翌朝、日課のトレーニングとして家の地下の共同トレーニングルームに赴く
大体は此処で基礎練してから模擬戦及び必殺技開発組がグレモリー領地下トレーニングルームに転移し、瞑想だったり力を抑えて相手と自分の動きをよく見て組手を行うテクニックを磨くようなタイプの修行をする組に分かれたりする
だがいざ到着するとリアス部長の姿が無かった
別に集合時間に遅れてるという訳でもないので気にしなかったがリアス部長以外のメンバーが揃ったところで朱乃先輩から連絡事項が伝えられた
なんでも昨日解散した後でグレモリー家から連絡が来て重要な話が有るので一度冥界の実家に帰る事になったそうだ
一応今日の夜までには帰る予定らしいが通信で万が一にでも傍受される可能性を排してリアス部長を呼び出したなら、もしかしたらもう少し時間が掛かるかも知れないとの事だった
確かバアル家の関係だったっけ?
バアル家の重鎮とかが何人か暗殺とかされてたりしたんだろうな
・・・まぁどうせ悪魔側で殺されたのは『例の件』で私腹を肥やす事しか考えてなかったクズだから別に死んでも良いんだけど
そのまま初代バアルも死んでくれればサイラオーグさんも将来動きやすくなるんだろうけどなぁ
初代が死んだらそれだけでバアル家のパイプの半分以上が瓦解しそうだけどさ
そんな感想を抱きつつ基礎練と少しの模擬戦を終えた俺はまた京都に赴いて【一刀餓鬼】の修行をする。折角の冬休みなので休み期間中は可能な限りこの修行を中心にしていくつもりだ
九重に出迎えられたり、八坂さんも交えて一緒にお昼を頂いて両親に裏の事がバレた時の事をイヅナの通信ではなく改めて話したり午後から延々と回復してぶっ倒れたりを繰り返していると夕方の辺りで駒王町から緊急通信が入って来た
如何やらクリフォトの襲撃が有って、トウジさんが負傷したようだ
襲撃は今日だったのか。流石に日にちまでは覚えて無いな
「了解。直ぐに戻ります」
八坂さんと九重に軽く状況を伝えて心配する九重の頭を撫でてやってから俺は駒王町へ転移した
[イッセー side]
いや~、昨日は大変だったな
リアスが実家に呼ばれて一時帰国してから夜に寝ているとゼノヴィアがやって来て少し付き合って欲しいと言われたのでゼノヴィアの部屋に赴いてみると扉を開けると例の子作り部屋だった
そして中にはセクシーなネグリジェ姿のイリナが居てそのままゼノヴィアに部屋の扉を閉められて強制的に二人っきりになる始末!
ギクシャクしながらもイリナと一緒に昔はクリスマスにサンタを襲撃してプレゼントを強奪しようとか企んでたとかの昔話に花を咲かせているとイリナに押し倒されてしまったのだ
天使の翼を広げたネグリジェ姿の美少女に押し倒れるとかそれだけで鼻血が噴き出そうだった
イリナも俺の手を取って自分の胸に当ててそれでも天使の翼が堕天の兆候を見せない事でより一層艶っぽい表情になって唇を近づけてくる
だけどキスする直前で部屋の扉から家の女性陣の好奇心に彩られた視線を感じ取ってしまい、結局その日はなにも無かったのだ・・・あの扉には内側にカギを付ける必要が有るのではないか?
しかし今回はこれで良かったのかも知れない
俺も場の雰囲気に呑まれかけていたけどまだイリナとは告白もなにもしていないのだ
流石に段階飛ばし過ぎだし、そうなってたらリアスが悲しい顔をしそうだ
俺はまだ正式に好きと伝えたのはリアスだけだからな。イリナとのエ・・・エッチは非常ぉぉぉに魅力的だけど先ずは告白が先だろう
俺の周りの女の子たちが俺なんかの事を異性として好いてくれている事は自覚しているし、実際アプローチも凄い
世の女性のアプローチは絶対ここまで過激じゃないって確信出来る程度には凄い
ハーレム王を目指す者として近くにイッキが居るからか俺も意識しちまうぜ
特に先日のイッキの『絶対に黒歌さん達を幸せにする』って決意を聞いた後だと尚更な
少し前のオカルト研究部に入る前の俺なら漠然とハーレムを形成して可愛い女の子たちにチヤホヤされたいとしか考えていなかったけど今は違う
リアス達の事を本当に大切に想うようになった
・・・だからこそ、その想いに尻込みしちまってるんだよな
リアスに告白するだけでも滅茶苦茶勇気が必要だったのにイッキの奴は俺の3歩は先を歩いてやがる・・・今日みたいに一人一人と良い雰囲気になっても如何にも邪魔が入るならいっそ全員揃って告白した方が俺に必要な覚悟力は兎も角、難易度は低いんじゃないかって最近思えてきた
決意と覚悟と自分の優柔不断な不甲斐無さに悶々としながらも次の日の昼を迎えて午後には駒王町から駅二つ程離れた町に俺とイリナとゼノヴィアにロスヴァイセさん。そしてイリナの父親の紫藤トウジさんと一緒にその町の大型家電量販店を訪れていた
まだクリスマスプレゼントで一部決まっていない品物が在ったので下見に来たのだ
他にはサンタのコスチュームを色々と見て回って俺達が着る予定のサンタの服のデザインをもっと凝ったものに出来ないかという考えもある
ロスヴァイセさんにミニスカかズボンかと聞かれたけどミニスカ一択と答えておいたぜ!
これに関してはイッキも同意見だろう
あのチラリストのイッキなら生足よりも長めのストッキングや靴下などで僅かに太ももが見える絶対領域とか好きそうだ。間違いないね!
そして大方見て回った辺りで突然雨が降って来た
雨の予報なんて特に無かったけど、通り雨かな?
俺達は丁度近場の公園に屋根付きのベンチが見えたのでそちらに移動して雨が過ぎ去るのを待つことにした。通り雨なら長くても10分も降らないだろう
天気予報の大外れならズブ濡れを覚悟する必要が有るけどな
「全く、最後の最後でついてないね。ジョーカーなら天候操作で一発なんだが」
「天界の切り札様を傘代わりにするなよゼノヴィア」
てかそんな事で一々天候操ってたらキリが無ぇよ
「有間君や黒歌さんでもジョーカー程ではありませんが仙術で一区域の天気を多少操るくらいは出来そうですけどね」
ああ~、魔王クラスのあの二人なら確かにジョーカーのように自在に操って攻撃とかは無理でも雨雲を晴らすくらいの事は出来そうかな?
・・・人間ってなんだろうな?
少し哲学的な事を考えていると公園に一人の男が入って来た
それを見て俺達は警戒心を高める
なにせその男は日本刀を手に明らかに危険なオーラを漂わせていたからだ。少なくとも表の人間のイカれた切り裂き魔なんて事は無さそうだ・・・それはそれで大問題だけどな
「クリフォトか?」
ゼノヴィアが異空間に仕舞ってあったエクス・デュランダルを抜いて構える
幸い今は突然の雨もあって周囲に人は居ないようだけどまだ明るいうちにドンパチやり始めたら確実に人目に触れてしまう
すると隣のロスヴァイセさんが手元に魔法陣を展開させて周囲一帯の空気が変わる
「人避けの結界を張りました。とはいえ急ごしらえの結界なので余り長くは誤魔化しきれないと思って下さい」
いや、有難い。もしも見られて騒ぎが広まったら人々の記憶の改ざんやらその人達を守りながらの戦闘やらで大変な事になっていたはずだ
だがそこにトウジさんの心底震えたような声が耳を打った
「そ・・・そんなまさか・・・」
「お久し振りです。紫藤さん・・・いえ、今は確か紫藤『局長』でしたか。僕と彼女を殺した成果で昇進されたのですか?それは何よりですね」
トウジさんが彼を
でも、今まさに生きてるじゃないか―――何かの比喩か?
それとも、もしかして聖杯・・・なのだろうか?
「教会側で殺されていたのはスミスや轟・・・当時のメンバーだ。やはりキミがやったのか?」
「そうです。教会側で直接関わったのは貴方で最後だ。今、此処で裁いて差し上げます」
言うが早いかその男は手に持つ刀に恨みの感情をそのままオーラとして乗せたような斬撃を放ってきた。俺とゼノヴィアが防御するが鎧を纏っていなかった俺は吹き飛ばされ、ゼノヴィアもその重い一撃に地面に小規模なクレーターが出来る
それから二人は高速で斬り結ぶが徐々にゼノヴィアがそのパワーに押されているようだ
俺はこのままではダメだと素早く鎧を着こむ
「その太刀筋。教会の教えを基本に置いているモノだ。お前は教会の戦士だな!」
「ああ、『元』だがな―――しかし、エクスカリバーにデュランダルを持つ悪魔に赤龍帝の悪魔、そちらの銀髪の女性はヴァルキリーの悪魔ですか。私の居ない間にこの町は魔境へと変わってしまったのですね。紫藤局長、貴方を葬る為には『この力』を解放する必要が有る様だ。なに、手早く済ませれば一般人への被害も出ないでしょう」
ゼノヴィアの剣を弾いて俺達から距離を取った男は手にした刀から更に凶悪な瘴気を放ち始める
そして瘴気が徐々に形を変えていき、邪龍の気配を纏って八首の蛇の頭のようなモノが現れた
「八重垣君、その剣は!」
「神霊剣、
「
イリナの叫びに男はイリナの白い翼に視線を向けて皮肉気に笑う
「―――貴女が紫藤局長の娘さんですか。今はその天使の翼も憎々しいモノに思えてならないよ。なに、クリフォトの使っている聖杯の力で邪龍の魂とこの剣を融合させたらしい。だけど僕にはこの想い、この恨みを体現してくれる剣という事実だけで十分だ」
おいおいおい!クリフォトが神剣と邪龍を融合させたってのも驚きだけど教会側はまた聖剣・霊剣の類を奪われてるのかよ!コカビエルとバルパーにエクスカリバーを3本も奪われた事といい、一度管理体制を見直した方が良いんじゃないのか?
「さあ!断罪の刻です!」
驚愕も余所に八岐大蛇の首が俺達を襲う
『相棒!八岐大蛇の毒は危険だ!絶対にその牙を真面に喰らうなよ!』
左腕の宝玉からドライグの警告が飛ぶ―――ヒュドラのように毒が売りのドラゴンって事かよ!
男の一番近くに居たゼノヴィアに首の一つが最初に到達するがゼノヴィアは紙一重で横に回避して無防備なその首筋にエクス・デュランダルを振り下ろした
だが流石は伝説の邪龍というべきか刀身は首を半ばまで断ち切ったものの途中でその勢いを無くしてしまう。刀身が首に埋まったままのゼノヴィアに他の首が襲い掛かる
あれでは埋まった刀身を引き抜くのが間に合わないか!?
「ゼノヴィア!ミミックを伸ばして!」
イリナの咄嗟の助言に反応したゼノヴィアが
傷口に埋まったままの刀身は形態変化のミミックの先端を細くする事で抜き取った
流石は元ミミックの使い手!ミミックで戦況を出し抜く一瞬の判断はまだイリナの方が上だな
とはいえ相棒の声に迷いなく聖剣を発動させて危機を脱したゼノヴィアも流石だ
だが感心ばかりもしていられない。俺は俺で複数の首が迫っているからだ
あの牙が危険だと云うのなら、先ずは遠距離攻撃だ
俺は首たちに向けて複数のドラゴンショットを撃ち出してヒットさせる
ドラゴンショットは八岐大蛇たちの顔面の3分の一程度を吹き飛ばすがそのまま直ぐに再生してしまった―――再生持ちかよ!益々話に聞くヒュドラみたいだな!
「その程度ではこの邪龍は止められないぞ。何でもこの剣には本来八岐大蛇の魂の半分だけを入れて残りの半分は聖十字架使いの魔女の
その殆ど復活している邪龍に霊剣の霊力を上乗せした状態で使役する事にも成功したってか?アポプスに逃げられたからただ邪龍を復活させるだけでなく、支配下に置ける方法を模索してるのか?
なんにせよ不味い状況だ
耐久力はそこそこだがそこに再生も加える事でラードゥンやグレンデルばりに厄介なタフさを持っていやがる・・・倒そうとすればそれこそ全力のクリムゾン・ブラスター並みの力は絶対に必要になるけど、こんな住宅街の近くで派手な砲撃をかませる訳が無い!
しかしそこで俺の眼に俺達相手に目立たないように他の首の影に隠れるようにして首の一本が地面に埋まっている姿が見えてしまった
「アーシアァァァ!!ファーブニルを呼べえええ!!」
そうだ!詳しい事情は分からないけど奴の狙いはトウジさんだ
別に俺達全員を倒さなくても不意打ちの一発さえ決まれば人間のトウジさんは致命傷だろう!
イッキ?アイツにフェンリル以下の牙って通るの?
兎に角後方に下がって一緒の場所に居るトウジさんとアーシアが今一番危険だ!
俺が危惧した通り、直後に前衛の俺、ゼノヴィア、イリナの後方の地面から八岐大蛇の首が飛び出して真っ直ぐに二人の下へ向かう
アーシアが召喚の呪文を唱える暇は無い!更には俺達の方にも残りの首が邪魔に入るのでこのままでは援護も間に合わないぞ!
「させません!」
同じく後方に居たロスヴァイセさんが素早く二人の前に立ちはだかりシールドを展開する
その結界は見事に大口を開けた八岐大蛇の口に嵌め込まれる形となりその突進を止める事に成功した。だがその3人の
「キミたちが後ろに気を取られている間にもう一本仕込ませて貰ったよ。僕の怒りとクレーリアの悲しみ!貴方の命で清算させて貰いますよ!」
クソ!巨大で長い首が戦場全体をうねうね動いてるから1本見逃したか!
トウジさんは咄嗟に隣にいたアーシアを突き飛ばすが自身は八岐大蛇の噛み付きを回避しきれずに牙の先端が腕を掠めてしまった
それを見た男は歓喜の表情となる
「ああ、そうだ。それで良い!出来得る限り苦しみながら死んで下さい」
腕の傷はアーシアが直ぐに駆け寄って治療したけどトウジさんは膝をついて全身をガクガクと震わせて大量の汗を掻く
『相棒!八岐大蛇の毒は魂すらも腐らせる猛毒だ。早急に治療しないと手遅れになるぞ!』
ドライグの声が聞こえていたのかイリナが目に涙を浮かべて男を睨みつける
「よくもパパを!」
「そう、ソレが怒りの感情だ。如何に天使といえども大切な者を傷つけられればその激情を抑える事は出来ない」
「―――ッツ!!」
咄嗟に言い返せなかったイリナに男は醜悪な笑みを浮かべる
「ロスヴァイセさん!トウジさんを連れてこの場を離れて下さい。イリナ!今はトウジさんの安全確保が最優先だ!」
「う、うん!」
イリナもなんとか切り替えて改めて光力で出来た剣を構える
さて、とは言え簡単に逃がしてくれるのか?トウジさんが毒に侵された事でさっきまでの猛攻は鳴りを潜めたみたいだけど・・・
相手の様子を窺っていると遠くから朱乃さん達がやって来るのが見えた
「良からぬオーラを検知したとの報告が有り飛んできましたわ!」
援軍の登場に男は後方に飛び退く
「流石にこれ以上は人目に付くか―――紫藤局長!僕は必ず貴方と天界、そしてバアル家に復讐をします!絶対に許す訳にはいかない!」
男はそういうと足元にクリフォトの紋章の描かれた転移魔法陣を展開する
「キミたちの住むあの町は多くの犠牲の上に築かれた血塗られたまやかしの楽園だ。その事をよく覚えておくといい」
そう言い残し、男は転移の光に消えていった
[イッセー side out]
俺が京都から戻った時に向かった先は教会の医療施設だった
トウジさんが敵の八岐大蛇の毒を受けてしまい治療の為に此処に運ばれたそうだ
「悪い。遅くなった。トウジさんの容体は?」
「イッキか。今は教会の医療スタッフの人が治療に当たってる。黒歌さんがその場でトウジさんの体内の毒を大方吐き出させてくれたから最悪には至らないだろうってさ」
そっか。ヴァーリ達がサマエルの毒にやられた時にも治療した黒歌なら確かに治療は出来るだろう
「ん~、でも脆い人間の体だからにゃ~。あの白トカゲやアザゼルっちのように放って置いても自力で完治するのは難しいから残った僅かな毒は専門の治療で解毒するのが良いにゃ―――イッキが聖十字架の炎に突っ込んだ時みたいに私の浄化の炎で丸焼きにするって手も在るけどね」
「却下に決まってんだろ。少なくとも今此処でやるべき治療法じゃねぇよ」
絶対に普通に治療した方がダメージ少ないだろ・・・と云うかそのウェルダン式熱消毒とか下手したら焼死体が出来上がるし
父親がやられたイリナさんの方は落ち込んではいるもののそこまで深刻って訳じゃなさそうだな
黒歌が早期に治療を施したからかな
そして俺の到着に少し遅れてリアス部長とアザゼル先生もやって来た
「事情は聴いたわ。御免なさい。大事な時に居なくて」
「とは言え黒歌が居て助かったぞ。八岐大蛇の毒ともなればかなり特殊な専門の機関での治療か並外れた術者でなければ解毒は出来んからな」
まぁ黒歌は『並み』の術者ではないよな
少しすると医務室からグリゼルダさんと医者の人が出てきた
医者は俺達に一礼するとそのまま去っていき、グリゼルダさんが説明をしてくれる
「局長の体には現在、八岐大蛇の毒が残留していますがそれも極僅かです。それ故この後で局長を天界の専門施設に移送して残りの毒を完全に治療します。ですがその前に局長から皆さんに襲撃者の事についてお話が有るそうです」
俺達が部屋に入るとベッドの上で上体を起こしたトウジさんが出迎えてくれた
腕には点滴が繋がっているが顔色は極端に悪いという程ではないみたいだ
「パパ、体はもう大丈夫なの?私・・・折角ミカエル様の『
「心配は要らないよ。イリナちゃん。大方の解毒は済んでいるという説明は聴いてるんだろう?今は精々度合いで云えば二日酔い程度さ」
近づいて落ち込む娘の頭を撫でて元気を出させる為か少しおちゃらけた感じで大丈夫だとアピールするトウジさん・・・二日酔いって普通に気持ち悪いけどね
「さて、私が天界に治療に向かう前に皆さんにお伝えしたい事が有ります。今回襲ってきた彼・・・彼の名前は
「・・・『だった』という事は現在その者は教会から追放されているという事でしょうか?」
リアス部長の質問にトウジさんは沈痛な面持ちで否定する
「いいえ・・・そもそも彼はもう亡くなっています。昔、教会が彼を粛清したからです。理由は且つてこの町を管理していた上級悪魔、ベリアル家の子女。クレーリア・ベリアルと恋に落ちてしまったからなのです」
それからリアス部長がバアル家の現当主周辺の悪魔のお偉いさんが既に幾人か襲撃されて殺されている事を告げ、トウジさんも八重垣という人の仕業で間違いないだろうと言う
そして今、バアル家からグレモリー家に事態の説明に人が来るのでリアス部長が眷属を連れにやって来た事を話し、トウジさんも先ずはそっちから話を聴いた方が良いと言った
グレモリー家に説明に来る人も関係者以外には口が重くなるかも知れないという事で駒王町の管理をしているリアス部長及びその眷属とイリナさんだけが向かう事なった
俺達は皆が戻って来た時に改めて事情を聴くという
まぁ『王の駒』辺りの事情も知ってる俺としては初代バアルが目の前に居たら助走を付けたワンパンをぶつけたい衝動に駆られながら説明を聴く事になっちゃうだろうから有難い
当時の出来事だって俺に出来た事なんて無いだろう・・・そもそも町中でばったり出会う事も無かったし、よっぽど数奇で特殊な立ち回りをするか、これと云った修行も無しに猛威を振るえるような『俺TSUEEEEEEEEE!!』なチート能力が必要だ
少なくとも後者に関しては最初の三連ガチャで爆死したしな
さて、現実逃避もそこそこに実は今は頭の痛い問題が有る
・・・八岐大蛇。強化されてね?
そう云えば確かに紫炎の魔女さんが禁手で八岐大蛇の魂を取り込んだ八岐の炎蛇的なものを使っていたような気が薄っすらとするなぁ
・・・原作でも確か登場とほぼ同時にやられてたから忘れてたぜ
聴いた感じだとほぼ生身に近い感じになってるから耐久値とかが上がってそうだ
聖杯で強化されてるだろうから弱点とかにも強くなってそうだけど、八岐大蛇の弱点で思いつくのは酒に酔って寝首を掻かれた事だから酒に強くなったのか?
そうか。八岐大蛇は酒豪として生まれ変わったのか
仮に今後完全に復活する事が有っても決して酒に酔えない体質って考えると少しだけ不憫だな
っと、思考が明後日の方向に向いてしまったな
「純血の悪魔と人間の恋愛ですか・・・私もフェニックス家の淑女として少し考えてしまいますわね。和平前は私も漠然と同じ悪魔の貴族の下へ嫁ぐものなのだと思っていましたわ」
今はレイヴェルが悪魔と人間の恋路について難しい顔をしている
俺とレイヴェルも種族としては同じ条件だから思う処が有るのだろう
「悪魔の貴族の場合は特にそうだろうよ。俺達堕天使は大半は人間のおっぱい突いて堕天したような奴らばっかりだからその辺は悪魔に比べたら緩かったがな。だが和平前で純血の悪魔と教会の戦士の恋愛となれば下手を打てば戦争だ―――うちの幹部共も和平前から他の勢力の女と宜しくやってたみたいだが基本はバレない様にするか、少なくとも片方が完全に所属する勢力との縁を絶つ必要がある・・・それでもバラキエルのように厄介ごとは付いて回っただろうがな」
そうか。和平前のいざこざに巻き込まれたという意味では朱乃先輩の母親も似たような感じなのか
バラキエルさんクラスですら危ない橋だったんだから学生貴族と教会の一戦士では扱える権力・パイプ・実力、その全てがバラキエルさん一人に劣っていただろうからな
「・・・八重垣君もそのベリアル家の彼女も真っ直ぐに私達に想いを伝えてきました。例え教会と悪魔の者であろうとお互いを想いあう事が出来るのだと。その考えが広まればきっと争いも沈静化し、何時しか手を取り合える時代が来るのだと。しかし当時の私達には絵空事にしか聞こえなかったのです・・・ふふふ、あれから僅か10年足らずで三大勢力は和平を結んだというのに」
トウジさんが自嘲するように笑うけど流石にそれは仕方ないとも思うけどな
何せ数千年単位で争い続けていた訳だし・・・いや、もしかしたらもっとか?アザゼル先生って実際何歳くらいなんだろう?
「何時の時代も真っ直ぐで正しい馬鹿が割を食っちまうんだよなぁ」
「嫌になる位に世知辛いですね」
アザゼル先生の愚痴に俺もつい同意してしまう
正しい意見や正しい行いは大抵淘汰される少数派だ
「その点お前さんの事は心配しなくて良さそうだから気が楽だぜ。なにか在ったら根回しして磨り潰すのは厭わんだろう?イッセーなんかはその辺りはまだまだだからな。なにか在って解決するにしても力づくになりそうだ。まっ、ドラゴンらしいと言やぁらしいけどよ」
「『威』でもって『意』を示すというのも裏の世界だと割と通用してしまうのが何とも言えない処ですけどね」
武力を背景に『お話』するのは人間界でも一緒だけど、裏の世界だと軍事力よりも個々人の力量に大きな隔たりがあるからその辺りは物凄くこまごまとしたパワーバランスになってそうだ
そうして暫くするとリアス部長達が帰って来てバアル家の使者が初代バアルその人だった事や、当時のいざこざについてはグレモリー家当主であるジオティクスさんも知らなかった事。最後にサーゼクスさんにだけは初代バアルから事情(失笑)を話していたという事だった
トウジさんが改めて昔の出来事をもっと上手く、穏便に済ませられなかったのかと悔いてイリナさんが涙ながらに慰めた後でトウジさんはベッドの横に置いてあった大きなケースを取り出した
「実はね、イリナちゃん。私が日本にやって来たのはクリスマスの仕事の為だけじゃないんだ。コレをイリナちゃんに直接渡す為でもあったんだよ」
そう言ってケースを開けるとそこには一振りの聖剣が入っていた
「デュランダルの持ち主だったパラディンのローラン。そのローランの親友であり、幼馴染でもあった同じくパラディンのオリヴィエが持っていた聖剣―――オートクレール。真に清い者にしか扱えないとされた剣だ。その力は敵対する者の心すらも清く洗い流してしまうとされている・・・診断の結果、イリナちゃんが一番適性値が高いと判断された。天使に転生して聖剣の因子が強化された事と今代のデュランダルの持ち主であるゼノヴィアさんの相棒を長く務めていた事が深く作用したそうだ」
トウジさんはケースからオートクレールを取り出すとイリナさんに差し出す
「イリナちゃん。僕に言えた義理では無いのかも知れないけど、どうかこの剣で八重垣君を止めて欲しい。愛の為に戦った彼にこれ以上憎悪の刃を振るわせる事は在ってはならないんだ」
「うん!私、必ずこの剣であの人を止めて、パパを守るわ!例えパパが過去をどれだけ後悔していても・・・だって、家族だもん。それにあの人もそれだけ優しい人だったなら復讐を遂げても、きっと虚しいだけだと思うから、あの人の心も守ってみせるわ!」
「・・・『汝、汝の敵を愛せよ』。ああ、主よ。我々は漸く貴方様の教えを体現出来る時代への最初の一歩を踏み出せたようです」
トウジさんの様々な感情の入り混じったその小さな呟きを最後に俺達は病室を後にしたのだった
▽
翌日、俺達はまた天界を訪れていた
トウジさんを天界の医療施設に移送する時に八重垣さんが襲ってくる可能性が十分あったのでそれの護衛と、先日アウロス学園が襲われた時にファーブニルが披露したという『ディアボラ風アーシアたんのおパンティー揚げ』で感動して改心した量産型邪龍4体を天界でも詳しく調べたかったからだそうだ
説明してくれたリアス部長は変な顔してたし後ろに居たアーシアさんは顔を赤くしてたけどな
今は駒王町はオカルト研究部及び生徒会メンバーが出払っている訳だけど天界に来る気の無いアザゼル先生や
俺としてはルフェイとフェンリルにも天界に来て欲しかったが先日からヴァーリチームの方で秘境巡り中なので今は居ないんだよな
まぁこればっかりは仕方ない。仮にフェンリルが居ても今回は恐らくリリスも一緒だから仕留めるのは無理に近いしな
リゼヴィムを害する攻撃は例え俺の【一刀羅刹】でも弾かれる公算が高い・・・いっその事攻撃の瞬間に明後日の方向にバナナでも投げつけてみるか?
ワンチャン有りそうなのが何とも言えないな
そんな馬鹿だけど割とイケそうな作戦を実行に移すべきか如何か悩んでいると天界が
そしてそのまま天界の上空に赤い天使文字で非常事態を告げる警告文が広がり同じく警告音が鳴り響く。この事態に天使の人達も狼狽えている様子だ
直ぐに俺達の近くに居た警備の天使の人が状況を伝えてきてくれた
邪龍とクリフォトが攻めてきた・・・と
今居る天界の第一天の指令室に俺達『D×D』のメンバーと転生天使である『
現在量産型邪龍達は第二天、第三天、第四天で天使の兵団とそこかしこで戦闘中だ
「敵は信徒の魂の行きつく場所である第三天から侵入したようです」
一番大きいディスプレイに第三天・・・天国の様子が映し出され、そこには空中都市アグレアスと大量の邪龍、それからラードゥンとクロウ・クルワッハの姿が窺える
アポプスもヴァルブルガも居ないしクロウ・クルワッハは中級前後の実力の天使を真面に相手にするつもりはないのか攻撃を捌くだけだな
実質ラードゥンしか頑張ってないのは幸いか
次にクリフォトがどのような手段で侵入を果たしたのかという話になった時にアザゼル先生から通信が入り、冥府から侵入したのだと推測を聞かされた
≪信徒の魂が死後に行きつくのは天国と地獄の二択だけじゃない。辺獄と煉獄と呼ばれる特殊な事情を抱いた魂が一時的にそこに行きつき、魂を清めた後に天国に迎え入れられるんだ。分かるな?辺獄にも煉獄にも天国に続く道が用意されてるのさ。現在、人間界と天界を繋ぐルートは全て遮断されている。ならば残るはその二つしかない・・・最も、如何やって入ったのかは解らんがな。少し前なら辺獄と煉獄のモデルになった冥府を支配するハーデスがクリフォトに手を貸したと考えた処なんだが、今のハーデスはどっかの誰かさんのお陰で
へぇ、そのどっかの誰かさんは可能性の一つを事前に潰してたんだな
とっても優秀ですね!(棒読み)
「イッキ先輩、ふざけないで下さい。それに結局攻め込まれてます」
「せめて心の中でくらいボケさせてくれませんかねぇ!」
最近ずっと甘々な感じだったからこの毒を含んだ物言いが懐かしいよ畜生!
そこに指令室に伝令を持った天使が入って来る
「ご報告します。煉獄から第三天へ繋がる扉が破壊されているとの事です!」
「手段は分からんが、経路は知れたな・・・クリフォトの目的はなんだ?」
「最上層の『システム』・・・でしょうか?」
ゼノヴィアの呟きに朱乃先輩が一つの意見を出す
しかしそれはアザゼル先生によって否定される
≪そう簡単には第七天まで辿り着けんよ。お前らは第六天の強固な城壁を見たんだろう?如何にクリフォトと云えどもあそこを正面突破しようとすればただじゃ済まない。クロウ・クルワッハが居る事を加味してもな・・・それに例え辿り着けたとしても第七天に入れるのは聖書の神とセラフのメンバーだけだ。それ以外が侵入しようとすれば正しく神の御業とも云える強制転移で人間界の僻地に跳ばされちまうのさ≫
アザゼル先生が「昔コッソリ『システム』を視ようとしたらそいつを喰らっちまってよ」と暴露する・・・よくその時に堕天しなかったですね
「第七天も第六天も可能性としては低いですか・・・第一天には重要な物が置いてない訳ではないですが、出入りが激しいですし真に重要なアイテムなどは第六天か第七天に置いてあります。第二天はバベルの塔の関係者が主に収容されていますが、トライヘキサの復活に彼らが役立つとも思えません」
≪グリゼルダ。第三天の生命の樹と第四天の知恵の樹は今はどうなってる?≫
「主が居なくなってから果実の生成は止まっています。樹、そのものは健在ですがアダムとイヴが知恵の実を食べてから主が樹に侵入者を迎撃する術式を組み込んでいますので、どちらの樹もクリフォトが近づこうと思ったら第六天に攻め入るくらいの覚悟が必要となるでしょう」
皆がまさかリゼヴィムが悪戯で天界に攻めてきたとは考えないで真剣に敵の目的を考察している中、グリゼルダさんが映像の一つを見て焦りの表情を浮かべる
その第五天の映像には天叢雲剣を持った八重垣さんが映っていた
「いけません。今あそこには解毒の最終段階の処置をする為に紫藤局長が上がっています!」
「パパ!」
イリナさんの悲痛な声にリアス部長が勢いよく立ち上がる
「行きましょう!敵の目的は今は後回しよ!私達は対テロ組織の『D×D』。天使たちと協力して邪龍を殲滅しつつ上層を目指すわ!先ずは敵を蹴散らしながら最短で第五天を目指すわよ」
≪俺達も天界への扉の封印をなんとか解除して増援に向かう。お前ら、気張れよ!≫
「『了解!』」
俺達『D×D』のメンバーと『
第二天はバベルの塔の関係者や罪を犯した天使の幽閉所兼星を観測する為のフロア全体がプラネタリウムのような場所だ
すぐ傍に牢屋が立ち並んでいるという事にさえ目を瞑ればこれまた美しい場所である
だが第三天へ続く道の半ばを過ぎた辺りから邪龍軍団と天使たちの戦いが見て取れるようになった
俺達と一緒に指令室を飛び出した『
「いくぞ!陣形を組め!フォーメーション、『フルハウス』!」
その言葉と共に隊列を組んだ転生天使たちは光の力を爆発的に増加させて邪龍の軍団に突っ込んで殲滅していく
「私は此処に残ってこの階層の天使たちの指揮を執ります。皆さんは先に進んで下さい!」
グリゼルダさんもそう言いつつ天使の翼を生やして上空に飛び立っていった
そして遂に第三天へ続く門の前に辿り着くとそこには樹木のような特性を持った邪龍、ラードゥンが立ちはだかっていた
門の守護者としてはこの上ない人選だよな
「これはこれは『D×D』の皆さん。先日のアウロスの町以来ですな」
「ラードゥン!そこを退きやがれ!!」
「いえいえ。それでは私がこの場に居る意味が無い。この命が尽きるまで貴方方の足止めをさせて頂きますよ・・・最も、後で聖杯で復活しますがね」
いやそれ復活する前に白音の封印術で魂を封じれば終わりじゃね?
「ああ、そうそう。本当に私がやられそうになった時は封印される前に強制転移で本拠地に帰る手筈となっていますので、封印は諦めて下さい・・・ふふふ、貴方方の余裕の無くなっていく表情を見ながら存分にこの戦いを愉しませて貰いますよ」
その言葉と共に第三天へ続く門全体をラードゥンの結界が包み込んだ
聖杯の復活も加味して兎に角足止め重視で戦う気かよ
「邪魔しないでよ!」
イリナさんを始め、皆が武器を構える中、そこに一人の男が現れた
「伝説の邪龍、ラードゥンか。肩慣らしの相手としては悪く無い」
最強の聖槍を肩でトントンと叩きながら現れたのは曹操だ
「曹操!なんでお前が!?」
イッセーの驚愕の声を聞いて曹操が軽く説明する
「邪龍狩りに興じようと思ってね。ハーデス殿の協力も在って奴ら同様、煉獄から上がって来たのさ―――さて、何やら先を急いでいるようだな。俺としても久しぶりの復帰戦だ。一つ手早くあの邪龍をどうにかしてやろうじゃないか・・・天界の危機ともなればかの神の『遺志』も力を貸してくれそうなんでね」
そう言うと曹操はそのまま聖槍を体の前で掲げるように持った
え?マジで?ここでそれ使っちゃうなんて流れ有ったっけ?
「『
「ではお見せするとしよう。この槍の起こす『奇跡』を!」
既にお互いしか見ていない曹操とラードゥンがお互いのオーラを爆発させる
そして曹操はその力強い呪文を唱え始めた
「槍よ、神を射抜く真なる聖槍よ。我が内に眠る覇王の理想を吸い上げ、祝福と滅びの狭間を抉れ―――汝よ、遺志を語りて、輝きと化せ!
聖なる槍の穂先から解き放たれた莫大な光が夜のようだった周囲一帯を明るく照らしていく
『
命を削るような結界を展開し、自身がやられそうになれば強制転移で逃げてしまうというラードゥンに対して聖書の神の『遺志』は一つの『奇跡』を起こす!
そしてそこから声が聞こえてきた
≪皆さん。初めまして。私は乳神と申します≫
乳神!?異世界の乳神の眷属の精霊じゃなくて乳神ご本人が降臨されましたか!?
「乳神ってまさか異世界の乳神!?以前俺にロキを倒せるだけの加護をくれた!」
まさかの登場人物にイッセーもビックリだ。と云うかこの場で驚いてない奴なんて居ないだろう!
≪あ、いえ、私は日本の乳神です≫
あ、そっちですか
こうして天界での戦いは最初から混迷を極めて行くのだった
日本の乳神である理由はちゃんと有りますので次回をお楽しみにww