リリスと別れた後、改めてカーミラの領地に向かおうとしたところで路地裏の方に微かに見知った気配を感じ取り、黒歌と手を繋いでそっちに移動し、そこに居た二人に話し掛ける
「ルガールさん。ベンニーア。そっちは順調か?」
そこに居たのはシトリー眷属のお二人で力を借りたいと思ったのだ
この町に着いた時に脱出用のルートを確保する為に別行動だった―――俺や黒歌のやり方だと脱出可能と言っても転移とかじゃなくて殆ど物理的に外に向かう必要があったし、逆にカーミラの領地に再度侵入するのは骨が折れそうと思っていたのだが、彼女達が既にルートを構築しているならそっちの方が楽で良いし、何より早いからね
気配を極力消して行動していたから声を掛けた瞬間身構えさせたけどな
≪おっとっと!お二人ですか。いやぁ、ビックリしやした。あっしもルガールの旦那も感覚は鋭い方だと思ってたのに気づけなったっス≫
俺も仙術で魂の気配を感じ取れるようになってきたから多少は魂の気配も弄れるようになったので少し試しに死神ハーフっ娘のベンニーアにも気付かれないか、繋いだ手で黒歌の気配も消してから挨拶してみたのだ。取り敢えずこの反応からして上々と云えるかな?
≪そうっスねぇ。今の処この町と郊外を繋げるルートに郊外のツェペシュとカーミラの間を繋げるルートにそこからカーミラと繋げるルートって感じで取り敢えず最低限の枠は確保しやしたね。日本とかへの完全にこの国の外まで行ける直通ルートはもう少し掛かりそうですぜ≫
良し!この結界に包まれた鎖国国家で自由に行き来できるルートを構築できるこの二人マジで優秀!特にカーミラに転移三回で実質直接跳べるのはデカい!
「なら、悪いが俺達をカーミラの町に跳ばしてくれないか?ちょっと緊急でこの町とカーミラの町で工作活動する事になってな。この町の分のノルマは達成したから丁度カーミラの方に出向こうとしてたんだ」
≪おや、あなた方も裏方要員っスか?≫
そう聞かれて肩を竦めてながら言葉を返す
「分かり易い主役は赤龍帝と魔王の妹ってビッグネーム背負ってる二人に任せるよ。俺はコッソリと相手の嫌がる事を根回しして相手が怒髪天を衝く様子を高笑いする役さ」
アザゼル先生、ちゃんと録画してくれるかな?
≪いやぁ、でもそれって最後には返り討ちでぶっ飛ばされるってオチじゃないんですかぃ?≫
「それは大丈夫。現実で俺が嫌がらせする相手は基本悪役だ。そこにヒーローは存在しない」
舞台設定の所謂『お約束』なんて現実には影響しない・・・いいね?
≪悪の大幹部様にそう言われちゃ『おっぱいドラゴン』の一ファンとしてこれ以上は野暮ってもんですね。なら、早速向かいますが良いっスか?≫
「了解、頼む」
短く返事をすると直ぐに足元に魔法陣が広がり・・・
“スポッ!!”
「に゛ゃ!」
「うわ!」
俺達は魔法陣に
薄暗い森の中、恐らくツェペシュ近郊の森の空中に魔法陣が展開され、そこから俺と黒歌、その後にベンニーアとルガールさんが続けて落ちる形で現れ、着地する
それにしても“スポッ!!”は無いだろ“スポッ!!”は幾ら何でも心臓に悪いわ!もっと優雅に転移出来るはずだろう!?何で態々落とし穴形式!?
現に黒歌はベンニーアのドクロのお面を外して彼女の頭を左右から拳でグリグリしてる
「なぁんでもっと普通に転移させなかったのかにゃ~?せめて事前に説明するべきじゃない?」
≪痛たたたた!御免なさい、ヘルキャットのお姉さん!だってそっちの方が手早く転移が済むから今までずっとそうやってきたのが癖になってるんで如何か許して欲しいんですぜ≫
「・・・済まない。中々治らんのだ」
同じ眷属としてかルガールさんも謝ってくるけど常習犯ですかい!
そんなハプニングこそ在ったもののベンニーアの転移で無事カーミラの領地に侵入を果たし、そこでシトリーの二人とは別れた
「それで邪龍の気配は如何かにゃイッキ?ツェペシュの町よりは流石に少ないわよね?」
黒歌に言われて早速俺も町全体に気を巡らせて感知する
「・・・そうだな。数は・・・三十人程度だな。ツェペシュに比べて一割ちょっとだけどカーミラからの情報を得る為ならそこまで数は要らないし、内訳としては十人程度が他多数の一般兵士の吸血鬼と一緒に居るから多分兵士の中でも指揮官とか諜報員とかで、それ以外は上級吸血鬼っぽい気配だから貴族とかなんだろうな」
流石にカーミラの末端の兵までは手を回せなかったかな?
「そう、まぁそれ位なら直ぐに済みそうね」
「ただ、ツェペシュ派と事を構えてるからかこの町には兵が少な目みたいだし、邪龍に変えられてるのも元の素体がある程度良質だと考えたら邪龍になった時の強さもそれなりだろう。暴れ出したら一般兵からしたら相打ち覚悟の戦いになると思うぞ」
そうならないようにさっさと作業を終わらせよう
それからカーミラの吸血鬼達の処置を終えるまでは特筆する事もなく無事終了
ツェペシュの方で兵舎や貴族の屋敷や城に潜入したノウハウが在った分、楽だったくらいだ
数も少なかったし、一応最後に俺の感知範囲に取り溢しが無いか【一刀修羅】で最終確認をする為に近場の一般吸血鬼の空き家を家宅侵入少し間借りして発動後の疲れを癒した
あれから暫くの間眠っていて【一刀修羅】の疲労が抜けた―――それにより俺と黒歌はこの町でやる事は無くなったのでカーミラの町から脱出して再びツェペシュの町に向かおうとしていた時、城壁付近を守護していた兵士たちが騒めいているのを感じた
「おい!ツェペシュの国境沿いの突入部隊から連絡が有ったがツェペシュの奴ら、聖杯であの町の住民も一人残らず造り変える計画が始まったようだぞ!」
「なに!?今まさに突入してツェペシュの城を制圧する処だったじゃないか!」
「ツェペシュの城が巨大な魔法陣の光に包まれたんだとよ。潜入していたエルメンヒルデ・カルンスタイン様が堕天使の元総督から情報を抜き出したらしいから間違いないそうだ」
おいおい!既に舞台がクライマックスに差し掛かってるじゃねぇか!
それと情報を『抜き出した』って・・・『教えてもらった』とは言わない、まさしく吸血鬼節だな
俺達は直ぐさまその場を後にしてカーミラの結界の外に出て最初にツェペシュの町に向かう時に車で移動した際の道を高速で突っ切って行く事になる
ベンニーアが居ない以上は彼女の敷設した特製の転移は使えないからな
それに行きは車で二時間程掛かったけど空を飛んで行けば山の道路特有の曲がりくねった道を無視できる分かなり早く着くはずだ
だが途中、かなりツェペシュの町に近づいてツェペシュ派とカーミラ派の吸血鬼の闘争の気配もそれなりに感じ取れるようになった辺りで俺達の前方に二つの強大な魔とドラゴンの気配が現れ、片方は直ぐにその場を去ってしまった
高速で移動していた俺と黒歌は直ぐに気配が現れた場所まで辿り着くとそこには
「ふむ。随分と白龍皇にも嫌われたものですね。いえ、元より私などがリゼヴィム様と同じだけの関心を持たれると思う方が間違いだったのでしょうが―――そうは思いませんか?」
高速移動でそれなりに気配が漏れていた為か俺達の存在はバレていたみたいで独り言の最後に此方に話を振られた
「さてな。いい歳して意外と構ってちゃん何だな。ユーグリット」
鎧に包まれていても気配はユーグリット・ルキフグスのものだ。それにそう云えばコイツは超絶気持ち悪い方向にシスコンを拗らせた構ってちゃんだったような気がする
「取り敢えず、その鎧の事を聞いて良いか?コスプレって訳でも無いんだろう?」
「ええ、お察しの通りコレは
また廃棄された空間かよ!
「・・・取り敢えずこれからはレーティングゲームで使った後の空間は次元の狭間にそのまま捨てる事のないようにサーゼクスさん達に進言しておくわ」
「・・・ほんの一欠けら程度から
「ふふふ、そうですね。人間界でいう所謂『ポイ捨て禁止』というやつです。今回はそのツケが回って来たというだけの事ですよ」
そっか、この世界ではポイ捨てすると赤龍帝軍団がツケの清算にやって来るんだな。しかも割と無差別で全方位に取り立てるという理不尽をもって・・・嫌になるわぁ
「さて、ヴァーリ・ルシファーとの戦いでこの鎧の試運転も済みましたし、それなりに彼を消耗させられたので後はクロウ・クルワッハに任せても問題無いでしょう。流石に白銀の鎧とやらを使う彼と有間一輝。この二人の瞬間火力が合わされば、かの邪龍とて無事には済みませんでしょうからね。そこにアザゼル元総督に赤龍帝、それに猫又の貴女、確か黒歌でしたか―――それだけの戦力に畳みかけられれば滅っせられた可能性が高い」
逆にそれだけ寄り集まって『可能性』の域を出ないクロウ・クルワッハはマジ地上最強クラスだな
「それにしてもお二人は今まで何処に?可能ならば貴方の足止めも任務の一つだったのですが早々に姿を消してしまいましたからね。来た方向からしてカーミラの町に居たようですが?」
「態々教えるとでも?」
「此方もそちらの質問に答えたのですから返答が欲しい処ではありますね」
ユーグリットも流石に本気でそんな戯言を言ってる訳でもないのだろうな
「そうだな。『雄弁は銀、沈黙は金』とだけ言っておくよ」
「これはこれは、仰る通りですね。ですが私は金よりは銀の方が好きですので問題無しと勝手に納得しておきましょう」
・・・もしもグレイフィアさんが金髪だったら悔しがったのだろうか?
欠片も論理的じゃ無いけど・・・何か在り得そうでキモイ
そう思っているとユーグリットは自分の直ぐ隣に
「白龍皇を消耗はさせましたが取り逃がしたのも事実。ここは念の為あなた方にも足止めを仕掛けておきましょう」
そうして現れたのはドラゴンの形をした樹木・・・逆か?樹木の特性を持ったドラゴンだ
『急に私を呼び出すとは如何しましたか?折角現白龍皇のお仲間とやり合っていたのに、紫炎の使い手が怒っていましたよ?彼女だけでは白龍皇のチームとは戦えませんからね―――彼女の配下の魔法使い達が全滅する手前辺りで紫炎の使い手も撤退するでしょう』
「そうですか。彼女には後で適当に
ああ、コイツがラードゥンか
原作じゃ如何やって殺られたんだっけ?俺的にかなり印象が薄いんだけど
それにヴァーリの仲間も足止め中ね。コイツもさっきまで戦っていたみたいだが、そこを抜け出した事でヴァーリチームに天秤が傾いたみたいだけどな
『ご紹介に預かりました。ギリシャ神話出身のラードゥンと申します・・・成程、その鎧を身に纏う今の貴方でもこの二人を同時に相手取るのは難しそうですね』
「はい。ですので片方を貴方に受け持って頂きたいと思いましてね。結界に秀でた貴方なら分断は得意でしょう?貴方にはあちらの女性の方をお任せします。男の方は結界を貫通するような攻撃が得意みたいですからね。貴方とは相性が悪いでしょう」
『そう言われると逆に気になってしまいますが、良いでしょう。あちらの女性も決して油断できる相手では無さそうですからね』
役割を決めた目の前のユーグリットとラードゥンはそれぞれ小瓶の中身を頭から振りかけたり奥歯を噛みしめて何かを飲み込む動作をすると身に纏うオーラが力強さを増した
・・・そう云えばレイヴェルのデータが無い分、量産は出来なくてもフェニックスの涙を複数持っているんだっけか
これでは下手に【一刀修羅】は使えないな
俺は邪気を取り込んで『邪人モード』となり、黒歌も尻尾を四本に増やした『四尾モード』に移行する。この場の全員がシャルバのような下手な魔王級よりも強いオーラを発して対峙した
う~ん。一応此処はカーミラとツェペシュの町の中間辺りだけど結界のラードゥンと搦め手の黒歌は兎も角、俺とユーグリット・・・特にユーグリットの破壊がまき散らされるとカーミラとツェペシュを隔てる巨大な湖が後に形成されちゃうかも
クレーターとかは後で戻せるとしても動植物は流石に無理だし荒野になってしまうな
「黒歌、流れ弾とかは仕方ないとして取り敢えず上空で戦おうか」
「はいはい、分かったわよ」
「そっちも異存は無いか?」
問いかけるとユーグリットは頷いて提案を受け入れた
「ええ、構いませんよ。元より貴方と存分に闘ってみたいという話ですしね。しかしお優しいですね。吸血鬼達への被害を極力抑える為なのでしょう?彼らの態度は人間・・・いえ、他種族に対してかなり不快感を齎すものだと思ってましたが、気になさらないのですか?」
「へ?」
「え?」
つい間抜けな声が出てしまったな
そっか、周りから見たらそうとも取れるのか
「ああ、いや、単に仙術使いとして自然破壊は心が痛むな~ってだけで吸血鬼の事とか欠片も意識して無かったわ」
「―――ック!クハハハハハハハハハ!!」
そう言うと一瞬ポカンとした表情になった後、盛大に爆笑し始めた
「いやぁ、失敬。貴方の今の吸血鬼達に対する関心はそこらの草木や動物以下ですか―――成程、貴方が敵対する者には容赦がないと評される理由が判った気がします。そう云えば『愛の反対は憎しみではなく無関心』なんて言葉も在りましたね。確かに貴方はヒーローではないようだ」
「そりゃあ俺の設定は悪の大幹部だからな―――ヒーローじゃないさ」
「そういう意味ではないのですが・・・まぁそれ程間違ってもないので良しとしましょう」
そうして俺達はそれぞれ別に空中高くへと飛び上がる
ユーグリットは自身の持つ銀色のオーラと赤龍帝の赤いオーラが混じり合った莫大なオーラを発し、対して此方はFateの汚染された聖杯から溢れた泥のような混沌の黒と錆びた血のような赤を混ぜたような見た目のオーラを発する
「それでは偽物で恐縮ですが『おっぱいドラゴン』と『オール・エヴィル』の戦いとしゃれ込もうではありませんか」
「―――取り敢えず『おっぱいドラゴンの歌』を全部ソラで歌えるようになってから出直しな」
その遣り取りを最後に俺とユーグリットがぶつかる
遠くでは黒歌とラードゥンの戦いが始まった気配も感じるな
取り敢えずユーグリットの拳を
単純なパワーやスピードでは向こうの方がかなり上だな
「如何です?貴方の御友人の赤龍帝より私の方がずっと強いでしょう?」
「基礎能力で勝ってる事だけは否定しないよ!」
壊れた
「貴方の攻撃は邪龍でも最硬とされるグレンデルの鱗すらも切り裂きますからね。私はかの邪龍のように斬られて喜ぶ性癖は持っていませんので避けに徹する事としましょう。何、今の私のパワーとスピードが在れば貴方に反撃の隙を与えない事も可能でしょう」
そう言って大量の濃密な魔力弾を放ち、更にそれに追従する形で本人も高速で迫る
俺もイヅナの妖気と闘気を混ぜ込んだ闘気弾で迎撃するがユーグリットの魔力弾一つを迎撃するのに闘気弾を2~3個当てなければならない為、特に邪魔くさいと感じるものに限定して相殺し、残りは体捌きで避けていくが最後に迫り来た魔力弾を神器で弾いた時の衝撃でユーグリットに対して大きめの隙を晒した
「隙ありですね。先ずは一発喰らって貰いましょう」
“ドズンッ!!”
接近して来たユーグリットから見て『丁度良い位置に在った腹』に拳を突き立てると周囲に衝撃波が広がる―――仮にコレが地上なら余波だけでかなり大きなクレーターが出来上がっただろう
だが殴り飛ばされた俺は普通に空中で体勢を立て直した
「・・・今のはかなり良いのが入ったと思ったのですがね。それがオーラのコントロールからなる防御法というやつですか―――しかし、少しでも受け間違えれば貴方の体は四散しても可笑しくないでしょうに、よくやる気になりますね」
私には怖くて出来ませんよと続けるユーグリットだけど俺だって怖くない訳ではないんだけどな
だけど幾らパワー、スピードが今の俺より上でも何処に来るか分かってるなら恐怖も最小限で済むからな。俺の場合は腕や足、神器などで防御しなくても闘気を集中させればそこが防御個所として十分機能するので、腹などの弱点を晒す行為のリスクは普通よりは少ないし、何より今のユーグリットは『鎧型の
だけどそれでも反撃し辛いのも確かだ。今のユーグリットなら生半可なカウンターでは基本性能差に任せて後出しで避ける事も可能だろう
そう思っているとユーグリットは俺を殴りつけた拳を見やる
よく見ると鎧の籠手の部分が僅かに黒ずんでいるようだ
「成程、私のオーラを超えて侵食してくるとは大変危険な呪いの力ですね。仮に生身で殴っていたら逆に此方がダメージを負う処でした―――ですが」
そこまで言った処で奴は黒ずんだ箇所をパージしてその穴を鎧の修復機能で塞ぐ
「貴方の傍に居続けるような真似をしなければ今の私の脅威足り得ませんね。私はかの赤龍帝の宿主と違って魔力による中・遠距離戦も得意ですので、そちらで攻めていきましょう」
うわぁ!コイツ面倒クセェ!!
遠距離技じゃ向こうの方がパワーが上だし近接に持ち込もうとしてもスピードでも上のアイツに追いつくのは至難だぞ!俺の秘剣シリーズも基本的には近接技だしよ
まぁ仮にも剣技で遠距離技が豊富だったらそれはそれで可笑しいんだけどさ
それから始まった砲撃戦は案の定こちらがジリ貧で押し込まれる形になった
直撃はまだしてないけど近くでの誘爆の熱量はジリジリと熱いし、オーラの消耗も精神的な疲労のスピードも此方が上だ
点の攻撃である闘気弾はそもそも当たらないし、狐火の面の攻撃は威力が拡散している為オーラの質量で勝るユーグリットには簡単に吹き飛ばされる
「ッグ!」
クソ!右肩に一発被弾した!
黒歌より手数は少ないけど攻撃を弾くのにかなり力を籠めなきゃいけないから動作が遅れたか!
「ようやく一撃ですね。グレンデルとの戦いの時も思いましたが感嘆に値する回避性能です。オーフィスの蛇で得た強大な魔力に胡坐をかいていたシャルバ・ベルゼブブやクルゼレイ・アスモデウス相手なら既に満身創痍だったでしょうに」
「そりゃどうも」
オーラの移動も不十分だったから右肩の周囲が焼けてしまった―――アーシアさんが居なかったら火傷痕が盛大に残っちゃうかもな
さぁて如何するかな。【一刀修羅】も【
それは何かヤダ!・・・と、意気込んでみた処で今の手持ちの技でユーグリットの防御を突破出来るようなものなんて・・・
「いや、在るか」
先程ユーグリットが俺を殴った時に鎧の拳部分が邪気に侵食されていた。質で勝るであろう俺のオーラなら徐々にではあるが強大なオーラ相手でも蝕む事が出来るのだろう
しかしさっきから俺が放っている闘気弾や狐火(邪気ver)はただでは当たってくれない
とは言え案は有る。点でも面でもダメならば立体、即ちこの空間全てを侵食するまでだ
生命の気を操るだけが仙術ではない
万物、つまりは自然の気を操るのも仙術使いの十八番なのだから!
今居る場所はかなりの上空だから周囲一帯の大気に自らの気を乗せて掌握する
要するに疑似風使いだ
当然ただ風を操ってユーグリットに突風とかを叩きつけても意味は無いけど、そこに邪気が含まれていたなら如何かな?
「む、コレは!?」
ユーグリットが驚いているけど狐火や闘気弾のように目に見える形ではない上に、毒薬の広範囲散布にも似たコレは防げないだろう?
流石にその分侵食速度は遅いけど鎧だけでなく呼吸すれば体内にも邪気が徐々に溜まる事になる
『猛毒』というフィールド効果を付与する新技って処かな
「さて、如何する?このまま遠距離で撃ち合ってお前の体調が崩れるのが先かお前の魔力弾が俺にクリーンヒットして畳み掛ける展開に持っていけるのが先か、試してみるか?」
控え目に見てもこれで戦況は五分と五分だろう
「ラードゥンと戦っている猫又の使うという毒霧に近い技ですね。私でも長くこの空間に留まる事は出来なさそうとなれば大抵の相手は抗えないでしょう」
「こちとら『この世全ての悪』を取り込んでるからな。今のお前相手ならドラゴン、男、貴族、イケメン、才能、悪魔とまぁその辺りの者に向けられる悪意とかがヒットするだろうな」
「それは・・・なんとも節操無しですね」
「節操の無さで人間の右に出る種族は居ないんでね」
前にサイラオーグさんにも似たような事言ったっけ?
この技は周囲の風を操ると言っても邪気がメインだから取り敢えず掌握するだけで他には特にこれと云ってする事は無いから割と集中力も割かれないのがポイント高いな
俺の感知範囲は町一つ程度は余裕でカバー出来るから、つまりは一つの町を邪気、瘴気が漂う世界に変える事も可能だ
そう言うと凄そうに聞こえるけどフレンドリーファイアが恐くて集団戦では使えないし、魔王級なら一撃で町一つ、地平線まで吹き飛ばす威力の範囲攻撃は出来るからそこまで突き抜けた凄さは無いと思う・・・精々あらゆる悪意、角度から邪気が侵食するから抵抗が難しいというだけだ
まぁ対抗手段は有るけどね。聖なるオーラや浄化の炎で身を包めば流石に希釈された邪気では体内にまで入り込めないだろうし
技名は・・・如何しよう?
風に邪気を纏わせている訳だしシンプルに
分かり易いけど語呂が悪いな
秘剣シリーズのように既存の技名や第七秘剣・天照のように存在する何かから名前を取った方が良いのか?病を齎す風と言って思い出すのは疫病神だけど疫病神も語呂が悪いよな
天照は流石は日本神話の主神様。普通に技名として採用させて頂きました
他にそれっぽいモノと云えば黒死病たる『ペスト』とか?う~ん。それだと完全に邪気ではなく『ペスト』の存在が前に出ちゃうな
オリジナルの技名とか考えるのって案外難しいんだよね・・・何で漫画やライトノベルの主人公とかって例え何時もテストの出来が悪いような設定でも技名考え付く時だけは外国語が堪能になったりするんだろう?
後は『邪』から始まる技と云えば邪王炎殺拳?
・・・炎じゃねぇし叫んだ瞬間に自爆(羞恥心が)するわ!それ以外だとジャジャン拳とか?アレって確か邪拳からくるジャンケンを最初噛んで『じゃ、ジャンケン』って言ったのが始まりだっけか?・・・いや、割と良いんじゃないか?あんまり中二チックな名前は付けたくないけど設定の一部を借り受けたら少しはオサレな感じが出るだろう
『
「ふむ。これ以上続けると怪我と違って回復に時間が掛かりそうですね。これまでにしましょうか。丁度今リゼヴィム様がこの吸血鬼の国を混沌に陥れる最後の余興を始めたとのサインが有りましたのでここで失礼します―――ラードゥン、帰りますよ」
この口ぶりだとリゼヴィムが遂に改造吸血鬼達を邪龍に変えたんだろうけど、まさか邪龍達が全員揃ってお寝んね(気絶)してるとは思ってないだろうな
ユーグリットは転移魔法でその場を去り、ラードゥンも通信を受けてユーグリットが居なくなった事で
俺は大気を汚染していた邪気を霧散させると黒歌の居る場所に飛んで行く
「お疲れ、そっちは如何だった?」
「もうあの邪龍の結界堅すぎにゃ!本体を守る結界は何重にもなってるし、一枚壊せば一枚張り直されるし、私の方にも閉じ込めるタイプの結界を飛ばして来るからそれを只管避けながら何とか結界を突破しようとしてたんだけどダメだったにゃ」
多分攻撃役と防御役で膠着状態になったんだろうな
完全に守備に徹されると仙術も妖術も上手く機能しないしね
「こっちは閉じ込める技ばかりで怪我も無いけどイッキはその火傷がちょっと痛々しいわね。さっさとアーシアに治療して貰いましょう」
賛成だ。仙術だけだと治すのに丸一日は最低でも掛かるだろうし、今は痛覚遮断してるけどこの状態って麻酔を打ってるような感じで余り好きでもないんだよな
「じゃあツェペシュの皆と早く合流しようか」
「賛成にゃん♪」
俺達は再びツェペシュの町に向かって飛んで行ったのだった
「ああ、そう云えば・・・【
取り敢えず意趣返しに【報復】はしておいた
古来より病魔の類は邪神、悪神の仕業とされてきました。やったねイッキ!邪神にまた一歩近づいたよww