転生するのは2回目でした!?   作:T・紫

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遅くなりまして申し訳ございません!
今回はちょっと長めになっております!


帝国兵と亜人族

「ふふふ、ハジメさん。チビッコ達が見つめていますよ~手でも振ってあげたらどうですか?」

 

子供に純粋な眼差しを向けられて若干居心地が悪そうなハジメに、シアが実にウザイ表情で「うりうり~」とちょっかいを掛ける。

 

額に青筋を浮かべたハジメは、取り敢えず無言で発砲した。

 

ドパンッ! ドパンッ! ドパンッ!

 

「あわわわわわわわっ!?」

 

ゴム弾が足元を連続して通過し、奇怪なタップダンスのようにワタワタと回避するシア。道中何度も見られた光景に、シアの父カムは苦笑いを、ユエは呆れを乗せた眼差しを向け、セイヤは何かを考え込んでいる。

 

「はっはっは、シアは随分とハジメ殿を気に入ったのだな。そんなに懐いて……シアももうそんな年頃か。父様は少し寂しいよ。だが、ハジメ殿なら安心か……」

 

 すぐ傍で娘が未だに銃撃されているのに、気にした様子もなく目尻に涙を貯めて娘の門出を祝う父親のような表情をしているカム。周りの兎人族達も「たすけてぇ~」と悲鳴を上げるシアに生暖かい眼差しを向けている。

 

「いや、お前等。この状況見て出てくる感想がそれか?」

 

「……ズレてる」

 

「…………………………」

 

「さっきからセイヤは何を考え込んでるんだ?」

 

「ん?あぁこの先進んだら帝国兵いるだろうなって」

 

セイヤのその言葉にハウリア族にザワッと緊張がはしる。

 

「その…帝国兵はまだいるでしょうか?」

 

「んー。全滅したと諦めてる可能性もあるが、そういう奴らは意外と執心深いからな…まぁ十中八九いるだろ」

 

「そ、その、もしまだ帝国兵がいたら……セイヤさんとハジメさんはどうするのですか?」

 

シアのその言葉にセイヤとハジメは顔を見合わせる。

 

「「どうするって何が?」」

 

「今まで倒した魔物と違って、相手は帝国兵……人間族です。お二人と同じ。……敵対出来ますか?」

 

「残念ウサギ、お前、未来が見えてたんじゃないのか?」

 

「そうだぞ、ウサミミ娘何を不安がってる」

 

「はい、確かに見ました、お二人が帝国兵と相対してる姿を…」

 

「だったら何が疑問なんだ」

 

「疑問というより確認です。帝国兵から私達を守るということは、人間族と敵対することと言っても過言じゃありません。同族と敵対しても本当にいいのかと……」

 

 シアの言葉に周りの兎人族達も神妙な顔付きでセイヤとハジメを見ている。小さな子供達はよく分からないといった顔をしながらも不穏な空気を察してか大人達とセイヤとハジメを交互に忙しなく見ている。

 

「「で、それがどうかしたのか?」」

 

「えっ?」

 

セイヤはハジメと再び顔を合わせるとため息ひとつ、ハジメが話し始める。

 

「だから、人間族と敵対することが何か問題なのかって言ってるんだ」

 

「そ、それは、だって同族じゃないですか……」

 

「お前らだって、同族に追い出されてるじゃねぇか」

 

「それは、まぁ、そうなんですが……」

 

「大体、根本が間違っている」

 

「根本?」

 

さらに首を捻るシア。周りの兎人族も疑問顔だ。

 

「いいか? 俺は、お前等が樹海探索に便利だから雇った。んで、それまで死なれちゃ困るから守っているだけ。断じて、お前等に同情してとか、義侠心に駆られて助けているわけじゃない。まして、今後ずっと守ってやるつもりなんて毛頭ない。忘れたわけじゃないだろう?」

 

「うっ、はい……覚えてます……」

 

「だから、樹海案内の仕事が終わるまでは守る。自分のためにな。それを邪魔するヤツは魔物だろうが人間族だろうが関係ない。道を阻むものは敵、敵は殺す。それだけのことだ」

 

「な、なるほど……」

 

「ま、ギブアンドテイクってやつだ。お前らだってただただ助けられるよりも何か要求されてる方が納得出来るだろ?ハジメは言葉は悪いが間違ったことは言っちゃいねぇぜ?」

 

「はっはっは、確かに分かりやすくていいですな。樹海の案内はお任せくだされ」

 

セイヤのその言葉にカムが快活に笑う。その表情に含むところは全くなかった。

 

一行は、階段に差し掛かった。ハジメを先頭に順調に登っていく。帝国兵からの逃亡を含めて、ほとんど飲まず食わずだったはずの兎人族だが、その足取りは軽かった。亜人族が魔力を持たない代わりに身体能力が高いというのは嘘ではないようだ。

 

そして、遂に階段を上りきり、セイヤ達はライセン大峡谷からの脱出を果たす。

 

登りきった崖の上、そこには……

 

「おいおい、マジかよ。生き残ってやがったのか。隊長の命令だから仕方なく残ってただけなんだがなぁ~こりゃあ、いい土産ができそうだ」

 

三十人の帝国兵がたむろしていた。周りには大型の馬車数台と、野営跡が残っている。全員がカーキ色の軍服らしき衣服を纏っており、剣や槍、盾を携えており、セイヤ達を見るなり驚いた表情を見せた。

 

だが、それも一瞬のこと。直ぐに喜色を浮かべ、品定めでもするように兎人族を見渡した。

 

「小隊長! 白髪の兎人もいますよ! 隊長が欲しがってましたよね?」

 

「おお、ますますツイテルな。年寄りは別にいいが、あれは絶対殺すなよ?」

 

「小隊長ぉ~、女も結構いますし、ちょっとくらい味見してもいいっすよねぇ? こちとら、何もないとこで三日も待たされたんだ。役得の一つや二つ大目に見てくださいよぉ~」

 

「ったく。全部はやめとけ。二、三人なら好きにしろ」

 

「ひゃっほ~、流石、小隊長! 話がわかる!」

 

帝国兵は、兎人族達を完全に獲物としてしか見ていないのか戦闘態勢をとる事もなく、下卑た笑みを浮かべ舐めるような視線を兎人族の女性達に向けている。兎人族は、その視線にただ怯えて震えるばかりだ。

 

帝国兵達が好き勝手に騒いでいると、兎人族にニヤついた笑みを浮かべていた小隊長と呼ばれた男が、ようやくセイヤとハジメの存在に気がついた。

 

「あぁ? お前誰だ? 兎人族……じゃあねぇよな?」

 

「なぁなぁハジメ、ここまでテンプレみたいな悪党が居ることに嫌悪感よりも感動を覚えてるんだが」

 

「まぁその気持ち分からなくもないな」

 

「おい、こっちを無視するな!……なんで人間が兎人族と一緒にいるんだ? しかも峡谷から。あぁ、もしかして奴隷商か? 情報掴んで追っかけたとか? そいつぁまた商売魂がたくましいねぇ。まぁ、いいや。そいつら皆、国で引き取るから置いていけ」

 

勝手に推測し、勝手に結論づけた小隊長は、さも自分の言う事を聞いて当たり前、断られることなど有り得ないと信じきった様子で、そうセイヤとハジメに命令した。

 

当然、2人がが従うはずもない。

 

「まぁ、お前達としては、商品も玩具も手に入るしでこいつらを所望したい気持ちもまぁわかるがな」

 

「だろう?ならさっさとこっちによこせ」

 

セイヤとハジメは互いに向き合い上手くいったと内心喜び勇み、キメ顔で言い放つ。

 

「「だが断る」」

 

「……今、何て言った?」

 

「「この、俺たちが最も好きな事のひとつは自分で強いと思ってるやつに『NO』と断ってやることだ」」

 

 聞き間違いかと問い返し、返って来たのは不遜な物言い。小隊長の額に青筋が浮かぶ。

 

「……小僧、口の利き方には気をつけろ。俺達が誰かわからないほど頭が悪いのか?」

 

「なぁなぁもしかして、セイヤがさっきまで考え込んでたのこれのためか!」

 

「あたぼうよ!なんかすごい気持ちよかったな!」

 

「あぁ!人生で一度は行ってみたいセリフ第1位をこんな完璧にいえるとは流石だセイヤっ!そこにシビれる!あこがれるゥ!」

 

「おい、ハジメ何どさくさに紛れてその言葉まで言ってるんだ」

 

取りつく島の内心セイヤとハジメの言葉にスっと表情を消す小隊長。周囲の兵士達も剣呑な雰囲気で2人

を睨んでいる。その時、小隊長が、剣呑な雰囲気に背中を押されたのか、2人の後ろから出てきたユエに気がついた。幼い容姿でありながら纏う雰囲気に艶があり、そのギャップからか、えもいわれぬ魅力を放っている美貌の少女に一瞬呆けるものの、ハジメとセイヤの服の裾をギュッと握っていることからよほど近しい存在なのだろうと当たりをつけ、再び下碑た笑みを浮かべた。

 

「あぁ~なるほど、よぉ~くわかった。てめぇらが唯の世間知らず糞ガキだってことがな。ちょいと世の中の厳しさってヤツを教えてやる。くっくっく、そっちの嬢ちゃんえらい別嬪じゃねぇか。てめぇらの四肢を切り落とした後、目の前で犯して、奴隷商に売っぱらってやるよ」

 

その言葉にスッと、セイヤの顔から表情が消えた。ハジメは眉をピクリと動かし、ユエは無表情でありながら誰でも分かるほど嫌悪感を丸出しにしている。目の前の男が存在すること自体が許せないと言わんばかり、ユエが右手を掲げようとした。

 

だが、それを制止するハジメ。訝しそうなユエを尻目にハジメが最後の言葉をかける。

 

「つまり敵ってことでいいよな?」

 

「あぁ!? まだ状況が理解できてねぇのか! てめぇは、震えながら許しをこッ!?」

 

グシャ!!

 

想像した通りにセイヤ達が怯えないことに苛立ちを表にして怒鳴る小隊長だったが、その言葉が最後まで言い切られることはなかった。なぜなら、一つの大きな歯車が小隊長がいた所に鎮座していたからだ。

 

何が起きたのかも分からず、小隊長がいたであろう所を見る兵士達に追い打ちが掛けられた。

 

ドパァァンッ!

 

一発しか聞こえなかった銃声は、同時に、六人の帝国兵の頭部を吹き飛ばした。実際には六発撃ったのだが、ハジメの射撃速度が早すぎて射撃音が一発分しか聞こえなかったのだ。

 

突然、小隊長げ消し飛び仲間の頭部が弾け飛ぶという異常事態に兵士達が半ばパニックになりながらも、武器をセイヤ達に向ける。過程はわからなくても原因はわかっているが故の、中々に迅速な行動だ。人格面は褒められたものではないが、流石は帝国兵。実力は本物らしい。

 

「『八番機構・砕式円環態《フランク王国の車輪刑》……すまんなハジメあまりにも耳障りで目障りだったから手が出ちまった」

 

「まぁいいよ俺も追い討ちかけたしな」

 

「まぁ、後はハジメに任せるか?」

 

「半分頼むわ」

 

「りょーかい」

 

その言葉を皮切りに一方的な蹂躙が始まった。

 

ハジメのドンナーが火を吐くたびに帝国兵の頭に風穴が空いていき、セイヤが手を振ると帝国兵の上半身と下半身に二つに分かれた。

 

1人だけを残して、一瞬にして壊滅した部隊。

 

「十八番機構・伸式外枠態《エクセター公の娘 》」

 

その生き残りが、土台に長方形の形をした枠から生える鎖に両手両足を拘束された。

 

キリキリと音を立てながら両手両足を引っ張る鎖をBGMにセイヤは口を開く。

 

「さて、他の兎人族がどうなったか教えてもらうか。結構な数がいたよな?あ、早くしないとダルマになるぞ」

 

「ま、待ってくれ!多分全部移送済みだと思う。人数は絞ったから……」

 

その言葉にセイヤは兎人族の方を振り返ると悲痛な表情を浮かべていた。すぐに視線を戻して指を出す。

 

「ぜ、全部話したんだからこれを止めてくれ!ま、まて…」

 

パチン

 

指を鳴らした瞬間

 

「があぁぁぁあぁぁぁあああぁぁぁああああああああああ!!!!!!!!!」

 

ブチブチと音を立てて四肢がもげた。

 

痛みに喚く帝国兵を見下ろし

 

「下衆が……『ザキ』」

 

即死呪文をかけた。

 

息を呑む兎人族達。あまりに容赦のないセイヤの行動に完全に引いているようである。その瞳には若干の恐怖が宿っていた。それはシアも同じだったのか、おずおずとセイヤに尋ねた。

 

「あ、あのさっきの人は見逃してあげても良かったのでは……」

 

その言葉に呆れ言葉を返そうとしたセイヤをハジメとユエが制す。

 

「アホかおまえら。一度剣を抜いてこちらを殺そうとしてきた奴らに対して、相手の方が強かったからと見逃してもらおうなんざ虫が良すぎるだろ」

 

「そ、それは……」

 

「……そもそも守られているだけのあなた達がそんな目をお兄ちゃんに向けるのはお門違い」

 

「まぁまて、2人ともその援護はありがたいし嬉しいが、もともと温厚らしいこいつらに頭に血が上っていたとはいえグロテスクな場面を見せたのは俺だしな、悪かったな」

 

「いえ、セイヤ殿、申し訳ない。含むところがあるわけでも無いし、守られたのはこちらだ。争いになれてはいない故驚いただけなので謝らなくても……寧ろ感謝をすべきだな。ありがとう」

 

「セイヤさん、すみません…」

 

「はい、じゃあこの話はこれでおしまい。ハジメその馬車使って先進むぞ〜」

 

「はぁ、セイヤはなんというか……」

 

「……うん、お兄ちゃんらしい」

 

 あ、この死体片付けるか。

 

「みんな、ちょっと下がってて」

 

皆んな不思議そうな顔を向けてくるが、言われた通りに下がった

 

「『バギムーチョ』っと」

 

セイヤが呪文を唱えると台風のような風が巻き起こり死体と血を上空に巻き上げ、谷底に落とした。

 

「これ程の風魔法がこの谷で使えるとは……セイヤ殿はすごいのだな」

 

キラキラとした目を向けてくる兎人族に背中がむず痒くなる。

 

 

 

 

 

---------------

 

 

 

 

 

ハルツィナ樹海を前方に見据え魔力駆動二輪で牽引する大型馬車二台と数十頭の馬が平原を速いスピードで進んでいた。

 

二輪にはハジメの前にユエがその後ろにシアが乗っている。ちなみにセイヤは馬車に乗って兎人族のちびっ子達と遊んでいた。

 

「あの、あの!ハジメさんとセイヤさんとユエさんのこと、教えてくれませんか?」

 

「? 俺達のことは話したろ?」

 

「いえ、能力とかそいうことではなくて、なぜ、奈落? という場所にいたのかとか、旅の目的って何なのかとか、今まで何をしていたのかとか、お三方自身のことが知りたいです。」

 

「……聞いてどうするの?」

 

「どうするというわけではなく、ただ知りたいだけです。……私、この体質のせいで家族には沢山迷惑をかけました。小さい時はそれがすごく嫌で……もちろん、皆はそんな事ないって言ってくれましたし、今は、自分を嫌ってはいませんが……それでも、やっぱり、この世界のはみだし者のような気がして……だから、私、嬉しかったのです。お三方に出会って、私みたいな存在は他にもいるのだと知って、一人じゃない、はみだし者なんかじゃないって思えて……勝手ながら、そ、その、な、仲間みたいに思えて……だから、その、もっとお三方のことを知りたいといいますか……何といいますか……」

 

シアは話の途中で恥ずかしくなってきたのか、次第に小声になってハジメの背に隠れるように身を縮こまらせた。出会った当初も、そう言えば随分嬉しそうにしていたと、ハジメとユエは思い出し、シアの様子に何とも言えない表情をする。あの時は、ユエの複雑な心情により有耶無耶になった挙句、すぐハウリア達を襲う魔物と戦闘になったので、谷底でも魔法が使える理由など簡単なことしか話していなかった。きっと、シアは、ずっと気になっていたのだろう。

 

確かに、この世界で、魔物と同じ体質を持った人など受け入れがたい存在だろう。仲間意識を感じてしまうのも無理はない。かと言って、ハジメやユエの側が、シアに対して直ちに仲間意識を持つわけではない。が……樹海に到着するまで、まだ少し時間がかかる。特段隠すことでもないので、暇つぶしにいいだろうと、ハジメとユエ、ついでにセイヤが馬車から顔を出してこれまでの経緯を語り始めた。

 

 結果……

 

「うぇ、ぐすっ……ひどい、ひどすぎまずぅ~、ハジメさんもユエさんもがわいぞうですぅ~。そしてセイヤさんはとても素敵でずぅ〜そ、それ比べたら、私はなんでめぐまれて……うぅ~、自分がなざけないですぅ~」

 

号泣した。滂沱の涙を流しながら「私は、甘ちゃんですぅ」とか「もう、弱音は吐かないですぅ」と呟いている。そして、さり気なく、ハジメの外套で顔を拭いている。どうやら、自分は大変な境遇だと思っていたら、ハジメとユエが自分以上に大変な思いをしていたことを知り、そこに駆けた仲間思いのセイヤに、不幸顔していた自分が情けなくなったらしい。

 

しばらくメソメソしていたシアだが、突如、決然とした表情でガバッと顔を上げると拳を握り元気よく宣言した。

 

「ハジメさん!セイヤさん!ユエさん!私、決めました!お三方の旅に着いていきます!これからは、このシア・ハウリアが陰に日向にお三方を助けて差し上げます! 遠慮なんて必要ありませんよ。私達はたった四人の仲間。共に苦難を乗り越え、望みを果たしましょう!」

 

勝手に盛り上がっているシアに、ハジメとユエが実に冷めた視線を送る。ケラケラと笑うセイヤ。

 

 

「現在進行形で守られている脆弱ウサギが何言ってんだ? 完全に足でまといだろうが」

 

「……さり気なく『仲間みたい』から『仲間』に格上げしている……厚皮ウサギ」

 

「どうなるかはウサミミ娘次第だなぁ」

 

「な、何て冷たい目で見るんですか……心にヒビが入りそう……というかいい加減、ちゃんと名前を呼んで下さいよぉ」

 

 意気込みに反して、冷めた反応を返され若干動揺するシア。そんな彼女に追い討ちがかかる。

 

「……お前、単純に旅の仲間が欲しいだけだろう?」

 

「!?」

 

 ハジメの言葉に、シアの体がビクッと跳ねる。

 

「一族の安全が一先ず確保できたら、お前、アイツ等から離れる気なんだろ? そこにうまい具合に〝同類〟の俺らが現れたから、これ幸いに一緒に行くってか? そんな珍しい髪色の兎人族なんて、一人旅出来るとは思えないしな」

 

「……あの、それは、それだけでは……私は本当にお三方を……」

 

 まぁ、図星だったんだろうなぁ、ま、さっきも言った通りこれからどうなるかはウサミミ娘次第

 

「別に、責めているわけじゃない。だがな、変な期待はするな。俺達の目的は七大迷宮の攻略なんだ。おそらく、奈落と同じで本当の迷宮の奥は化物揃いだ。お前じゃ瞬殺されて終わりだよ。だから、同行を許すつもりは毛頭ない」

 

「……」

 

しばらくシアは、何かを考え込むかのように難しい顔をして座敷に座り込んだ。

 

それから数時間して、遂に一行は【ハルツィナ樹海】と平原の境界に到着した。樹海の外から見る限り、ただの鬱蒼とした森にしか見えないのだが、一度中に入ると直ぐさま霧に覆われるらしい。

 

「それでは、セイヤ殿、ハジメ殿、ユエ殿。中に入ったら決して我らから離れないで下さい。お三方を中心にして進みますが、万一はぐれると厄介ですからな。それと、行き先は森の深部、大樹の下で宜しいのですな?」

 

「ああ、聞いた限りじゃあ、そこが本当の迷宮と関係してそうだからな」

 

カムが、セイヤ達に対して樹海での注意と行き先の確認をする。カムが言った〝大樹〟とは、【ハルツィナ樹海】の最深部にある巨大な一本樹木で、亜人達には〝大樹ウーア・アルト〟と呼ばれており、神聖な場所として滅多に近づくものはいないらしい。峡谷脱出時にカムから聞いた話だ。

 

カムは、ハジメの言葉に頷くと、周囲の兎人族に合図をしてセイヤ達の周りを固めた。

 

 ふむこれだけ霧が深くても迷わないのか……意外と亜人族は方向感覚に優れているのか…それとも……いやこの先はあくまで推測の域を出ないし考えるのはやめるか…

 

「セイヤ殿ハジメ殿、できる限り気配は消してもらえますかな。大樹は、神聖な場所とされておりますから、あまり近づくものはおりませんが、特別禁止されているわけでもないので、フェアベルゲンや、他の集落の者達と遭遇してしまうかもしれません。我々は、お尋ね者なので見つかると厄介です」

 

「ああ、承知している。俺もユエも、ある程度、隠密行動はできるから大丈夫だ」

 

ハジメは、そう言うと〝気配遮断〟を使う。ユエも、奈落で培った方法で気配を薄くした。セイヤは姿を消した。

 

「ッ!? これは、また……ハジメ殿、できればユエ殿くらいにしてもらえますかな?セイヤ殿!?どこに行かれたのか!?」

 

「ん? ……こんなもんか?というかセイヤマジで俺たちも分からないからそれはやめてくれ」

 

「ほいほいっと」

 

虚空からいきなり現れたセイヤに驚愕の目を向けるカム。

 

「そのレベルで気配を殺されては、我々でも見失いかねませんからな。というよりセイヤ殿はもうなんて言ったら良いか…いや、全く、流石ですな!」

 

「じゃあ行くか」

 

その後ちょくちょく魔物に襲われながらも姿をあらわす前にセイヤによって息の根を止められていく魔物達。

 

樹海に入って数時間が過ぎた頃今までにない無数の気配に囲まれ、セイヤ達は歩みを止めた。

 

正体に気付いた兎人族は顔を青ざめ、ハジメとユエは面倒そうな表情に、セイヤはケラケラと笑っている。

 

「お前たち……何故人間といる!種族と族名を名乗れ!」

 

 ふむ、虎の亜人族ねぇ

 

「あ、あの私達は……」

 

カムが何とか誤魔化そうと額に冷汗を流しながら弁明を試みるが、その前に虎の亜人の視線がシアを捉え、その眼が大きく見開かれる。

 

「白い髪の兎人族…だと? ……貴様ら……報告のあったハウリア族か……亜人族の面汚し共め! 長年、同胞を騙し続け、忌み子を匿うだけでなく、今度は人間族を招き入れるとは! 反逆罪だ! もはや弁明など聞く必要もない! 全員この場で処刑する! 総員かッ!?」

 

キィィィン

 

「はいストップ、おっと『五番機構・刺式佇立態《ヴラド・ツェペシュの杭》』」

 

今回はノーモーションで第一宇宙速度で虎の亜人の真横に向けてその杭を発射した。音を置き去りにして光の線を残しながら背後の樹を抉り樹海の奥へと消えていった。

 

「セイヤ今の速度は?」

 

「7.9km/s第一宇宙速度だな…まぁざっと音速の23倍の速度だな」

 

「ふむちなみに第6まで出せるのか?」

 

「出してもいいがソニックブームの衝撃波だけでこの世が終わるぞ?ちなみに第5で1000km/sだからそれだけでもここら一帯はなくなる」

 

「……絶対にやめてくれ……まぁ分かったと思うがお前ら如きに俺たちを止められると思わない事だ。周囲を囲んでいる奴らも全て把握している。お前らがいる場所は既にキルゾーンだ」

 

「な、なんだいまのでたらめな攻撃は…」

 

「兎人族の命は俺たちが保障している。こいつらに手を出すというのなら……」

 

セイヤはそこで言葉を止めるとハジメとユエと兎人族を対象から外して、殺気を振りまいた。

 

「ただの1人も生きて帰れると思うなよ?」

 

ドサドサッと周りの気配が消えた。気絶したなこれ。

 

「こいつ達がタフなんじゃないな…セイヤこの2人だけ殺気緩めてるだろ?」

 

「そりゃあ全員気絶したら交渉(きょうはく)出来ないだろ」

 

「そうか……………今なんて言った?」

 

「な、何が目的だ……」

 

「俺たちはただ樹海の深部にあると思われる迷宮に行きたいだけ、この場を引けと言ってもどうせ、上の指示を仰がないと行けないとかあるんだろ?あ、異論反論抗議質問口答えは一切認めない。この場で全員あの世への片道切符を切るか俺たちを見逃すか二つに一つだ選べ」

 

「……わかった…ザムを伝令に出すこの場で待機してくれ」

 

ハジメの方を見るとハジメが頷いた。

 

「おっけー、俺たちからはお前ら同胞に危害を加えるつもりは無い、樹海の深部にあると思われる迷宮に用があるだけ、オルクス大迷宮を攻略したからわかることだと、曲解せずに伝えてくれよ?」

 

「無論だ。ざむ!長老方に余さず伝えろ!」

 

「了解!」

 

ザムと言われた亜人が遠ざかっていった。

殺気を解いてしばらくすると周りで気絶していたものがチラホラと起き始めた。

 

者によっては、こちらに敵対しようとしてきたが、虎の亜人が宥めるように言って押さえていく。

 

 人望はあるほうなのか…

 

しばらく、重苦しい雰囲気が周囲を満たしていたが、そんな雰囲気に飽きたのか、ユエがハジメとセイヤに構って欲しいと言わんばかりにちょっかいを出し始めた。それを見たシアが場を和ませるためか、単に雰囲気に耐えられなくなったのか「私も~」と参戦し、苦笑いしながら相手をするハジメに、少しずつ空気が弛緩していく。敵地のど真ん中で、いきなりイチャつき始めた(亜人達にはそう見えた)ハジメとセイヤに呆れの視線が突き刺さる。

 

時間にして一時間と言ったところか。調子に乗ったシアが、ユエに関節を極められて「ギブッ! ギブッですぅ!」と必死にタップし、それを周囲の亜人達が呆れを半分含ませた生暖かな視線で見つめていると、急速に近づいてくる気配を感じた。

 

場に再び緊張が走る。シアの関節には痛みが走る。

 

霧の奥からは、数人の新たな亜人達が現れた。彼等の中央にいる初老の男が特に目を引く。流れる美しい金髪に深い知性を備える碧眼、その身は細く、吹けば飛んで行きそうな軽さを感じさせる。威厳に満ちた容貌は、幾分シワが刻まれているものの、逆にそれがアクセントとなって美しさを引き上げていた。何より特徴的なのが、その尖った長耳だ。彼は、森人族いわゆるエルフなのだろう。

 

 これが長老か

 

「ふむ、お前さん達が問題の人間族かね? 名は何という?」

 

「神韋聖夜。セイヤとでも」

 

「ハジメだ。南雲ハジメ。あんたは?」

 

「私は、アルフレリック・ハイピスト。フェアベルゲンの長老の座を一つ預からせてもらっている。さて、お前さん達の要求は聞いているのだが……その前に聞かせてもらいたい。〝解放者〟とは何処で知った?」

 

「オルクス大迷宮の奈落の底、解放者の一人、オスカー・オルクスの隠れ家だ」

 

目的などではなく、解放者の単語に興味を示すアルフレリックに訝しみながら返答するハジメ。セイヤは何故か疑問にも思っていないようだが。一方、アルフレリックの方も表情には出さないものの内心は驚愕していた。なぜなら、解放者という単語と、その一人が〝オスカー・オルクス〟という名であることは、長老達と極僅かな側近しか知らない事だからだ。

 

「ふむ、奈落の底か……聞いたことがないがな……証明できるか?」

 

「そうだな…ハジメ、魔石とかオルクスの遺品は?」

 

「ああ! そうだな、それなら……」

 

 ポンと手を叩き、〝宝物庫〟から地上の魔物では有り得ないほどの質を誇る魔石をいくつか取り出し、アルフレリックに渡す。

 

「こ、これは……こんな純度の魔石、見たことがないぞ……」

 

 アルフレリックも内心驚いていてたが、隣の虎の亜人が驚愕の面持ちで思わず声を上げた。

 

「後は、これ。一応、オルクスが付けていた指輪なんだが……」

 

そう言って、見せたのはオルクスの指輪だ。アルフレリックは、その指輪に刻まれた紋章を見て目を見開いた。そして、気持ちを落ち付かせるようにゆっくり息を吐く。

 

「なるほど……確かに、お前さんはオスカー・オルクスの隠れ家にたどり着いたようだ。他にも色々気になるところはあるが……よかろう。取り敢えずフェアベルゲンに来るがいい。私の名で滞在を許そう。ああ、もちろんハウリアも一緒にな」

 

 アルフレリックの言葉に、周囲の亜人族達だけでなく、カム達ハウリアも驚愕の表情を浮かべた。虎の亜人を筆頭に、猛烈に抗議の声があがる。それも当然だろう。かつて、フェアベルゲンに人間族が招かれたことなど無かったのだから。

 

「彼等は、客人として扱わねばならん。その資格を持っているのでな。それが、長老の座に就いた者にのみ伝えられる掟の一つなのだ」

 

 アルフレリックが厳しい表情で周囲の亜人達を宥める。しかし、今度はハジメの方が抗議の声を上げた。

 

「待て。何勝手に俺の予定を決めてるんだ? 俺は大樹に用があるのであって、フェアベルゲンに興味はない。問題ないなら、このまま大樹に向かわせてもらう」

 

「いや、お前さん。それは無理だ」

 

「なんだと?」

 

「やっぱりか……大方予想はしていたがその通りだったみたいだな」

 

「ふむ?どういうことか聞いても良いかの?」

 

「まず大前提としてこいつら方向感覚を見失わずに目的の場所まで行けると仮定してだ、さきも見えないこの深い霧の中で察知に長けているだろう兎人族が何故固まって移動している?そんなに見失うほど濃いというのなら大樹の周りはもっと深い霧なんだろうなぁ……入る前に俯瞰して見てみたが大樹周りはかなり霧が濃かった。ならば霧は一定周期で弱まったりするんじゃ無いか?」

 

「そこまで頭がまわるとは…お前さんの言う通りだ次に行けるようになるのは十日後だ。……亜人族なら誰でも知っているはずだが……」

 

「大方追放されてたとかで周期を忘れてたんだろドタバダしてたっとぽいしな」

 

「あっ」

 

青い顔をしたカム。ハジメの額には青筋が浮かぶ。

 

まぁこの先はハジメにお仕置きされまいと責任のなすりつけ合いという醜い言い争いが始まり、ユエによって天高く舞い上がったウサミミ達がいたとだけ。

 




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