転生特典が自爆技ばかりなんだが?   作:風馬

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お知らせ:第1章と第2章を多少手直ししました。見切り発車で書き始めた処で今よりもかなり粗が目立っていたので・・・とはいえ元の形を崩さないようにセリフの間に心理描写を加える程度の補修ですがw




第二話 黙示録の、獣です!

[イッセー side]

 

 

あれから俺達はギャスパーの父親の居るという地下の部屋に赴きその話を聴く事が出来た

 

ギャスパーの父親は逃げ出したという前ツェペシュの当主の派閥に近い中立派みたいな立ち位置だったらしく、この地下の部屋に軟禁されていたようだ

 

軟禁と言っても貴族らしいかなり豪華な部屋だけどな

 

そこで聞いたのはギャスパーの出生の秘密

 

ギャスパーの父親はギャスパーの事を終始『アレ』と呼び、ギャスパーが生まれた時に『闇が蠢くナニカ』として生れ落ち、ギャスパーの母親はショック死、その上でその出産に立ち会った人達も生まれたばかりのギャスパーが無意識に放っていたと推察される呪いによって数日中に全員が死んだという衝撃の事実を話してくれた

 

ギャスパーの父親はギャスパーの事を吸血鬼でも人間でもハーフですらない、定義の出来ない存在だと言ったけどそれなら答えは決まってる

 

アイツは転生悪魔で俺の後輩の『ギャスパー・ヴラディ』だ

 

聴くところによればリアスも俺と似たような事を言ったらしく、嬉しくも感じた

 

ギャスパーの父親は俺達の反応を『理解出来ない』と言っていたけど、俺はそれを頭から否定する気にもならなかった

 

この人がギャスパーの母親の人間を如何思っていたのかは分からないが、少なくとも愛おしさは感じてたはずだ。そうでなければ子供を作ったりはしないだろう。そしてその人を事故だろうと死なせてしまったというのであれば彼が葛藤するのは理解は出来るからだ

 

勿論それは幼い頃のギャスパーが迫害されるのを放置する言い訳にはならないのかも知れないけどそんな簡単に割り切れる話でもないのだろう

 

だけど、俺達の答えは変わらない。この人がギャスパーを愛せないなら仲間である俺達がギャスパーを大切にする。それだけだ

 

この場には居ないけどイッキや黒歌さんだってギャスパーが実は凄い闇のナニカだとしてもビビったりするような性格じゃないだろうしな・・・少なくとも俺は自分の腹に風穴開けたフェンリルと次に出会って早々に頭を撫でたいとは思えない

 

それに呪いを振りまくというのならぶっちゃけ俺達はイッキである程度耐性も付いてるしな

 

模擬戦じゃ近接で殴り合ってると先ず何より精神を圧迫されるような恐怖を感じるし、ドライグの鎧もドンドンとイッキの操る瘴気が侵食してくるから絶えず鎧をパージして作り直さないといけないときたもんだ

 

曹操と戦った時にも奴の石化の魔眼で似たような状況になったけど、ドライグの莫大なパワーを振りまいて戦う俺の戦闘スタイルだと元から酷いスタミナの消耗が更に加速する事になる

 

でも何時かちゃんと勝てるように今は修行あるのみだな

 

おっぱいドラゴンである俺が敵役のオール・エヴィルに実際は連敗してるだなんて冥界のヒーロー役として子供たちにも恰好がつかないしよ

 

それから話を聴き終えた俺達は再び宛がわれた部屋に戻ったのだが、そこには豪華なソファーで黒歌さんに膝枕されているイッキが居た

 

「うおぉぉい!イッキ、テメェ調べたい事が有るって言うからてっきり俺は町とかどっかこの城の重要そうな場所に潜入でもしてるかと思えば膝枕だと!?俺達がギャー助の話を聴いてシリアスしてたってのにお前は恋人の太ももをシリアルに堪能してたのかよ!!」

 

思わず叫んじまったがそこで黒歌さんに"ギンッ"と鋭い目つきを向けられてしまった

 

「五月蠅いにゃ!イッキは力を使い果たしてるだけよ。今は仙術で回復してるんだから静かにしておきなさい!」

 

「あ、はい、御免なさい」

 

俺の想像していた事とは違ったようなので素直に謝る

 

でもあのイッキが力を使い果たすとか普通じゃないけど何が在ったっていうんだ?いや、イッキが短時間で力を使い切る手段を持ってるのは知っている

 

片方の手段である【じばく】は論外だから残る可能性は一つだけだ

 

「あの、黒歌さん。イッキはその様子からして【一刀修羅】を使ったんですよね?何が有ったんですか?敵襲っていう訳じゃないですよね?」

 

そう、全ての力を消費して一分間だけ能力を数十倍に引き上げるという力を使ったという割にまるで戦闘をしたという気配も痕跡もない・・・と云うかもしもイッキがそんな戦闘を繰り広げてたならこの城が吹き飛んでいても可笑しくないだろうし、戦意の在るオーラをイッキが放っていたなら流石に俺達も気づいたはずだ

 

「ん~、ちょっと難しい問題だからね。アザゼルっちも今はまだ話さないようにって言ってたし、私の口からは言えないにゃ・・・ほら、白音。あんたも一緒に回復を手伝って」

 

「は、はい。お姉様」

 

黒歌さんに促された白音ちゃんがイッキの傍に近寄り絨毯の床に膝をついてイッキの額に手を当てる。猫又姉妹によるダブル仙術治療・・・クソ!羨ましくなんかないんだからな!

 

「あらあら、うふふ♪イッセー君は此方ですわ」

 

名前を呼ばれた俺は朱乃さんの方に顔を向けると別のソファーに座った朱乃さんが自らの膝をポンポンと叩いている

 

「何時戦いが起こっても良いようにイッセー君には常に英気を養って頂かないといけませんわ。それとも、私の膝枕では足りないかしら?」

 

「そんな事は有りません!是非、その極上の枕を堪能させて下さい!!」

 

普段以上に敏捷な動きで素早くかつ丁寧にソファーに横になって頭を朱乃さんの膝の上に乗せる!うひょー!柔らかくていい匂いがして目の前にはおっきなおっぱいと朱乃さんの嬉しそうな顔が見れるなんて膝枕は最高だぜ!

 

「はぅぅ!また乗り遅れてしまいましたぁぁ」

 

「っく、流石は副部長だな。こういう行動の素早さはもしかしたら眷属随一かも知れないな」

 

「そ、それでイッセー君が十全の力が発揮できるなら私も後で膝枕するんだから!膝枕なら天使の私も堕天しないし、ここは逃せないわ!」

 

おっ、この流れはもしかして教会トリオも後で膝枕・・・の争奪戦の果てに有耶無耶になる未来が見えるな。でも折角だし皆の膝枕も堪能したいし、そうならない事を祈るぜ

 

それから俺達は吸血鬼の監視付きながらも城下町を観光兼軽い下見をしたり、ヴァレリーの話し相手として呼ばれたりしながら二日間程時間は過ぎていった

 

途中町中でオーフィスの分身であるリリスと偶然露店の土産屋の前で出会って赤いドラゴンのアクセサリーをジッと見つめていたのでつい買い与えてやったり、お腹が空いたと言われてしまったので近くの喫茶店で一通り料理を頼んだりした

 

話してみた感じだとオーフィスと同じくらい純真でオーフィスより無知でやや幼い感じがするってところだろう。まぁまさしく『生まれたばかり』だと考えるなら納得のいく話だ

 

勝てる勝てない以前にこの子とは戦いたくないもんだぜ

 

・・・ただ、食べ終わった後で「バナナ、ない?」と聞かれたけどバナナが好きなのか?家に居るオーフィスもお菓子などの甘いものや最近ではバナナをよく好んで食べてたりしたが、やっぱり元が同じだから趣味嗜好も似通ってるのかね?

 

アーシアも「そう言えば私がファーブニルさんと契約を結ぶ時にオーフィスさんも一緒でしたがずっとバナナを食べていらっしゃいました」とか言ってたし、本当にバナナが好きなんだな

 

因みに流石にバナナは持ってなかったのでそう告げると「・・・そう」と一言だけ発したけど、無表情ながらに多分アレは落ち込んでたんじゃないのか?

 

そうして今日はまたヴァレリーの話し相手としてギャスパーは固定だとして、俺やリアスに白音ちゃんと話しているとあのマリウスの野郎が現れてギャスパーがヴァレリーを解放してくれと頼む。すると奴は薄っぺらな笑顔でそれを了承しやがった

 

ギャスパーは喜んでいたけど俺は以前ドライグに聞いた話を思い出していた

 

レイナーレという堕天使がアーシアの神器を抜き取ろうとしていた時の状況とそっくりだからだ

 

部屋に戻った時にアザゼル先生が居たのでその話をすると先生も厳しい表情でギャスパーに神器を抜き出した場合は死んでしまう旨を伝えると喜んでいたのが一転して悲壮な表情を浮かべる

 

「じゃ、じゃあヴァレリーを解放してくれるって言うのは・・・」

 

「あのマリウスってヤツの性格を考えるなら先ず間違いなくそれは聖杯を抜き取るという意味だろう。確かにそれならば聖杯からの解放自体は叶うからな」

 

「絵に描いたような最低な男ね。でもそうなると多少無理をしてでもヴァレリーを連れて国外に逃亡する必要があるかしら。あの男が私達にそれを話したという事はある程度神器を抜き出す下準備が整ってると考えられるものね」

 

確かに・・・問題はどうやって連れ出すのかだけどな

 

ヴァレリーの近くには護衛として常にあのクロウ・クルワッハが控えているから如何にか奴を足止めしつつ外との直通の転移ゲートを開かないといけないだろう

 

しかし此処は結界に覆われた吸血鬼達の国―――簡単にゲートは開けないだろう

 

如何したものかと悩んでいたところで俺達の居る部屋が突如として結界に包まれた

 

一瞬身構えちまったけど部屋の天井に転移魔法陣が現れてそこからエルメンヒルデとルガールさんにベンニーアが落ちるように転移して来たんだ

 

・・・エルメンヒルデは着地に失敗して尻もち着いてたけどな

 

それから彼女にツェペシュ派の吸血鬼が聖杯に関する計画を最終段階に移したという情報を聞く事になった。マリウスの奴がヴァレリーから聖杯を抜き出してこの町の吸血鬼全員を弱点の無い存在に進化・・・いや、変化させようという事らしい

 

正直吸血鬼がどう変化しようと興味はないけどやるならやりたい奴らだけでコッソリと自己完結して欲しい―――ヴァレリーに無理矢理聖杯を使わせたり、進化した力とやらでその後多方面にケンカを売る何て事は見逃す訳にはいかない

 

だがそこで城全体を巨大な魔法陣の光が包み込んだ

 

「コレは!かなりオリジナルの術式が煉り込まれているが神滅具(ロンギヌス)を術者から取り出す術式で間違いない!」

 

窓際に素早く駆け寄って魔法陣の術式の一部から即座に全体像を把握したアザゼル先生が苦々しい声を出す

 

クソ!遠くない内にとは聞いてたけどもう動き出したのかよ!

 

「この事態を察知した我らカーミラの兵たちも程なくこの城に攻め込んで来るでしょう。あなた方は早く避難を」

 

「この状況でもまだ俺達の介入を拒もうってのか?吸血鬼が吸血鬼でなくなるのにもう一刻の猶予もねぇんだぜ?」

 

「ええ、吸血鬼の問題は吸血鬼が解決・・・と言いたいところですが我らが女王からあなた方がギャスパー・ヴラディの護衛・援助をする程度ならば許可を出すとの言葉を賜りましたわ」

 

こんなに限界ギリギリの状況でよくもまだそんな事を言えるもんだな

 

まぁいい、今はそれは後回しだ。コレで俺達が暴れても良いという大義名分は得た

 

後はヴァレリーを救い出して脱出するだけだ。エルメンヒルデは俺達と一緒に居る理由が無い為、ベンニーアの手によって外のカーミラ派の居る場所に再び転移していった・・・足元に展開された魔法陣で落とし穴のように落ちていったけど些細な問題だろう

 

他の部屋に居た皆もすぐに異変を察知して集合してくれた

 

だがそこにイッキと黒歌さんの姿は無い。二日前にイッキが回復した後で「暫く留守にする」って居なくなってしまったのだ

 

監視役の吸血鬼も暫く経ってから漸く二人が居なくなっている事に気付いて慌ててたな

 

まぁ本来搦め手やサポート能力に秀でているという仙術使いで魔王級の実力を有するあの二人なら気付かれずに行動するのなんて訳ないのだろう

 

一応イッキたちが何処に行ったのかとも聞かれたけどこっちはマジで知らねぇから答えようもないし、答える気もない・・・一応「観光でもしてるんじゃないか?」とは言っておいたけどな

 

「先生、イッキと黒歌さんはまだ?」

 

一応アザゼル先生はイッキたちが何をしているのかは知っているらしいが先生もその内容を教えてはくれなかったんだよな

 

「ああ、アイツらの任務はヴァレリーの救出と並ぶレベルで重要な案件だ。俺達の加勢に間に合うかどうかは正直微妙だな。一先ずは俺達だけで聖杯の摘出阻止及びヴァレリーの救出に向かうぞ」

 

マジか!この局面でもイッキたちがすぐに動けないってどんなヤベェ案件に首突っ込んでるんだよ?いや、どんな問題でもあの二人ならば俺達が手を出すまでもないと信じよう

 

ヴァレリー救出を目前にした今、余計な横やりを防いでくれるってんなら願ったりだ

 

如何やら聖杯を取り出す儀式はこの城の地下で行われているようなのですぐさまそこに向かう

 

外では既にカーミラ派とツェペシュ派の吸血鬼の兵隊たちの戦闘音が聞こえてくるけど正直レベルの高い吸血鬼とかは地下の警護に回ってるんじゃないかと思う

 

何せ聖杯を取り出して自由に使えるようになったならより完璧に近い不死身の軍団が出来上がるのだから始めに多少カーミラ派に押されても城の守りこそを厳重にする可能性が高い

 

そいつ等を蹴散らさないといけないとするならこの先一秒も無駄にはできないな

 

そうして俺達が地下に向かうと大きな広間が在ってそこに吸血鬼の兵隊たちが多数待ち構えていた

 

・・・少なくとも百人以上は居るな

 

「さて、誰から行く?こいつ等は数だけだが吸血鬼だけあってしぶとい。おまけに地下では余り派手な攻撃もし辛いときたもんだ。一刻を争う以上、少数で当たって残りは先に進んだ方が良い」

 

アザゼル先生が光の槍を手元に生み出しながら言うとシトリー眷属の新メンバーの二人が前に出た

 

「問題無い」

 

≪此処はあっし達に任せて先に行ってくだせぇ≫

 

二人だけで大丈夫なのかと心配したけどベンニーアは高速で駆け出して、手にしたデスサイズで次々と吸血鬼達を一撃で斬り伏せてしまった

 

そしてもう一人のルガールさんはと云えばなんと狼男に変身したのだ。驚きから覚める前にルガールさんは俊敏且つ力強い動きで兵隊たちに詰め寄ったかと思えば両腕に魔法陣を展開して灼熱の拳と爪で瞬く間に敵を蹂躙していく

 

≪ルガールの旦那は高位の狼男と高名な魔女のハーフっつぅ血筋チートのハイブリッドウルフガイですぜ。まっ、あっしも余り人の事は言えないんスけどね≫

 

そういえば魔法使いが襲撃してきた時に思いっきり死神の格好してる彼女の事が気になったのがソーナ会長にばれて最上級死神オルクスと人間のハーフって教えて貰ったっけか?

 

実は母親の方も凄い人だったりするのかな?いや、仮に一般人だったとしても十分過ぎるんだけどね。勿論血筋と才能は必ずしもイコールで結ばれる訳じゃないけどさ

 

「この場は任せて問題無いようね。私達は進みましょう」

 

リアスの指示の下、俺達はこの場を彼らに任せて歩を進める

 

先に進むと二つ目の広い空間に出た。アザゼル先生がこの二日間の間に何処かからパクってきたという地図によれば最下層の儀式をしているであろう広間も含めて四つの広間があるそうだ

 

そしてこの二つ目の広間には高級そうな衣服に身を包んだ上の階の吸血鬼の兵隊よりも数段強い気配を漂わせている吸血鬼が3人居る

 

「来た来た。主殿が仰った通りだ」

 

「うむ、噂のグレモリー眷属だな」

 

「強化された我々にとっては練習台としてもってこいの相手になりそうだな」

 

たった3人だってのにえらい自信だな。自分たちが死なないと思っているからこその余裕か?

 

さて、今度は如何するか?3人だけなら誰かが残ったりしなくても全員で掛かれば時間も掛からずに退治できるか?

 

「邪魔です」

 

「「「ぎゃあああああああああ!!」」」

 

如何動こうか思慮した矢先に白音ちゃんが白い炎を纏った火車を飛ばしてその炎に焼かれた吸血鬼達は瞬時に灰となって消え去ってしまった―――瞬殺かよ!もはやギャグの領域だよ!

 

「火車の炎は死者の魂をあの世に誘います。動く死体(リビングデッド)の定義に含まれる吸血鬼では浄化の炎に抗えません。幾ら耐性を付けようとも死者であるという魂の根源、概念を変更しない限りは灰となるまで燃やし続けます」

 

浄化の炎・・・いや、この場合火車の炎か?それにそんな特性があったなんて!完全に対吸血鬼用の炎じゃないか!―――白音ちゃんは元は妖怪だし、本来使用する相手は幽霊とかなのかも知れないけど、何にせよこの場では心強いよ!

 

「う~ん。イッキ君に貰ったアドバイスが試せなかったね。まぁ彼らにしてみれば一瞬で灰と化す方が良かったのかも知れないけどさ」

 

木場が苦笑交じりに言ってるのは聖剣の騎士団に閉じ込めて聖なる炎や雷で全身くまなく焼くって案だったか・・・確かにこいつ等は聖杯の力で色々と耐久値が底上げされてたはずだからその場合はかなり悲惨な光景が繰り広げられてたかもな

 

これ以上想像するのは精神衛生上良くないと判断して俺達はまた次の階層に向かう

 

そこに待ち構えていたのは先日駒王町を襲ってきた魔法使い共とユーグリットの野郎と一緒に居た邪龍のグレンデルだった

 

タンニーンのおっさん並みの体躯に隠す事の無いイヤらしい好戦的な笑みを浮かべている

 

「よぉ、待ってたぜぇ!この間のガキは居ねぇのか?まぁ良い。ドライグゥゥゥ、お前とも戦いたかったぜぇ―――つっても暫く見ねぇ間に随分小っこくなっちまったなぁ!聞いたぜ。神器に封印されたんだってな。ざまぁねぇなあ、天龍だなんだともてはやされても所詮お前も俺も大して変わんねぇ結末ときたもんだ。まっ、神器に封じられたお前とこうして肉体を持って復活した俺じゃその後の経過は違うみてぇだがな」

 

『ふん!確かに昔の俺もアルビオンも周囲の事をそっちのけで暴れまわって封印された。俺達以外の奴らにしてみれば邪龍も天龍も変わらなかっただろう』

 

よ~く反省しろよドライグ?各神話世界で滅茶苦茶な被害を出して暴れてたって結果だけを見るならある意味邪龍より質が悪いんだからな?

 

『だが、今の俺は暴力以外の世界も色々と知る事が出来た。昔と変わらぬ笑みを浮かべるお前と一緒にされたくはないな』

 

「ハッ!小っこくなっただけじゃなくて丸くなっちまったってか?ドラゴンってのは闘争の中で生きてこそドラゴンだ。それを忘れちまったってんなら今すぐ思い出させてやるぜ―――さぁ!愉しい愉しいぶっ殺し合いの始まりだ!!」

 

奴はそう吼えると開幕速攻特大のブレスを放ってきやがった

 

既に鎧自体は身に纏っていた俺は正面から迫りくる火球にドラゴンショットを打ち込んで威力を削り、残る余波はリアスと朱乃さんの張った魔法の障壁で完全に防ぎ切った

 

二人の防御能力が格段に上昇している。初撃という事もあり二人で防いだけど今のは一人でも十分だったな。如何やらこの二人はこと防御に関しては魔力よりも魔法の方が適正が高かったらしい

 

「イッセー、この先にはまだクロウ・クルワッハにリゼヴィムも待ち構えている可能性があるわ。真紅の鎧は今はまだ使わないで頂戴。この邪龍は皆で倒すわよ。イッセーの力はヴァレリーの直接の救出と撤退戦で発揮して貰うわ」

 

「分かりました!」

 

確かにあいつ等全員を相手に何てしてられない。コイツを倒して最低限の退路を確保してヴァレリーを連れて逃げるのがベストだろう

 

方針が決まったのなら後は突貫するだけだ

 

背中のブースターからオーラを噴出してグレンデルに真正面から突撃する

 

「おほ!正面からか!そうそう、そういうので良いんだよ!」

 

奴の巨大な拳を回避して懐に潜り込んだ俺は渾身の拳を放つ

 

「悪いが時間を掛けてられないんでね。速攻で決めさせて貰うぜ!」

 

左の拳が奴に当たる直前に籠手に収納されていたドラゴンスレイヤーの聖剣であるアスカロンの龍殺しのオーラに力を譲渡する

 

『Transfer!!』

 

"ドゴンッ!!"

 

奴の硬い体と俺の拳がぶつかり空間に鈍い音が響く

 

「相手は邪龍だからね。畳み掛けさせて貰うよ」

 

俺と同じく神速で距離を詰めていた木場がその手にグラムを手にしてグレンデルの肩口から袈裟懸けに切り裂いた

 

木場の持つグラムもアスカロンと同じくドラゴンスレイヤーの力を宿している。木場の放った一撃は奴の硬い鱗も切り裂いて正面から青い血が噴き出る

 

「二人とも下がって!」

 

リアスの指示が飛び、すぐさま反応した俺達はグレンデルの傍から離脱すると後ろに居た皆が放つ遠距離攻撃が一斉にグレンデルにぶち当たった

 

・・・スゲェ威力だ。俺でもあんなの真面に喰らったら消し炭になるぜ

 

だが煙が晴れる前にグレンデルがあの攻撃を喰らった直後とは思えない軽快な動きで距離を詰めてきて俺を殴り飛ばし、反対側で振られた尻尾で木場も同じく吹き飛ばされてしまった

 

すかさずアーシアの回復のオーラが俺と木場のそれぞれに放たれる

 

俺はドライグの鎧越しだったけど木場は回復に少し掛かりそうだな

 

それにしてもグレンデルの奴は全身に重傷を負っていると分かるのにあんな風に反撃してくるだなんてな。お陰で反応が遅れちまった

 

「グハハハハハ!痛てぇ!痛てぇ!痛てぇよぉぉぉ!でもだからこそ最っ高に愉しいぜぇぇぇ!―――ヴっ!ヴボゲェェェ!ガハッ、ガハッ、ガハハハハハハハハハ!!」

 

途中で盛大に口からも血を吐き出しながらも嗤うのを止めないグレンデルの姿にうすら寒いものを感じてしまう。ああ、漸く実感できたぜ―――コレが、邪龍なんだな

 

『その通りだ相棒。ただしぶといから邪龍なのではない。この戦いにおける異常な精神性こそが邪龍の邪龍たる所以だ。精神を屈服させることは出来ない。只管に肉体を消滅させる事に注力しろ』

 

ドライグに此処まで言わせる何てな。確かにコイツは死ぬまで、いや、死んでも諦めないだろうよ

 

「なら此処は私の出番ね。皆、少し時間を稼いで頂戴。私も必殺技っていうのを作ってみたの。決まればその邪龍でも一撃で葬れるわ」

 

そう言いつつリアスは頭上に滅びの魔力の球体を形作り、どんどんとその力を追加で注ぎ込みながら圧縮させていく。練習してたのは遠目になら知ってるけど完成形は見た事無かったな

 

打開策は決まった。後は皆でリアスを守るように立ち回る

 

まぁアザゼル先生はこの後で神器の摘出を防ぐ繊細な仕事が待っている為援護射撃くらいだけどな

 

再び突貫する俺を筆頭に近接組である復活した木場が騎士団を創り出してそれぞれにジークフリートから入手した魔剣を持たせてその能力を解放して斬りつけていく

 

伝説の魔剣たちを複数操るだけあって木場の戦闘能力は格段に上昇したよな

 

そしてもう一人飛び出した白音ちゃんも驚きの変化を見せた

 

「レイヴェルもすぐに強くなります。何時までも私だけ足踏みしてる訳にはいきません!」

 

白音ちゃんは何時もの大人の姿にはならずに通常の状態で更に闘気を高める

 

すると白音ちゃんの二又の尻尾が三本に増え、それと同時に白音ちゃんのオーラも格段に上昇した

 

「今はまだ大人の姿と併用する事はできませんが、現状ではコレが私の最強モードです」

 

元々黒歌さんと白音ちゃんの猫魈(ねこしょう)という種族は尻尾が三本、即ち三又の種族らしいからコレで白音ちゃんは正真正銘の一人前と言えるのだろう。今の白音ちゃんならレグルスの鎧無しのサイラオーグさん相手でも引けは取らないと思う。むしろ技の引き出しの多い白音ちゃんの方が総合力では上か?・・・流石に強化形態だからスタミナ勝負に持ち込まれたらジリ貧で敗けそうだけどね

 

ともあれ俺、木場、白音ちゃんのスリートップで攻め立て、その隙を後衛組が更に攻める

 

コイツの鱗は非常に硬いし各種耐性も高いけど俺と木場の攻撃で全身に怪我が増え、白音ちゃんの仙術で少しずつ耐性も減りつつあるからどんどんダメージが蓄積されていく

 

だがコイツは死ぬほどの怪我を受けてなおテンションが高まって行くのか動きが機敏になっていき、前衛組も何度か良いのを貰ってしまっている。アーシアが居なかったら戦線が瓦解してたぜ

 

今は木場がゼノヴィアが放ったチャージ砲で隙が出来たところに全身に刻まれた奴の傷口に今度は無数の聖魔剣を突き立てる

 

「どいて下さい!雷光龍よ!!」

 

今度は朱乃さんの鋭い声がして離れると東洋タイプの龍の形をした雷光のドラゴンがまるで意思を持っているかのように動きグレンデルの体に巻き付いた

 

全身に突き刺さった聖魔剣から直接雷光がグレンデルの体内を焼いていく

 

「コレが私の新しい必殺技、雷光龍ですわ。イッセー君に胸を突かれた影響かしら?これを形造るときはドラゴンのオーラが付与されて力強さが増すんですの・・・性質としては祐斗君の龍騎士に近いのかもしれませんわね」

 

マジですか!朱乃さんがリアスに続く準スイッチ姫ともいえる裏設定を手にしたのがそんな形で現れたんですか!?

 

「なにぃぃぃ!?そうなのか!?良しイッセー!この戦いが終わったら私の胸も百回でも千回でも良いから突きまくってくれ!最近木場に差を付けられるばかりで悩んでいたんだ!」

 

良いのか!?そんな事言われたら俺突いちゃうよ。ゼノヴィアのおっぱいも十分大きいし張りもある、素敵なおっぱいなんだから!

 

「そ、それなら私も突かれてもっと皆さんのお役に立てるようになりますぅぅ!」

 

「私だってそれで天使パワーが強化されるならこの胸を主と信仰の為に捧げるんだから!」

 

教会トリオは何時も仲良しだよね!何か俺が胸を突くとパワーアップするのがもうキミたちの中で確定事項になってない?俺が言うのも可笑しいのかも知れないけどさ!

 

「あなた達もいい加減にしなさい・・・と、言いたい処だけど私のこの必殺技もイッセーに胸を吸われ・・・突かれてから変化が生じたのよね。準備は出来たわ。皆下がって良いわよ」

 

リアスも胸を突かれて魔力に変化が生じたの!?そんなリアスの頭上には一目で危険だと分かるドス黒い圧縮された滅びの魔力の塊が浮いている

 

それを見た俺達は絶対に巻き込まれないようにリアスの後ろまで一気に避難した

 

「元々魔力の圧縮、一点集中技術はイッキの指先にオーラを集中させるのを参考に鍛えていたのだけどね。それに付け加えてこの状態の滅びの魔力には相手の弱点とか耐性とか防御とか一切を無視してダイレクトに攻撃出来るようになったのよ」

 

凄いな!滅びの魔力に加えてそんな特性まで付与されたら直撃すれば神様だって危ないんじゃないか?でも木場や朱乃さんと違ってドラゴンの力が関係してるって感じじゃないのは何でだろう?

 

『全てを貫通する攻撃だと?もしやそれは俺の透過・・・いや、そんな事は無いはずだ』

 

ん?ドライグには何か心当たりでも有るのかな?

 

「コレが私が貴方に与える滅びの一撃―――『消滅の魔星(イクスティングィッシュ・スター)』よ。消し飛びなさい!」

 

だが放たれた滅びの球体は大した速度では無かった。アレでは避けて下さいと言ってるようなものだ。現にグレンデルも遅すぎる攻撃を鼻で笑っている

 

しかし変化はすぐに訪れた

 

「ん?んおおお!?何だこりゃ!?引きずられる!何て吸引力だ!」

 

如何やらあの滅びの魔力には周囲のモノを引きつける作用があるらしい。滅びの魔力で大気や空間が消滅し、周囲の空間がそれを補完しようと引っ張られてるって事か?何にせよあのグレンデルですら気が付いた時には手遅れだったようで滅びの魔力とグレンデルが接触した瞬間に盛大に弾けた

 

光が収まった時にそこにグレンデルの姿はもう無かった・・・恐ろしい攻撃だ。あの堅いグレンデルが完全に消し飛ばされるなんてな

 

だが漸く勝ったと思った矢先にこの場にもう一体の邪龍が現れた

 

「そうか、グレンデルがやられたか」

 

現れたのは最強の邪龍と云うクロウ・クルワッハだ。奴はグレンデルが居た場所を一瞥するとそこから何かを拾い上げた・・・アレはグレンデルの牙か?それだけ残ってたんだな

 

「その牙を如何するつもりだ?邪龍でも仲間を弔ってやったりとかするのか?」

 

「さて、俺は此処での時間稼ぎとグレンデルがやられているなら退くように命じるか、殺されていたなら欠片だけでも回収するように言われていてな。何でも聖杯の力ならば欠片からでも再生する事は可能らしい」

 

あんな牙一本からでも復活させられるのかよ!もうあのグレンデルとなんて戦いたくねぇぞ!

 

それにこの状況も不味い。皆グレンデルとの戦いでかなり消耗している。それに加えてグレンデル以上の邪龍との連戦では体力が持たない

 

何より此奴相手では俺も真紅の鎧でないと相手にすらならないだろう

 

だがそこに見知ったオーラが高速でこの場所に近づいて来るのを感じた

 

そして次の瞬間広間の扉が壊されて鎧姿のヴァーリが現れる

 

ヴァーリはクロウ・クルワッハを見据えて質問する

 

「お前がクロウ・クルワッハだな?」

 

「その通りだ。今代の白龍皇よ」

 

「ヴァーリ!遅かったじゃねぇか!今まで何をやっていた?」

 

「此処に来る途中、ユーグリット・ルキフグスとはぐれ魔法使いの集団『魔女の夜(ヘクセン・ナハト)』の聖十字架使い、更には宝樹の護封龍(インソムニアック・ドラゴン)『ラードゥン』の妨害に会ってな。アーサー達は今は引きずり込まれた別空間で戦っている」

 

「ッチィ!話には聞いていたが神滅具(ロンギヌス)聖遺物(レリック)使いは全部テロリストに加担かよ!それに『ラードゥン』だと!?アイツもグレンデルと同じく滅んだはずの伝説の邪龍だぞ。ソイツも聖杯で復活させたのか!」

 

また伝説の邪龍かよ!俺は先生の愚痴を聞いて内心ウンザリしながらも今は先に進む事を優先する為にヴァーリの横に並び立つ

 

必殺技を放ったリアスも含めて今は皆グレンデルとの戦いの直後で消耗している。それに何よりヴァーリが来た事を加味しても目の前の邪龍は真紅の鎧無しには戦える相手ではない。だから俺はすぐ横のヴァーリに訊ねる

 

「ヴァーリ・・・共闘する気は有るか?」

 

「っふ、俺もお前もこの先に用が有るのは一緒みたいだからな。この場に来る前にユーグリット・ルキフグスとの戦いで白銀の鎧で戦えるだけの力は消耗してしまった。これ以上無駄に力を減らしたくはないのでね。ここは一つ、二天龍の共演といこうか。ロキと戦った時のようにな」

 

! そうか、ヴァーリは今はあのプルートすらも瞬殺した鎧は使えないのか。アレが在ればかなり勝率が高まったんだけど、文句は言ってられないな

 

俺は呪文を唱えて真紅の鎧になるとヴァーリと二人でクロウ・クルワッハに立ち向かうが俺達の攻撃は全て奴に軽く受け流されてしまった

 

このままではダメージが与えられないと考えた俺はヴァーリに奴の気を引いてもらい、その間にチャージした渾身のクリムゾンブラスターにアスカロンのドラゴンスレイヤーの力を乗せて撃ち出すが奴がガードする時に使った翼を破壊するに留まった

 

その上奴は片翼を失ったにも関わらず平然としている―――邪龍のタフネスってヤツか!それに今までの攻防で分かった。コイツはまだ全力を見せていない

 

もう一度同じ攻撃を仕掛けて命中したとしても更に高めたオーラで防御されたら今度は翼を吹き飛ばす事すら出来なくなるかもな

 

「ッチィ!これ以上は時間を掛けてられないな。アーシア、呼べ!ファーブニルを!」

 

「は、はい!」

 

此方の戦況を見て今のままではいけないと判断した先生がアーシアにファーブニルを召喚するように促す―――マジか!此処であの契約の対価にパンツを求めちゃう龍王を呼びますか!

 

そしてアーシアがすぐさま呪文を唱えて黄金の龍を龍門(ドラゴンゲート)で呼び出した

 

『おパンティータイム?』

 

ダメだ!分かっちゃいたけどコレは酷い!

 

そうして顔を真っ赤に染めたアーシアが「違・・・い、いえそうです!おパンティータイムですぅ!」と否定しかけた言葉を飲み込んで肯定の意を返す

 

だがこの変態龍王はアーシアがポケットからパンツを取り出すのを見て不機嫌になった

 

『違う。俺様今はおパンティーって気分じゃない。俺様、アーシアたんのスク水が欲しい』

 

黙ってパンツ受け取っておけよこの変態龍王!

 

こんなルーマニアにまでアーシアがスク水を持って来ている訳がないと文句を言おうとした処でアーシアがスク水を取り出してファーブニルに渡す。皆もアーシアがそれを持っていた事に驚愕するが如何やらソーナ会長がアーシアがファーブニルを紹介する時に彼女のスク水姿に熱い視線を送っていたことに気付いて出発前にスク水を持ち運ぶよう助言したらしい

 

スゲェよソーナ会長!あの人は一体どれだけ柔軟な発想で先々まで見通せるんだ!?

 

「ファーブニルは泳ぎたいのか?」

 

最強邪龍様の勘違いを加速させつつもアザゼル先生に『タスラム』とかいう伝説のアイテム・・・正確にはそのレプリカらしいが、それがクロウ・クルワッハに有効だとしてスク水を食べたファーブニルがバズーカのようなものを取り出してそれを手に取った先生がぶっ放した

 

途中、ファーブニルの変態パンツ、否、スク水騒動を初めて目の当たりにしたアルビオンが過呼吸気味になり、ドライグが必死にフォローしていた

 

『ハァ、ハァ、ドライグよ。俺は一時期は変な称号で呼ばれる事に対してお前を恨んだりもした。だがあのファーブニルを見て悟ったぞ。きっと今のこの時代こそが我ら伝説のドラゴンに『変態』という風評を押し付ける何らかの因果が働いているのだろう』

 

『ああ、分かるぞアルビオン!あのオーフィスですら少し未来がズレていたなら痴女だのなんだのと呼ばれていたかも知れんのだ。ドラゴンとして天に立つも神には至らぬ我らでは今の時代の運命には抗えないのかも知れん』

 

『ドライグ・・・良かったらこの後我らだけで語り合わないか?』

 

『そうだなアルビオン。これはきっと当事者でなければ分からん事だろう』

 

『今まで悪かった!ドライグ!』

 

『アルビオン!!』

 

う~む。なんか知らんが二天龍が和解しそうだぞ?お前ら何百年だか何千年だか争ってきたんじゃないのかよ?まぁアルビオンの怒りの矛先が『おっぱいドラゴン』から逸れているっぽいから口出しはしないでおこう―――下手な事を言えば再燃する気がする

 

そんな思いをよそに『タスラム』というクロウ・クルワッハ曰く必中する魔弾というのがぶつかり、煙が上がっていた場所に目をやると顔の部分だけ人型からドラゴンの形になった奴が魔弾を咥えて防御していた・・・無傷かよ

 

「聖杯の力でここまで強化されて復活を遂げるとはな」

 

ヴァーリが苦笑するがクロウ・クルワッハはそれを聞いて怪訝な表情を浮かべる

 

「復活、それに聖杯だと?そもそも俺は滅ぼされた事など一度として無いぞ。聖杯の力とやらも受けてはおらん。当時キリスト教の介入が煩わしくなって表からは姿を消したがな―――以降、見聞を広め、力を付ける為に世界を旅して廻っていただけだ」

 

何!?って事はコイツは素であの強さなのかよ!?

 

『永きに渡り、力を高め続けていたというのか。相棒、よもやするとコイツは全盛期の俺とアルビオンに匹敵ないし凌駕するほどの存在になっているかも知れんぞ』

 

おいおい!地上最強と謳われた二天龍と同格かそれ以上かよ!単純な強さで云えばサーゼクス様と同じ超越者っていうリゼヴィムよりもヤベェんじゃないか?

 

「戦いを求めるドラゴンとはよく言ったものだ。元より興味は有ったが、それが更に深まったよ。お前とはいずれ何の気兼ねも無くぶつかり合いたいものだ」

 

「俺もだ白龍皇・・・しかし、それは今ではない」

 

お互いに戦いが大好きだという事を隠しもしない笑顔を浮かべてるが、クロウ・クルワッハは高めていた戦意を仕舞って奥に続く道を譲って来た

 

「俺は最低でも十数分時間を稼げと言われただけなのでな。白龍皇も本気を出せないというのなら、これ以上ここで戦う理由がない」

 

そう言い残して最強の邪龍はこの場を去って行った

 

折角戦うなら出来るだけ万全の状態で戦いたいってタイプか

 

同じ邪龍でもグレンデルとは別な感じだな―――多分アイツはそう云うのお構いなしだと思うから

 

「何にせよ、戦わずに先に進めるならそれに越した事はないわ。時間稼ぎと言っていた以上はもう猶予は無いはず。進みましょう!」

 

リアスに言われて俺達は駆け足で最下層の広間に向かう

 

そうだ。奴が頼まれた時間の分だけ俺達の足止めをしたというのなら本当にヤバい!

 

湧き上がって来る焦燥を何とか堪えつつ遂に儀式場に到着すると床に光る魔法陣の中心にヴァレリーが横たわっており苦し気な表情を浮かべていた

 

彼女の隣にはあのマリウスって奴も居る

 

「ヴァレリー!!」

 

「ギャス・・・パー・・・?」

 

ギャスパーの叫びが聞こえたのかヴァレリーが此方の方を向く

 

今すぐ助けに行きたいが魔法陣に組み込まれた障壁が俺達の行く手を阻む

 

『騎士』組が直ぐに攻撃するがゼノヴィアや木場が斬りつけてもびくともしないか!なら!

 

「おっと、下手な攻撃はしない方が良いですよ?下手に術式が乱れたらヴァレリーが魂まで一緒に砕けてしまうかも知れませんからね」

 

それを聞きドライグのパワーで障壁を殴ろうとしていた俺の手が止まってしまう

 

魂と溶け合った神器の摘出作業中に下手を打てば確かに奴の言う通りになってしまう!

 

ならば繊細なやり方でとアザゼル先生を見るが、当の先生は小型魔法陣で目の前の術式を解析していたらしくその結果に険しい表情を浮かべる

 

「このプロテクトコードは・・・聖書の神の物か!何故俺達も知らない術式をお前が知っている!これもリゼヴィムの野郎の提供か!」

 

「あの方には聖杯や神器の取り扱いについて色々と教えて頂きました。代わりに私は伝説の邪龍復活のお手伝いをして差し上げたのですよ」

 

何だかよく判らないけどアザゼル先生でも直ぐには解析不可能なプロテクトって事か!?

 

だが無情にも魔法陣が最後の輝きを放つと共にヴァレリーの胸の辺りから黄金に輝く杯が現れ、魔法陣も消え去ってしまった

 

ギャスパーが障壁が消えたのと同時に彼女に駆け寄って抱き締めるが聖杯を抜かれたヴァレリーはどんどんと呼吸が弱くなっていき、最後にギャスパーの中にもう一人居ると告げる・・・ギャスパーのあの黒い力の源の事か?

 

そうして死ぬ間際だというのに最後までギャスパーを心配し、笑顔を向けながら彼女の手は力を失い地面に垂れてしまった

 

「ヴァレリィィィィィィィ!!!」

 

ギャスパーの慟哭が広間の中に木霊する。目の前の悲しい光景を見ているだけでもう頭が可笑しくなりそうだった

 

そんな中でも、いや、そんな中だからこそ一層不快に聞こえる声が俺達の耳を打つ

 

「いやぁ、美しくも滑稽な三文芝居でしたね。ヴァレリーには聖杯以外に価値は無いと思っていましたが如何やら喜劇を演じる役者の才能は有ったようだ―――さて、リアス・グレモリー様。如何か私に貴女の滅びを与えてくれませんか?」

 

「ええ、遠慮なくやらせて貰うわ。流石の私も我慢の限界だから―――消し飛びなさい!」

 

ギャスパーの事を嗤われてその場の誰もがマリウスに襲い掛からんとしていたが、それより少し早く奴自身の指名を受けたリアスがグレンデルに放った必殺技を彷彿させる濃縮された滅びの魔力でマリウスの足首から上を完全に消失させた。今の奴は両足の足首から下とヴァレリーから取り出した聖杯が宙に浮かんでいるだけだ

 

流石に死んだかと思ったが見る間に奴の肉体は再構築されて復活を果たしてしまった

 

すると広間の奥に居たのであろう謁見の間にも居た吸血鬼達が悦楽を顔に灯しながら現れる

 

「やはりそうだ。再生能力が向上している」

 

「まるでフェニックスのようですな」

 

「今まで我々は強大な力と引き換えに太陽、十字架、流水、釘、銀など様々な弱点を有していたがそれも解消される。ついに人間どもを我らが完全に掌握する時代がきたのだ」

 

「天使の走狗どもを始め、家畜どもが我々に噛み付く事も、もはや無くなるでしょう」

 

「然り、我らは種の頂きに至った。もはや我らを阻むものは無い」

 

・・・こいつ等、完全にイカれてやがる

 

倫理観の育っていない子供の妄想がそのまま人の形をしているかのようだ

 

だがそこに地の底から響くような怨嗟の籠った声が木霊した

 

≪ふふふふふふ、下らない。下らな過ぎる≫

 

瞬間、広間が闇に包まれた

 

真っ暗になったという意味ではなく、ヴァレリーを抱いて俯いていたギャスパーから噴出された闇が周囲に蠢いているような感じだ

 

そしてギャスパーの体から漏れ出る闇が徐々にギャスパーの体全てを覆い隠して形を変えていく

 

≪進化したというお前らの力を僕にも見せてみろ!≫

 

そこに居たのは濃密な闇のオーラがまるでドラゴンのような形をした漆黒の獣だった

 

ギャスパー、コレがお前のもう一つの姿か!

 

上役たちが狼狽えるがマリウスの奴がそれを窘める

 

「落ち着いて下さい、皆様。恐らくアレが報告に有ったギャスパー・ヴラディの本性というやつなのでしょう。しかし、聖杯を持つ今の我々がたかがハーフの力に怯えては滑稽ですよ?」

 

「う、うむ。そうだったな。我らは既に至高の存在へと・・・」

 

そこまで言った処でその上役の足元にも侵食していた闇からワニのような魔獣が現れて丸ごと飲み込んでしまった

 

それを見て激昂した他の吸血鬼達も体から獣や毒虫を生み出して攻撃しようとするがギャスパーはそれらを遥かに上回る闇の獣を部屋中に繰り出して彼らを文字通りに喰らっていく

 

恐怖に駆られた上役が逃げようとするも霧に姿を変える事も蝙蝠になる事も魔法の転移も全てギャスパーの持つ神器、『停止世界の邪眼(フォービドゥン・バロール・ビュー)』で能力そのものを停止させさせられて最後には抵抗すらさせて貰えずに闇に体を貪られていった

 

そんな光景を見てもマリウスは興味深そうに見ているだけで余裕の表情を崩さなかった

 

如何やらギャスパーの力も直接聖杯を持つ自分を脅かすものでは無いと思っていたようだがギャスパーの力はそんなマリウスの力を上回っていたようで、直ぐに再生しない体にマリウスは焦りと恐怖の顔を浮かべる

 

「ば、馬鹿な!叔父上たちは兎も角、直接聖杯に触れている私すらも再生出来ないなんて事が!ギャ、ギャスパー・ヴラディ。キミの力は聖杯をも凌駕しているとでも言うのか!?」

 

それに答えたのはアザゼル先生だ。先生は耳をほじりながら小馬鹿にしたような目で奴を見る

 

「さてな。ギャスパーの力が逸脱したものであるのは確かだが、そもそもお前さん。たった数年研究した程度で聖杯の力を十全に引き出せているとでも思っているのか?」

 

そっか、それもそうだよな。たったそれだけで聖杯の力を完全かそれに近い形で扱えるようになるなんて事が出来るなら最低でも聖書の神様にすら匹敵するだけのモノを持ってないとダメだろう

 

コイツにそんな器が有るようには見えないな

 

そうして最後にマリウスはギャスパーにヴァレリーを聖杯で生き返らせると言って命乞いをする

 

≪もう黙れよ。お前が死ぬ事とヴァレリーが生き返る可能性は別の話だ。取り出した聖杯でそれが可能なら、なんだったらお前を殺した後で聖杯を使えば良い―――お前が僕に差し出せるものは、命以外に何も無い≫

 

その言葉を皮切りに闇の獣が一斉にマリウスに襲い掛かり肉体の一片までも獣たちに喰われ、啄まれてこの世から消失していった

 

戦いが終わったと見るや直ぐさまアザゼル先生が聖杯を手にヴァレリーの体を魔法陣を展開して調べていくが、先生には珍しく心底驚いた様を見せた

 

「コイツは・・・神滅具(ロンギヌス)の抜き出しにしては余りにも静か過ぎると思っちゃいたが、まさかこんな事が起こり得るとはな」

 

「先生、何か判ったんですか?」

 

「ああ、如何やらヴァレリーの聖杯はもう一つ体の中に在るらしい。生まれながらの亜種として顕現した聖杯という事か?聖杯を半分とはいえ抜き取れた事で仮死状態になっているようだが、コレならばこの聖杯を体に戻して完全な状態とすれば何とかなるだろう」

 

聖杯が複数の亜種!?なんでそんな形に変質してるんだ!?いや!それよりも今重要なのはヴァレリーが生きているって事だ!

 

俺は闇の獣と化したギャスパーの姿なんて気にも留めずに近づいて声を掛ける

 

「良かったな、ギャスパー!」

 

≪うん。有難うイッセー先輩・・・というかアザゼル先生は少し調べただけで聖杯が複数有る事に気付いたのに長年研究していたって自慢していたマリウスは知らなかったんだね≫

 

確かに、自称聖杯研究者が聞いて呆れるぜ

 

そうしてアザゼル先生が聖杯をヴァレリーに戻す作業を待ちながらギャスパーと話す

 

如何やら今のギャスパーは大昔に滅んだとされるバロールという魔神の意識の断片がギャスパーの神器に宿ったものらしい

 

「なら、今のお前はバロールって呼んだ方が良いのか?」

 

≪いいや、バロールは既に滅んだ存在だ。それにこうして僕の力が解き放たれた事で吸血鬼のハーフとして生まれた『僕』とバロールの意識の断片の『僕』は完全に混じり合った―――今の僕は『ギャスパー・ヴラディ』さ≫

 

そっか、そうだよな。コイツは俺の可愛い後輩、それで良いじゃないか

 

≪この状態の僕は神器とバロールの融合が齎したものだ。禁手(バランス・ブレイカー)ともそうでないとも言える・・・そうだね、取り敢えず『禁夜と真闇た(フォービトゥン・インヴェイド)りし翳の朔獣(・バロール・ザ・ビースト)』と名付けようかな≫

 

そうしてこの場に居ないイッキと黒歌さんのも含めて全員の名を呼び『これからも宜しく』と告げてから闇が晴れて元のギャスパーの姿となって気絶した

 

如何やら力を使い果たしたみたいだな。完全に倒れる前にリアスが愛おしそうにギャスパーを抱きとめてコレで一件落着かと思いきや丁度聖杯をヴァレリーに戻したアザゼル先生が不穏な事を言う

 

「おかしい。意識が戻る兆候が見られない。まだ何か足りないのか?」

 

先生が疑問を呈した瞬間、この場にマリウスとは別の不愉快な嗤い声が木霊する

 

「うひゃひゃひゃひゃひゃ!そりゃ多分『コレ』を戻さないとダメなのかもなぁ★」

 

現れたのはリゼヴィムだ。だが何より俺達は奴のすぐ傍に浮いている黄金の杯に釘付けになってしまった。何で聖杯がもう一つ在るんだよ!

 

「ヴァレリーちゃんの亜種の聖杯が二つでワンセットだと思った?残念ながら正解は三つでワンセットでした♪先にコッソリと俺様が抜き出しておいたんだけど、いや本当にマリウス君の無能っぷりには笑わせて貰ったよ。もしかして彼の方が喜劇の役者の才能有ったのかもね☆」

 

三つの聖杯!?どれだけ規格外なんだよ!?

 

それから現れた自分の祖父に対して今までに無い程に激昂したヴァーリをリゼヴィムが小馬鹿にしていく―――アザゼル先生の話だと幼い頃のヴァーリの父親に対して『息子を虐めろ』と命令を下した上にヴァーリの父親、即ちリゼヴィムにとっての自分の息子すらも『なんかイラついた』という理由で殺してしまったようだ 

 

「リゼヴィム。その聖杯を使って一体何を望む?王位に興味は無いとぬかした貴様はテロリストを纏め上げ、オーフィスの分身を手元に置き、邪龍共を復活させてこの国を荒らしてまでお前が求めるものは何だ?」

 

「うひゃひゃひゃひゃひゃ!知りたい?良いよ良いよ、答えて上げちゃう☆今から少し前に一部の界隈に激震が走るような情報が齎されたのさ。何と何と、どの神話体系にも属さない新たな神の存在がな―――そうです!そっちの赤龍帝の坊やがロキと戦った時に交信したという異世界の『乳神』!・・・正確にはその眷属だったみたいだけどな★」

 

な、なに?ロキと戦った時に朱乃さんを筆頭に皆のおっぱいから語り掛けてきたアレが!?

 

「俺達に取っちゃ全く未知の神話体系!未知の世界!それを聞いた俺は年甲斐も無く心を震わせたね♪んで思ったのよ。『じゃあ滅ぼしてみようぜ☆』ってな♪」

 

ハァ!?何でいきなりソコ(・・)に帰結するんだよ!?過程を飛ばして『滅び』に結びつけるとか此奴の思考回路は一体どうなってんだ!?

 

「でもでも異世界に行く事は現状では叶わない。何故ならソコには次元の狭間を守護するチョー強いドラゴン様が居るからです。そっ♪ご存知グレートレッドさんです。でもあの夢幻を司るドラゴンは『どいて』と言ってどいてくれる相手じゃない。なら、邪魔なら倒す?無理無理、邪龍軍団でも超越者とされた俺様でも100%勝てない。全盛期のオーフィスちゃんなら可能性は有っただろうけど曹操とかいう馬鹿が肝心のオーフィスの力を真っ二つだ。元に戻そうにも壊すより直す方が難しいからそっちも簡単にはいかないだろ?考えて考えて、俺様が辿り着いた結論がこうだ―――黙示録の一節を再現しようかなってさ★」

 

それを聞いたアザゼル先生は徐々に目を見開いて驚愕の表情を浮かべる

 

「黙示録・・・『666(トライヘキサ)』か!」

 

666(トライヘキサ)』?

 

「大正解です。アザゼルくん♪座布団欲しいか?それとも豪華世界一周船旅チケット?いや~、やっぱり回答要員が居るって良いね。話甲斐が有るよ☆」

 

「先生、何ですかその『666(トライヘキサ)』ってのは?」

 

「・・・不幸を表すとされる獣の数字、666(スリーシックス)。それの大元となった化け物の事だ。聖書ではグレートレッドとセットで描かれている。それが『黙示録の皇獣(アポカリプティック・ビースト)』、トライヘキサだ」

 

グレートレッド級の化け物って事かよ!

 

「だがあの獣は誰一人としてその存在を確認出来た者は居ない。聖書陣営の俺達はもとより他の神話の神々ですら長年議論を重ねても結論が出て無い代物だぞ」

 

あ、そうなんだ。『最強』とされるオーフィスを唯一上回るから『無敵』の存在とされるのがグレートレッドと聞いたから、なんで同格とされる奴が話にも上がらなかったのかと思えば神様の間でもおとぎ話に近い扱いなのか

 

「それがね。居たんだよ。聖杯を使って生命の理に潜ってみた結果、俺達は忘れられた世界の果てであの獣様を発見したのさ♪―――でもねぇ、如何やら俺達よりも先にその獣を見つけてかたーく封印を施した存在が居たらしくてね。このままじゃあの獣を使えないのよ。一体誰が封印したと思う?なんと亡くなった聖書の神様でした!さっきマリウス君が聖杯を抜き出す際に使っていたプロテクトコードも666(トライヘキサ)の封印に使われていたものを流用したものだったのです♪」

 

「何!?聖書の神がだと!?―――いや、そうか!聖杯は元々聖書の神が神器として生み出したモノ。聖杯で666(トライヘキサ)を見つける事が可能なら聖書の神が666(トライヘキサ)の所在をいち早く掴んでいても不思議じゃない!」

 

「その通~り♪いやぁあの神様は凄いね。誰にも悟られずにあの獣を神様でも使えば反動で死ぬような禁止級の封印術を何百何千と重ね掛けしてあったんだから・・・案外聖書の神様が死んだ原因ってこっちなのかもね。少なくとも俺には真似しようとしても逆立ちしたって出来ないわ―――今は聖杯と聖十字架を使って必死こいてちまちまと封印を解く作業に没頭中って訳だぜ★」

 

それって封印を解いた時にもしも制御が外れたら世界規模で破壊が巻き起こるじゃねぇか!

 

「異世界を滅ぼすだとか、そんな下らねぇ理由でどれだけの迷惑を掛けるつもりだよ!」

 

「下らないとは心外だねぇ。こっちはこんなオジサンになってから漸く見出した夢なんだぜ?それに理由も単純明快だ。それは俺が『悪魔』だからだよ。いいか?悪魔ってのは『悪』で『魔』の存在だ。邪悪で、悪鬼で、畜生で、悪道で、外道で、邪道で、魔道で、鬼畜で、悪辣こそが本質なんだぜ?なら、悪意を振りまく為にも努力せにゃぁならんって訳よ!うひゃひゃひゃひゃひゃ!」

 

そんな事を看過する訳にはいかないと俺が先手を打ってドラゴンショットを打ち込むがその弾はリゼヴィムに当たった瞬間に霧散してしまった

 

先生曰くアレはリゼヴィムだけが持つ特殊能力で『神器無効化(セイクリッド・ギア・キャンセラー)』というらしい。それを聞いた木場も直ぐに試しとばかりに聖魔剣で斬り付けるが結果は同じだった。可笑しな成長をしていると言われる俺の紅の鎧でもイレギュラーな木場の聖魔剣でもダメなのかよ!

 

「ならば聖剣で斬るのみ!」

 

ゼノヴィアがエクス・デュランダルから聖なるオーラを飛ばすがその攻撃はリゼヴィムの傍にいたリリスによって簡単に弾かれてしまった

 

神器以外の攻撃は龍神様が間に入るってか!それに奴は悪魔の中では魔王を超えて最強のカテゴリーである超越者の一人らしいからエクス・デュランダルでもダメージを与えられたかは微妙だな

 

直ぐ隣の憎悪の炎を瞳に灯していたヴァーリが今まで下手に仕掛けなかった理由がこれか!

 

全員が打開策が打てない現状にリゼヴィムは愉快そうな笑みを向けてくる

 

「まっ、キミたちが争いが虚しい結果しか生まないと理解してくれた処でこれを見てくれよ」

 

奴の後ろに空中に浮かぶ巨大なディスプレイが浮かび上がり何処かの町の様子が映し出される

 

「キミたちにご覧頂いているのはカーミラの町のライブ中継です。深々と雪の降り積もるロスタルジックな風情漂う街並みですね」

 

確かに、カーミラの町は少ししか見れなかったけどツェペシュの町と同じように少しレトロな建物の割合の多い静かな町ではあった

 

「しかししかしあ~ら不思議。実はここで俺様がこの指をパッチンすると楽しいショーの舞台へと早変わりするのです★何が起きるか分かるかな?破壊?爆発?近いっちゃ近いけど正解とは言えないな。それでは気になる方も多いと思うので早速ですが答え合わせのお時間です♪」

 

リゼヴィムがそう言い切るや指を打ち鳴らす。だが画面の中の町の様子に特段の変化は訪れない

 

「んん~?ちょーっと待っててね。そろそろだと思うからさ」

 

だがその後10秒、20秒、30秒経っても変化は無かった

 

リゼヴィムは楽しそうな面の眉間にどんどん皺が寄っていって不機嫌な表情となる

 

「おいおい何で何も起きないんだよ!?どうなってる!」

 

そう言ってから画面を操作して映し出されるカーミラの町の映像を切り替えていく

 

するとそこには大体5~7mくらいの大きさの邪龍が複数体存在し・・・地面に倒れ込んでいた

 

死んでるのか?いや、良く見れば呼吸している様子が見えるから気絶又は寝ているのだろう

 

なんだ?リゼヴィムは聖杯で量産した邪龍でカーミラの町を襲わせようとしたけど邪龍達にボイコットでもされたのか?

 

「はぁ!?何か調整ミスったのか?折角吸血鬼達を弄り回して邪龍にしてやったってのに気絶とか!体が大きく変貌した反動か?」

 

「な!?アレが吸血鬼だと!?」

 

コイツは聖杯で吸血鬼を強化する際にそんな事まで仕込んでたってのか!?

 

俺達はリゼヴィムのあまりの所業に驚愕し、戦慄するが当のリゼヴィムはガジガジと頭を片手で掻きむしって舌打ちしている

 

「クソ、こんな締まらねぇオチが付いたんじゃ興醒めもいい処だ!いや待てよ?こっち(・・・)でも同じ事になってるのか?」

 

リゼヴィムが更に別の画面を展開するとそこにはさっきとは比べ物にならない大量の邪龍が同じく地面に転がっている光景だった

 

「こっちと言ったわね。つまりあの映像はツェペシュの町の様子という事かしら。直接潜伏していたこの町の吸血鬼の兵士は大方聖杯の恩恵を受けていたから軒並み邪龍にされたようね・・・あれだけの数の邪龍が町中で暴れまわっていたらと考えるとゾッとするわ。カーミラの邪龍も数は少なくても今はカーミラの戦力は大方がマリウス達を倒す為に出払っているだろうし、残った兵士だけでは一体どれだけの被害が出たか」

 

「そう!そうなんだよ!まさしく俺様はそれが見たかったのにさぁ!何で失敗してんだよ!」

 

いい歳した見た目中年のオヤジが子供ったらしく地団太を踏んで悔しがっていた

 

だがそんな様子を観て今度はアザゼル先生が愉しそうに嗤い声を上げる

 

「ハッハッハッハッハ!いやぁ、テメェのムカつく面が引き攣る様子はしっかり録画させて貰ったぜ。何で失敗したのか教えてやろうか?所詮現役を引退して久しい悪魔様じゃあ悪の大幹部にゃ届かないんだよ」

 

悪の大幹部?それってまさか!

 

「イッキがこれをやったんですか!?」

 

「正確にはイッキと黒歌だがな。アイツがお前らがギャスパーの父親に話を聴きに行ってる間に【一刀修羅】を発動させたらしいって言ってたろ?全てはこの為の布石だったんだよ」

 

詳しい事は分からないけど如何やら俺の親友は裏でとんでもなく働いていたようだ

 

[イッセー side out]




今回はメインストーリーを出来るだけサクサクと進めて書きましたが説明部分が多い為文字数2万字超えしてしまいましたねw

次回はイッキ視点で2話連続且つ明日の18時に予約しております

3話→4話→2話の順番に完成したのでww
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