――それでも、イッセーの妻になる者として多少の騒乱は受け止めないとね」

 

ハーレム王を望むイッセーの彼女として貫禄出てきたんじゃねぇか?自然と『妻』なんて言えるなら大丈夫だろう。イッセーはどんどん成長して来ているがハーレム王としての威厳が出るまではもう少し掛かりそうだしな。それまではキチンと手綱を握っておけよ?

 

「あと、15分ほどで現地の吸血鬼のスタッフと落ち合う場所に着けそうですね」

 

助手席で地図と方位磁石と睨めっこしていた木場が報告してくる。その後は俺とリアスたちはそれぞれ俺がカーミラ派、リアスたちがツェペシュ派の領地に向かって別れる手筈だ

 

話題が無かったのかふとリアスが質問してくる

 

「曹操はどうなったの?昨日、正式な通達が有ったのでしょう?」

 

「英雄派の神滅具(ロンギヌス)所有者である曹操、ゲオルク、レオナルドの3名はインドラが捕らえ、聖槍は没収してその3名は冥府送りにしたって事になったな。まっ、槍だけじゃく他の神滅具(ロンギヌス)もどうせ奴が持ってるんだろうよ。一応他の幹部のジャンヌ達からインドラとの繋がりを吐いて貰ってるが、あの天帝相手に何処まで通じるかって話だな・・・イッキの奴が居なかったら完全にお前らの手柄をインドラが横取りする形で全部終わってたぜ」

 

イッキの奴もインドラの協力を得る為の取引としてか曹操達を捕まえたのはインドラだって証言(俺が聞いた時は棒読みで答えた)してるからソレに関しては深くはツッコめないんだけどよ

 

「・・・ハーデスね。思い返してもアレは酷かったわ」

 

土下座ハーデスを思い出しているのかリアスが何とも言えないといった顔に変わる

 

「あはは、イッキ君は敵対する相手には一切慈悲を持たないからね」

 

「そう言えば出発前に龍騎士に相手を閉じ込めて焼くとか提案してたな。本来鎧ってのは守る為のモノだってのに何処をどう思考を捻ったらそんな案が出るんだか」

 

「・・・もしもイッキが英雄派の一員だったら多分私達死んでたんじゃないかしら?」

 

確かに今のリアスたちではイッキの相手はキツいかもな。そうなったらイッセーの謎のおっぱいの奇跡に縋る以外の選択肢がなくなるだろうよ

 

そう云えば魔獣騒動の後処理が一段落した後でインドラと通信で話したな

 

≪HAHAHA、あの坊主は自分が何者に成りたいのかをキチンと決めずに動き回ったのがいけなかったのさ。『人間の力で異形の存在に勝ちたい』とそんな事を宣っておきながら怪物のメデューサの瞳なんぞ移植するから土壇場で聖槍に嫌われてジ・エンドだ。笑えるだろう?笑っとけ。アイツは最後に道化になった≫

 

それに関しちゃ同意見だ。持ち主の野望を糧とするという『覇輝(トゥルース・イデア)』も持ち主の方針がコロコロ変わっちゃ、付き合いきれないと見捨てても可笑しくないだろうさ

 

≪それに、あのガキどもは『英雄』を目指していたがまるで本質が見えちゃいなかった。あの有間一輝ってガキが曹操に言ってたぜ『英雄ってのは頂く者じゃなくて冠く者だ。英雄を目指すのは良い。努力しても良い。だけど最後に英雄たらしめるのは名も無き人々の声だ。自分から英雄を名乗った時点でお前がやってるのはただの『英雄ごっこ』だよ。テロリストとして悲劇しか生まなかったお前が英雄と周囲から称賛される存在なのかよく考える事だな』ってな≫

 

はっ、英雄やヒーローなんか柄じゃないって言ってるイッキの方がよっぽど英雄を解ってるなんて皮肉なもんだよな

 

イッセーだって冥界の子供たちに笑顔を届けてヒーローとして活動している。最初はショーの役だったとしても今のイッセーは実績と民間の声援を伴ったまごう事無きヒーローだ

 

それに対してごっこ遊びの曹操達・・・そりゃあ勝てないわな

 

「帝釈天は何がしたいの?曹操を泳がせ、ハーデスを間接的に煽り、各勢力に混乱を齎した戦の神。アザゼルは真意を聞いたの?」

 

「ああ、奴は破壊の神、シヴァに対抗する為の人材を欲しているのさ。戦乱がより良い強者を造り出すと信じていやがる」

 

まっ、そうなれば必然的にインドラと敵対する強者だって育っちまう訳だがな。そうして巻き起こるのは世界規模の闘争だ―――勘弁してほしいぜ。やるなら身内同士でコッソリやれってんだ

 

心の中でインドラに唾を吐いていると定期連絡の魔法陣が届いた

 

「グレンデル・・・それにルキフグスだと!?」

 

連絡はそこで切れた。この通信は一方的なもので相互のやり取りをするタイプじゃないが、今すぐにだって通信を繋げ直したいくらいだ

 

滅んだはずの伝説の邪龍に死亡したとされていたグレイフィアの弟だと!?

 

きな臭いなんてレベルじゃないぞ!

 

「リアス、木場、如何やら厄介な事になりそうだ」

 

これから先に口を開けて待っているであろう混沌が幻視出来るような気さえしたぜ

 

 

[アザゼル side out]




はい、とうとうイッキも魔王級の仲間入りとなりましたね

まぁ身体能力をどうにかしたというよりはオーラ量と質によるゴリ押しですけどw

イッキが金丹を食べて仙術使いだからこそ強くなったのと同じように神性と仙術を組み合わせたからこその強化案となっております

次章は間章とも云えるダークナイト編ですがアレって祐斗や朱乃の過去回みたいな感じだからそのまま載せる訳にもいかないですし、何とかオリジナル日常回みたいなものを挟みたいですねw

第一秘剣の投擲という名の殴りつけはfgoのシグルドを参考にしてます
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