修学旅行二日目の朝、朝食を食べた後ホテルを出てから早速とばかりに3人組に釘を刺す
「お前ら旅行三日目はお土産屋に少し寄ったらそのまま帰ることになるんだし、今日くらいは真面目に巡れよ。一日ナンパに費やしたとか聞いたことねぇぞ」
「「うるせぇ!死ね!裏切り者!!」」
ハモるなよ松・浜コンビ
「ていうか昨日の黒歌さんだっけ?はどうしたんだよ?少なくとも彼女じゃねぇんだろ?なら俺たちに紹介してもいいじゃねぇか―――なっ?俺たち親友だろ?」
一誠もだらしないスケベ面でそんなことを言ってくる
「そんな欲望に塗れた顔で『親友』とは言って欲しくなかったな・・・黒歌は知らん。その気があるならそのうち合流するんじゃないか?」
気で探ってみたが今はまだホテルの部屋にいるようだ。まぁ彼女は悪魔でもあるから朝に無理して早く起きたくはないのだろう
「ヨッシッ!合流するってんならその時是非お近づきになってやる!」
「待て待て一誠、抜け駆けは許さんぞ。それに俺たちの夢を忘れたか?俺たちの夢はハーレムだ!昨日のリベンジマッチをしようじゃないか!」
「うむ!彼女と合流する時までに両手に花くらいには持っていきたいものだな」
合流すると明言した訳ではないのに既にその気になっているようだ―――というか松田、その自信は何処からくるんだ?
「うぉぉぉぉぉおおおおおおお!ここで俺は神様に可愛い女の子との縁を結んでもらうんだぁぁぁぁぁぁっ!!」
「待ちやがれ一誠!俺が先に結ぶ!より可愛い子を彼女にぃぃぃぃぃ!!」
「ロリっ子の優先権は絶対に渡さんぞぉぉぉぉぉぉぉ!!」
飛び降りることで有名な清水寺を巡った後、すぐ近くにある縁結びで有名な
あと元浜、発言が犯罪だぞ
最初の二人に対しては周囲の観光客は苦笑といった感じだったが最後のロリっ子発現で一気に侮蔑の色が強くなったんだからな?
そんな事は露知らず、まずは異性との運気を上昇させんとばかりに三人は無駄に綺麗な所作で参拝し、一心不乱に祈りを捧げている
そして参拝が終わってから境内にある名物の『恋占いの石』に挑戦する様だ
『恋占いの石』とは一対の石で約10mの距離を石から石へ目を閉じてたどり着いたら恋が叶うとされている石の事だ。だが、3人は何もないところで転ぶ、通行人とぶつかる、あと少しでたどり着きそうという時に他の二人が邪魔をするなどで10回以上はチャレンジしたが終ぞたどり着けなかった様だ―――足の引っ張り合いしてたらそりゃ辿り着けないだろうよ
「ならばおみくじだ!大吉を当ててやる!!『今日中に彼女ができて貴方は勝ち組になれます』と書かれたおみくじをな!!」
松田よ、そこまで具体的な内容のおみくじなんて無いと思うぞ・・・
そう思いながら4人でくじを引いていくが、案の定直ぐに嘆きの声に変わる
「そ・・・そんな・・・」
「馬鹿な!あり得ない!あんなに祈ったのに!!」
「くそっ!お前らも大凶か!?」
案の定というべきか3人は大凶だったようだ―――で、俺はというと
「末吉・・・だな」
なんとも微妙な・・・まぁ『少しずつ良くなる』と書いてあるからいいのかな?
「末吉でもいい!俺のおみくじと交換してくれ!!」
うるせぇ一誠!どうせお前は3年後には大吉ハーレムを形成してるんだから同情の余地はねぇ!
「つーか交換しても意味ないだろ。あと、大凶のおみくじはちゃんと結んで行けよ」
その後、いくつか名所を巡り昼食を食べたあたりで黒歌が合流した
そして『両手に花』なんて夢は当然叶っているはずもなく、3人はここぞとばかりに黒歌に自分を売り込むが当の黒歌は「う~ん、彼氏にするなら君たちよりはイッキの方がいいわね」と辛辣な言葉を浴びせていた
「なんでですか!こんなむっつり野郎の何処が良いって言うんですか!!」
よし一誠、お前あとで覚えておけよ!
「女って云うのは多かれ少なかれ強い男に惹かれるものよ?イッキは今はそこそこだけど将来性はバッチリね♪」
「ケンカですか!?筋肉なんですか!?お・・・俺たちだってそれなりに強いですよ!イッキに殴られ、蹴られ、投げられ、追い回されてる内に強くなりました!!」
「そうですよ!初めのうちは俺たちの覗きを邪魔する奴はイッキ以外にも居ましたが、今じゃイッキ以外は返り討ちにできるんですからね!!」
一誠と松田が割と最低な事を言っている―――だがそうなのだ。俺はこの3人のエロに対する思いの強さを少々甘く見ていた
こいつらは覗きがしたい!エロトークがしたい!だがその前に俺という障害が立ちはだかるならエロへの熱意・集中力を持って殴りかかってくるのだ
元浜は元々運動が苦手なだけあってそこそこだったが一誠と松田、特に松田の成長がヤバい
アニメじゃひょろっとしたイメージだったがコイツは意外とスポーツ万能なのだ
体育の授業とかでは普通に大会記録をいくつか抜いてるし・・・先生が兼任でいいから陸上部に入ってくれと言ってたっけな
コイツ絶対に『兵士』一個じゃ転生できないと思う
図らずも原作キャラを強化しつつ何かとんでもない間違いを犯してしまっている気がする・・・駒王学園で匙が生徒会に入ったら丸投げしようとひっそりと心の中で誓うことにした
そうこうしているうちに時刻は夕刻、残すは伏見稲荷大社を最後に回ってから電車で京都駅まで帰ろうという時、突然晴れているのに雨が降ってきた
「あー、雨かよ」
俺が愚痴を溢すと一誠は不思議そうな顔をして聞いてくる
「雨?雨なんて降ってないぞ?何を言ってるんだイッキ?」
「え?」
そこで俺と黒歌以外の人々が視界から消えた
「結界!?またかよ!?」
「コレは!異空間に転移させられてるにゃ!」
俺と黒歌が驚愕しているうちにさらに変化があった
前方の地面の下から莫大で荒々しいオーラが吹き上がっているのだ
「おいおいおい!アレってまさか!?」
「にゃ~!思いっきり巻き込まれてるにゃ!!多分さっきの雨は『狐の嫁入り』っていう神隠しの一種にゃ!」
隠密型の転移魔法みたいなもんか!?
「俺たちが巻き込まれてる理由は!?」
「多分土蜘蛛を見つけて霊脈に逃げられないように周辺を封じたのにゃ。この結界、一定以上のオーラを持つものなら外から入れるようになってるみたいにゃ!」
成程、下っ端じゃ役に立たないから手練れだけを結界の中に取り込めるようになっている・・・と
そして土蜘蛛が姿を現した―――デカい、12~13m位はありそうだ。蜘蛛の顔をした6本腕の鬼といったような様相だ。その土蜘蛛は近くに居た俺達に視線を向ける
「あっ?お前ら二人だけか?まぁいい、そっちの雌はやりがいはありそうだ。死ね!」
そう言いつついきなり殴りかかってきた。問答無用かよ!援軍はどうした!?特殊な結界みたいだから入るのに時間がかかるのか!?
黒歌と左右に分かれて回避したがギリギリだった。黒歌を狙った攻撃でなかったら当たってたかもしれん!
土蜘蛛は俺なんか眼中ないとばかりに黒歌に向かって駆けていく
「っあんまり舐めないで欲しいにゃ!」
黒歌が一瞬で20を超える分身を作り出し仙術・妖術・魔力・魔法まで含めた攻撃を弾幕のように打ち込んでいく。本物の攻撃はあの中の一部なのだろうが一発一発が凶悪極まりない攻撃だ―――しかし
「小賢しいわっ!!」
多少の怪我はあるようだが土蜘蛛はそんなの関係ないとばかりに正面から弾幕を突破し大量の妖力を腕に纏わせて高速でぶん回した
周りの建物ごと丸ごと吹き飛ばす衝撃波が生まれ分身がかき消され、障壁を展開した黒歌の動きが一瞬止まってしまう
「フンッ!!」
土蜘蛛の拳が黒歌の障壁を突き破り遠くまで吹き飛ばしてしまった―――それを見た瞬間俺の頭の中が真っ赤に染まった
「【一刀修羅】!!」
作戦も何もない、我武者羅に【一刀修羅】を発動させ
「待ちやがれっ!!」
土蜘蛛を追い抜きざまに切りつけながら正面に立つ―――そこでようやく此方に気づいたのか俺の方に視線・・・いや、興味を移した
「あん?さっきよりは骨がありそうじゃねぇか。ならテメェから潰してやるよ」
次の瞬間には土蜘蛛の拳が目の前迫ってきていた。速い!最初の攻撃は寝起きの一発でしかなかったって事か!!
「っぐ!」
完全に避けたはずなのに衝撃波だけで20m以上は吹き飛んでしまった
クソッあんなのかすりでもしたら周辺の肉ごとはじけ飛ぶぞ!
だが吹き飛ばされて落ちた先のすぐ近くに倒れている黒歌が視界に映った。どうやら彼女の近くに落ちてしまったようだ
頭を切ったのか血が流れているがそれ以外には目立った外傷はない。障壁を張っていたからだろう―――しかし気絶してしまっているようだ
引き延ばされた時間の中で土蜘蛛はすぐにでもこちらに走りだそうとしているのが見える
どうする!?【一刀修羅】は残り約40秒、【
援軍を待つなんて状況はとっくに通り過ぎている
それにあの土蜘蛛の硬さ!最初ほとんど切れてなかった―――残り時間土蜘蛛が棒立ちしていても倒しきれないだろう・・・だがここで一人だけ逃げるなんて選択肢はあり得ない!
ならば答えは決まっている。【一刀修羅】の残り時間を全て、ただ一刀に込めて放つ!!そう思いながら立ち上がり、
「いくぞ土蜘蛛!この一撃でテメェをたたっ切る!!」
「よく言った!向けてこい、その刃!!」
「【一刀羅刹】!!」
吠えると同時に右足で踏み込み弾丸のように土蜘蛛に向かって跳ぶ!今の踏み込みで右足が壊れたが問題はない。問題なのは俺をとらえてカウンターを繰り出している土蜘蛛の拳だ!
全身から血が噴き出るほどの強化をしているのにコイツ多分勘だけで合わせてきやがった!!視線が俺を捉えていない!
ここは既に空中だし仮にコイツの腕を切り落としたとしてもそれで俺の両腕は使い物にならなくなってしまう!
だから俺は空中で
今ので左足もイカレてしまったようだが関係ない!俺は両腕を交差させ、挟み込むように土蜘蛛の首を切り落とした
「ガッ!!」
首を切った勢いのまま土蜘蛛の背後に飛んでいき地面に落ちる。
すると数舜後に目の前に土蜘蛛の首が落ちてきた
「っひぅ!」
ホラーである。しかし、ようやくコレで勝ったのだと思っていると「よぉ!面白かったぜ。俺は土蜘蛛、おめぇなんてぇ名だ?」と首だけで語りかけてきた・・・ホラーである
「安心しろ、流石にもう戦えねぇよ・・・もっとも
「構えよ、・・・
「そうかい。じゃ、数百年後くらいにまた
そう言いつつ消滅していった・・・えっ!?あいつ復活するタイプ!?そうじゃん!最初に『邪龍みたい』って自分で言ったんじゃねぇか!
でも数百年後なら俺は生きてないか?いや悪魔に転生したならまた戦うの?・・・転生するって決まったわけじゃないけど・・・まぁいい結界が解けても
そうしてさり気に後始末を
土蜘蛛は外見は鬼滅の刃の蜘蛛のお父さんを性格はぬらりひょんの孫の土蜘蛛をモデルにしました
というか今回の戦闘って黒歌も含めて実質30秒くらいしか戦ってないんですよねww