転生特典が自爆技ばかりなんだが?   作:風馬

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第三話 ドラゴンと、メイド服です?

良し、イッセー達はギャスパーの父親に話を聴きに行ったな。なら始めますか

 

「【一刀修羅】!!」

 

「に゛ゃに゛ゃ!?何をやってるのかにゃ!?」

 

あ、ヤベ、黒歌に事前に説明するの忘れてた!

 

「悪い黒歌。今から気配感知、いや、魂感知に集中するから終わったら仙術の回復頼む。詳しい説明はその時にするわ!」

 

うん、コレは普通に俺が悪かった

 

黒歌も不承不承といった感じではあるが「分かったわよ」と納得してくれたようなので早速とばかりに座禅を組んで【一刀修羅】で強化された感覚でもってこの吸血鬼の町の気配を感知する

 

元より俺はこの【一刀修羅】を長年『感覚を研ぎ澄ます』という用途で使用してきた

 

元々が血筋で云えば平凡な俺がここまで強くなれたのは【一刀修羅】いや!【一刀修羅】大先生のお陰だと言っても過言ではないだろう

 

使えねぇ【じばく】や一々上げて堕とす事に定評のある【偽り写し記す万象(ヴェルグ・アヴェスター)】とは違うのだ!

 

そうして周囲の吸血鬼達の気配もとい魂の根底にまで手を伸ばし、【一刀修羅】を発動させてからジャスト一分後にもはや慣れてしまった極限の疲労感に蝕まれる

 

「ほらイッキ、ソファーに運ぶわよ」

 

ぐったりとしてしまった俺を黒歌がお姫様抱っこでソファーに運びその上で膝枕をしてくれるけどコレで猫又姉妹のお姫様抱っこを逆コンプリートしてしまったな

 

そんな馬鹿な事を考えつつも黒歌の膝枕と疲労感に仙術治療のポカポカした暖かさの合わせ技で瞼が落ちそうになるのを必死に堪えて説明に入る

 

「黒歌はさ。吸血鬼の兵士とかの気配を如何感じた?」

 

「にゃ?如何って特段変わった気配はしなかったけど?」

 

「そうだな。表面上は確かに吸血鬼の気配だった。でも聖杯で強化されたってのが気になってよくよく探ってみたら違和感を覚えたから今、【一刀修羅】で感覚広げて調べてみたんだ」

 

正確にには知っていたからこそ念入りに調べたって感じだけどな

 

前にタナトスと戦った時に魂感知はそこそこといった評価だったが【一刀修羅】状態ならばその限りではないからな

 

「それで?一体何が判ったのかにゃ?」

 

「この町の吸血鬼とあとカーミラで出会った吸血鬼の一部もそうだけどアレは邪龍だよ」

 

「はい?ど、如何いう意味にゃん!?」

 

吸血鬼が邪龍と告げると流石に黒歌も目が点になってから詰め寄って来た

 

近い近い!顔が近い!っクッソ、こんな状況でなければ堪能してたのに!

 

「間違いなく生命の理を操るっていう聖杯の力なんだろうけど、魂がもう邪龍の魂に上っ面の吸血鬼の仮面を被せてるだけの状態だな・・・いや、むしろ風船の中に水がパンパンに詰まってる感じか。ほんの少し衝撃を与えてやれば邪龍の魂に引っ張られて心が暴れるだけの邪龍と同じになるか肉体ごと引っ張られて完全に身も心も邪龍になるかだろうな」

 

「・・・それってあのマリウスとかって吸血鬼がそうしたって事?幾ら何でも邪龍にする意味は無いんじゃないかにゃ?幾らアイツがイカれてるって言っても流石にそれは不自然にゃ」

 

そりゃあ最初はそう考えるよな。現在、聖杯を扱えるのはヴァレリー及びヴァレリーを操ってるマリウスだけとするのが自然だろうけどそんな訳の分からない事をするのは黒歌の言ったように不自然極まりないからな

 

「そうだな。推理小説じゃないけど順番に行こうか。まず How done it(どうやったか)Why done it(何故やったか) は置いておいて最初に考えるべきなのは此処では Who done it(誰がやったか) だと思う」

 

どこぞのエルメロイな二世様と違って Why done it(何故やったか) 以外はゴミだ何て言わないさ

 

「それはつまりこの件に関してはマリウスとかって吸血鬼が犯人じゃないって事?」

 

「一人だけ居るだろ?アザゼル先生が散々扱き下ろしたクソ野郎で邪龍についても詳しそうなのが一人さ」

 

そう言うと黒歌も「ああ・・・」といった反応を示した

 

「そうだと仮定して Why done it(何故やったか) は恐らく理由は二つ。一つは此処で量産した邪龍を手駒に加える為、もう一つは・・・単に愉しそうだったからじゃないか?」

 

「確かに廊下で出会った時は只管小者で只管邪悪って印象だったからね。それも在り得そうにゃ」

 

小者って・・・まぁ確かに正直大物感はあのふざけた態度からは読み取りにくいけどさ

 

実際無駄に強いだけの小者だしな

 

「で、最後の How done it(どうやったか) だけど使われた道具自体は聖杯だとして黒歌、ちょっとアザゼル先生を内密に呼び出して貰って良いか?神器研究者(オタク)の意見を聴きたい」

 

それから少しするとアザゼル先生から通信が入った。同じ城内ならばイヅナでなくとも繋がるな

 

≪おう、如何した?こっちはデカい方の便所だっつって抜けてきたが余り時間は取れないぞ?≫

 

「そこは最悪急に腹が下って盛大に下痢ったとでも言っといて下さいよ。それでですね・・・」

 

俺は最後の推察以外の事を出来るだけ簡潔に話す。途中通信越しでもアザゼル先生が絶句してたのが伝わって来たけど構わず話す。この人ならこの程度で思考停止はしないだろう

 

いや、如何かな?俺は元々そういうもの(・・・・・・)と認識していたからこそだったけど、先生や黒歌たちにしてみれば普通の魚が優雅にマグマの中を泳いでるレベルに変な事言ってるかも知れん

 

≪・・・・・・それで?その仮説を一先ず信じるとして、お前が聴きたいことってのは何だ?≫

 

普段とはかけ離れた固い声音だな。まぁこの町の吸血鬼の兵士の多く及び一部の上級吸血鬼はこの国に来た時点で魂レベルで手遅れでしたって話だからな

 

それに十中八九カーミラにも邪龍が入り込んでいるとなればね

 

「先生も気になってる事だとは思うんですが、この町の吸血鬼が可笑しな事になっているのはまだマリウスたちが聖杯を使う時にコッソリ介入したのだと考えれば出来なくはないとも思うんです。マリウスは聖杯の研究者とか言ってますけど聖杯の噂が流れ始めたのはここ最近の事。聖杯の研究は精々数年程度しか行われていないとするならアザゼル先生はたったそれだけの期間で聖杯の全てを掌握出来ると思えますか?」

 

≪無理だな。俺達神の子を見張る者(グリゴリ)が今まで何年神器の研究に費やしてきたと思ってる。その上その対象が特大の力を持ちつつも扱い辛さでは神滅具(ロンギヌス)屈指の聖杯となれば尚更だ≫

 

確かに、聖杯って単純なポテンシャルだけ見るなら『奇跡を起こす』黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)にだって匹敵するかもな・・・代わりに廃人直行コースだけど

 

≪この町の吸血鬼達の事はそれで良いとしても問題はカーミラ側にも邪龍寸前の吸血鬼が居るという事だろう。幾ら何でもカーミラの領地まで聖杯を持つヴァレリーを連れだせたとも思えん≫

 

さぁて、一番どうしようもない質問が来たぞ

 

吸血鬼が邪龍ってのは実際俺の魂感知でも感じ取れたことだから良いとして此処で俺が「実はですね。俺は今回の聖杯は亜種で複数在ってリゼヴィムたちが既にコッソリと抜き出して使ってるんじゃないかと考えてるんですよ」・・・なんて言える訳がない

 

具体的な根拠がないとね

 

一応ヴァレリーの気配を辿ってそっちにも感知を飛ばしてみたけど魂が何処か不安定になってるのは解るのだがそんなの聖杯の精神汚染と考えるのが普通だろう。そこから『聖杯複数説』に繋げるのは無理があり過ぎるからな

 

ハッキリ言ってカーミラ派の奴らまで邪龍になってる事については得られる情報が少なすぎて推測の一つも立たない

 

だからここは伝家の宝刀を抜かせて貰おう!

 

「そこが判らないのですがアザゼル先生は何か思いつきますか?」

 

秘儀!他人に丸投げ!!此処まで推理っぽい事やっといて何だけど俺の今回の件における主目的は吸血鬼の邪龍化の事を伝える事だから誰が(Who)とか目的(Why)とか手段(How)とかぶっちゃけ如何でも良いのだ

 

物事の方針を決めるのに一々真実まで探り出す必要は無い

 

勿論それが出来ればそれに越したことはないけど、ここで必要なのは事実だけで十分だ

 

≪正直なんとも言えんな。どの政権でも敵対派閥・・・ここで言うなら聖杯の恩恵にあやかりたいってカーミラ派の吸血鬼の裏切り者は居るだろう。少人数であればカーミラ派の情報と引き換えに秘密裡にヴァレリーの下に連れて行って聖杯の強化を受けられる機会もあるかも知れんが、末端の兵達にまで聖杯の力が及んでいるとするなら一気に話は面倒臭い事になる≫

 

「兎に角俺と黒歌で対処に当たろうと思います―――ハッキリ言って聖杯で強化された吸血鬼は魂レベルで手遅れです。元に戻そうと思ったらそれこそヴァレリーに同じだけ聖杯を再度使って貰う必要がありますが、身勝手な内乱を起こした奴らまでヴァレリーを犠牲に救おうとは思いません」

 

この町に漸くお呼ばれした時点で手遅れとか介入の『か』の字もさせてくれなかったよな

 

≪まぁ同意だな。だが奴らが町中で理性無き邪龍に突如変身するなんて事になれば関係の無い一般住民の吸血鬼にも甚大な被害が及ぶだろう。流石にそちらは見逃す訳にはいかん≫

 

「ええ、ですから俺が吸血鬼達を選別して黒歌に術式を仕込んで貰おうかなと」

 

「それは良いけど、どんな術を仕込む気かにゃ?」

 

「邪龍の気配を感知したらその相手を麻痺なり昏倒なりさせて縛り上げるような、兎に角動きを封じる術式を仕込んで欲しい。『実は吸血鬼が邪龍になってたから邪龍になる前に全員暗殺しました』なんてこの件が終わった後で各勢力に説明できないからね。あいつ等には邪龍になって俺らの大義名分の生きた証人になった上で何もさせずに制圧するのがベターかなってな―――ベストなのはリゼヴィムが何かする前にぶっ殺して邪龍になるトリガーを引かせない事なんだけど・・・」

 

≪難しいだろうな。アイツ一人でも大概だが今はオーフィスの分身があの野郎を守ってる。守備は鉄壁と言っても過言ではないだろうよ≫

 

龍神様の加護(物理)ですね

 

「それで如何だ黒歌?術式組めそうか?」

 

「ん~、そうねぇ。邪龍のオーラを感知したら起動する一種のトラップ式で発動したら脳みそに直接仙術ぶち込むようにすればタフな邪龍でも意識を奪えるんじゃないかにゃ?でもその為には相手の頭に直接触れて術を仕込む必要があるわね・・・どれぐらいの数が居るのにゃ?」

 

「大体二百人前後?カーミラ派の領地の方にどの程度改造吸血鬼が居るのかはそっちでまた感知してみないと判らないけどな」

 

そう言うと黒歌は凄くイヤそうな顔をした

 

「それ全部私が気付かれないように術式仕込むのかにゃ?そりゃあ私なら雑兵の吸血鬼程度仙術と妖術に時間操作も組み合わせれば本人にも立ち眩み程度の違和感しか与えないで作業も出来るだろうけど大変な作業に変わりないにゃ」

 

それを言われると弱いな。今回の件でもしかしたら一番労働するのは黒歌になるかも知れない

 

≪俺からも頼む。もしもリゼヴィムの悪戯で邪龍が町中で突如として暴れ出したらクーデターとは本来関りの無い住民が大量に死ぬことになるし、彼らの住む場所であるこの町も破壊されるだろう。流石にそれは放置は出来ん≫

 

「分かってるわよ。ただ、後で何かご褒美が欲しいにゃ~?凄~く大変なんだからそれぐらい良いでしょう?そっちの方がモチベーションも上がるしにゃ♪」

 

ご褒美と来ましたか。まぁそれで黒歌のやる気が出るなら安いもんじゃないか?

 

「ご褒美は良いけど急に言われてもな・・・何かリクエストは有るのか?」

 

聞くと黒歌は楽しそうな笑顔を向ける

 

「勿論にゃ♪―――ほら、イッキがレイヴェルとデートに行く前に私が新しい術を創ってるって言ってたの覚えてるかにゃ?完成したら起動実験に付き合って欲しいのよねぇ♪」

 

「ん?そんなので良いのか?」

 

もっと色々振り回されるような内容を想像していたんだが

 

「ええ♪私一人じゃ実際に使ってみた時に判らない処もあると思うし、感覚の鋭いイッキの意見は貴重だからにゃ♪イッキには・・・そうねぇ。後でその術とそれに付随する効果の詳細とか感想とか諸々をレポートに纏めて貰っていいかしら?」

 

レポートか。黒歌がそこまでするなんて本当にその新術に力を入れてるんだな

 

「分かった。新術に付き合うのとレポートだな。お安い御用だ」

 

「にゃん♪・・・・・言質取ったにゃ♪

 

「?」

 

最後に黒歌が何か言ったみたいだけど疲労感のせいか聞き逃したな

 

「そういう訳でアザゼル先生。俺と黒歌はこの町・・・国で作業を終えたら最初に魔法陣で跳んで来たカーミラの町の方でも同様の処置をしていこうと思います。聞いての通り繊細な作業で且つ数が多いですし、上級吸血鬼の住む屋敷や城への潜入とかも考えるとかなり時間が掛かると思います。俺は黒歌のサポート及びナビゲーター役って事になりますね」

 

今の俺は黒歌に仙術で回復させて貰ってるけど、今度は逆に俺が黒歌の疲労を回復する事になりそうだ。それ以外は軽い補助になりそうだけどな

 

≪分かった。確かにコレはお前さんらでなければ頼めん案件だ・・・ったく、俺ん処の『刃狗(スラッシュ・ドッグ)』並みに優秀だよ。魔王級の力も出せる仙術使い二人とか暗躍には持って来いだな≫

 

「良いんですよ、それで。強敵と真正面から渡り合い打倒すとかってのは『おっぱいドラゴン』のするべき立ち回りでしょう」

 

≪クックック、お前は『オール・エヴィル』だもんな。だが、お前が今やっている事は真逆の善行なんじゃないのか?≫

 

むっ、確かに別にスニーキングミッションとかはそれだけでは別に悪じゃないよな。何処ぞには段ボールで潜伏(スネーク)する主人公だって居るんだし

 

「なら、俺と黒歌が作業を全部終わらせる前にリゼヴィムが行動を起こしてイッセー達の前でドヤ顔で『邪龍パレード♪始まるよ~★』とかやったなら一転してほぼ何も起きない事に癇癪爆発させるリゼヴィムの間抜け面でも録画しといて下さい。後でワイン・・・は、未成年だから無理なのでかち割氷にウーロン茶でブランデーっぽい雰囲気だけだして一緒に鑑賞会して愉しみませんか?」

 

≪ハハハハハハハハ!!それは酒が進みそうだなぁ!悪意の塊、扇動の鬼才と称された聖書に記されし大悪魔も邪人、いや、邪神様に掛かっちゃ形無しってか?≫

 

「いや、何時の間に邪神なんて設定が出てきたんですか?そんなの知りませんよ?」

 

≪なぁに、お前の【神性】がどんどん高まってる事にちなんでだよ。実際出会って探ってみたがお前が魔獣騒動の折に禁手(バランス・ブレイカー)に至った直後はそこら神クラスって感じだったが、今のお前の【神性】は名の有る神クラスじゃないか。その内主神クラスの【神性】を手にする日もそんなに遠くなんじゃないか?≫

 

主神クラスの【神性】ねぇ・・・今の俺が【神性 A+】でそれ以上となると【神性 A++】だけどそう言えば確か常夏ビーチではっちゃけたお忍び太陽神のキャス狐(ランサー)がそれぐらいだっけ?そう考えるとアザゼル先生の言ってる事も割と的を射てるんだな

 

・・・いや、これ以上【神性】が上がるか如何かなんて知らんけど

 

≪サーゼクスの方にもその案は提出するつもりだからな。『おっぱいドラゴン』の敵役として一丁頑張って演じてくれや≫

 

その設定は決定事項ですか!?

 

―――そりゃ堕天使の元総督の意見を脚本家も蔑ろには出来ないだろうけどさ!

 

「全く、それにちゃんと政治的な意味合いも有るんですよ?ツェペシュ派とカーミラ派の吸血鬼達の兵士の多くと一部の上級吸血鬼が今回の件で邪龍に変わるなら国力も統制力も一気に減少するでしょう。その上生かして捕らえた邪龍は元は聖杯に手を出さなかった吸血鬼たちからしてみれば裏切り者であると同時に家族であったり友であったりするはずです。そんな捕らえた邪龍を処分するなんて判断は簡単に下せるものじゃありません。かと言って逆に捕らえた邪龍を飼う(・・)にしても、その時この国にそんな力が残ってるかは微妙です。恥も外聞もかなぐり捨てて外への援助を申し出るしかない。邪龍を元の吸血鬼に戻すにはヴァレリーの、聖杯の力が必要ですが彼女は俺達が連れ去る予定ですからね。聖杯の機能を限定してほんの少しずつでも良いから吸血鬼に戻して欲しい・・・なんて頭下げて来るんじゃないですか?」

 

まっ、実際は元がただの兵士の下級吸血鬼とかはコッソリと数を減らされるとかありそうだけどな

 

もしくは聖杯に与した邪龍は全部殺処分すると厳しい判断を強行したとしても一部の元上級吸血鬼の邪龍は何処ぞの地下にでも繋がれることだろう

 

どっちに転んだとしても聖杯や神器、邪龍などに現状一番詳しくて吸血鬼の上役や貴族が頼れるのは三大勢力及び和平を結んだ神話勢力だけだ

 

五体投地で和平入りしてくれるだろうし恩も売れるはずだよね?

 

≪・・・そう間違っちゃいないが言い方が悪辣過ぎるぞ≫

 

頑張れって言ったのそっちじゃないですか!

 

「それに別に搾り取れって言ってる訳じゃないですよ?そんな風に接したら数十年から数百年後が恐いし・・・程々に彼らの残るプライドを刺激しながら『助けて差し上げる』ことが出来れば彼らもきっと和平勢力への恩を忘れずに変に増長したりもしないだろうって話です」

 

・・・天界の全力バックアップみたいな事をしていったらその内『我ら至高の吸血鬼は他種族から奉仕されるのが当たり前』とか考える輩も出てきそうだしね

 

≪この事はイッセー達にはまだ伏せておけ。吸血鬼達が手遅れだってんならアイツ等の不安を無駄に煽るだけだからな。お前らが対処するってんなら尚更だ≫

 

「了解です。俺が回復したら早速動くとしますよ・・・それでは通信を切りますね。トイレの長いアザゼル先生」

 

≪な!?おま!?後で覚えてろy・・・"ブツッ"≫

 

アザゼル先生が全部を言い切る前に通信は切れた(切った)

 

「それじゃイッキも今は眠って体力の回復に努めなさい。その間に私も仕込む術式を組んでおくからにゃ」

 

黒歌はそう言って掌を俺の眼の上辺りに置いて視界を遮る。早く寝ろという合図だろう

 

実際黒歌の仙術で最低限体力は回復してるから起きている事は出来るけど先程から抗っている大量の眠気を撥ね退ける方が精神的に消耗しそうなので大人しく睡魔に身を委ねる事にしたのだった

 

 

 

 

 

良い匂いと人肌の暖かさを感じながら目を覚ますと黒歌の膝枕に加えて白音が俺の額に手をやって仙術を掛けつつ顔を覗き込んでいた

 

目覚めてから最初に白黒の猫又姉妹の顔が拝めるのは自分でも役得だとは思う

 

「起きましたか?イッキ先輩」

 

「ああ、お早う白音―――黒歌、頼んでたものは出来たか?」

 

「ええ、何時でも行けるわよ」

 

良し!それじゃあ早速行動開始だな。どの程度猶予があるかまでは流石に覚えて無いけどそんなにゆったりはしてられなかったはずだ

 

そう思いつつ上半身を起こして周囲を見ると何故か近くのソファーではイッセーが朱乃先輩に膝枕されて幸せそうな(だらしのない)表情を浮かべている・・・何やってんだコイツ?

 

「おう、起きたのかイッキ。いやぁ膝枕って最高だよな!」

 

開口一番それかよ・・・否定はしないけどさ

 

それと如何やらイッセー達の後ろでは教会トリオがジャンケンをしていたようだが丁度決着が付いたようでイリナさんが勝利のピースサイン(決め手はチョキ)を高々と掲げる

 

「イエーイ!イッセー君に次に膝枕する権利は私のものよ!」

 

ああ、成程。イッセーを膝枕する順番を賭けてたのね

 

「ッく!この手のものでイリナに後れを取るとは!・・・何故先ほどの私はあそこでパーを出してしまったんだ!?」

 

ゼノヴィアは悔しさに歯を食いしばりながらブルブルと震える己の掌(パー)を見つめている

 

「はぅぅ、負けてしまいましたぁ。でも、次は負けませんよ!」

 

アーシアさんだってちょっと涙目だ―――凄いな。ジャンケン一つであそこまで真剣になれるのか

 

「ああ!私も例えアーシアが相手であろうと手加減するつもりは無いぞ。友達でも、否!友達だからこそ全力を賭す覚悟だ!」

 

「わ、私だって負けません!」

 

それから始まる二人の最後の攻防

 

幾度かのあいこの後、天に拳(グー)を突き上げるゼノヴィアの姿が在った

 

アーシアさんがジャンケンで敗けたのか

 

基本的に運の良い彼女が最下位とは珍しいとその時は思っていたが、如何やら後にアーシアさんが膝枕しているタイミングで偶然同じ部屋から人が居なくなってイッセーがアーシアさんに逆膝枕をするという桃色イチャラブ空間を形成していたらしい・・・アーシアさん、流石の運命力である

 

ただまぁそれをゆっくり眺めている訳にもいかないな

 

「皆、俺と黒歌はやる事出来たからちょっとの間留守にするわ。少なくとも丸一日以上は戻らないからそのつもりで頼む」

 

「それってアザゼル先生の口止め案件って事か?なら聞いても意味無いな」

 

おお、素直だな。イッセーも裏・・・と云うかコレは大人のと言うべきかな?そんな立ち回りに理解を示してきたな

 

単純な実力と違って分かりにくいけど『王』としての在り方を身に付けつつあるのは良い事だ

 

そう思いつつ立ち上がって近くの白音の頭に手を置く

 

「それじゃあ白音。こっちは任せたぞ」

 

「はい。イッキ先輩と黒歌姉様もお気を付けて」

 

「それじゃ、行ってくるにゃん♪」

 

そうして俺は普通に、黒歌はひらひらと手を振りながら客間を後にした

 

「それで?今は【一刀修羅】を使ってない訳だけど邪龍な吸血鬼の気配は追えるのかにゃ?」

 

「大丈夫だ。最初は軽い違和感程度だったけど一度はっきり感じ取れば今の俺でも気配を追えるな。この町の吸血鬼達を一通り処置したら一応最後にもう一度【一刀修羅】で確認を取るつもりだけど・・・黒歌、吸血鬼に施す術式だけど、悪いが軽いマーキング機能も付けて貰って良いか?最後に判別出来るようにさ」

 

「はいはい、それ位ならお安い御用にゃ。それじゃあ面倒事はさっさと終わらせちゃいましょう」

 

そうして俺達は先ずは警備の薄い処からお試しも兼ねて町中を巡回中の吸血鬼達を片っ端から襲撃(ただし襲われた本人は気づいて無い)していく事にしたのだった

 

 

 

 

 

邪龍の魂を持つ吸血鬼達に覚醒と同時に昏倒する術式を仕込む作業を始めてから既に一日半は過ぎたが実は既にこの町の吸血鬼達の処置は済んでいる・・・もっと時間が掛かるものと思っていたがぶっちゃけこの町の警備網がかなりザルだったのだ

 

クーデター直後だからと云う理由だけじゃなくて、兎に角吸血鬼達は鎖国的な為か外敵の侵入や内部工作に実は弱いんじゃないだろうか?一番の敵と云える教会ですら長年この町やカーミラの町などを発見したことが無いとなれば想定する相手は精々敵対派閥の吸血鬼や後は・・・人狼族とかくらいじゃないか?今まで特に見つかる事すら無かったなら警備の意識が緩くなっても仕方ないとも思う。まぁ何にせよ俺と黒歌の仙術は吸血鬼達の警備の目を掻い潜るのに有効だったという嬉しい誤算があったのだ

 

当然皆の居るツェペシュ派の本城にも例の吸血鬼達が居たけど流石にそちらはセキュリティのレベルが高くて苦労したけどな。それ以外だと吸血鬼は眠るときは棺桶で眠る特性があるから彼らの兵舎に侵入して彼らの眠っていた部屋の吸血鬼を一気に処理した時とか気分は墓荒らしだったよ

 

監視役の吸血鬼は俺と黒歌が与えられた部屋から完全に居なくなったと思ってたのだろうが城内の作業も終えて最後に【一刀修羅】を発動させて確認を取った時に部屋に戻って黒歌と一緒に仮眠も取っていたりする―――因みにその時はイヅナでコッソリと白音を呼び出してベッドに突っ伏してる俺達を回復して貰ったんだけどな。ずっと働き詰めだった黒歌に加えて俺が【一刀修羅】で体力を使い果たしたら回復役が居なかったからさ

 

そうしてまだ若干重たい体を押して今は二人でまた町に繰り出して喫茶店で食事を取っている処だ。城に俺達が居るとバレれば穴が開くレベルで監視されてしまい、抜け出すのに物理的な力が必要になるかも知れんからな―――現状で先に手を出したなんて証拠は残せないからね

 

「ふにゃ~、疲れたにゃ~」

 

「お疲れ、黒歌」

 

喫茶店での食事を終え(黒歌は俺の倍以上は食べた)、程よい満腹感を感じつつ黒歌は喫茶店のテーブルに突っ伏している

 

そんな黒歌の様子に苦笑しつつも一先ずの労いの言葉を掛けた

 

「うぅ~、でもまだカーミラの吸血鬼の町の方にも行かなきゃならないんでしょう?そう考えると憂鬱にゃ。サクッと殺した方が早いんだけどねぇ・・・まぁそんな事をしたらすぐにバレて厳戒態勢になるから逆に面倒になっちゃうわね」

 

コイツもサラッと怖い事言うな

 

因みにコレから俺達はカーミラの領地に向かう訳だが、この町を覆う結界は外に出るのは難しくなさそうだったりもする

 

カーミラの町から外に出る時も俺達は普通のワゴン車で町から離れたし、多分万が一内部でなにか不測の事態が起きた時に逃げやすいように結界が創られているのだろう

 

今回のクーデターとかまさにそれで、ツェペシュ派の追い出された王様も逃げ延びたってアザゼル先生が途中で言っていたしな

 

もしも脱出ルートが限定されていたら逃げ延びるのは無理だったんじゃないか?

 

そうして喫茶店を後にした後、この町に来た時のゴンドラ乗り場の方から脱出してカーミラの町に潜入する手筈だ・・・しかし途中で見えた光景に思わず足を止めてしまう

 

町中を流れる小さめの川・・・というか用水路の橋の上にオーフィスの分身であるリリスが居たのだ。それだけなら散歩と割り切る事も出来たけど既に頭の上と云うか全身に雪が積もっている

 

何時間その場で微動だにしなかったんだよ!?

 

まだまだ情緒が育っていなかったんだと思うけどちょっとコレは酷いぞ

 

「あ~、リリス。何してるんだ?」

 

流石に見知った顔のゴスロリ幼女が体に雪を積もらせているのを黙って見てるのもアレなので声を掛けると此方に視線を寄越さないで用水路を見つめたまま「かわ、みてる」と返してきた

 

まんまじゃねぇか!

 

「川が好きなのか?」

 

「しずかなの、リリス、すき」

 

そう云えば元は静寂を求めるドラゴンでしたね

 

「それでも雪くらいは払った方が良いぞ。それかこんな雪の日は傘をさすとかな」

 

「? リリス、さむくない」

 

今度はこっちを向いて不思議そうに首を傾げられた

 

そりゃ弱体化していても龍神様だからこの程度は平気だろうけどよ!

 

それこそ全盛期なら太陽から宇宙まで下手したら平気かも知れないが、そうじゃないんだよ

 

「そう云うのは本人が平気でも一つのモラルとしてアウトかな」

 

「?」

 

また不思議そうな顔をされた。確かにコレでは今の彼女には伝わらないか・・・

 

「ほら、リリスは今ドレスを着てるだろ?原点を辿れば服は人間が体温調整や弱い肌の保護の為に着るもので、必要不必要で語るならリリスはそもそも服を着る意味も無かったはずだ。それなのにリリスは何で服を着ているんだ?」

 

見た目幼女に「キミは如何して服を着てるんだい?」と質問する高校生・・・傍目には完全に事案である。だけど無知で無垢な彼女を納得させるにはそういう只管に物事の根本を捉える『服とは何?』といういっそ哲学的なレベルから語らないとダメな気がしたのだ

 

「・・・わからない、リリス、リゼヴィムにふくを着るようにいわれた、だから着た」

 

「それはそうしないと人間界では周囲に変に思われるからだな。それにリリスくらいの見た目だと変どころか『あの子は何かあったんじゃないか?』って心配までさせる事になる。自分一人だけなら兎も角、周囲に他の人達が居る状況だとある程度その文化に合わせないと要らない諍いを呼び込む事になるぞ?リリスは静かなのが好きならそういう事も少しずつ覚えていこうな」

 

取り敢えず今のリリスの関心事であろう『静寂』を理由に盛り込んで説明したら素直に頷いてくれた。そうして彼女は周囲を見渡すと丁度こじんまりとした服屋がそこに在ったのでそちらに歩いて行く。如何やら早速行動に移したようだ―――素直だからこそ行動に直結するんだな

 

そう思いつつ俺達もカーミラの町に行かなくてはいけないのでリリスが店に入るのを見届けてから移動しようとして彼女が店の扉を開けた瞬間微かに、だが確かにマネキンに着せられた前面解放乳首バッテンシールドレスが見えた

 

“バタンッ!”

 

そしてリリスは店の中に入って扉を閉めた

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

「ストオォォォォォップゥゥゥ!!リリス!戻って来い!」

 

「にゃは~。今のってオーフィスが最初に着ていたあの服だったわよね?吸血鬼の町にも入荷してたなんて、意外と人気商品だったのかしら?」

 

そりゃ『一押し新商品』だったはずだからな!つーかどんな確率でその店引き当てたんだよ!

 

リリスに俺の声は届いていなかったようなので全力ダッシュして店内に突入し、今まさに伝家の宝刀『あのマネキンの服一式下さい』を発動させようとしていたリリスを連れ出す事に成功した

 

因みに店を出る時にチラッと見たのだが『ゲテモノメイドシリーズ』の新作らしく他には『堕天使エロメイド』や『大妖精チラメイド』、『海魔王ブラメイド』他数点が確認出来た

 

シリーズものかよ!―――因みにその新作は『龍姫(ドラクル)ペケメイド』だそうだ

 

それから俺と黒歌は普通の服屋を探し出してリリスの服を見繕う事になった

 

取り敢えず今彼女が着ている黒のドレスの上にフード付きのレディースポンチョを買って上げたので見た目で云えば赤頭巾ちゃん、もとい黒頭巾ちゃんって感じだ

 

一応モノトーンを意識して同じタイプの白のポンチョと他数点を次元収納に仕舞って貰った

 

「・・・思わぬ処で時間を喰ったな」

 

「にゃはは、まぁアレは仕方なかったんじゃないかにゃ?」

 

仮に橋に居たリリスを放置していたらあの店に入る事は無かっただろう・・・俺がオーフィスの服装を普通にしたから代わりにリリスの服がアレになる処だったのか?

 

何だかこう、運命の修繕力みたいなものを感じたよ

 

店を出たらリリスが此方を見つめてくる

 

「あり・・・がとう・・・?」

 

疑問形ですか。人生経験の殆ど無い彼女からしたらよく判らないのだろう

 

「どういたしまして」

 

この場ではそうとだけ返しておいた。与えられれば常に感謝するべきかと云えば結構微妙だからな―――『お菓子あげるからお願い聞いてオジサン(アザゼル)』とか世の中には居るし、その辺りも含めて少しずつ学習していけば良いのだろう

 

・・・仮に変態紳士に遭遇しても返り討ちだし

 

「じゃあ俺達はやる事有るからもう行くよ」

 

「おしごと?」

 

「ああ、お仕事だ―――っと、そう云えば今更だけど自己紹介もしてなかったな。俺は有間一輝、それでこっちが黒歌だ」

 

こっちは一方的にリリスの事を知ってたけど、今のリリスにしてみれば未だに俺達は名無しの通行人Aと通行人Bだからな

 

「あり・・・ま・・・いっき?くろか?」

 

「まぁ、イッキと黒歌で良いよ」

 

さて、このまま別れても良いんだけど、そう云えばオーフィス用のお菓子とかが次元収納に仕舞ってあったな

 

オーフィスは同じドラゴンであるイッセーの後を憑いて回る事が多いけど九重と通信するようになってから俺の部屋に来る頻度も増えたし、他の皆も結構オーフィスにお菓子を出したりお茶を淹れたりとかして構ってるんだよね。流石のマスコットガールだ。その上太ったりする心配も無いから所謂『エサを与え過ぎないで下さい』的な議題も上がらないしな

 

「リリス。お近づきの印にこれをやろう」

 

次元収納から取り出したのは一本のバナナだった

 

何故バナナかって?オーフィスは好き嫌いを口に出す方ではないけどバナナを食べてる姿が度々見られるから好きなんだろうというだけの話だ

 

・・・そう云えばうろ覚えだけどクロウ・クルワッハもバナナが好きだったっけ?最強の名を冠するドラゴンはバナナで繋がるのかも知れんな

 

それからリリスがバナナを食べ終えるのを見届けて(最初は皮ごと齧り付きそうになった)何だか無言ジッと催促するような瞳で見つめられたので残りのバナナ(一房)を与えて皮はゴミ箱に捨てるよう指導してから俺達はその場を後にしたのだった




ゲテモノメイドシリーズは魔術と科学が交差している学園都市で出てきますねw
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