総員第一種先頭配置対月曜日迎撃戦用意!
などと、某新世紀で出てきそうなワードをぼんやり考えながら高校へと歩みを進めていた。
「はぁ…学校ダルすぎる…」
中学校では雫と離れてしまったものの、高校では運命が収束したかのように、それはもう当たり前のように同じ所へと通うことになってはや2年目。
クラスには雫だけではなく、我が心の友である南雲ハジメ、残念系幼馴染みの天之河光輝、そして雫が中学校で知り合ったという白崎香織、見た目は脳筋中身も脳筋という坂上龍太郎、といったメンツと同じクラスに配属される事になっていた。
「あ、聖夜〜!」
「お、おはようハジメ」
後ろから声をかけてきたのは、我が心の友こと南雲ハジメである。
「おはよう!この時間に登校って大丈夫なの?」
「ハジメだっていつもこんな時間だろうに…また親の手伝いか?精が出ますな〜」
「あはは、まぁね。自分がやりたくてやってる事だから、満足してるんだよ」
「ハジメは真面目だなぁ…」
目の下にクマができてんぞ。
「そういえばハジメ、この前買ったゲームあれどこまで進んだ?」
「全部クリアしたよ?」
何言ってんだと、いうような顔でこっちを見るハジメ。
「まじかよ、ハジメ何処にそんな時間があるんだ……あ、だったら4面のボスの倒し方教えて欲しいんだけど」
つい先日買ったロールプレイングゲームの話である。
「あぁ、あれね、ちなみに聖夜は最初のターンなにしてる?」
「え?普通にバフかけて、脳死殴り」
「あー、それしちゃってるのか…確かに3面までならそれでクリア出来るけど、4面のはまず、遊ぶってコマンドを選ぶんだよ〜次に味方に魔法反射かけてそいつに即死呪文で終わり」
「は?」
「全く、最初はびっくりしたよ〜こんな方法で倒せるなんて…」
「それ絶対正規じゃ無いだろ…つかなんだそのクソゲーボスに即死効いていいのかよ…」
下らない話をしながら登校する。結構時間ギリギリだけど。
そして憂鬱なのが教室である。
ハジメと揃って教室に入ると、教室から舌打ちと睨みの嵐。
もう慣れた。
ハジメの隣である自分の席に向かう。すると毎日のことのようにちょっかいをかけてくる輩がいる。
「よぉ、キモオタ共!また、徹夜でゲームか?どうせエロゲでもしてたんだろ?」
「うわっ、キモ〜。エロゲで徹夜とかマジキモいじゃん〜」
「ばっかオマエラ、毎度言ってるがなエロゲに対してキモいは偏見だって言ってんだろ。やったことが無いからそう言えるんだよ。ものにもよるがな、あのストーリー生は普通の小説では出せないモノがあるんだぞ。グラフィックや魅力的なキャラもそうだが、なんと言っても心に響くオープニングやエンディングテーマ。ストーリーを最後まで見たからこそ、その曲で歌われてる意味に気付いたりするんだぞ?
それをエロゲだからと一括りにして馬鹿にするなどやってる事が小学生と同レベルだぞ!」
ちなみに俺のオススメは、は○ゆきさ○ら。あれは本当に感動した。あれをやってから聴いた、『Hesitation snow』は泣けた。
と、ここで逆上する、声をかけてきた主である檜山大介。ちなみに取り巻き3人は近藤礼一、斎藤良樹、中野信治である。
「あ!なんだと神韋!」
「ってハジメが言ってた」
「えぇ!?僕!?」
ヘイトを向けられるハジメ、哀れ。まぁ向けたの俺だけど。
「おいおい、4人で集ってハジメを責めてやるな、そんなんだからお前らまとめてハクションカルテットとか呼ばれんだぞ?」
「「「「そう呼ぶのはお前だけだ!!」」」」
ちなみにハクションカルテットとは、彼らの頭文字を取って、H、K、S、Nとなるので俺が勝手にそう呼んでいるだけである。
まぁハジメの場合敵愾心を持たれるのに原因はもう一つあるんだけど……
それが彼女である。
「南雲くん、神韋くん、おはよう!今日もギリギリだね。もっと早く来ようよ」
そう、雫のお友達こと、白崎香織である。
このクラス、いや学校でハジメにフレンドリーに接してくれる数少ない人達であり、この事態の大元である。
雫と揃って二大女神なんて言われるほど美少女である。いつも微笑の絶えない彼女は、非常に面倒見が良く責任感も強いため学年問わずして頼られるのである。嫌な顔1つせずに接するその姿は高校生とは思えない懐の深さである。
まぁ、俺は雫派ですけど。
なんで、そんな彼女が南雲ハジメに構うのかと言うと、、、側から見れば直ぐわかるのだが彼女、南雲ハジメに惚れているのである。はいこの話題終了。
「あ、ああ、おはよう白崎さん」
「おはよう白崎」
挨拶を返した瞬間、刺すような視線と殺気。十六夜スペックの俺は全然だが、ハジメには辛いだろう…あぁハジメ頬引きつってる。ちなみに気付いてないのはクラスの他の面々にハジメ本人と、残念系りんじ……じゃなくて幼馴染みの天之河と脳筋坂上だけである。俺と雫からしたらバレバレである。寧ろ早くくっ付け。
「聖夜、南雲君。おはよう。毎日大変ね」
「香織、また彼らの世話を焼いているのか?全く、本当に香織は優しいな」
「全くだぜ、そんなやる気のない奴にゃあ何を言っても無駄だと思うけどなぁ」
そう言って声をかけてきたのはみんなのお姉さまこと八重樫雫。残念系自己解釈幼馴染みの天之河光輝。脳筋坂上龍太郎。まぁいつものメンツである。
「おはよう、八重樫さん、天之河くん、坂上くん。はは、まぁ、自業自得とも言えるから仕方ないよ」
「おはよう雫。ついでに(残念)天之河と、(脳筋)坂上も」
あ、雫ちゃんとあげたシュシュ付けてくれてる……もうボロボロだし新しいの買ってやるか……
そこから天之河がハジメに絡んでいくまでがいつもの光景である。
………………寝よ。
「聖夜」
「どした雫」
「今度の日曜日空いてるかしら?」
「空いてるが…………分かった荷物持ちをしろとな!?」
「そこまで酷な言い方はしないわよ。……そうね……久しぶりにデートしましょ?」
教室がざわつく。なんであんな奴ととか言う声が聞こえる。おい誰だいまお姉さまに手を出したら穴ぶちぬきますとか言った奴。
「おーけーおーけー」
何でここまで気軽に返せるかと言うとそれは中学校まで遡る。
年始で雫と会うことになり、2人きりで買い物をする事になったのだが、俺は言ってやったのである。日時や場所を決めた男女が会う事をデートと言うのだ、と。何も恋人が一緒に出かけるだけがデートではないのだ。
まぁそんなこんなで、雫はそう思って言ったのだろうと、俺は意識せずにそのまま返した。
ちなみに雫はこの時『誘えたっ!聖夜をデートに誘えたっ!』と、内心狂喜乱舞であった。愛い奴である。
が、ここで待ったをかけるのが勇者クオリティ。我らが天之河である。
「おいおい、雫。買い物なら俺が一緒に行くから、神韋みたいな無責任な奴と一緒に行くなんて許さないよ?」
「なんで光輝の許可がいるのかしら?っていうか…私は聖夜を誘ってるの。それに聖夜は無責任なんかじゃないわ!幼馴染みだとしてもそれは取り消して頂戴。」
「まぁ落ち着け2人とも、争いは何も生まないぞ?」
お前当事者だろ!という心の声が一致するクラスメイト。
「……そうだな天之河。勝負をしよう」
「勝負だと?」
「ジャンケンで勝った方が雫とデートをする。負けたら口出ししない。それでいいだろ雫?」
「まぁ、聖夜がそう言うならそれで決めても良いけど……」
嘘である。雫は俺がジャンケンで負け無しなのを知っている。それに天之河は雫に言われたら断れない。だからこそ雫の口から言わせたのである。
「雫がそう言うなら分かった。そうしよう。」
ノッタナ。
「「最初はグージャンケンポン!!」」
結果…天之河はパー……俺はチョキで俺の勝ちである。
「な!?今後出ししたろ!!」
「おいおい何を言ってるんだ天之河。このクラスメイトが大勢いる中俺がそんな卑怯な事をするとでも」
正解で〜〜〜す!俺は後出しをしました。天之河がパーを出し終えた瞬間。俺はそれを見てチョキに変えたのだ、その差僅か0.001秒。はたからみたら普通に天之河が負けたように見えるだろう。
十六夜スペックだから出来たこと。直前に手を変えるなど容易い。
「くっ………」
これ以上の追求は、無意味だと悟ったのだろう、証拠もないから当たり前である。
「じゃあ、宜しくね聖夜♪」
「こちらこそ宜しくな雫。」
((はぁ……可愛い(カッコいい)))
いい笑顔である。
ちなみに天之河がこっちにきたため、ハジメと白崎の世界は構築されつつあった。
「ねぇ南雲くん……あの2人ってデキテルよね?」
「白崎さんもそう思った?実は僕もそう思ってた」
クラスメイトがギャーギャーうるさくて2人が何喋ってるのか聞こえなかった。
ち、十六夜スペックから元に戻してたのが仇となった……
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はい、授業は殆ど寝てました〜。お昼です。
学年一位の座は譲ったこと無いし、授業中当てられても即答するので特にお咎め無し。
「にしても、聖夜すごいよね〜さっきの奴なんて僕全然分かんなかったよ〜」
「勉強不足だなハジメ」
まぁその問題と言うのも、『このたびは ぬさもとりあえず 手向山 紅葉の錦 神のまにまに』を詠んだ人物を答えろって奴。正解は菅原道真なんだが、それだけ言われても普通分からないよなぁ……普通の高校生には。それこそ百人一首やってないと。
つか社会の問題で出すか?それ。どっちかっていうと古典だろ…。
まぁその問題を出した当の畑山愛子先生はクラスの女子とお喋りに夢中っと。
じゅるるる、きゅぽん!
隣から音が聞こえてくる。10秒チャージハジメ君である。
あれ?ここにいていいのか?
その直後しまった!という顔をするハジメ。
「南雲くん。珍しいね、教室に居るの。お弁当?よかったら一緒にどうかな?」
拒否しようとするハジメに、ぐいぐい行く白崎。そこに待ったをかける天之河。
それを背景に俺はお弁当を食べ出す。俺のは手作り弁当である。自信作は唐揚げ。ポイントはお好み焼き粉を使うこと。
「聖夜、1人食べてるのなら一緒に食べない?」
「一緒に食べるか」
席をくっ付けて食べ始める。
「これ、美味しそう一個頂戴な?」
唐揚げである。仕方ない。これの美味しさを広めてやるとしよう……自分の箸で掴んで…
「はい、あーん」
「!?」
「なんだ、食べないのか?」
「い、頂きます!」
口に入れた瞬間その味を理解したのだろう…いい笑顔をする。
「美味しい!!」
「そいつは何より」
再び食べ出す。
なんだ、雫こっちを見ながら顔を赤くして。は!?なんか顔に付いてる!?
顔を弄る俺を見て微笑む雫。未だに何か言いあってるハジメ達。甘々な光景を辺りに振り撒きながら、俺はその幸せを噛み締めていると……
凍りついた。
丁度俺達の足元に光り輝く円環と幾何学模様が現れる。その異常事態に周りの生徒達が気づく。その光は教室をどんどん満たしていきーーー
この感覚はあれだ!!転移するぞ!?
咄嗟に雫を抱きしめ……
光によって真っ白に塗りつぶされていた教室に再び色を取り戻す。
が、そこにはだれもおらず倒れた椅子や食べかけのまま開かれた弁当など、教室の備品はそのままに人だけがその姿を消していた。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
グダグダはいつも通りになる予定ですので……