眩い光が収まり、閉じていた目をゆっくりと開ける。
まず最初に飛び込んできたのは………
ギュッと目を閉じた雫の顔だった。咄嗟のことだったので抱きしめる形になってしまった。
「可愛い…………じゃなくて!大丈夫か雫」
「うえぇぇぇ!?せ、聖夜!?」
そらそうなるわな。目の前に俺の顔がドーンだぞ。
「怪我は無さそうだな良かった……」
「あ、ありがとう……」
そう言いつつもなかなか離れない2人。
「「………………………………」」
どちらともなく近づいていく顔。
後戻り出来なくなるぞ!戻れ俺!
そう思いつつも雫から目を離せない。
そして………………………
「そこ2人!ラブコメやってないの!」
そこへ、さっきまで呆然としていたが2人のなんかイイ雰囲気を見て、自分も南雲くんとああなりたいなと、思いつつもそれどころでは無いと慌てて声を掛ける白崎香織。
「お、お、お、おう!だ、大丈夫か雫!」
「だ、だ大丈夫よ!というか香織!私達は別にラブコメなんて……」
「もう少しでくっつきそうだったよ?」
2人して慌てながら弁明を図る2人。
俺は何をやってんだ……。
そこで改めて周りを見渡してみる。
今自分たちは巨大な広間らしきところにいるらしく素材が大理石で出来ていることや、彫刻のなされた巨大な柱、ドーム状の天井からかなりの豪華で重要な大聖堂であるとわかる。
さっきまでラブコメをやっていた俺達だが、そんなことが気にならないくらい、呆然と周囲を見渡すクラスメイト。どうやら教室にいた人全員が巻き込まれたようだ。
これ、多分異世界転移って奴だよなぁ………ってことはこれ原作はじまったか。マジでどんな話か分からん。
そんな彼らを取り囲む様に、祈りを捧げる様な格好の法衣集団がいる。その中でも特に豪奢で煌きらびやかな衣装を纏い、高さ三十センチ位ありそうなこれまた細かい意匠の凝らされた烏帽子のような物を被っている七十代くらいの老人が進み出てきた。
もっとも、老人と表現するには纏う覇気が強すぎる。顔に刻まれた皺や老熟した目がなければ五十代と言っても通るかもしれない。
そんな彼は手に持った錫杖をシャラシャラと鳴らしながら、外見によく合う深みのある落ち着いた声音で聖夜達に話しかけた。
「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」
そう言って、イシュタルと名乗った老人は、好々爺然とした微笑を見せた。
どうやらテンプレ通りの異世界召喚らしいな。最初から奴隷扱いとかされないだけまだマシな方だな。
ーーーーーーーーーーーーーーー
さっきの場所から移り、今は食堂の様なところへ来ている。
十メートル以上ありそうなテーブルに上座のほうから愛子先生、天之河、坂上、白崎と、クラスのカースト順に席に着いていく。
俺とハジメは勿論最後の方である。
「で、雫。お前は白崎達のところへ行かなくて良いのか?」
「良いのよ別にここで、イシュタルさんだって好きに座って良いと言っていたでしょ?……………………それに………………」
「それに?」
「………ううん、やっぱ何でもない」
「そうか?まぁ雫が良いならいいけど」
なんかハジメがジト目でこっち見てるけど無視だ無視。
イシュタルとやらの話によると、人間族と亜人族と魔人族の3つでそれぞれ北、東、南と分けられていて魔人族とは長い間戦争をしていたという。魔人族の個々の力が大きいのに対し人間族は数で補い拮抗していたが、最近魔人族による魔物の使役により数の有利も覆されつつあると。んで、それに対する救世主として神エヒトとやらに呼ばれて俺達が召喚されたと。
まぁ、要するに戦争の駒になれってことだな
このことに対して愛子先生が待ったをかける。
「ふざけないで下さい!結局、この子達に戦争させようってことでしょ!そんなの許しません!ええ、先生は絶対に許しませんよ!私達を早く返してください!きっとご家族も心配しているはずです!あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」
あぁまた愛子先生が跳ねてる……
身長150センチ程で童顔なためどう見ても大人には見えない。
これで原作開始って事だな……キーパーソンは間違いなくハジメだろう。あんないじめられっ子で学校のマドンナとも言うべき白崎から好意を寄せられてる時点で主人公確定だな。情報は確かに大事だがイシュタルの目からは侮蔑しか感じない。引き出せる情報もロクなものは無いだろうな。
愛子先生とイシュタルの問答を横目に見ながら小さくため息を吐く。
パニックの治らない中いきなり天之河がテーブルを叩いて立ち上がる。
おい、テーブルに当たるなよ。
「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放っておくなんて俺にはできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん? どうですか?」
「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい」
「俺達には大きな力があるんですよね? ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」
「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」
「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」
「皆んな!俺に力を貸してくれ!」
ギュッと握り拳を作りそう宣言する天之河。無駄に歯がキラリと光る。殴りたい。その笑顔。だが、それはそれとして
「おい、ちょっと待て」
いきなり声をかけた俺に、雫とハジメがギョッとこちらを見るのを傍目に天之河に向かって話す。
「ど、どうしたんだ神韋」
「どうしたじゃねぇよ、どうしてお前はそんな無責任な事が言えるんだ?」
「無責任ってそんな事は無い!現にイシュタルさんだってこの世界の一般人に比べたら戦う力が「そういうことを言ってんじゃねぇ」……じゃあどういう……」
「自分が先頭切って戦うって事に文句は言わねぇよ。お前自身が決めた事だからな。だが愛子先生も言っていたがお前は他の人にも、戦争をさせるつもりか?」
「俺達にしかできない事だろ!?俺達が戦う事で多くの人が救われるんだぞ!?」
「言い方を変えよう。………お前は他の人にも……クラスメイトにも
「なっ………!?」
他のクラスメイトも気づいたのだろう、戦争をするって事は人殺しをするって事と同義である。その事実に遅れながら理解をしめす。
「まぁ、、、今すぐに人を殺せって言ってんじゃ無いだろ。魔人と言うだけあってそれは人の形をしているのだろうしそうじゃ無いかもしれない。………が、戦争に参加するのは自分の意思で決めろ。他人に決められて、はいそうですかってなるわけないだろ」
取り敢えずこれで、こいつらの浮かれた気分も無くなっただろう。少なくとも力に溺れて早死にするリスクは少し減ったくらいだが………それにしてもイシュタルの野郎、このクラスでは天之河が発言力がある事に気付いてたな……説明する時も天之河にアピールする様に話してたし……
そう考えつつイシュタルに目を向けると、親の仇の様な目をしてこちらを睨んでいる。
こわっ……ジジイの熱い目とか誰得だよ……まぁ、お前の思う通りに物事進ませてたまるものか。
ーーーーーーーーーーーーーーー
はい!結局、天之河率いる幼馴染'sがそれしか出来ないからと戦う事を決め、クラスメイトもそれに釣られる様にしたので特に俺が割って入ったのは意味が無かった。
恥ずか死。まぁ最後まで雫とハジメが渋ってくれてたので良しとしよう……この2人は絶対に守る……後ついでにハジメヒロインの白崎も。
俺の中の優先順位は、雫≧ハジメ>白崎>>愛子先生>>>>>>>>>クラスメイト>>>>>>>>>>>越えられない壁>>>>>>>>>>>>天之河である。
で、戦争参加を決意した今、必要になるのは戦い方などなど、超平和世界にいた雫達はただの高校生であるため、いきなり魔物とか魔人とか戦えなんて土台無理な話である。そんな訳で、やって来ました!ハイリヒ王国!
俺達が召喚された場所は神山と呼ばれる山の頂上にある聖教教会と呼ばれるところであった。その麓にあるのがその国だそうだ。ちなみにここに来るまでにこの世界の魔法とやらを体験したが……これ、そのうち自分でも魔法作れないかな?ドラクエのが目標。
王宮に着くと、聖夜達は玉座の間に案内された。イシュタルが堂々と玉座まで敷かれたレッドカーペットを歩く先に立ち上がって待つ初老の男性。この国の王様である。そこで、おもむろに手を差し出したイシュタルに対し国王が恭しくその手を触れないほどのキスをする。
これで、この国は王様より神様の方が上である事が確定したな……傀儡か、それ以外か…。
そこからはただの自己紹介。国王の名をエリヒド・S・B・ハイリヒ、王妃をルルアリアといい、傍にいる金髪少年をランデル王子、14くらいは王女をリリアーナと言うらしい。なんとま、可愛らしい……そんなことを考えると横腹を雫に小突かれた。
その後、晩餐会が開かれ異世界料理を堪能した。王宮では、衣食住が保障され、戦闘訓練の方もいずれも優秀な人たちが紹介された。
晩餐が終わり解散になると1人一部屋ずつ与えられた部屋に案内された。皆んなが寝静まった頃を見計らい、俺は部屋を抜け出し裏庭みたいな誰もこなさそうなところに足を運んだ。
「これから始まる訳だが…十六夜の戦闘力は常にフルオープンでいいか……あの擬似世界を使えば言ったことや念じたことが現実になる訳だし……というか色んなアニメの戦闘方法とかやってみたいし……取り敢えず武器どうするか……」
それから一通り運動して部屋でぐっすりと眠った。
---------------
翌日から、戦闘訓練と座学が始まった。それに伴い身体能力、この世界で言うステータスを目に見える形にすると言う。
まず、集まった生徒達に十二センチ×七センチ位の銀色のプレートが配られた。不思議そうに配られたプレートを見る生徒達に、騎士団長メルド・ロギンスが直々に説明を始めた。
仕事は副長(副団長)に押し付けてきたらしい。もっとも、副長さんは大丈夫ではないかもしれないが……
「よし、全員に配り終わったな? このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」
その、気さくで接しやすい性格は聖夜達にとっても気楽で良かった。
「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう? そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される。 〝ステータスオープン〟と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ? そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」
アーティファクトと言うのは、現代では再現できない秘宝的なアレである。まぁ頑張れば再現出来ないこともなさそうだな。
早速配られたプレートに血を垂らしてみる。
===============================
神韋聖夜 17歳 男 レベル:1
天職:器用貧乏
筋力:ERROR
体力:ERROR
耐性:ERROR
敏捷:ERROR
魔力:ERROR
魔耐:ERROR
技能:言語理解
===============================
まぁ、うん、正直予想はしていた。だって十六夜スペックだぜ?ステータスプレート如きで測れるわけないよな……ってかなんだよ器用貧乏ってそれ天職じゃなくて称号だろ!いや、称号だとしても酷すぎる……。せめて問題児とかにしてくれよ……あと技能、何コレなんでこれしかないの?これって皆必ずついてるようなデフォルト技能だろ!?
メルド団長曰く、レベル上限は100らしくステータスも鍛えればそれなりに伸びるらしい。天職は謂わば才能のようなものらしく戦闘系天職と非戦系天職に分類され、戦闘系は千人に一人、ものによっては万人に一人の割合らしい。非戦系も少ないと言えば少ないが百人に一人の割合でいるらしい。また十人に一人という珍しくないものも結構ある。殆どは生産職らしい。
え?俺は?これはどれに分類されるのよ?
ステータスの説明でハジメの顔が真っ青になった。
あ、多分相当低かったなあれ。
メルド団長に次々とステータスプレートを見せていく中、ハジメの番が来た。
「ああ、その、なんだ。錬成師というのは、まぁ、言ってみれば鍛治職のことだ。鍛冶するときに便利だとか……」
歯切れ悪くハジメの天職を説明するメルド団長。まぁ、これで俺の武器は決まった。ハジメに
その様子にハジメを目の敵にしている男子達が食いつかないはずがない。鍛治職ということは明らかに非戦系天職だ。クラスメイト達全員が戦闘系天職を持ち、これから戦いが待っている状況では役立たずの可能性が大きい。その様子に檜山が声を上げようとするがそんな事をさせる俺ではない。
「じゃあメルド団長!俺のはかなりのレアケースでは?」
そう言ってすかさず声を上げステータスプレートをメルド団長に渡す。
「うん???なんだこれ?器用貧乏なんて天職見たことないぞ?それにそれ以外の項目もエラーを起こしている……」
やはり器用貧乏は天職ではないらしいな。
その場がザワっとする中、雫とハジメが驚いたようにこちらをみる。
「どうなんですかね?」
「ま、まぁステータスプレートが不具合をおこしたのかもしれないな。悪いが他ので試してくれ」
そう言われて他のステータスプレートに血を垂らしてみても結果は変わらない。
「う〜む確かにレアケースだな……ステータスが低すぎてエラーを起こしているのか??」
逆です。高すぎてエラーを起こしてるんです。まぁこれでハジメから意識を逸らすことは出来たな。
俺の目論見通り、ハクションカルテットが絡んできたのは、ハジメでは無く俺だった。あまりにもうざかったので檜山にはデコピンで吹き飛ばしておいた。その時の周りは唖然とし、雫とハジメは何処か納得した様な顔をした。どうやら理解してくれた様である。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
更新遅れた理由ですがね………はい、古戦場です。グラブってました。。まぁおかげで5万位以内で金剛も落ちてくれたので私的に満足です。