[三人称 side]
地面に投げ出された有間一輝を目の当たりにしてチーム『D×D』の中で一番初めに動きをみせたのは赤龍帝の兵藤一誠だった
有間一輝への想いの強さで云えばこの場では白音とレイヴェルがツートップだがその二人はあまりの衝撃の大きさに心が麻痺してしまって直ぐには動けなかったのだ
だがこの場における一番の激情家である彼は辛うじて怒りの感情が上回った
その怒りは勿論イッキを殺したというあのアポプス及びクリフォトへと向けられたものもあるが、それ以上に今の一誠は自分自身に怒りを感じていた
如何してあの時咄嗟に転移の光に消える自分の親友を屠ったアポプスに飛び出して行けなかったのか・・・当然それも有るが、それ以上に今回の戦いにおける自分の不甲斐無さが何よりも許せなかったのだ
グレンデルとラードゥンが襲撃して来てから自分は僅かな隙を突かれてラードゥンに終始結界で捕らわれてしまっているだけだった
結界使いであるラードゥンに見合った戦術ではあるが一誠としては結果論だろうと皆がボロボロになって戦ってるのに自分一人だけがある意味で一番安全な結界の中で暴れていただけだ
そしてそんな時間稼ぎにまんまとハマっている間に黒歌を除けばイッキとの付き合いの長さで云えば一番である自分が親友を助けに行く事すら出来ずに死なせてしまった
悪魔に転生して裏の世界に関わるようになってから実戦では格上との戦いばかりで自分も含めて仲間の誰かが何時か死んでしまうという可能性は確かに頭には在った
だがそれは全力を振り絞った激闘の中でそれでも手が届かない、そんな状況であるのだと無意識に思ってしまっていたのだ
だが現実には結界に捕らわれている間に全部が終わってしまった
・・・決してラードゥンとの戦いに手を抜いた訳では無い
しかし、それでも・・・
「―――こんなのが納得出来るかよぉぉぉぉぉ!!」
その叫びと共に莫大なオーラが全身から迸る
習熟度以外にも想いの強さによって出力が上下する神器の特性によるものだ
その高まった力と拳で自分を今もなお閉じ込めている結界を殴りつけると一撃ごとに一枚の結界が破壊されていく
「ック!恐ろしいまでのパワーですね!」
ラードゥンの声音に焦りの感情が乗るのと同時にイッセーの周囲を覆っていた結界は全て破壊され、先ずはラードゥンに向かって行く
「出ろ!『
その言葉と共にイッセーの体から小さな白い、それこそ掌に乗せられるようなサイズのドラゴン達が体の各所にある宝玉から飛び出して来る
それによりイッセーはこの力がどういうモノなのか判っているのだ
「行け!」
号令と共にラードゥンに迫る彼より先行した飛龍達がラードゥン自身を守る強固な結界に張り付き一斉に機械的な音声を流す
『Divide』『Divide』『Divide』『Divide』『Divide』『Divide』『Divide』『Divide』『Divide』
「馬鹿な!コレは白龍皇の半減の力!?貴方はその力を完全に同化させたと言うのですか!?」
ラードゥンの驚愕の声には答えずに度重なる『半減』で耐久値を減らされた結界をいとも容易くその拳で打ち破り、その奥に居たラードゥンに勢いそのままの拳を叩きつけた
ラードゥンに当たった拳は”メギャッ!!”という鈍い音を響かせてその顔面の一部を抉り削る
「まだまだァァァ!!」
続けて左腕を『戦車』の特性を反映して肥大化させたソリッド・インパクトを打ち込むと腹部に大穴が開いた
咄嗟にラードゥンが障壁を張っていなかったら下半身はまるまる吹き飛んでいただろう
しかし今の一撃でラードゥンは上半身と下半身が辛うじて繋がっているだけの状態だ
如何に邪龍と云えど決して無視できるだけのダメージでは無い
「吹き飛びやがれぇぇぇ!!ドラゴンブラスタアアアァァァ!!」
翼に収納してあったキャノンから渾身の魔力砲を撃ち放ち、ラードゥンの居た場所を爆炎が包む
「ふぅ・・・危ない所でしたね」
だが煙が晴れる時にユーグリットの声が聞こえ、中から現れたユーグリットはラードゥンを背に庇うように立ちながら右腕を突き出していた
偽物の赤龍帝の鎧で増大させた魔力弾で相殺したのだろう
その後ろに居たラードゥンはその足元に
「ラードゥン。今回は貴方の敗けのようですから強制的に退場させますよ。今の一撃を喰らえば消し飛んでいたのは分かっているはずですね?―――グレンデルならまだしも貴方はこの一帯を結界で包む役割が有るのですから・・・その怪我では大規模結界の維持にもその内支障が出るでしょう?早く治療して貰ってきて下さい」
「・・・仕方ありませんね。体を新調してまた遊ばせて貰うとしましょう」
グレンデルよりはまだ聞き分けの良いラードゥンは素直に
追い打ちを仕掛けたい処だがすぐ傍にユーグリットが居てはそれもままならない
「ふふふ、貴方の相手はこの私です。赤龍帝同士で楽しみましょうか」
「ふざけんな!俺達こそが赤龍帝だ!称号とかに興味はねぇけど、それでもお前なんかに赤龍帝の『名』をやれるかってんだ!」
イッセーの啖呵に相棒たるドライグも同意する
『よく言った相棒。我ら二天龍の苦労もよく知らぬこんな小僧に俺様のパートナーが務まるはずも無い!何よりリゼヴィムという奴もユーグリット、貴様も俺は気に喰わん。それならばまだ女の胸に現を抜かすこのバカの方がマシというものだ!』
「―――そうですか。それは残念です。ドライグの魂を此方の鎧に移さないかと提案しようと思っていましたが、まさか提案前にフラれるとは・・・おや?」
ユーグリットが何かの気配に気づいたような仕草を取るとアウロス学園の方から極大の光の柱が立ち昇った。事前に聞かされていた転移の光だ
これで冥界の子供たちやその父兄の方々を安全な結界の外側に逃がす事が出来る
怒りの感情自体はまだ収まらないものの、その事自体は素直に喜ばしい事だ
だが光の柱はそのままに一向に転移が始まる気配が無く、皆が訝し気な表情となった辺りでその光が突然あらぬ方向を向いた
光の向かった先は空中都市アグレアスである
アグレアス全体が転移の青白い光に包まれると先程まで遠目にも十分視認出来た巨大都市が忽然と姿を消してしまったのである
「如何やら上手くいったようですね」
「テメェ!一体何をしやがった!!」
きつく問い詰められたユーグリットは大仰に手を広げて答える
「なに、簡単な話ですよ。あの学園で新しい転移魔法を練っている魔法使い達の中に一人、我々の協力者が紛れ込んでいただけです。その者に転移魔法が発動する直前の隙を狙って転移の対象及び転移先を変更して貰ったのです」
そこにソーナ・シトリーの声がインカムではなく、ユーグリット達にも聞こえる全体通信で響く
≪・・・成程。貴方方が狙っていたのはアグレアスに眠る技術ではなく、アグレアスそのものであったという訳ですか。貴方方が最初に3時間という時間的猶予を与えたのも全く新しい様々な結界を素通り出来る大規模転移術の完成を待った為ですね?≫
全く新しい方程式で組まれた転移魔法という事はどの勢力もそれに対する対抗術式を持っていないという事。冥界の中だろうと外だろうと好きな場所に転移させて隠す事が出来る
「流石は知略家たるシトリーの次期当主殿ですね。その通りです。単純にアグレアスを転移させようとしてもかなり骨が折れるので、折角だから高名な魔法使い達の手をお借りしたという訳です。彼らが我らに協力して頂けないのならばそういう状況に誘導してやれば良いだけの事です」
≪我々はまんまとハメられたという訳ですか≫
彼女の苦々し気な声が聞こえる中で『D×D』のメンバーが心底嫌悪する声が新たに聞こえてきた
≪うひゃひゃひゃひゃ!その通りだよぉぉぉん♪ユーグリットくん。ネタばらしタイムご苦労だったね☆アグレアスに居た住民は邪魔だから空中都市の真下辺りに自然と置かれちゃったけど、出来れば彼らもついでに次元の狭間にでも放逐できれば最高だったんだけどねぇ・・・まっ、流石に協力者の魔法使いも転移が始まる直前にそこまで術式の改変を仕込むのは無理だから今回は見送ったよ。それはそうとラードゥン君に聞いたぜ?お仲間の一人がおっ死んじまったんだって?いやぁ、ご冥福をお祈りいたしますわ・・・まぁアポプス君に依頼を出したのは俺様なんだけどな♪≫
空中に映し出されたリゼヴィムがそんな相変わらずのふざけた態度で煽ってくる
元より気に喰わない性格とイラつく言動だったが今の彼らには今までの何十倍も耳障りな声に聞こえる。正直に言って今すぐに自分の鼓膜を破いてしまった方がまだマシなのではないかと思う位だ
≪イイね、イイねぇ!キミたちのその怒りと悲壮な感情が綯い交ぜになったかのような表情!そんな顔を向けてくれるんならキミたちを一気に殺すのが勿体なくなっちゃうぜ★俺が飽きるまでは一人ずつ殺していっても良いかもね♪キミたちのそんな視線だけで相手を殺せそうな顔を見ながらこうして高級なワインを一口・・・う~ん♡デリシャス♪≫
「ガアアアアアアアアっ!!通信なんてしてないでこっちに出て来いリゼヴィム!テメェ絶対にぶっ殺してやる!」
≪あっははははは!怒り心頭だねぇおっぱいドラゴン君。ヤダヤダ♪こうして相手の手の届かない場所から馬鹿にするのが最高に愉しいんじゃん。まっ、間近で直接その顔を見るのも良いものだけど、それは次の機会にでも取って置くとするぜ☆≫
決して相手の手の届かない場所から一方的に見下すという悦に浸っていたリゼヴィムだが、そこでまるで良い事を思い付いたとばかりに"ぽんっ"と手を叩く
≪そうだ!折角だしもう少し盛り上げてみようか―――グレンデルく~ん!さっきから度々戦闘の邪魔しちゃってゴメンね~★そんなキミの為に一つアドバイスをしようか。あの学園を襲ったら『D×D』の奴らが本気になるって最初は言ったけど今はそこに転がってるアポプス君の玩具を彼らの前で踏み付けのボロボロの消し炭にしてやれば今戦ってる彼らは一も二もなくグレンデル君を殺しに来てくれると思うよ~♪これぞ正しく死体蹴りってやつだ。さぁ、張り切っていこ~う☆≫
「ッ!!行かせるかよぉぉぉぉ!!」
今まで援護射撃有りとはいえ基本一人でグレンデルと対峙していたサジが鎧から伸びる幾重ものラインを飛ばしてグレンデルに巻きつけてそれを阻もうとする
だが、幾ら
更に言えばサジがその身に宿す
それでもグレンデルと最低限戦えるだけの力は出せているが学園を守りつつ友の
気やオーラで体を守っている訳でも無い人間の体など態々溜めを必要とする程のブレスを吐く必要も無い。サジのラインなど無視して首だけを有間一輝の方に向け、軽く息を吹くような感覚で灼熱の炎を浴びせてやれば十分だ
イッセーもユーグリットを振り払ってイッキの下に向かおうとするがものの数秒で彼の守りを突破出来るはずもなく、軽いブレスとはいえ一軒家程度は軽く飲み込むような炎に親友の体が包まれた
「グハハハハ!ざまぁねぇなぁ!前の時は消化不良で終わっちまった上に死んじまってよぉ!ボロボロにしてやりたいとは思ってたんだ!火加減はしておいたから形くらいは残ってると思うぜ?その方がお前らも盛り上がるんだろう?」
"グックック"と喉を鳴らすようなイヤらしい笑みを浮かべて振り返るグレンデルにリゼヴィムのテンションも最高潮に達する
≪うひゃひゃひゃひゃ!そうそう、分かってるじゃんグレンデル君★跡形もなく消し飛ばすよりは見るも無惨な姿を晒した方が―――≫
“ドンッ!!”
そこまで口にしたところでグレンデルの上顎から下が斬り離された
≪・・・へあ?≫
思わず間抜けな声と表情になるリゼヴィム
グレンデルに至っては身体構造上もはや声も出せない
一瞬でグレンデルの傍を通り過ぎた黒い影・・・いや、この場でソレを視認出来た存在がどれだけ居るのかも分からないがその影はほぼ直線上に居た龍帝丸の上に軟着陸した
「ゼェ・・・ゼェ・・・お~、痛ってえええ。でも、以前よりは怪我もマシになったな。まぁまだまだ大怪我に変わりないから修行有るのみか」
≪・・・んだよ!何でテメェが生きてんだよ!テメェはアポプスが殺したはずだろう!?≫
画面の向こうからどこか俯瞰的な視点で見ていた為かリゼヴィムが一早く復活して死んだと聞かされていた有間一輝がなぜ生きているのかと怒鳴るが当の本人はそれに取り合わずにひらひらと手を振るだけであしらうような様を見せる
「ああ~、ブチ切れてる処大変申し訳ないけど今忙しいから後にしてね・・・白音!」
「―――ッはい!グレンデルの魂を封印します!」
先程まで絶望から無気力に沈んでいたはずの彼女は涙を拭いながらも素早く反応する
「イッキ様も回復を!」
同時にイッキを想った涙を流していたレイヴェルもその涙でイッキの回復を図った
白い炎を纏う火車を出現させた白音はグレンデルの体の周りを円を描くように回転させ、その炎の結界の内側に魔法陣が展開される
恐らくは仙術と魔法を組み合わせた封印術なのだろう
「むっ、流石に魂を封じられたらグレンデルの復活が叶うか怪しいですね。此処は一つ―――」
そう言って危険な魔力を圧縮した魔力弾を複数放とうとしたユーグリットの直ぐ後ろから女性の声が聞こえた
「あら?折角の白音の見せ場なんだから邪魔はさせないわよ」
「! しまっ・・・」
咄嗟に首だけ振り向くも既に遅く、ゼロ距離から仙術・妖術・魔力・魔法を混ぜた極大のミックス砲とでもいえる攻撃を喰らい、ユーグリットはあえなく吹き飛ばされた
「黒歌さん!無事だったんですね!!それにイッキも!!」
アポプスは言及こそしていなかったものの有間一輝が死んだと聞かされていた以上は決して無事ではなく、それこそ下手をすれば彼女も死んでいたのではないかと想像していたのだ
幾つか少し深めの傷は在るものの、痛手と云える程の重傷は皆無の様子に仲間想いの彼はこの状況に思考こそ追い付いていないが嬉しいという感情だけは素直に吐露する事が出来た
しかし黒歌は何かを思い出そうとしているような仕草を見せる
「ん~、何か忘れてるような・・・あっ、そうだったわね。触媒は必要だったにゃ!」
そう言って黒歌は目の前の
「へ?触媒?」
親友の彼女に手を出すような下種な思考は持っていなくとも、普段触れ合いの少ない猫耳黒髪美少女に突然手を取られたイッセーは一瞬硬直し、その隙に目の前の美少女に碌な抵抗も出来ないままにぶん回された上で遠心力在りきにぶん投げられた
「ほ~ら、白音~。ドラゴン一匹ご配達にゃ♪」
「ナイスです。黒歌姉様」
グレンデルの体と頭を前に片手で印を結んでいた白音は近くに落ちてきた
まだ敵が居る中なので説明するよりは手っ取り早いと判断したのだろう
戦闘において
取り出した宝玉を魔法陣の中に投げ入れると
「邪龍グレンデル!その魂よ、常闇と
強力なドラゴンの魂を封じた神器である
封印後にその場に残っているのはグレンデルの巨体らしき形の土くれとグレンデルの司る色である深緑の色に変化した宝玉だけだ
そこに回復を終えて龍帝丸から降りてきたイッキがその宝玉を回収し白音とイッセーの傍に寄る
「イッキ先輩!」
白音がイッキの名前を呼びながらその腕の中に跳躍気味に抱き着くとイッキもバツが悪そうな声音で目元に未だに涙が溜まっていた彼女の顔を優しく拭ってやる
「白音もレイヴェルも悪いな。アポプス相手だと死んだふりをするのが一番生存率が高そうだったからさ」
「いえ、いいんです。イッキ先輩や黒歌姉様が無事ならそれで・・・後で埋め合わせはして貰いますけど。最初はイッキ先輩が死んだと聞いて本当に絶望したんですよ?直後にイヅナの念話で生きていると知れましたが、あの時は世界が終わちゃったんじゃないかと錯覚したくらいです」
白音がそう言うとイッキも「う゛う゛っ・・・罪悪感が」と形容し難い困った表情を浮かべる
≪おいおいおいおい、待て待て待て!死んだふりだぁ?そんなチンケなもんでアポプス君を騙せる訳が無いだろうが!適当ほざいてんじゃねぇぞ!≫
アポプスの魔の手から逃れた方法がそんな手段であるはずがないと断じたリゼヴィム
確かに彼の言う通り距離を開けていたりしたなら兎も角、直接この場まで有間一輝を運んで来たアポプスの目を誤魔化すのはイッキや黒歌どころか初代孫悟空でも出来るか怪しいだろう
その疑問にイッキはとある死神漫画の魔王のセリフを借りて答える
「では此方からも訊こうリゼヴィム
内心テンション爆上げしながらもイッキは更に続ける・・・流石に魔王プレイを続けたら後で羞恥心で悶えそうなので口調は戻したが
「そう睨むなって。アポプスはお前との契約を違えてなんていないさ。お前がアポプスに出した依頼の内容をよく思い出してみるんだな」
味方側も気になっているみたいなので皆と別れた後の事を軽く説明するイッキだった
[三人称 side out]
~少し前~
俺と黒歌とアポプスが町の端の方に辿り着いた時、先行していたアポプスが此方に向き直る
アポプスもこっちに背を向けている程度では隙らしい隙も見当たらなかったから結局何もせずに此処まで来ちゃったな
さて、
「黒歌、一応訊くけどアポプス対策に太陽系統の神秘の宿った術とか持ってない?」
そういうのが在れば大変有難いんだけど?
「そんな都合の良いもの持ってないにゃ。大体悪魔も妖怪も太陽とは相性が悪い場合が多いから使える奴なんてほんの一握りよ・・・そう言うイッキは如何なのよ?『第七秘剣・天照』だっけ?日本の太陽神の名前を冠してるでしょう?」
「名前を
某ドラグ・ソボールの太〇拳とかも使おうと思えば使えるだろうけど、それも意味無いしな・・・今の俺なら『光魔法・かっこい〇ポーズ』とか出来るか?―――やらんけど
「―――もう良いか?」
黒歌と軽口を叩いているとピリッとした雰囲気を出したアポプスが確認してくる・・・如何やらこれ以上の引き延ばしは出来ないようだ
そのアポプスの周囲に蠢く闇が展開され始めた。アレだけ見るとギャスパーの操る闇みたいだな
ギャスパーの闇は魔神バロール由来のものだから質で云えば似たようなもんなのかも知れないが、アポプスの闇の方が出力は上だし年季も違うだろう
生前のバロールなら、もしかしたら良い勝負出来たかもな
だが前方の闇に注視した処で直ぐ足元の自分の影から闇の槍が飛び出てきた
「にゃにゃ!危にゃい!」
「相手の影でも『闇』のカテゴリーなら支配下に置けるってか!」
俺も黒歌も感知タイプだから一早く攻撃を察知出来たけど、リアス部長やロスヴァイセさん辺りの後衛職だったら大怪我必至だぞ!
二人でその場を飛び退いてそれぞれが魔法や狐火を放っていくが、それらはアポプスの広げた闇に飲み込まれて消え去っていく
よく見れば蠢く闇が過ぎ去った場所はゴッソリと削られて消えている・・・闇に溶けているんだろうけど、そっちの特性はある意味リアス部長の消滅の魔力に近いか?
絶対に触れたくない攻撃だ
そうしている間にもどんどんと闇の領域が広がって行くとその闇も段々と水気を帯びたようなものに変化して、まるで津波のようにあらゆる方向から形状を変えて俺達を刺し貫こうと迫って来る。だが一応俺も黒歌も感知タイプのテクニック寄りだ
必然的にアクロバティックな動きで回避しながら反撃を叩き込んでいく
その反撃を闇で防いでいたアポプスが感心したように言う
「成程、魔王級というだけでなく貴公等は回避性能が高いようだ・・・そちらの猫又は見た所時間を操っているな?有間一輝は手段は判らんが如何やら反射速度がズバ抜けている。だが、このままではジリ貧だぞ?」
確かに、大仰に回避している俺達に対してアポプスは初期位置からたいして動いていないし、向こうは俺達の攻撃を防げるのに俺達は防げないからな
さっきも黒歌が試しに結界張ってたけど闇の槍が普通に溶かして貫いてたしさ
・・・一つ試してみるか
一応俺もオーラの質だけなら原初の悪神クラス以上とセラフォルーさんに評価を受けた身だ
俺は後ろから襲い掛かって来ていた闇を体を回転させつつ避けながらオーラを纏わせた指先でほんの少しだけ触れる
その結果を確認した俺はアポプスに対して突撃していった
「来るか!有間一輝!」
随分とまぁ嬉しそうな顔してるな畜生!
突っ込む俺に対してアポプスの展開する闇の密度が増していくが構わず突き進み、放たれる闇の隙間に無理矢理体をねじ込むように距離を詰めて遂にアポプスの眼前まで近づいた
「素晴らしい・・・が、そうも接近すれば逃げ場が無いぞ?」
奴の言うように既に避けられるだけのスペースが無い。それにアポプス自身も前面に闇の盾を展開したのでこのまま殴りかかっても殴った手が溶けるだろう
だが全てを飲み込む事で防御する質量の無い闇の盾を俺は盾の端の部分を
「なに!?」
こっちに近づく上で剣は回避の邪魔だったので展開して無かったから固めた右こぶしでアポプスの胸部を殴り飛ばしてやった
「ぐっは!!?」
ん?思ったよりはダメージが入ったな?
「クククク、如何やら貴公を侮り過ぎていたようだな。不思議か?―――本来の私は闇そのもの。基本、物理的なダメージはそれでいなすからグレンデルのように硬くは無いのだよ。だが、本来の姿に戻ればそれだけでこの町一つ程度は闇に包んでしまう・・・それでも十分だと考えていたがよもや私の『原初の水』を鷲掴みにする者が居るとは思わなかったぞ」
ああ、舐めプじゃなくて縛りプレイ中なのね
闇の水・・・『原初の水』とやらの対処は簡単で接触箇所から俺の邪気を流し込んで『原初の水』から『聖杯の泥(比喩表現)』に
もっとも、手加減していても向こうの方がオーラが格段に強いから触れた箇所を(俺にとっての)無害化する程度のものでしか無いけどな
だがアポプスは攻撃を喰らった事でテンションが上がってしまったのか人間の姿は変わらずだが先程よりも大量の闇を縦横無尽に操って襲い掛かってきた
「に゛ゃ~!!相手のやる気を引き出して如何するのかにゃ~!?」
「黒歌だってバカスカ攻撃してたじゃん!偶々俺の攻撃がヒットしただけだって!」
責任の押し付けは止めてくれない?責任が有るとしたら全部リゼヴィムが悪いんだから!
なんにせよこのままでは拙い。俺は避けるしかなかった迫りくる闇の攻撃を物理的に逸らしたり、いなしたり出来るようになったが黒歌は相変わらず結界は役に立たないし本来の彼女は後衛職だ。純粋な体術では俺より劣るからその内避けられなくなるだろう
事実、かすり傷程度だが幾つか傷が付いている
俺もさっきアポプスに無理矢理近づいた時に多少は傷付いたけど黒歌の方が切羽詰まってる
敵の攻撃に突っ込んでのかすり傷と避けに徹してのかすり傷ではその意味合いが違うし、アポプスの攻撃も激しさを少しずつ増していってるからな
そして遂に黒歌が紙一重で避けていた攻撃がより深くヒットしだした
完全に直撃こそしてないものの既に幾つかナイフでザックリ切り裂かれたような傷が出来ている
「ッツ!痛いわね!出し惜しみとかしてらんないにゃん!」
黒歌が息を深く吸って集中し、妖術やら仙術やらを放っていたのを止めて今度は黒く燃え盛る車輪である火車のみを展開する
浄化の炎であればアポプスにとっても太陽程では無くても弱点属性だろう
火車のみに力を注いでいるからか何時もより圧縮された炎だ
「いけ!」
黒歌の号令の下多数の火車がアポプスに襲い掛かるが奴も余裕の表情を崩さない
「おやおや、確かにそれを喰らえばかなり熱そうですが、先ほどまでの苛烈で多様な攻撃も全て防いでいた私に数を減らした攻撃が届くと御思いですか?全て溶かして差し上げましょう」
アポプスの操る闇が火車を四方八方から消しに掛かるがその攻撃を黒歌は全て闇と闇の僅かな隙間を針の孔に糸を通すかのような繊細な操作で躱しきる
「ほう、コントロールに神経を注いでいるようですが、そういう場合、本体の注意が散漫になりますよ。今の貴女に私の攻撃を避けられますか?」
だが黒歌は先ほどまでと打って変わって余裕を持ってアポプスの攻撃を躱していく
勿論その間も火車の制御を怠ってはいない
複雑怪奇な軌道を描く火車がアポプスに迫るが彼も闇の盾以外にも防御の姿勢を取る
しかしそれこそミリ単位で制御していた火車はそれらの防御すらもまるで絡みつくような動きですり抜けてアポプスに襲い掛かった
「ヌグゥ!先程までの速さとはまた違う。まるでそこにそちらの有間一輝の素早さが加算されたかのような反応速度だ」
正解。流石の戦闘経験値だな。良く見抜いてる
あの日、黒歌達と夜の大運動会を開催して房中術も活用しまくって彼女達の気をそりゃあもう隅々まで把握し弄んだ(弄ばれた)俺は俺が格上相手の実戦で生き延びる為の必須スキルである脳のリミッター解除技を仙術で外部から発動する事が出来るのではないかと思ったのだ
知覚加速と肉体強化の2種類が有るけど仙術使いの黒歌と白音はそれぞれ集中すれば成功率100%とはいかないまでも使えるようになった
最初に白音がグレンデル相手に短時間とはいえ無傷でやり過ごせたのもコレのお陰だ。それに体に負担を掛けるリミッター解除技も人間よりも基本頑強な彼女達の場合は限界値が俺より高いから最終的には俺よりも使いこなす事も出来るようになるだろう
レイヴェルも修行の中で俺がリミッターをONとOFFに切り替えてやる事でもう少しでコツが掴めそうなのだ・・・黒歌とか時間加速と知覚加速を併用すればガチで俺の【一刀修羅】に近い風景が見える事だろう。もっとも、その分現実の時間に換算すればあっという間に限界が訪れるだろうが
完全後衛職のレイヴェルだってこれを覚えれば消耗を考えなければ禁術の砲台から禁術の速射砲台にクラスアップ出来るな
俺自身の強化ではなく黒歌達の強化という形だが、コレならばリアス部長にも発表出来る!
もっとも、相手の脳内を弄る繊細な作業が必要なので今の俺でも房中術必須だからリアス部長達には適応できないがな!祐斗にイッセーにギャスパー?―――『ア゛あ゛ぁぁぁぁぁ♂』な展開なんて誰も望んじゃいないんだよ
絶対に神々に頼まれたってやらねぇ!俺の仙術の練度が素で
「認めよう。貴公等は真に強い『敵』であると!・・・惜しむらくは私が本気を出せぬ事と有間一輝、其方だけは殺すように言われている事だな。もっと場を整えて戦いたかったものだ」
残念そうに首を横に振るアポプスを見て黒歌が意外そうな声を上げる
「へぇ。邪龍のクセにそういうの気にするのね。あのグレンデルとかなら関係無しに暴れまわってたでしょうに・・・あのバカ王子のお使いを素直に受けてる分、理性的なのかしら?まっ、それはそれで別の意味で厄介極まりないんだけどにゃ」
「確かにな。大人しく命令に従う邪龍も暴れまわる事しか頭に無い邪龍も面倒だ」
両方が揃ってるクリフォトがマジで面倒だよ
「私をグレンデルのような邪龍の中でも粗暴極まる品の無い輩と一緒にされるのは少々残念だ。理性的というのであればラードゥンもまだましな方だろう。それと、私は別にリゼヴィム王子に大人しく付き従っている訳では無いぞ。あの王子は貴公等も感じたように小者で矮小で不出来な者ではあるが、一応聖杯で復活させて貰った恩義は有るのでな。最低限の義理立てをしているだけだ・・・幾つか頼みを聞いたらあの者とは手を切ろうと考えている。あの男は傍に居ても不快になるだけだ・・・口にする言葉全てが幼稚過ぎるのでな」
アポプスのリゼヴィムへの評価メッチャ低い!低空飛行どころか土中潜行してるじゃん!
いや、解ってたけどさ!
「てか、さっきは俺の心臓を止めるとか言ってなかったか?」
「? 同じ事だろう?人間は心臓が止まれば死ぬのだから」
いや、そんな真面目に応対しなくても・・・いや、待てよ?
「なぁアポプス。少し聞きたい事が在るんだが」
攻撃の手を止めて質問すると向こうも手を止めて応じてくれた。これだけでも有難い
「リゼヴィムの事は個人的には嫌いなんだよな?それと、リゼヴィムには俺の事を正確には『殺せ』とか『死亡の確認』ではなくて『心臓の停止の確認』を依頼された訳だ。後ついでにお前は出来れば場を改めて戦いたい・・・と、そう言う事で良いんだよな?」
「―――確かにそうだが・・・貴公の言葉の意図が解らんな。何が言いたい?」
ちゃんと興味を示してくれたようだな
俺はニンマリとした愉しそうな笑みを浮かべてアポプスに最後の確認を問い掛ける
「リゼヴィムからの依頼とリゼヴィムへの嫌がらせを両立できる案が在るんだけど、如何だ?一つ俺と契約を結ばないか?」
▽
「―――とまぁそんな感じでな。アポプスに出された依頼を達成させてあげる為に身体操作で自力で心臓を止めて仙術で体内の血流を操って循環させてたんだよ。全身の血液を操るような真似しなくても心臓内の血液に適切な圧を籠めれば良いだけだから意外と難易度低かったけどな・・・アレだ。ちょっと仙術扱えれば人間って別に心臓止まってても死なないみたいだぞ?」
「『いや!その理屈は可笑しい!』」
一通り話し終えると誰彼構わず一斉にツッコまれた。許してくれよ。リゼヴィムの為に煽りムーヴしてるだけで変な事言ってる自覚は有るんだから
確かに扱う力は少ないけど血流への加圧具合を間違えれば内側から"パーン"するからな
それにあのまま戦ってても相手は『まだ私は後2回変身を残している』とか言える奴だし、下手に追い込んでなりふり構わず闇の領域を拡大されてたら学園ごと飲み込まれていたかも知れん
アポプスを相手取らなくて良いならそれに越した事は無かったんだよ
白音とレイヴェルには俺の回復とグレンデルの封印を手早く行って貰う為にもコッソリとイヅナの念話通信で状況伝えたけどな
「ともあれ今言った通りだよ。リゼヴィムも『その鼓動が止まるのを確認しろ』みたいな小洒落た言い回しなんてせずにストレートに『殺せ』って言っておけば良かったのにな」
そう言いつつ俺は次元収納からとあるアイテムを取り出す
今回も何時ものように例の録画装置で画面向こうのリゼヴィムが高笑いから間抜けな顔を晒す様を録画してはいるが、毎回それではマンネリ化してしまうとの意見が在ったんだよね
前にリゼヴィムが吸血鬼の国で間抜け面を晒した際の映像を俺は直接リゼヴィムに出会ってなかったのを理由にアザゼル先生とブランデー片手(俺はウーロン茶だった)の鑑賞会をしたのだ
酔った先生がついでにシャルバの踏み付け動画とか魔獣騒動の巨大美女爆散事件とか色々と映像を流していたりしたけどな
そんな訳で暗い部屋にかち割り氷のウーロンに部屋に漂う酒気などで微妙に場酔いにも似たテンションになった俺もアザゼル先生の悪ノリに付き合う形となったのだ
次元収納から先ず取り出したのは扇子だ
その扇子をバッと開くと中央には《残☆念》と書かれている
小馬鹿にされる事に耐性は無いのかたったこれだけでこめかみに青筋浮かび上がらせているリゼヴィムだけど、俺が次になにかを言う前に画面の向こうのリゼヴィムが居る場所に帰還していたらしきアポプスが援護射撃を入れてくれた
≪リゼヴィム王子。こんな時だが貴公に一つ伝えておかねばならない事がある≫
≪あ゛あ゛!俺様との契約を破っておいてその上なにが在るってんだぁ!?≫
≪ふむ。なんら貴公との約束自体は違えていないのだが、話を聴いていなかったのだな?それはそうと私やアジ・ダハーカが貴公と縁を切る条件として何処ぞの神クラスと契約しろというのが在ったが、此度の私は魔王クラス・・・即ち下位の神クラスの有間一輝と一時の契約を結んだ為、貴公の下を離れようと思う≫
あ、魔王クラスってそういう位置づけなんだ
魔王と龍王が呼び名が違うだけで同等の扱いだったりするのと似たようなもんか―――それに確かに戦闘が苦手な神様だったりすれば単純なオーラ量なら魔王クラス程度だったりするのかな?
≪はぁ!?巫山けんなよ!お前たちみたいな危険な邪龍と契約を結ぶような奴は大抵何処ぞの悪神とかしか居ねぇだろうからこそ出した条件だぞ!≫
≪しかし貴公は「神と契約しろ」ではなく「神クラスと契約しろ」としか言っていない。これ以上議論を重ねる気は無いが・・・それとも今此処で私と戦ってみるか?≫
画面の向こうのアポプスが静かにプレッシャーを放っているようでリゼヴィムは苦々しい顔をしたままだったが、その場でアポプスとやり合うのは不味いと思ったのか「あ~、はいはい、行け行け」とアポプスをおっ払うように手を振って見送った
「・・・裏切りのライブ映像」
「よぉぉく目に焼き付けておけよイッセー。アレが『王』の資質、即ちカリスマ性ゼロの悪魔の果ての姿ってやつだ」
「・・・イッキも白音ちゃんも容赦ねぇな」
リゼヴィムには情けも容赦も要らないと思うぞ?
「それにしても契約を重んじるとされる悪魔のくせにこうも連続で契約で揚げ足取られ続けるなんてな。久しぶりのデビュー以前に新人悪魔研修からやり直した方が良かったんじゃないか?」
手に持った扇子をもう一度広げるとそこには《チラシ配りのリリン君、爆誕?》と書いてある
≪おいなんだその扇子は!さっきは『残念』としか書いて無かっただろうが!そんなピンポイントに他人を煽る扇子が在るか!≫
「ああ、これか?コレはアザゼル先生謹製の『合いの手扇子』だよ。音声入力式でな。状況に合わせた好きな言葉を入れれるんだ」
≪自作自演じゃねぇか!そういうのは合いの手って言わねぇんだよ!!≫
至極まっとうなツッコミ。もはや煽り散らす事すら頭に無いとか『扇動の鬼才』が聞いて呆れるな
「さて、話してる間に他の場所の量産型邪龍の群れも片付いたみたいだし、ラードゥンは敗退、グレンデルは封印。残るはユーグリットだけだな」
俺が状況を確認すると先程黒歌に吹き飛ばされたユーグリットが諦めたかのように首を振る
「リゼヴィム様。流石に私一人でこの場の全員を相手取るのは不可能なのですが、如何いたしますか?無論。戦えと仰るのでしたら従いますが」
≪ああ~、止めとけ止めとけ。お前が居ないと細かいところで指示を出すのが面倒になるから帰って来い―――ああ!でもそう言えばまだ事前に一つ仕込んでいたもんが在ったよな。最後に『D×D』の皆さんに盛大に披露して差し上げなさい★≫
「畏まりました―――では」
恭しく画面のリゼヴィムに一礼をしたユーグリットが片手を指パッチンの形にする。
ああ、潜入した裏切りの魔法使いに仕掛けた爆弾とやらか
「テメェら!今度は一体何を仕掛けやがったんってんだ!!」
「そう急かさないで下さい、赤龍帝。今から見せて差し上げますよ」
ユーグリットはイッセーが止める間もなくその指を打ち鳴らした
“ヴンッ!!”
「は?」
次の瞬間ユーグリットの目の前に縛られた一人の男が転移して来てそのまま盛大に爆発した
「『え?』」
皆が呆ける中、『こうなると知っていた』俺は爆炎に突っ込んで気配を頼りにユーグリットと距離を詰めて目の前に迫ったユーグリットを全力で殴りつける
しかし一応ユーグリットも歴戦の戦闘経験は持っている為か俺の攻撃に咄嗟に鎧の籠手の部分でパンチを防いだようだ
「ふぅ、今のは危なかっ・・・グブオ゛ェェェ!!?」
最後まで喋り切る前にユーグリットはまるで『生身の腹を直接強打されたかのようなダメージ』を受けて大量の血を吐いてその場に倒れた
「ッグ、カハッ!・・・今のは?」
「『第六秘剣・毒蛾の太刀』。衝撃を相手の好きな部分にぶち込む技で所謂浸透勁ってやつだ」
鎧の防御なんて関係ない貫通ダメージ
この攻撃を防ぎたかったら自分の肉体から離した障壁を張るか内臓を含めて鋼の肉体になるまで鍛えるかするしかないぞ
「取り敢えず、今は寝ろ」
ダメージから回復されても厄介なので丁度真下に在ったユーグリットの頭を踏みつけて邪気をタップリ流し込んでやったら陸に上がった魚のように”ビチビチ”とのた打ち回り、「グアアア!姉上ぇぇぇ!何故そんな男とオォォォ!!?」とか叫び始めたので黒歌に転移封じやら体の拘束やらと後最後に防音の結界も張って貰って放置する事にする
「おい、イッキ。アレ・・・死ぬんじゃねぇのか?ていうか如何なってんだ?」
「大丈夫、死ぬほどの邪気は流し込んでないから・・・しかし脳内に直接邪気を注入するとああなるのか。まぁ気絶
延々と悪夢でも見てるような感じかね?
万華鏡写〇眼!ツクヨミ!!―――お前はこれからグレイフィアさんとサーゼクスさんの仲睦まじい姿を眺め続ける!・・・みたいな?
シスコン拗らせてるユーグリットには悪夢だろうさ
今回やったのは単純で俺は裏切り者の魔法使いが潜んでいる事は知っていてもそれが誰かは分からなかったので転移魔法がアグレアスを転移させた後で様子を見るという名目でイヅナを派遣したのだ。イヅナが辿り着いた時には既に裏切りの魔法使いはゲンドゥルさん達にやられて拘束された状態だったのだが、そもそも可笑しいのだ
裏切りの魔法使い一人に対して名うての魔法使いが揃ってる場所で裏切らせたところで捕まるのは必定だし、アグレアスの転移先をこの魔法使いは知っているはずだ
なにせ行先変更をしたのはソイツなんだから
ならば最後に考えられるのは口封じしかない
イヅナ越しにそうゲンドゥルさん達に伝えると直ぐに魔法使いの体を精査してくれて、その魔法使いの魔法力を消費して発動する爆発魔法を体内に仕込んでいたのが明らかになった
体内に仕込まれた魔法を短時間で取り出すのは難しいとの事だったので学園から離れた場所に棄てるしかないという事だったのだが逆にその魔法が発動する前に別の魔法を間に差し込む事は出来ないかと思い、起爆の信号(指パッチン)を目標にした転移魔法が爆発魔法の前に発動するように仕込んで貰ったのだ
現実でも投げた爆弾が手違いで手元に戻って来る(爆発前に相手に投げ返される)事は時折ある事なのでそれを少し参考にさせて貰ったんだよね
確実に相手の虚を突ける一撃になるからさ
「―――ユーグリットを逃がす可能性を考えた上でもリゼヴィムが指パッチンしてくれたらそれはそれで面白そうだったんだけどなぁ・・・まっ、今回はここまでって事で」
最後にまた扇子を広げると《爆発オチなんてサイテー》と書いてある
他に良い文言思い浮かばなかったんだよ
≪・・・・・・・・・・・・・・≫
もはや言葉も出ないのかこっちを睨んでるだけだったリゼヴィムの通信はそこで途絶えた
こうしてアウロス学園の平和は守られたのだった
・・・多分またアザゼル先生との鑑賞会が待ってるのかもな
リゼヴィムたちはあのまま去ったようで周囲一帯を覆っていた大規模結界も解かれ、異変を察知した魔王軍の人達が駆けつけてくれて今はその方々の手も借りて戦後処理をしている
学園は守られたけどアウロスの町並みはかなり酷い事になっているからな
アグレアスの方はそもそも戦っていた空中都市そのものが無くなっているから修復作業とかは無いけどアガレス大公の下に届くであろう大量の書類を想うだけで可哀そうになってくる
捕らえたヴァルブルガとグレンデルの魂を封じた宝玉に関しては後から駆け付けて「戦後処理、頑張ります!」と答えてくれた我らが『D×D』のリーダー、デュリオさんに丸投げした
グレンデルの宝玉は元々天界の清浄な気の満ちた場所で更に厳重な封印を施す事でグレンデルの魂が外に漏れる事が無いようにする予定だったし、折角此方側に戻って来た
後日聞いたところによるとヴァルブルガは無事(?)聖十字架には見捨てられたようで今は牢屋の中で廃人のようになっているらしい
ユーグリットはあの状態のままでは話も聞けないとの事で封印で雁字搦めにした後は邪気を取っ払って魔王軍の方に引き取って貰った
後の事は家族であるサーゼクスさんやグレイフィアさん、ついでに尋問官の人の仕事だろう
そうこうしている内にアザゼル先生もやって来たみたいだ
「悪いなお前ら、今回は何も出来なくて」
「いえ、結界の外で3分間の出来事では仕方ないですよ。その代わり『合いの手扇子』は役に立ちましたよ?」
そう返すと先生も愉しそうな笑みを浮かべる
「お!そりゃあ良いな。作った甲斐が有るってもんだ。それはそれとしてお前らに報告事項が二つ有る。一つは初代孫悟空が担っていた帝釈天が各地に派遣していた対クリフォトの先兵、その後釜が曹操に決まった」
「はぁ!?曹操ですか!?アイツ地獄に堕とされたって聞いてますよ!」
思わずイッセーが大声を出すが他の皆もそれぞれ驚いた表情だ
「どうにも地獄を自力で抜け出せたら帝釈天の下で首輪付きでこき使ってやるとヤツと取引してたみたいでな。聖槍も返されたようだ。まぁ少なくとも表立って馬鹿な真似はしないだろうさ。帝釈天の名の下に派遣された奴がテロ行為なんてしたら流石の帝釈天も体裁が悪いからな。それにインドラの野郎は傍迷惑な神ではあるが悪神って訳じゃない。アイツはシヴァと戦いたいだけだからな。少なくともクリフォトを相手にするよりはマシだよ。だから今は目を瞑っておけ」
そう諫められたイッセーは不承不承ながらも小さく「分かりました」と無理矢理納得したようだ
「で、二つ目だがロスヴァイセの書いた論文を解析したところ、そのモノの見方はトライヘキサの封印術式に応用できそうって話になってな。万が一トライヘキサが復活しても場合によってはロスヴァイセの論文から生み出した魔法術式で新たな封印を施せるかも知れない」
アザゼル先生の説明に先程の曹操の時以上の驚愕の視線がロスヴァイセさんに送られる
「そう・・・ユーグリットが危険を冒してまで東京にロスヴァイセと接触する為に現れたのはそういう事だったのね。トライヘキサの封印術式。それを応用すればクリフォトがトライヘキサを復活させた時にトライヘキサを制御する術式としても使えそうだったからかしら?」
リアス部長が思案顔になってるけど真実は、銀髪美人を姉の姿と重ねただけの
いや、そういう理由も有ったのかも知れないけどさ
「後は丸ごと奪われたアグレアスの秘密ってやつだな。あそこは旧魔王の秘蔵の技術がまだまだ眠っているから正直何に使おうとしているのか見当もつかん。一応あそこを調べていたアジュカにも聞いてみるが、余り期待は出来ないかもな」
そう言うとアザゼル先生は「じゃ、俺はもう行くぜ。あ~、やだやだ面倒クセェ」と愚痴りながら他の場所の戦後処理の為にその場から離れて行った
「ああ、そうそう。この学園をお前らはキッチリ守ったんだ。色々考える事は在るだろう。だが、何時までも固い表情してんなよ?」
振り向きざまにそういうセリフぶち込むのは卑怯だと思う
アザゼル先生が去った後、また皆がそれぞれの場所での作業を再開しようとした時にゼノヴィアが待ったを掛けた
「そうだな。折角学園を守ったのだからこのタイミングが良いだろう。実は皆に聞いて貰いたい事とリアス部長に了承して貰いたい事が在るんだ」
ゼノヴィアは俺達を見渡すとそのまま続ける
「私は次の生徒会選挙に立候補しようと思う。私は生徒会長になりたいんだ!」
「『ええええええええええええええ!!?』」
皆の叫び声が木霊する中、ゼノヴィアは満足気な笑みを浮かべている
波乱に満ちた学園生活はまだまだ続きそうだ
サジの方はソーナ会長が恋愛初心者の為に直ぐに告白についての話は出来ずにギクシャクしてるようだがもう直ぐクリスマスというイベントも迫っているからそう遠くない内に進展するだろう
結果は分からんがな!
某外道死神研究者「ダメだよ。放った爆弾は手元に戻って来るものじゃあない」
なんだか気が付いたらリゼヴィムを煽る感じになってましたww
次の章ではリゼヴィムと直接顔を合わせられるから今回以上に煽れるかな?