「「…………楽(だな)……」」
「まぁ、正直こんな所で何時までも立ち止まっているわけにもいかないからな」
あのハーフポイントから、順調に降りることが出来ていた。ここまででユエもどうやら兄の偉大さを思い知ったようだ。
出てくる敵は基本殴ったら一発で風穴が空く。群れで出てきたなら魔法が炸裂。たまにハジメとユエで相手にすることもあるが、二人のコンビネーションはかなり凄まじい。
たった今殴られて風穴を開けられたティラノサウルスは何故か頭に一輪の可憐な花を生やしていた。
「この階層の魔物はどいつもこいつも花を咲かせているんだけど……何これ?寄生?」
「……おめでたい頭してるんだな」
「……かわいい」
直後、突然周囲から反応が現れた。
「「!?!?」」
「ハジメも気付いたか」
「あぁ、ユエ、やばいぞ。三十いや、四十以上の接近反応だ。やっぱりこれ洗脳か何かだな全方位から囲むようにして集まってきてやがる」
「……逃げる?」
「まぁ、任せろ、ここはどっちが上の存在か操っている奴に教え込んでやる」
「……どうする気?」
「今からこの洗脳を全て解く」
禁忌の獄を開いて、念じる。そして手を一つ叩く。
パン!
魔物の頭に咲いていた花が一斉に枯れ、洗脳が解かれた。
「「……聖夜(お兄ちゃん)今のは?」」
「
「で、それがなんで……」
「そもそも出雲は朝鮮半島経由で日本にやってきた渡来系の一族とされているんだ。主神は当時の大和国に忠誠を示したのだとか。もともと大和側に付くつもりだったんだろうな、だからわざわざ大陸側と縁を切るために、その柏手をしたんだろうな。さらにその回数は4回だった事と中国大陸由来だったことから四神相応が取り入れられていたと考えられて、大和繁栄を祈っていたとされている事から、
「はぁ、様は縁切りと繁栄の二つの意味があるから縁切りの方を使って洗脳との縁を切ったと?」
「ハジメって実は頭いいだろう?ちなみちこれ神様が使ったという逸話からかなり強力だからな」
直前まで、操られていたはずの魔物達は一斉に枯れ落ちた花を親の仇のように踏みつけていた…
「この奥にさっきから動く気配のない反応がある」
「そいつが親玉か」
「………さっきから話に付いて行けてない……」
「あぁごめんよユエ、俺らの世界の昔の話だったからな」
「ユエ、俺はその世界に戻るつもりだ。勿論ユエも連れてな」
「……ハジメ!……」
「はいはい、イチャイチャするのもそこまでにしとけよ〜」
というか、ハジメには白崎がいるだろうに………………まさかハーレム!?なかなかやりおる……。
「む……お兄ちゃんがなんか変な事考えてる……」
「今なんか寒気が……」
「お前ら急に何言ってんだ?あいつらと同じ頭花畑か?」
「「それはイヤ(だな)……」」
敵の反応する所まで行くと、広間の様な場所に出た。
中央まで歩みを進めると、全方位から緑色のピンポン玉のようなものが無数に飛んできた。
「色的に、回復しそうだけど触れるなよ?これ寄生元の胞子だ」
「りょーかい」
「ん……」
「かなりの数あるからな……燃やすか……」
「……何をなさるおつもりで?」
「決まってんだろ…『ギラグレイド』」
呪文を唱えた瞬間、聖夜達を中心に地面から業火が吹き荒れた。
「……自然破壊?」
「だな」
「何を納得しちゃってるの……まぁ、このまま親玉も燃やすか……アルラウネっぽいし、草には火だろ」
「ギィィィィィィィ!!」
どうやら呪文がとどいてしまったらしい。断末魔が広間に響き渡った。
「お、死んだっぽいな…」
「黒焦げ……可哀想……」
「何を当たり前のことを……聖夜だぞ?」
「お前らちょっと俺にあたり強くない!?」
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可哀想なアルラウネを燃やし尽くし、かなりのハイペースで迷宮攻略が進み、気づいたらもう99階。
ちなみに、日にち的には1週間経ってない。
「こんなに楽でいいんだろうか……」
「さすおに……」
「なんでそのネタ知ってるの…」
「50階で中ボスだったから次がボスだろ…気合い入れないとな」
そういうハジメだが、ちゃんと聖夜との訓練であれから、かなり強くなっていた。
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南雲ハジメ 17歳 男 レベル:88
天職:錬成師
筋力:3200
体力:3400
耐性:3120
敏捷:3600
魔力:2000
魔耐:2000
技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成]・魔力操作・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地][+豪脚]・風爪・夜目・遠見・気配感知・魔力感知・気配遮断・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・金剛・威圧・体術・言語理解
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魔物を喰えばステータスは上昇するが固有魔法はそれほど増えなくなっていた。
「じゃあ行くか」
「ん!」
「おう!」
その階層は、無数の柱に支えられた広大な広間だった。
広間の先には10メートルを超える両開きの扉がありいかにもボス部屋という感じである。
「……これはまたすごいな……」
「……反逆者の住処?」
「多分そうだろうな……まぁ先にボス戦っぽいけどな……」
3人の目線の先には、巨大な魔法陣が光り輝いている。
魔法陣はより一層輝くと遂に弾けるように光を放った。咄嗟に腕をかざし目を潰されないようにする3人。光が収まった時、そこに現れたのは……
体長三十メートル、六つの頭と長い首、鋭い牙と赤黒い眼の化け物。例えるなら、神話の怪物ヒュドラだった。
「「「「「「クルゥァァアアン!!」」」」」」
不思議な音色の絶叫をあげながら六対の眼光が聖夜達を射貫く。身の程知らずな侵入者に裁きを与えようというのか、常人ならそれだけで心臓を止めてしまうかもしれない壮絶な殺気が聖夜達に叩きつけられた。
同時に赤い紋様が刻まれた頭がガパッと口を開き火炎放射を放った。それはもう炎の壁というに相応しい規模である。
「ほれ『逆風』」
聖夜達に到達した、その火炎放射は目の前で反射されると、元来た道を辿っていき、赤い紋様の頭を覆った。
「まぁ、無傷だよな」
「ほんと、聖夜いてくれて助かるなぁっ!」
ハジメが叫ぶと同時にドンナーが火を吹き赤頭を吹き飛ばした。
「流石の命中率だなハジメ」
「まぁ、これくらいは…!?」
聖夜とハジメが話してるうちに白頭が「クルゥアン!」と叫び吹き飛んだ赤頭を白い光が包み込んだ。すると、逆再生かのように、赤頭が元に戻った。
「ふむぅ…ザオリク持ちか…あの白頭から飛ばすぞ」
「そうだな!」
「んっ!」
今度は青頭が口から散弾のように氷の礫を吐き出しくる……が
「しゃらくせぇ!」
聖夜が腕を一振りすると、氷の礫がはじけ飛ぶ。
「聖夜様々だな…まじで棒立ちしてるだけで勝てるだろ…」
「さすおに……」
「そのネタさっきやった…というかお前らも働け」
ドパンッ!
「『緋槍』!」
閃光と燃え盛る槍が白頭に迫る。しかし、直撃かと思われた瞬間、黄色の文様の頭がサッと射線に入りその頭を一瞬で肥大化させた。そして淡く黄色に輝きハジメのレールガンもユエの『緋槍』も受け止めてしまった。衝撃と爆炎の後には無傷の黄頭が平然とそこにいて聖夜達を睥睨している。
「盾役か、メンドイ」
「攻防回復とかバランス良すぎだろ」
「ん…強い」
「……回復しちゃうなら回復出来ないようにすればいいか」
「お、セイえもん今度は何をするんだ」
「ワクワク…」
「んもぅ……しょうがないなぁ」
禁忌の獄を開き、ある技を覚える。
「回復するならダメージに変換しちゃえばいいじゃない!『冥界の霧』!」
広間を覆い尽くすように紫色の霧が包み込む。
「さぁ、フィーバータイムだ防御役の黄色い頭を俺が破壊するから、あとはお前らでも出来るだろ」
「任せろ!」
「ん!」
「Emulation Start 『五番機構・刺式佇立態《ヴラド・ツェペシュの杭》』curse calling!さぁ吹っ飛べ!」
キィィィィィィ!
杭の形に変形させたルービックキューブを黄頭に第三宇宙速度で投げると、さっきの赤頭と同じように吹き飛んだ。
すかさず、白頭が回復しようとするが、冥界の霧の効果で、回復が反転され、黄頭のあった部分が首からどんどん壊死していく。
「……すごい……何あれ」
「どっちのことだい?」
「どっちも……」
「まずあの杭は俺の武器な、ちなみにハジメ作」
「む…お兄ちゃんズルい」
「んで、冥界の霧はさっきいった通り回復をダメージに変換してやったんだ」
「あとは……私たちで頑張る」
「おい、お前ら呑気に話してる暇あったら頭破壊しろ!」
「ありゃりゃ怒られちゃった…さぁ頑張っておいで、あともうひと踏ん張りだ」
「任せて…!」
そこからは一方的な圧殺だった。
ハジメとユエによって頭が一つずつ潰されていった。
途中黒頭による精神攻撃もあり、ユエが狂乱しかけたが、ハジメの熱いキッスによって正気を取り戻し、聖夜による光のはどうで状態異常を完全に消し飛ばした。
そして残りの一つである、銀色の頭。これはレーザービームのような極光を吐き出してきたが、聖夜がどこからともなく取り出してきた鏡によって反射され、自分の出した極光によって首をスパッと切られた。
「あっけなかったな……」
「これがボスでいいんだろうか……」
「…ん…お兄ちゃんいなかったら厳しかった」
「まぁ…そうだな……正直助かったわ」
「ふははは!もっと崇めたまえ」
こうして、聖夜達による迷宮攻略は幕を閉じた。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
最後のボスは簡単に終わらせて頂きました!
戦闘描写苦手なもので…