転生特典が自爆技ばかりなんだが?   作:風馬

93 / 139
冒頭一話の低評価爆撃で絶対に評価値が7に届かないorz

評価値8以上の人とかマジセンスの塊だわ・・・何時かそうなれたら良いな

まぁ基本オリ主でそれを目指すのって難しい気がしますがw


第五話 魂の、叫びです!

ヴァルブルガが出現してから俺と黒歌は襲い来る邪龍の群れを町の外側に向けて豪快に吹っ飛ばして道を造り、素早く気配と姿を絶って町の外周に在る聖十字架の炎の前までやって来た

 

量産型の邪龍程度が相手なら気付かれる事も無いだろう

 

一応繊細な作業なので黒歌の護衛有りきでもそもそも邪魔が入らないのが一番だからな

 

「うにゃ・・・悪魔で妖怪の私にはこれだけ近くで聖なる炎が燃え盛ってると悪寒が酷いにゃ」

 

心底嫌そうな顔をしている黒歌・・・良く見れば尻尾の毛が逆立ってるな

 

流石に人間の俺の場合は特に嫌な感じはしないけど、あのヴァルブルガが操ってる炎って考えると目の前の聖なる炎が穢れたモノに思えてきてしまう

 

「なら、手早く終わらせますかね。俺としてもこの作戦は効率的ではあっても心情的にはやっぱり抵抗は有るし、嫌な事はさっさと終わらせるに限る」

 

俺はその場で服を次元収納に仕舞ってトランクス一丁の姿になる。次元収納を使った瞬間脱衣術だ

 

戦場でいきなりパンツオンリーとか傍目には気が狂ったとか思われるかも知れんが俺は正常である

 

全身に火傷を負う為に炎に突撃する作戦の性質上、『皮膚の下』にオーラを通わせて紫炎を防ぐ必要がある・・・要するに服を着ていたら燃え尽きるのだ

 

流石にパンツまで燃え消えるのは色々と問題が有るからトランクス周りだけはトランクスごと強化して燃えないようにするけどな

 

・・・他には例えば髪の毛とかもそうだな

 

アーシアさんの治療やフェニックスの涙でも、後から幾らでも生えて来る頭髪とかが『治療』の範疇に含まれるのか判らんしね

 

もしもダメだった場合は俺はこの後の戦いで極めて前衛的なヘアースタイルで戦場を駆け回るなんて事にもなり兼ねない―――流石にそれは御免である

 

とまぁそんな感じに諸々重要な器官だけはしっかりとオーラでガードして準備完了だ

 

安全性さえ確保できてるなら使い魔召喚とかで血を触媒にする為の自傷行為の延長線上にある行いでしかない

 

「オッシャアアアアア!!突撃ィィィィ!!」

 

それでもやっぱり恐いものは恐いので無駄に叫びながら紫炎に飛び込んでいった

 

勝利を捕まえる為なら例え火の中、水の中、あの娘のスカートの中・・・ってあの歌詞冷静に考えるとヤベェ内容だよな

 

馬鹿な事を考えつつも紫炎に身投げして、今は全身の痛覚は遮断してあるので仙術のオーラ感知で体の状態を把握し、ものの数秒で炎の中から脱出した・・・弱点とか関係無しに普通に高火力だわ

 

視界は閉じたままだけどすぐ傍の黒歌が水気を操って俺にぶっかけてくれるという最低限の処置をしてくれた気配は感じるな

 

「【偽り写し記す万象(ヴェルグ・アヴェスター)】!」

 

1秒も待つ理由は無いので、すぐさま『報復』の呪いを発動させて取り敢えずその場に座りこむ

 

程なくして町を覆っていた紫炎も消え去ったようだ

 

自分から攻撃に突っ込んでおいてなんだけど、そもそも相手はテロリストな訳だし、これぞまさしく『自業自得』ってやつだろう・・・お互いにとってのな

 

俺はチラッと目を開けると自分の体の生々しくも痛々しい火傷痕が視界に映った

 

「うわぁ、見ない方が良かったかも」

 

「私としてはそれだけの大怪我でありながら普段と同じ調子で喋れるイッキの方が可笑しいと思うんだけどにゃ~」

 

「痛みさえ感じなければ喋るくらいはな。黒歌だってその内出来るようになると思うぞ?」

 

「イッキの身体操作に追いつくのに後何年掛かるかは分かんないけどね。後、そんな全身焼け焦げの状態で言われてもなんかイヤにゃ」

 

お互いに軽口を叩いているとリアス部長からヴァルブルガの『処理』が完了したとの通信が入ったので黒歌の転移で龍帝丸に送られる事になる

 

「じゃ、私は適当にまた邪龍を殲滅して廻る事にするにゃ」

 

「了解。また後でな」

 

短く会話を終わらせて黒歌の転移で予め龍帝丸に施してあったマーキング位置に跳ぶ

 

一応レイヴェルやアーシアさんに配慮して学園から拝借したバスタオルで体を包んでおいた

 

そうして転移の光が収まるとすかさずアーシアさんが駆け寄って来る

 

元々大怪我前提なので準備しておいたのだろう

 

「イッキさん。直ぐに治療しますね!」

 

そのままアーシアさんの淡いグリーンの光に包まれると体中の火傷痕が熱したフライパンの上に垂らした水が蒸発するかの如き勢いでどんどんとその規模を縮小させ、10秒と掛からずに俺の全身の怪我を完治させた

 

治療が終わると手早く服を着直してアーシアさんにお礼を言う

 

「アーシアさん、何時も有難う・・・なんか俺実戦だとアーシアさんに自傷系の傷ばっかり治して貰ってる気がするな」

 

【じばく】も【一刀餓鬼】も【一刀羅刹】も、思い返せばコンプリートしてるな

 

「いえ、それが私のなすべき事ですので・・・それに逆にイッキさんは他の方の攻撃で深手を負う事は少ないですし、それはとても良い事だと思いますよ」

 

紙装甲だった時代の名残で未だに回避盾&パリィが基本だからな・・・一応祐斗も同じ系統だが、祐斗のインフレと敵方のインフレが釣り合ってるから結局毎度大怪我してるという泣ける話になっちゃってるけど

 

「!―――っとぉ」

 

立ち上がったは良いけど一瞬グラついてしまった

 

実際には凄いダメージだった訳だから怪我が治っても体力がゴッソリ削られた感じだ―――アーシアさんの聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)は体力の回復はしてくれないしな

 

「イッキ様・・・その・・・私の『涙』は必要有りますか?」

 

龍帝丸の後ろの方で禁術ブッパしていたレイヴェルが顔を赤らめながら聞いてくる

 

今回俺達はレイヴェルも含めてフェニックスの涙を所持していない

 

今はクリフォトのテロで『フェニックスの涙』が入用な時期だし、今回はレイヴェルも貴族のパーティーでも無い為持ってはいなかったのだ・・・そう言えば空中都市で戦ってるサイラオーグさん達の方にはアーシアさんのような回復役が居ないけど大丈夫なのかな?―――いや、あの場所はレーティングゲームの聖地だから医療施設や薬とかは充実しているし、常備してある『涙』の一つや二つは有るのかも知れないな

 

と云うか普通に考えて冥界の病院って万一に備えて絶対にフェニックスの涙を常備してるよね?

 

これは確かにフェニックス家が儲かる訳だわ

 

娯楽に医療に喰い込んで更には侯爵家と中々に高い地位も持っていて、ついでに不死身の特性で仮に戦が巻き起こってもお家断絶の危険性が限りなく低いとか、確かにコレは嫉妬の対象になりそうだ・・・完全に逆恨みだけどな

 

さて、フェニックスの・・・と言うかレイヴェルの『涙』なら確かに俺は失った体力も回復出来るけど、黒歌も居るし量産型の邪龍を相手取る程度なら今のままでも回復してもらう程では無い

 

だけど絶対この後グレンデルとか来るだろうからなぁ

 

「じゃあレイヴェル。悪いけど・・・」

 

そこまで口にしかけたところで案の定と言うべきかグレンデルとラードゥンの気配が学園の正門の先の方に現れた

 

正面突破で学園を襲おうって訳だな・・・裏口入学(物理)をしようとしたヴァルブルガとはまた対照的だ

 

「イッキ様!お早く!」

 

感知タイプでなかろうと龍王クラスの強大な気配を隠しもしないで現れた為に他の皆の表情も強張り、レイヴェルにも急かされてしまったので手早くレイヴェルに近寄りその目尻近くにキスを落とす・・・いや、違うよ?純血のフェニックス家の人達は俳優さん達のように素早く泣ける技術を習得しているけど今は一刻を争う状況だからコレはあくまで極めて効率的な回復行為なんだ・・・断じてイチャラブし始めた訳では無い

 

俺やレイヴェルは顔が紅くても、近くに居るアーシアさんやロスヴァイセさんが魔法や回復の光を飛ばしながらもやっぱり顔を紅く染めてチラチラとこっちを見て来ていても違うのだ!

 

実際、俺の体力は回復したしな!

 

「じゃ、じゃあ俺はもう行くよ///」

 

「は、はい。イッキ様。如何かお気を付けて///」

 

こういう気恥ずかしい感じのやり取りは慣れないものだけど、それで良いと思っている自分も居る

 

アーシアさん達はまだこの辺りの担当の回復が残っているので俺だけ空を蹴って学園の正門から少し離れた場所に駆けて行った

 

 

 

 

俺がグレンデル達の居る場所に辿り着いた時、黒歌も同時に到着したようだ

 

「にゃ~、なんで態々私が北側の方に向かってる途中でこっち(南側)を襲ってくるのよ。せめて私が後半周してから来なさいよね!」

 

流石にその感想は理不尽だろうに・・・そう思いつつも戦況を視る

 

如何やらイッセーはラードゥンの結界に捕らわれて結界から脱出する為に連続で拳を突き出しているようだな

 

ラードゥンもラードゥンでイッセーを捕まえ続ける為に壊れた端から結界を追加で展開しているから一応の膠着状態ではある様だ

 

グレンデルの方は白音が白い炎を纏いながらも接近戦を仕掛けて時折グレンデルが飛ばす火炎弾はサジが相殺、及び黒炎の各種特殊能力でグレンデルの動きの阻害で仁村さんが量産型邪龍の数を減らすように立ち回ってるな

 

白音も実質殆ど一人でグレンデルと相対してる訳だけどまだ戦闘開始からそれ程時間が経ってないから未だに『無傷』だ

 

それもタネは有るんだけど、俺と黒歌が来るまでの時間稼ぎとして使用したんだな

 

「なんだこのチビッこいガキは!ちょこまかと逃げ回るのはあの人間みてぇだなぁ!」

 

悪かったな。ちょこまか鬱陶しくてよ

 

だがそこで十分近づいて来ていた俺と黒歌の姿を視界に捉えたのかグレンデルが喜悦の表情を浮かべる。状況的に不利になるとかコイツは気にしないんだろうな

 

「おほ!来やがったな、人間!―――前回はお前は居なかったし、今回お前以外にも楽しみにしてたドライグはラードゥンの野郎が盗っちまうし、あの学校とやらをぶっ壊しちまえば周りに散らばってる奴らも全員集まるからそれを狙ってたんだが、まぁいい。前回消化不良だったあの闘いの続きをしようぜぇぇぇ!人間ちゃんよォォォ!!」

 

言うが早いか返事も聞かずに特大の火炎を吐き出してきやがったな!

 

「本当にお前ってお喋りな割に他人の話は聞かねぇよな!」

 

「じゃあ、私はラードゥンの方に行くわね。あのまま赤龍帝が封じられるままなら兎も角、下手に次元の狭間にでも飛ばされたら厄介だし」

 

「了解」

 

火炎を避けつつ俺がグレンデルで黒歌がラードゥンを担当する事にしてそれぞれの相手に向かおうとするが、その直後に莫大な威圧感が新たに出現した

 

グレンデル達でさえ手を止めて思わず全員がオーラの感じる方に目をやるとそこには褐色肌でエジプト風の祭服に身を包んだ美男子が居た

 

見た目は人間だけどこのオーラはドラゴンのものだな

 

この場に現れるクロウ・クルワッハに迫るオーラの持ち主となれば候補は一人(匹)

 

「これはアポプス殿。貴方は今回の戦いには不参加だったはずですが、如何されましたかな?」

 

ラードゥンが問いかけるがやっぱりコイツが原初なる晦冥龍(エクリプス・ドラゴン)、『アポプス』か

 

向こうのアジ・ダハーカと言い、全盛期の二天龍クラスのドラゴンが二匹揃ってるとか明らかに戦力過剰過ぎて可笑しい事になってるぞ

 

まぁアジ・ダハーカもアポプスもアグレアスと学園の魔法使いが狙いのはずだから全力戦闘は仕掛けて来ないはず・・・だよね?

 

「ふむ。あの魔女が余りにも早く居なくなったみたいなので様子を見に行って欲しいと言われてな。逃げたのか、それとも殺られたのか如何かとな」

 

「ああ~、あの紫ババアな。ユーグリットの奴が俺ら用の龍門(ドラゴン・ゲート)を用意している間に一足先に学園とこいつ等燃やすとかって出て行きやがったからな・・・そういやアイツ死んだのか?気にもしなかったぜ」

 

ああ、様子見ですか

 

教えたらそのまま帰ってくれないかな?元々戦うつもりは無かったみたいだし

 

「あの魔女さんならフェニックスの涙でも再起不能な程度には痛めつけられてるぞ。下手したらそのまま死んでるかもな」

 

一応十字架は剥ぎ取りアイテムとして欲しいから最低限の処置はしてるはずだけど、絶対に死んで無いとは言えないからね

 

え?神器を剥ぎ取ったら死ぬって?いやだなぁ、相手はテロリストですよ?―――つまりはそういう事なのです

 

ワンチャン摘出前に紫炎の十字架さんがヴァルブルガを見限ったら命だけは助かるかもね?

 

「そなたは有間一輝殿だな?貴公があの魔女を倒したのか?」

 

お!反応してくれたな

 

「俺も手伝ったけど別に俺だけで倒した訳じゃないさ。俺達の仲間を信じる絆から生まれる華麗な連携が有ってこその奇跡(のろい)だよ」

 

そう返すと主にその仲間たちからジトっとした目を向けられた

 

「有間のあのヒデェ作戦をそんなキラキラした言い方するとか違和感が酷いぞ」

 

「ですよねぇ。私も必要も無いのにあの魔女に少しだけ同情しましたもん。出現した時点で負け確イベントでしたからね」

 

「イッキ先輩がなにか作戦を思いつくと大体こんな感じです」

 

「『D×D』としてシトリー眷属も一緒に行動する事は増えるだろうし、その内少しずつ慣れて行くとは思うぞ?まぁ俺達もイッキの行動に慣れたかって聞かれると困るんだけどさ」

 

息つく暇も無い酷い言われよう!?

 

ちょっとふざけた返ししただけじゃん!

 

「成程、何が在ったのかは知らんが貴公は噂に違わぬ人物のようだな」

 

何その噂!スゲェ気になる・・・大体予想付くけど!

 

「ああ、それとリゼヴィム王子にもしも貴公と出会ったならついでに戦ってその胸の鼓動が停止する様をしっかりと確認するようにとも頼まれていたな。なにか奴を怒らせる事でもしたのか?」

 

なにその嫌がらせ!?ついでにエンカウントしたら殺せって俺がやったのって千年単位ぶりの復帰ステージを台無しにしてやっただけじゃん!

 

「うわ。どれだけみみっちいのよ、あのクソガキ爺」

 

黒歌の意見に一票だな。と云うかクソガキ爺とはまた的確な表現を・・・

 

それはそれとして俺の相手がアポプスとか、ソレ何てイジメ?

 

「おいおい、イッセー達はグレンデル相手のハードモードだけど、俺だけ何故かルナティックモードじゃねぇか・・・イッセー、グレンデルとトレードしてくんない?」

 

「ソイツはお前狙いなんだから取り合ってくれないだろうが!クソ!何とかさっさとこいつ等を片付けて援護に向かうから待ってろよ!絶対に死ぬんじゃねぇぞ!」

 

まだラードゥンの結界の中に居たイッセーが先程以上の苛烈さで結界を殴りつけていく

 

「匙先輩!ルル吉!気合を入れて下さい!グレンデルとラードゥンが居たんじゃイッキ先輩の援護にも向かえません」

 

「ッチ!今度はアポプスの旦那の横やりかよ。これだから他の奴と組むってのは嫌なんだ!」

 

白音たちとグレンデルの戦闘も再開したようだな

 

そして当のアポプスは人型のまま空中に浮いて俺と黒歌の目の前にやって来る

 

「貴公たちはあの学園とやらを守護する為に戦っているのだろう?私としてもこの場で戦えば私の生み出す闇が量産型の邪龍達だけでなくグレンデル達もついでに溶かしてしまう。場所を変えようか・・・そちらの猫又も参戦するか?」

 

アポプスが戦闘区域を移す提案と黒歌の行動について聞いてくる

 

と云うか戦闘の余波だけでグレンデル達も死にかねないとか聞いてるだけで泣きたくなってくるぞ

 

「・・・ええ、流石にイッキ一人でアンタの相手をしろとは言えないにゃん。なによりも私のイッキに手を出そうって云うなら噛み千切るだけよ」

 

唸る黒歌の様子にアポプスの一つ頷く

 

「そうか。そなたは有間一輝の女なのだな。ならば確かに退けぬだろうよ」

 

さて、流石に二天龍クラス相手に勝算は低いから、敵の計画のアグレアス転移までは最低でも粘らないといけないな

 

その後退くなら良し。退かないなら一か八かの【一刀羅刹】か【一刀餓鬼】に頼るしかない訳だ・・・それまで俺と黒歌だけで持つかな?

 

「―――ソーナ会長。そういう訳なので俺と黒歌はアポプスとの戦闘に入ります。正直言って力を使い果たすと思うので以降の遊撃は期待しないで下さい」

 

≪・・・分かりました。ただ一つだけ指令を出しておきます。絶対に死なないで下さいね≫

 

それはなんとも高難易度な指令(ミッション)な事で

 

「了解です。必ず生きて戻ります」

 

自分自身にも気合を入れる為にもそう返し、俺と黒歌はアポプスと一緒に学園から離れたアウロスの結界の程近くに移動した

 

 

 

[白音 side]

 

 

イッキ先輩と黒歌姉様がアポプスと一緒にこの場から離れて行く

 

あの邪龍の話ぶりだと戦闘の余波だけで魔王、龍王級でも死にかねないという事です

 

それにその話が本当なら回復役のアーシア先輩達も容易には近づけないでしょう

 

「あ~あ~!今度はあの人間とまた殺りあえると思ってたのに、アポプスの旦那が相手じゃ先ず死ぬな。ったく、どいつもこいつも邪魔しやがって」

 

グレンデルの苛立たしそうな視線が私達の方を向く

 

「せめて精々嬲らせてくれよ。簡単に壊れるんじゃねぇぞ!その上で死ね!」

 

グレンデルは言うが早いか特大のブレスを吐き出してきましたがそれを私の浄化の白炎と匙先輩の呪いの黒炎で相殺します

 

「はっ、有間を舐めんじゃねぇぞ!アイツは人間だけど殺したって死にそうにねぇんだからな!」

 

「そうですよ!私だって最近有間先輩は本当に『邪人』っていうカテゴリーの人なんじゃないかって疑い始めてるくらいですもん!」

 

「・・・ルル吉」

 

「なに?白音ちゃん?」

 

「後で体育館の裏に一人で来て」

 

そういうとルル吉の顔がサァっと青ざめましたね。大丈夫です。軽く関節を極める程度です

 

「ふふふ、余り楽観的な希望は持たない方が良いですよ。彼らの去った方をご覧下さい」

 

未だにイッセー先輩を結界で閉じ込めていたラードゥンがイッキ先輩と黒歌姉様の向かった方に首を動かして視線を送っているので皆でそちらを向くと木々や建物などのあらゆる影がどんどんと広がって闇がまるで海のように変質していくところでした

 

「アポプス殿の闇は全てを飲み込みます。あの闇に対抗しようとするなら何処かの神話の太陽神を引っ張って来るしかない。果たして彼らに防御不能のあの闇の波濤を何時までも躱しきれるでしょうか?見物ではありますね」

 

・・・太陽神は何処の神話でも主神かそれに近い立ち位置の神様である事が多いです。そんな方々でなければただでさえ強力な邪龍なのに属性の相性でも劣勢を強いられるという事ですか

 

「だったら助けに行って皆で倒すまでだ!―――ドラゴンブラスタ―!!」

 

イッセー先輩の極大の魔力砲撃がイッセー先輩を包む結界を打ち破り更にはその先に居たラードゥンを守る結界すらも破壊しますが間に挟まった結界でかなりの威力が削がれたのかラードゥンに当たった魔力砲撃はその表面を焼く程度のダメージしか与えられませんでした

 

イッセー先輩のチャージ砲は踏ん張りを利かせて放つ技なので直ぐにその場を離脱しようとする彼よりも一瞬早くラードゥンは再び結界で閉じ込めます

 

「私に攻撃を当てるとは凄いですね。ですが私も守護が本領の身。グレンデルには及ばないものの私の体も中々に硬いのですよ。そこに結界を加えればグレンデルをも上回れます」

 

深いダメージは無いのか目に見える速度で傷を再生させていくラードゥンですがイッセー先輩も諦めません。再び砲身に魔力をチャージしていきます

 

「なら、再生が追い付かないくらいに何度だって喰らわせてやるだけだ!」

 

いけません。その選択は悪手です。さっきの様子だとそれが成功する確率は低そうですし、例え成功してもその時にはイッセー先輩の体力が尽きてしまいます

 

時間一杯まで学園を守る事を目的とした防衛戦でそのリスクは負うには余りに大き過ぎます

 

止める間もなくイッセー先輩が再びフルチャージした砲撃をラードゥンに浴びせました。ですが、仕切り直した上での2発目では最初の一発と大して違いは有りません

 

「俺だって少しは考えるようになって来てるんだよ!ドラゴンブラスター!!」

 

2発目の魔力砲撃が行われてさっき同じような光景が生み出されました

 

「無駄ですよ。何度でも瞬時に貴方の周りに結界を・・・」

 

煙が晴れる前にイッセー先輩の居た場所に結界を張り直したラードゥンがそこを見ると既にそこにはイッセー先輩はいませんでした

 

「俺は!此処だァァァ!!」

 

ラードゥンが声の聞こえた頭上に目を向けると高速で突貫して拳を叩きつけて来るイッセー先輩の姿が目に入ったようです

 

拳こそ結界に阻まれましたがほぼゼロ距離まで接近し、イッセー先輩の連続攻撃で自身を守る結界しか展開出来ない今のラードゥンならば程なく押し切れるでしょう

 

「ぐうぅぅ!バカな!どうやってあの結界から脱出したというのですか!?」

 

「へっ!俺の渾身のドラゴンブラスターは威力はデカいけど反動もデカくてな。思いっきり踏ん張らないと反対方向に吹っ飛ばされちまうんだよ」

 

「! 赤龍帝。貴方はその反動を自ら受け入れたという事ですか!」

 

「そういうこった。俺のドラゴンブラスターでお前の結界が壊れるのが一瞬でも、自動で結界に全力突撃しながらの砲撃ならその場から離脱するのは容易いぜ!・・・つっても結構強めに背中を打ったから肺が詰まるかと思っちまったぜ」

 

よく見ればさっきまでイッセー先輩が結界で閉じ込められていた場所の背後の辺りの地面が結構抉れてますね。勢いよく地面に追突したのでしょう

 

「っは!ナイスだ兵藤!自爆要素を戦術に組み込むとか有間の影響か?」

 

「あそこまで極端じゃねぇよ!」

 

私と一緒にグレンデルと戦ってた匙先輩がイッセー先輩の方の状況が好転した事に嬉しそうな声を上げます。確かにイッセー先輩がラードゥンを倒してくれたなら協力してグレンデルを打倒し、イッキ先輩たちの援護に向かえます。全員で向かう訳にはいきませんが、この場合は譲渡の力を持つイッセー先輩が向かうのが一番効果的でしょう

 

―――いえ、どころかラードゥンを倒せばこの地域一帯を覆っている結界そのものも消失するはずですから、すぐさま魔王様方に連絡を入れれば軍隊を派遣して貰えるでしょう

 

ですが次の瞬間強大な気配が現れ、それが超高速で突っ込んで来ました

 

「避けて下さい!イッセー先輩!」

 

「え?―――グハッ!!?」

 

警告は間に合わずに飛んで来た赤い流星のようなものにイッセー先輩が吹き飛ばされました

 

「おっと、お前によそ見してる暇は有るのかよ?」

 

突然の乱入でも目の前の獲物の事しか眼中に無かったであろうグレンデルに私は隙を見せる格好となってしまい、その巨大な拳で殴り飛ばされてしまいました

 

「塔城さん!?こなクソ!お前の相手はこっちだ!」

 

匙先輩が殴り飛ばされた私を見て多数のラインに黒炎に黒炎の檻など能力をフルに発動させて注意を引きつけてくれます・・・今のは完全に私のミスでしたね

 

吹き飛んだ先に在った民家の瓦礫をどかして立ち上がると背後から優しい緑の光に体が包まれます

 

「白音ちゃん!今、回復します」

 

見ればイッセー先輩の使い魔の龍帝丸に乗ったアーシア先輩が回復の光を飛ばしてくれたみたいです。ナイスタイミングです。アーシア先輩

 

そして同じく龍帝丸に乗っていたレイヴェルの禁術とロスヴァイセさんの魔法のフルバーストが近場に居たグレンデルに襲い掛かり、押し戻してくれました

 

援護射撃も完璧です

 

私が戦場に意識を戻すと敵が新たに増えていました。その姿は龍を模した赤い全身鎧

 

「偽物の赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)!?ここでテメェが出て来るのか、ユーグリット!!」

 

ですがユーグリットはイッセー先輩の叫びを無視してラードゥンに話し掛けます

 

「ラードゥン。貴方とアジ・ダハーカは今回の我々の作戦の要です。そう簡単にリタイアされては困りますね」

 

「・・・ドラゴンの戦いに軽々に首を突っ込まないで欲しいですね。あまりこういう事が続くようでは土くれに戻ってでも楯突きますよ?グレンデルならば既にキレていたでしょう」

 

ラードゥンが低い声音でユーグリットに返すとユーグリットは顎に手を当てて思慮してからラードゥンに向き直りました

 

「分かりました。今後はもう少しその辺りの事を考慮に入れましょう」

 

取り敢えずその言葉でこの場は治めたのか次の質問を問い掛けてます

 

「アジ・ダハーカ殿の方は如何なのです?アポプス殿を始め、此方に戦力を投入し過ぎでは?」

 

「それが、アポプス殿が参戦した気配を彼も感じ取ったようで『なら俺様ももっと愉しませて貰うぜ』とやる気に満ち溢れてしまったのですよ。彼の戦いの邪魔をすれば物理的に消されかねないと思い、此方側に来ました・・・彼は我々の目的の一つがアグレアスに在ると忘れていなければ良いのですが・・・そこは『D×D』の皆様と皇帝に頑張って頂きましょう」

 

そっちの不始末を此方に押し付けないで欲しいですね

 

そして確かに遠目に見えるアグレアスで巻き起こってる爆発が当初よりより一層激しくなっているようです。これでは援軍は期待出来ないかも知れません

 

「無視してんじゃねぇぇぇ!!」

 

イッセー先輩がユーグリットに殴り掛かりますがそれを彼は正面から受け止めます

 

「ふむ。私としても赤龍帝同士での戦いには興味が有りますが先程釘を刺されたばかりですしね。それにそもそも貴方の相手は私では無いでしょう?」

 

“ズシンッ!!”

 

「がっ!?」

 

近距離から放たれたユーグリットの蹴りがイッセー先輩の脇腹に命中して吹き飛ばされるとその先でイッセー先輩が再び結界に捕らわれました

 

「そう。貴方の相手はこの私ですよ」

 

「ラードゥン!なら、さっきと同じように吹き飛ばしてやるぜ!」

 

「いいえ、そうはなりません」

 

その言葉とともにイッセー先輩を包む球体の障壁の一番外側にイッセー先輩の正面・・・いえ、チャージ砲を撃つ砲門の先にだけ穴の開いた障壁を展開させました

 

「貴方が私の障壁を壊したその一瞬に離脱するというのであれば一枚だけ壊されなければ良いのです。攻撃を防いだり、受け流したりするだけでなく、退路を断つ為だけの結界を追加でご用意させて頂きました。同じ戦術がそう何度も通用するとは思わない事ですね」

 

結界に閉じ込められたイッセー先輩を見たユーグリットは此方側のロスヴァイセさんの方に視線を向けて話しかけます

 

「今暫く待っていて下さい。仕事を終えたら真っ先に貴女を攫いに行きますから」

 

・・・白昼堂々の拉致宣言とはかなり酷い部類のストーカー発言ですね」

 

「いいえ、私はストーカーではありません。彼女がその才能を発揮できるのは貴方方の傍ではないというだけです。彼女も私の傍に居る方が幸せに過ごせるのですよ。彼女が私の傍に来るのなら、私が愛を与えて上げましょう」

 

途中から心の声が漏れていたみたいで反論されましたが・・・本心からの言葉なのでしょう。だからこそ本気で気持ち悪いです。ロスヴァイセさんもちょっと鳥肌立ったみたいです

 

自分の体を抱いて龍帝丸の端の方に移動して一歩でもユーグリットから距離を取ろうとしています

 

「行きません!私の居場所はグレモリー眷属です!」

 

「ならば『そこ』を破壊すれば、貴女は私のものとなる。貴女を連れ去った後にでも憂いを絶って差し上げましょう・・・もっとも、この場でも幾人か居なくなるかも知れませんがね」

 

そう言って飛び上がったユーグリットは掌に魔力弾を生み出して学園の方に複数撃ち出しました

 

龍帝丸の近くを通り過ぎようとした魔力弾はロスヴァイセさんとレイヴェルの魔法の二重障壁で防げましたが別の魔力弾の方は間に合いません

 

「させません!」

 

火車を操って魔力弾の一つはその火車を複数束ねた盾で防ぎ、最後の一つであった魔力弾は私自身が大量の闘気を纏って直接防御する事で何とか防ぎましたが先程グレンデルに殴り飛ばされた時以上にダメージを受けてしまいます。聖杯で強化されたグレンデルよりも偽物の赤龍帝の鎧を着るユーグリットの方が破壊力は上みたいです

 

「っぐぅ・・・」

 

直ぐにアーシア先輩の回復が飛んできますが全身が痺れてしまっています。肉体のダメージは治ってもダメージを受けたと認識した脳の処理が追い付いていない感じです

 

「おいおい、ユーグリット!お前まで俺様の獲物を横取りする気か!」

 

「それは違いますよグレンデル。私は学園を狙って攻撃を放ちました。そこに勝手に割り込んだのは彼女の方です」

 

よく言いますね!ソーナ会長の結界が有れば学園の上層部が吹き飛ぶ程度に被害は抑えられたでしょうが、今の冥界で立場の低い子供たちが通う為の学園がテロリストによって破壊されたという『事実』を残す訳にはいかないです

 

後で修復すれば良いというものではありません。『テロリストに蹂躙された学園』などと醜聞が広がれば今後の学園の運営にどんな支障が出るか分かりませんからね

 

学園を狙った攻撃に私達全員のオーラが怒りで力強さを増したのを感じます

 

「・・・テメェ。今学園を・・・そこに居る子供たちを狙いやがったな?」

 

その中でも一際強烈なオーラを放ち始めた匙先輩・・・今の彼は邪龍と呼ぶに相応しい質のオーラを放っています。強い想いに反応する神器が匙先輩の怒りに呼応しているのでしょう

 

「グハハハ!なんだなんだ?まだ足りねぇが、生前のヴリトラを彷彿とさせるオーラじゃねぇか。そういやあの学園とやらを狙えばお前らが必死こいてくれるとかって言われてたのを忘れてたぜ。じゃあ、こういうのは如何だ!」

 

グレンデルが思いっきり息を吸うと今まで吐いて来ていた火球タイプではなく、火炎放射と呼べるタイプのブレスを学園の方向に放ってきました

 

匙先輩が全身に黒炎を纏ってそのブレスの正面に立ち相殺しますが相手は聖杯で龍王クラスが強化復活した存在。今の匙先輩の炎で完全に相殺できるはずもなく匙先輩の全身がグレンデルの炎で焼かれていきます。アーシア先輩の回復の光もグレンデルの魔王級とも云える圧倒的な威力のブレスに包まれた匙先輩には殆ど届いていません

 

直ぐに私がグレンデルに攻撃を加えてブレスを中断させようと動き出しましたがその私の前にはユーグリットが立ち塞がりました

 

「おっと、赤龍帝がラードゥンに捕らわれている現状では貴女が最大戦力のようですからね。足止めさせて貰いますよ」

 

「どいて下さい!」

 

目の前のユーグリットに攻撃を加えますがひらりと躱され、反撃のパンチが飛んできます

 

『イッキ先輩に教わった技』も用いてその攻撃を避けますがその後連続して繰り出される攻撃にスピードもパワーも大きく劣る私では捌き切れなくなって結局殴り飛ばされてしまいました

 

少し内臓が傷ついたのか口元から血が滲んでます

 

「白音ちゃん!」

 

「アーシア先輩は匙先輩の回復に専念して下さい!」

 

今、アーシア先輩が一瞬でも匙先輩の回復を怠ったらただでさえ全身の火傷が広がりつつある匙先輩が一瞬でウェルダンを通り越した丸焼きになってしまいます!

 

ロスヴァイセさんとレイヴェルもこうしている今も迫りくる量産型の邪龍達の対処をしつつグレンデルに魔法を撃ちこんだり、私がやられないようにユーグリットに牽制の魔法を放ったりしてくれていますがこのままではそう遠くない内に匙先輩が死んでしまいます!

 

「ぐおおおおおおおおおおああああああああ!!」

 

≪匙!今すぐにその場を離れなさい!学園は・・・学園は最悪また立て直せば良いのです!学園を守る為に貴方が死んでしまっては元も子もありません!≫

 

こちらの状況は伝わっていたのかソーナ会長の切羽詰まった声が通信で聞こえてきました。ですが匙先輩はそれでもその場を動こうとせずに寧ろより一層黒炎を昂らせました

 

「有難う御座います、会長。でも・・・でもダメなんですよ!あそこにはあの学園に希望を見出した子供たちが居るんです!全然教えるって事に慣れてなくて、不器用で固い感じの授業をしてる俺なんかの事を笑顔で『先生』って呼んでくれる子供たちが居るんです!!―――すみません。会長。此処で退いたらアイツ等の笑顔を、不安な顔で塗りつぶしちまうって思うと、この場を一歩だって退きたくないんです!」

 

匙先輩がそう叫んだ瞬間、先輩の身を包んでいた黒炎が力強さと安定性を増しました

 

そして匙先輩の神器からそこに宿るヴリトラの声が聞こえてきます

 

≪遅くなったな、我が分身よ。今、神器の深奥より戻って来たぞ≫

 

「ヴリトラ!?全く最高に良いタイミングだぜ」

 

≪ふっ、如何やら暫く見ない間に随分と成長したようだな・・・いけるか?我が『相棒』≫

 

「当然だ!今なら俺は至れる(・ ・ ・)ぜ!!」

 

気合を入れて叫んだ匙先輩がかつて祐斗先輩やイッセー先輩、イッキ先輩が神器のその先(・ ・ ・)に辿り着いた時のような異様なオーラを纏い始めました

 

≪そうだ!今までのお前は周囲に居る男たちより劣っていると心の内側で無意識にブレーキを掛けてしまっていた。だが分かるぞ。今のお前は完全に吹っ切れたようだな!さぁ!今こそその心に秘めた胸の内を全霊で叫ぶ時だ!それを新たな龍王の産声とせん!≫

 

「ああ!ソーナ会長の眷属になって生まれた俺の夢!俺の願いを今此処に!」

 

匙先輩の熱いセリフに通信機の向こうのソーナ会長が嗚咽を漏らすのが聞こえます。ユーグリット相手に劣勢を強いられてるこんな現状だというのに自然と私も口元に笑みが浮かんできますね

 

「俺の・・・俺の夢は・・・

 

 

 

 

――ソーナ会長とデキちゃった結婚する事だああああああああ!!

 

 

 

・・・瞬間、敵も味方も関係なく時が止まりました

 

いえ、一つだけ動いてるものとして匙先輩の全身を包む漆黒の炎がまるでイッセー先輩の着ているような感じの鎧へと変化しました

 

恐らく思いの丈を叫んだ事でしっかりと禁手(バランス・ブレイカー)に至ったのでしょう

 

グレンデルの炎も止んでいる中、最初に動き出したのは匙先輩です

 

匙先輩は全身鎧の禁手化(バランス・ブレイク)を解除すると喋り始めます

 

「ヴリトラ!今なら至れるぜ!」

 

≪・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・≫

 

「子供たちの笑顔が、俺に力をくれるんだ!俺の夢!俺の願い!」

 

≪・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・≫

 

「俺は!子供たちの為の先生になるんだあああああああ!!―――禁手化(バランス・ブレイク)!!」

 

匙先輩が再び漆黒の鎧を身に纏いました

 

「『罪科の(マーレボルジェ・)獄炎龍王(ヴリトラ・プロモーション)』、地獄の業火に等しい炎をその身でタップリと味わいな!」

 

≪・・・我が分身よ。何事にも取り返しのつかない失態というのは在るものだぞ?≫

 

確かに・・・絶対に今日この日の事は匙先輩の生涯に渡った黒歴史になる事間違い無しですね

 

一応フォローするならさっきまでの匙先輩の様子なら子供たちを守ろうとする『先生になる』という夢の発露でもきっと至れただろうという事ですかね?

 

≪な、な、な、な、何を言っているのですか匙、貴方は!≫

 

当然と言うべきかムードの欠片も無い告白を聞いたソーナ会長が完全に(ども)りながら問い掛けてます・・・音声のみですが今の会長が顔を真っ赤にしてるのは簡単に想像付きますね

 

「か、会長!い、今のは聞かなかった事にしてくれませんか!」

 

≪も、もう遅いですよ!貴方は私の事を異性として見ていたのですか!?そんなリアスと兵藤君じゃあるまいし・・・そ、それに貴方の事が好きな桃や瑠々子の事は如何するのですか!?≫

 

「え?仁村と花戒が・・・俺を?」

 

≪「会長!なに暴露してるんですか!!?」≫

 

この場に居たルル吉と他の場所に居た花戒先輩の声が重なりました

 

お二人が匙先輩狙いだという事はルル吉を通して知っていましたが、匙先輩の恋心に欠片も気付かずに二人の恋を見守る立場だったソーナ会長がこんな形で暴露するとはそうとう混乱している証拠でしょう。確かにとてもインパクトに溢れた告白では在りましたが、3人には同情してしまいますね・・・匙先輩に同情の余地は無いですが

 

「ひょ・・・兵藤!俺はこんな時如何したら良いんだ!?」

 

「―――サジ。俺の祖父ちゃんはもう死んじまってるんだけどよ。まだ生きてた時、俺の幼い頃にこう言われたんだ『男ならハーレムを目指せ!可愛い女の子から告白されたら迷わずゲットしろ!そうして色んなおっぱいを手中に収めるんだ!』ってさ」

 

何処か遠くを見つめながら懐かしむような声で答えるイッセー先輩ですけど、そのお祖父さんは小さい時のイッセー先輩に一体何を吹き込んでるんですか!

 

リアス部長達との女子トークでもイッセー先輩の御両親は部長たちが裸エプロンでイッセー先輩に迫るのも寧ろ推奨してたみたいですし、もしかしてイッセー先輩のドスケベ根性は血筋の影響なんでしょうか?

 

≪・・・サジ、桃、瑠々子。取り敢えずその事はまた後で話し合いましょう。ええ、きっとその方が良いはずです≫

 

≪「「りょ、了解です」」≫

 

後日、ルル吉にはその話し合いがどうなったのか根掘り葉掘り訊く必要が有りそうですね

 

ですが、なんにせよ匙先輩が禁手化(バランス・ブレイク)に至った事で大分戦況が持ち直しました

 

まだ足りてませんが、ヴリトラが戻って来たという事は他のドラゴン達も同じく神器の深奥から帰還したという事です

 

「! ファーブニルさんのオーラを感知しました!召喚します!」

 

次にアーシア先輩がファーブニルの召喚に取り掛かります

 

五大龍王の一角であるファーブニルはアーシア先輩のパンツを欲しがる変態ですが、その実力は本物です。かの龍王が加われば戦況は五分にまで持ち直せるでしょう

 

ですが、召喚されたファーブニルが契約の対価として受け取ったアーシア先輩のパンツでその場でクッキング番組をリスペクトした料理をし始めました・・・何でも『ディアボラ風アーシアたんのおパンティー揚げ』だそうです

 

如何やら私はあの変態龍王の変態度を甘く見ていたようですね。龍帝丸の上でアーシアさんがふらついてロスヴァイセさんに支えられていますが、アーシア先輩の心労が心配です

 

ですが、そんな突然の此方の思考を麻痺させる調理風景に何匹かの量産型の邪龍が共感を覚えたらしく、ファーブニルの揚げたパンツを食べた後の『在りのままのキミでいて欲しい』というセリフで大号泣してそのままこっちに寝返りました・・・きっとあの邪龍達は量産品の宿命とも云える時折出る『不具合を抱えた品』なのでしょう

 

それとド変態龍王(ファーブニル)の『在りのままのキミでいて欲しい』とはつまり揚げたのは失敗だったという事でしょうか?・・・衣服を揚げ物にする時点で失敗なのは当然ですか

 

女の私でもオリーブオイルと玉ねぎ、ニンニク、塩、コショウで揚げたパンツに需要を持てるような男性は世界を見渡しても1人だって居るのか怪しいのは分かります

 

そして最後にイッセー先輩の下にドライグの意識も戻ったみたいです

 

なんでも歴代白龍皇の思念をファーブニルが説得したらしく、見事に歴代白龍皇の思念はパンツとお尻に目覚める事でイッセー先輩の神器に眠る歴代赤龍帝の思念と和解したんだそうです

 

なんでもお互い女体の神秘は素晴らしいものであると認めた上でおっぱい派かお尻派か、定期的に闘論会を開いて相手の派閥の者を自陣営に引き込むという憎しみでも否定でもなく、ライバルとして認めるからこそ、お互いの性癖を高めて行けるのだそうです

 

そしてあわよくば相手の信念(へんたい)を打ち破って自分の主張こそが至高だと認めさせるのだとか・・・神器の深奥で永遠に争ってて下さい

 

ですがコレで今までトリアイナや真紅の鎧では白龍皇の力が使えなかったイッセー先輩が自由に白龍皇の力を使えるようになったみたいです

 

完全に戦いの天秤が此方側に傾いてきました

 

彼らを倒し、イッキ先輩と黒歌姉様を助けに向かうんです!

 

 

 

「おや?少し見ない内に随分と賑やかになりましたね。此方はもう終わりましたよ」

 

先程一度聞いただけですが、本来ここに居てはいけない者の声が耳を打ちました

 

見れば遠くから祭服を着た褐色肌の青年の格好をした邪龍・アポプスが片手に何かを掴んで歩いて来るところでした。そしてソレを私達によく見えるように前に出します

 

あれはイッキ先輩です!気絶しているのでしょうか?ピクリとも動きません。イッキ先輩が敗けるなんて!―――いえ、今は一刻も早く助けなければ!

 

あの状態で敵の手中にいるなんて危ないなんて話じゃありません!

 

「リゼヴィム王子の依頼通り、彼の心臓はその活動を停止させました」

 

・・・・・え?

 

「人間の体は貧弱です。確か心停止から10分以上経つと蘇生はほぼ不可能だそうですね。既にこの者の心臓が停止してから此処に歩いてくるまでに15分は経過しています。動かない相手に攻撃を加えるのは趣味ではないので止めこそ刺してませんが、コレで依頼は完了という事で良いでしょう?・・・それでは私は元々この戦いに参加する気はありませんでしたのでコレで失礼します」

 

アポプスはそう言うとイッキ先輩を地面に置いてそのまま去って行きました

 

イッキ先輩が・・・死んだ?なら、黒歌姉様は?アレ?目の前で相対していたユーグリットの頭が何時の間にかかなり上に在ります。何時飛んだのでしょう?・・・ああ、私がへたり込んでいるせいですか。首も動かせないですけど多分レイヴェルも私と同じようになっているのかも知れません

 

さっきから思考があちこちに跳んで支離滅裂になってます

 

そんな・・・だって私達の事をお嫁さんにしてくれるって・・・まだ結婚もしてないし子供も出来てないんですよ?

 

分かっています。イッキ先輩が如何に私達の中で最強でも相手はあの二天龍に匹敵したというクロウ・クルワッハに迫るオーラを放つ最凶クラスの強敵

 

イッキ先輩の能力が基本格上殺しと呼べるものでも分の悪い戦いなんだって事くらいは

 

でも・・・それでも・・・

 

 

 

「・・・どうして?」

 

私はその一言を止められませんでした

 

 

[白音 side out]




匙は普段から自分の夢はデキちゃった結婚だと言っているので土壇場で間違えて叫ぶ事くらいは有ると思うんですよねww

ヴァルブルガを速攻リタイアさせちゃったのでアポプスを出してみたんですが、流石に勝つのは難しそうだったので取り敢えずイッキの息の根を止めてみましたw
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。