遅くなりました!
「私の家族も助けてください!」
「で、どうするよ?」
「助けるメリットが無いだろ」
心に余裕があるため、話は聞いてみたものの。ハジメからの返答はこれである。
どうやら彼女、シアが固有魔法を持ち忌子として生まれてきて、それを長年隠していたがとうとうバレて里を追い出されてしまったらしい。
「で、逃げてる最中に帝国兵、挙げ句の果てには樹海の魔物……ねぇ…」
「泣きっ面に蜂どころか文字通り恐竜が出てきたわけか」
「……気がつけば、六十人はいた家族も、今は四十人程しかいません。このままでは全滅です。どうか助けて下さい!」
話を聞き終わったハジメは組んでた腕を解き、閉じていた目を開いて笑顔をシアに向ける。
シアの顔にまたもや希望の光が差す!
「断る」
瞬間シアの顔に影が刺す。
「ちょ、ちょ、ちょっと! 何故です! 今の流れはどう考えても『何て可哀想なんだ! 安心しろ!! 俺が何とかしてやる!』とか言って爽やかに微笑むところですよ! 流石の私もコロっといっちゃうところですよ! 何いきなり美少女との出会いをフイにしているのですか! って、あっ、待って、無視して行こうとしないで下さい! 逃しませんよぉ!」
シアは、背を向けて再び行こうとする聖夜たちの足にしがみついて一言。
「助けてくれないと、ずっと貴方達について回って…貴方!その金髪の女誰よ!!私との子供認知してくれるって言ったじゃない!!って言い続けますからね!」
「ブッ」
「笑うな聖夜」
俺の足にしがみついてはいたけど明らかにハジメの方に向かって言ってたからな…
ふざけたことを言ったシアに向かってドンナーを打ちながら、ハジメはため息を一つ吐いて睨み付ける。
「あのなぁ~、さっきも言ったがお前等助けても、俺らに何のメリットがあるんだよ」
「メ、メリット?」
「帝国から追われているわ、樹海から追放されているわ、お前さんは厄介のタネだわ、デメリットしかねぇじゃねぇか。仮に峡谷から脱出出来たとして、その後どうすんだよ? また帝国に捕まるのが関の山だろうが。で、それ避けたきゃ、また俺を頼るんだろ? 今度は、帝国兵から守りながら北の山脈地帯まで連れて行けってな」
「うっ、そ、それは……で、でも!」
「俺達にだって旅の目的はあるんだ。そんな厄介なもん抱えていられないんだよ」
「そんな……でも、守ってくれるって見えましたのに!」
「……さっきも言ってたな、それ。どういう意味だ? ……お前の固有魔法と関係あるのか?」
「え? あ、はい。〝未来視〟といいまして、仮定した未来が見えます。もしこれを選択したら、その先どうなるか? みたいな……あと、危険が迫っているときは勝手に見えたりします。まぁ、見えた未来が絶対というわけではないですけど……そ、そうです。私、役に立ちますよ! 〝未来視〟があれば危険とかも分かりやすいですし! 少し前に見たんです! 貴方が私達を助けてくれている姿が! 実際、ちゃんと貴方に会えて助けられました!」
「は?ならなんでそれを使わなかったんだよ、その固有魔法があれば、フェアベルゲンの連中にもバレことはなかっただろ」
「じ、自分で使った場合はしばらく使えなくて……」
「バレた時、既に使った後だったと……何に使ったんだよ?」
「ちょ~とですね、友人の恋路が気になりまして……」
「ただの出歯亀じゃねぇか! 貴重な魔法何に使ってんだよ」
「うぅ~猛省しておりますぅ~」
「やっぱ、ダメだな。何がダメって、お前がダメだわ。この残念ウサギが………ってかユエも聖夜も黙ってないでこいつになんか言ってやってくれよ……」
俺は疲れたぞ…と1人愚痴るハジメ。
「うん、そうだな、ハジメこいつ連れて行こう」
「ん、私もそれ思ってた」
「ユエ!?聖夜!?」
「!? 最初から貴方達のこといい人だと思ってました! ペッタンコって言ってゴメンなッあふんっ!」
ユエと聖夜の言葉にハジメは訝しそうに、シアは興奮して目をキラキラして調子のいい事を言う。次いでに余計な事も言い、ユエにビンタを食らって頬を抑えながら崩れ落ちた。聖夜とユエは2人向き会うと考えていたことが一致し頷くと再び前を向いて、口を開く。
「「樹海の案内に丁度いい」」
「あ~」
樹海は亜人族以外は迷うと言われているのだ、その案内に兎人族というわけだ。
「そうだな。おい、喜べ残念ウサギ。お前達を樹海の案内に雇わせてもらう。報酬はお前等の命だ」
「あ、ありがとうございます! うぅ~、よがっだよぉ~、ほんどによがったよぉ~」
ぐしぐしと嬉し泣きするシア。しかし、仲間のためにもグズグズしていられないと直ぐに立ち上がる。
「あ、あの、宜しくお願いします! そ、それで皆さんのことは何と呼べば……」
「ん? そう言えば名乗ってなかったか……俺はハジメ。南雲ハジメだ」
「俺は神韋聖夜。まぁ気軽にセイヤと呼んでくれ」
「……ユエ」
「ハジメさんとセイヤさんとユエちゃんですね」
三人の名前を何度か反芻し覚えるシア。しかし、ユエが不満顔で抗議する。
「……さんを付けろ。残念ウサギ」
「ふぇ!?」
ユエらしからぬ命令口調に戸惑うシアは、ユエの外見から年下と思っているらしく、ユエが吸血鬼族で遥に年上と知ると土下座する勢いで謝罪した。どうもユエは、シアが気に食わないらしい。何故かは分からないが……。例え、ユエの視線がシアの体の一部を憎々しげに睨んでいたとしても、理由は定かではないのだ!
「大丈夫だぞユエ。ハジメは大きさなんて気にしない」
「……お兄ちゃん……」
「あれ?お二人は兄弟なんですか?」
「「うん」」
「嘘を言うなっ!……まぁこいつらが勝手に言ってるだけだ……ほれ、取り敢えず残念ウサギも後ろに乗れ」
「へ?乗るなら聖夜さんの方では?」
「婚約者がいるんだ最初に乗せるのは雫って決めてるから…」
「見ての通りあいつは変な所で頑固だからな。まぁ諦めて後ろに座れ」
「へ!?セイヤさん結婚されてるんですか!?」
「この薬指の指輪が目に入らぬか!」
「入りそうにありません!」
「ネタしてないで行くぞ」
「あ、あの。助けてもらうのに必死で、つい流してしまったのですが……この乗り物? 何なのでしょう?」
「あ~、それは道中でな」
最初は怖がっていたシアだったがどうやら風の切る感じが気持ちいいらしい今となっては大はしゃぎである。
ハジメは、道中、魔力駆動二輪の事やユエが魔法を使える理由、ハジメの武器がアーティファクトみたいなものだと簡潔に説明した。すると、シアは目を見開いて驚愕を表にした。
「え、それじゃあ、お三人も魔力を直接操れたり、固有魔法が使えると……」
「ああ、そうなるな」
「……前に同じ」
「以下同文」
しばらく呆然としていたシアだったが、突然、何かを堪える様にハジメの肩に顔を埋めた。そして、何故か泣きべそをかき始めた。
「……いきなり何だ? 騒いだり落ち込んだり泣きべそかいたり……情緒不安定なヤツだな」
「……手遅れ?」
「手遅れって何ですか! 手遅れって! 私は至って正常です! ……ただ、一人じゃなかったんだなっと思ったら……何だか嬉しくなってしまって……」
「「「……」」」
「まぁ、安心しろおかしな化け物ならすぐ隣走ってる奴にぴったりの言葉だから」
「…超同意」
「おい聞こえてるぞお前ら」
「へ?見た感じ、ハジメさんの方が凶悪そうですしセイヤさんなんて優しそうな黒髪じゃ無いですか」
「ああ、あいつ髪の色いじってるし……もともと俺と一緒に髪の色抜けて白に近かった。……って誰が凶悪そうだ残念兎」
「……ん、お兄ちゃん強い」
「まぁあいつの化け物ぶりは戦いを見ればわかるぞ、つかあのティラノ倒したの見てなかったのかよ」
「いえ、あの時はいつの間にか上空にいたので…」
そんなこんなでしばらく走らせながらシアが騒いでそれをハジメとユエが怒鳴る、のルーティンを続けていると、遠くで魔物の咆哮が聞こえた。どうやら相当な数の魔物が騒いでいるようだ。
「! ハジメさん! もう直ぐ皆がいる場所です! あの魔物の声……ち、近いです! 父様達がいる場所に近いです!」
「だぁ~、耳元で怒鳴るな! 聞こえてるわ! 飛ばすからしっかり掴まってろ!」
ハジメと、セイヤは、魔力を更に注ぎ、二輪を一気に加速させた。壁や地面が物凄い勢いで後ろへ流れていく。
そうして走ること二分。ドリフトしながら最後の大岩を迂回した先には、今まさに襲われようとしている数十人の兎人族達がいた。
「ハ、ハイベリア……」
尻尾がモーニングスターのような事を除けば普通のワイバーンのような見た目をした魔物である。
全部で6匹いるがそのうち一体が痺れを切らしたように兎人族の集まった岩の隙間に向かって突進をし、その尻尾で岩を叩きつける。轟音と共に岩が粉砕され中から兎人族が這い出てくる。
待ってましたと言わんばかりにその顎門を開き無力な獲物を喰らおうとする。狙われたのは二人の兎人族。ハイベリアの一撃で腰が抜けたのか動けない小さな子供に男性の兎人族が覆いかぶさって庇おうとしている。
周りの兎人族がその様子を見て瞳に絶望を浮かべた。誰もが次の瞬間には二人の家族が無残にもハイベリアの餌になるところを想像しただろう。しかし、それは有り得ない。
「セイヤ!」
「任せろ!」
懐から取り出した
第三宇宙速度なので手から抜けた瞬間にそれはワイバーンの目の前に現れた。
「おいおい…聖夜撃ち落とすだけで良かったのに…」
「ん…さすおに」
「二十六番機構・貫式閉鎖態《鋼鉄の処女》」
現れたのはよく見るアイアンメイデン。中心部が開くとワイバーンの体を棘だらけの中へと引き摺り込み、ついに扉が閉まった。その瞬間金切り声が響いたとおもったら、それはすぐに止んで、アイアンメイデンごと消えた。
「え、エグい…」
ポカーンとしているのは兎人族もハイベリアも一緒だった。
いち早く立ち直ったハイベリアはこちらを見つけると残りの5匹が一斉に突っ込んで来た。
「ハジメも働け」
「ほいほいっと」ドパンッ ドパンッ
2匹の頭を撃ち抜き、セイヤは蔵(禁忌の獄)から一振りの刀を取り出すと魔力駆動二輪の上にスッと立ち、居合の構えを取った。
「ちょっ!セイヤさんそんな所でふざけてたら危ないですよ!」
「「まぁみてろ残念兎」」
再び聖夜の方を向くと刀を上向きに振り切った後だった。
刹那突っ込んできた3匹のハイベリアが同時に真っ二つに割れた。
「へ?」
シアのその言葉はハジメとユエ以外の言葉を代弁していた。
丁度二台の魔力駆動二輪の両側を滑るように落ちていくハイベリアの死骸。
未だポカーンとしている兎人族の前で二輪車を止めた。
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「シア! 無事だったのか!」
「父様!」
真っ先に声をかけてきたのは、濃紺の短髪にウサミミを生やした初老の男性だった。はっきりいってウサミミのおっさんとか誰得である。シュールな光景に微妙な気分になっていると、その間に、シアと父様と呼ばれた兎人族は話が終わったようで、互いの無事を喜んだ後、聖夜達の方へ向き直った。
「セイヤ殿とハジメ殿で宜しいか? 私は、カム。シアの父にしてハウリアの族長をしております。この度はシアのみならず我が一族の窮地をお助け頂き、何とお礼を言えばいいか。しかも、脱出まで助力くださるとか……父として、族長として深く感謝致します」
「まぁ、礼は受け取っておく。だが、樹海の案内と引き換えなんだ。それは忘れるなよ? それより、随分あっさり信用するんだな。亜人は人間族にはいい感情を持っていないだろうに……」
「シアが信頼する相手です。ならば我らも信頼しなくてどうします。我らは家族なのですから……」
「えへへ、大丈夫ですよ、父様。ハジメさんは、女の子に対して容赦ないし、対価がないと動かないですけど、約束を利用したり、希望を踏み躙る様な外道じゃないです!セイヤさんは正直容赦ない化け物ですけど1番味方になってくれる人です!ちゃと私達を守ってくれますよ!」
「はっはっは、そうかそうか。つまり照れ屋な人達なんだな、それなら安心だ」
シアとカムの言葉に周りの兎人族達も「なるほど、照れ屋なのか」と生暖かい眼差しで聖夜達を見ながら、うんうんと頷いている。
ハジメは額に青筋を浮かべドンナーを抜きかけるが、意外なところから追撃がかかる。
「……ん、ハジメは(ベッドの上では)照れ屋」
「ユエ!?」
「おい、化け物を自覚はしているがまだ人間だぞ」
ここで溜まっていても魔物が寄ってくるので、一行は、ライセン大峡谷の出口目指して歩を進めた。
ここまで読んでいただき有難うございました!
いなくなりはしませんので気長に待っていただければと…