転生するのは2回目でした!?   作:T・紫

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いじめ……?

ステータスが分かってから、2週間が経過し俺は今、あの裏庭で1人日向ぼっこをしながら微睡んでいた。

 

あの後メルド団長に相談し、俺の訓練を免除してもらった。と、言うのも俺には訓練が必要ないって言うのが理由である。その証明にメルド団長とは他言無用で一対一で戦った。まぁ勿論圧勝したのは言わずもがなである。

 

その間、知識を求め図書館に通い続け、必要そうなモノ役立ちそうなモノは全て覚えた。

で、やる事が無くなったので他の人の訓練が終わるまでこうしてウトウトしている訳である。メルド団長には訓練に参加して他の人を鍛えて欲しいと言われたが、俺としてはまだクラスメイトに手の内を明かすつもりはないので断った。そのクラスメイトにはメルド団長から必要ないと言うことだけを伝えてもらい、想像に任せる事にした。

 

メルド団長には、召喚される前の世界にあった戦術などを話し合ったりして、役にたててもらう事にした。あの人超良い人だし信頼できる。今は兵法三十六計の話をしている最中である。

 

「あ、やっぱりここにいた」

 

「お、ハジメか、ちょうど良いところに」

 

「どうしたの?」

 

「ハジメの天職って錬成士だろ?あるものを作って欲しくてな」

 

「あるもの?」

 

「あぁ、実はルービックキューブを作って欲しいんだ」

 

「ルービックキューブ?なんでそんな物を?」

 

「そいつを武器にするつもりでね…ふふふふ」

 

「武器ィ!?どう頑張っても角で殴るくらいしか出来ないよねぇ!?」

 

「あ、そうかハジメは知らないんだったな。別にハジメとかには隠すことでもないし見せてやるよ」

 

「見せる?何を?」

 

「『求ルハ言霊。繰リ返サレルハ悲劇。止マヌ阿鼻叫喚。幾星霜ノ時ヲ経テ産マレシ、キボウヲ以ッテ、此ノ惨劇ニ終止符ヲ撃タン』【禁忌の獄】」

 

そう言うと、あの世界が俺とハジメを包んだ。

 

「せ、聖夜!こ、ここは!?」

 

「ここは俺の擬似世界。ある種の魔法だな」

 

この世界はどうやら自分の心象を写すとだけあり、その風景を作り替えることも可能である。前と同じなのは背景と巨大な赤い月だけで、あの時あった黒い人影の様なモノは無い。アレは見た通り人が様々な方法で殺されてる姿であり、詠唱にある阿鼻叫喚そのものであった。まぁ流石にそれをハジメに見せるわけにもいかないからね。

 

「す、凄いよ!!なんて厨二心をくすぐるセンスをしてるんだ!?」

 

「うぇえぇ!?反応する所そこ!?つか厨二はやめてくれ!凄い恥ずかしい!」

 

ハジメが暴走して何とかして止めるため格闘すること数十分。

 

「落ち着いたか?ハジメ君よ」

 

「ご、ごめんよあまりにも興奮して」

 

「いや、別に構わないけど……で、ルービックキューブなんだけど……」

 

「ああ、そう言えばそうだった。それで、ルービックキューブを作るのは良いけど作り方とか、初めて作るから時間かかるよ?あと素材も無いし」

 

「素材はこれ」

 

「いつの間に!?これは?」

 

「合成樹脂。プラスチックのアレね素材はここで念じればいくらでも出せるから錬成の練習にもなるだろ?いくらでも失敗してくれ」

 

ハジメの錬成は素材さえあれば工程とかを飛ばして形にする事が出来るらしい。俺もその技能欲しい。

 

「でもルービックキューブを作ったとしてもどうやって武器にするの?」

 

「それは作ってからのお楽しみだな」

「わかった!楽しみにしてるよ」

 

「そう言えばハジメも何か俺に用があったんじゃ無いか?」

 

「あ、そうだった!メルド団長が呼んでたんだよ!なんでも兵法三十六計話してるんだって?」

 

「あ、成る程ね。もう時間か。あの人とは意外に話が会うからね。ハジメも図書館で頑張って知識を溜め込んでるんだろ?ハジメや俺みたいな弱い奴は知識が武器になるからな」

 

「え?何言ってんの?聖夜ってたぶんあの中でも1番強いでしょ……というかこの世界で1番強いんじゃ無いの?」

 

「まぁ、……そうかも知れんが……」

 

「でも、そしたらどうして天職が器用貧乏なんだろうね?そこまで強かったらオールラウンダーとか、万能とかそっちの方が合うだろうに……」

 

「メルド団長によるとこういう天職って神様が決めてるとか言われてるらしいぞ」

 

「あ、なら聖夜の才能に嫉妬した神様が、形だけでもってわざとそういう天職にしてたりしてね」

 

「仮にそうだとしたら傍迷惑な神様だな……世界を助けて欲しくて呼んだのに弱体化させる様な天職とはこれいかに……少しも助からねぇ」

 

「あはは、それにしても僕って、聖夜の事知らない事だらけだなぁ……あの頃から喧嘩とかも強かったの知ってるし色んな武術やってたのは知ってたけどまさかデコピンで人1人飛ばせるほど強いとはなぁ…」

 

「ハジメも自分を守れるくらい強くなるんだな」

 

「あ、じゃあ聖夜が教えてよ!」

 

「ふは、構わんよ。夜とかに秘密の特訓はどうだろうか?」

 

「!?いいね!秘密の特訓!」

 

 やっぱりハジメと話してて楽しいわ。

 

「そろそろ戻るかメルド団長に呼ばれてる事だしな。じゃあハジメそれ頼んだぞ?」

 

「うん!任せてよ!」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

メルド団長に呼ばれて、団長室に向かう。

ドアの前まで来てノックをする。

 

「ノックしてもしも〜〜〜し」

 

別に気に食わないとかそんな事はないけどついつい言ってしまうこのセリフ。

 

「おぉ来たなセイヤよ。毎回そのセリフを聞くと何故か『おっぱァアアーッ』と言ってしまいそうになるのはどうしてだろうか??まぁいい。また兵法三十六計の話の続きをしてくれ」

 

メルドさん何故そのネタを知ってる…

 

「どこまで話しましたっけ?」

 

「こちらが勝っている場合の声東撃西と言う戦法の話をして終わったな。実際に使われてた時の話も面白くて楽しみだな」

 

あぁ、端的に言うと陽動作戦ってだけだが何故かこの世界ではあまり使われてない戦法らしいな。

 

「じゃあ、勝戦計はこれで終わりですね。次は敵戦計、余裕を持ってこちらが戦える、優勢の場合の作戦ですね。まず無中所有と言うんですけど。最初に敵が本気にする様なハッタリをかますんだ、当然それに反応する敵をそうやって欺く。それに気づかせてから、再び同じことをする。」

 

「それをしても意味が無いし相手は反応してくれなくなるんじゃ……まさか」

 

「そう、そのまさかです。相手は同じ事をしても反応せずに油断します。またか、とね。そこを一気に攻撃をして敵軍を破る」

 

この話は童話『オオカミ少年』の心理を逆手にとっているのものである。

 

「この戦法の話は?」

 

「そうですね。昔の俺の世界のある国に孫権と呼ばれる武将がいました。彼は劉表という今で言う政治家の城。江夏城を攻めたんですけど、あまりにも硬すぎる守りに辟易とし一計を案じた。まず敵軍の矢を消費させるため夜遅く、城の近くに流れていた川に篝火をかかげた小舟の大群で城に接近しました。勿論、その時の城主であった黄祖と言う武将は火矢を放って反撃し撃退した。だが毎晩同じ事が続いた7日目、その小舟は兵が乗っていない空の船である事に光祖は気づいた。その次の夜も、同じ様にさらに接近してくる船があったが空であることを知っている黄祖は、反撃をせずに眺めていた。だがそれこそが孫権の策。油断した所を小舟に乗っていた多数の兵で襲撃。そうして江夏城を陥落させた、と言う話だ」

 

「ほぉーためになるな。確かに油断させるうえに矢を消費させるとは凄い戦法だ」

 

「まぁこれは人間同士の戦いだから魔人相手に通じるかはわからないですけど」

 

「それでもいいのだ戦い方はたくさんあっても良いものだからな!それに最近は逸話を聞いて楽しんだりするものだ」

 

「あ、そういえばクラスメイトはどんな感じです?」

 

「ふむ、あの天之河という勇者が1番の伸び代をみせているな。ついで、剣士の八重樫という子だなあの太刀筋はそんじょそこいらのものでは到底真似できない。」

 

ふむ。勇者はどうでもいいが。そうか、雫はメルド団長から見ても強くなっているか。

 

「まぁ、おまえさんに比べたらまだまだだが。どうだ?クラスメイトの方では無く私達騎士団の練習に参加して教えてほしいくらいだ」

 

「いやいや、遠慮させていただきます……」

 

「そうか、それは残念だ……そういえば檜山とか言ったかあと近藤と斎藤と中野。彼ら4人は仲が良い様だが少し力をつけて助長している様だな。あれではいつか痛い目を見る」

 

「そうですか……メルド団長から少し言ってもらえたら助かります」

 

 あいつらが勝手にピンチになるのは別に構わないが、そのせいでクラスが巻き込まれるのはごめんだ。

 

「うむ、おまえらみんな誰一人として欠ける事は許す訳にはいかないからな」

 

「じゃあ俺もう行きますね」

 

「あ、ちょっと待て夕食の時間に言おうと思っていた事だが、明日から実践訓練の一環として【オルクス大迷宮】へ遠征に行くつもりだ。必要なものはこちらで用意してあるが、王都外での魔物との実戦訓練とは一線を画すものだが……まぁおまえさんに言ってもあまり意味はなさそうだな……遠征中も話を頼むぞ」

 

「りょーかいしましたでは、失礼します」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 夕食まで自分の部屋でゴロゴロしようと自室への道のりを歩いていた。

その道のりで訓練施設の近くを通りがかる。と、

 

「ぐぁ!?」

 

 ハジメの声!?

 

咄嗟に中に入るとそこには、ハクションカルテットとその前にお腹を押さえ倒れ込んでいるハジメがいた。

 

「ちょ、マジ弱すぎ。南雲さぁ〜、マジやる気あんの?」

 

「おい、ハクションカルテット!ハジメに何してんだ!?」

 

「お?神韋か?お前も一緒に稽古つけてやろうか?」

 

檜山がニヤニヤと言う後ろでケラケラ笑う取り巻き3人。

 

 それより先にハジメだ。

 

急いでハジメに駆けつけ回復魔法を唱える。

 

「ベ(ピー)マ!」

 

ぶっ!!っとハジメが吹いたのがわかった。

 

痛みが治ったのだろう。ガバッと起き上がると俺の手をガシッと掴み一言!

 

「ドラクエ!と言うか今のピー音どこから!?」

 

「反応する所そこかよ」

 

相変わらずのハジメに苦笑する俺。そして現在進行形で無視されてるハクションカルテット。面白く無いのか、檜山が思い切り蹴ってくる。

 

「無視すんじゃっ……ねぇっ!」

 

俺は振り向き蹴ってくるその足に掌を重ねると、そのまま()()()()()

すると、面白い様に飛んでいく檜山。

 

「おぉ〜結構跳んだな……どのくらいの威力で蹴ったんだよ……」

 

「せ、聖夜今のは?……」

 

「あぁ化頸(かけい)って言ってな、わかりやすい言葉で言うなら相手の攻撃を吸収したり、そのベクトルをコントロールすることができる」

 

「おい!オマエラ!神韋をやれ!」

 

吹き飛ばされたとこで、檜山の怒号がはいる。

 

「ここに焼撃を望むーー"火球"」「ここに風撃を望むーー"風球"」

 

中野と斎藤が魔法を放って来た。

 

 チッ、俺が避けたらハジメに当たる様に計算してやがる。

 

「ハジメ、魔法を使う相手に対する戦い方を教えてやる」

 

「聖夜!?」

 

「はっ!しゃらくせぇ!」

 

怒号一線、魔法を2つ殴り消す。

 

「「「「「は?」」」」」

 

「ボケっとしてんじゃねぇぞ!戦いにおいて相手は待ってくれないぞ!」

 

「なんっ!!」「うぐっ!!」

 

中野に一瞬で近づき、その顔を殴りとばし、そのまま横にいる、斎藤のお腹に向かって蹴りを放ち、これまた壁際まで吹き飛ばす。

 

「とまぁ、この様に魔法は気合いで吹き飛ばす」

 

「「「出来るか!!」」」

 

ハジメと檜山と近藤の声が重なる。どうやら、『ション』は気絶した様だ。

 

「くそっ!良くも『ション』を!」

 

「近藤おまえ、意外とその渾名気に入ってんだろ…」

 

近藤は槍術師であり、持っている槍を俺に向けて突き刺してくる。

 

「おい、危ないだろ、武器は人に向けるなって教わらなかったのか?」

 

「軽々と避けてるやつのセリフじゃない!」

 

近藤の突き刺してくる槍の先端の側面に手を添え矛先を変えて避ける。文字通り片手間で。

 

「ハジメ、いいか?この様に槍など使うやつに関してはこうして避ければ問題ないぞ」

 

「だから、出来……無くはなさそう……頑張れば……でもそのままじゃあ千日手じゃ…」

 

「ハジメ千日手なんて言葉よく知ってるな。まぁこのままじゃあ戦況は変わらない……が、こうして避け続けることで相手がどういう風に攻撃するかは分かる。だからこうしてっと………」

 

突き出された槍に合わせ下から蹴り上げる。

 

「なっ!?ごふっ!!」

 

「こうして武器を手放させてから、物理で殴る。以上」

 

近藤も気絶したみたいだ。一発しか殴ってないのに脆すぎだろ……

 

「う〜ん、こうして聖夜が戦うのを見るのは初めてだな」

 

「まぁ向こうの世界で戦うなんて喧嘩くらいだもんな……ハジメも鍛えなきゃな内功から」

 

「なんか怖くなって来た」

 

俺がハジメと話してると。みんなお待ちかね、彼らが登場した。

 

「何やってるんだ!」

 

「ちょっと、光輝!」

 

そう言って俺に詰めかけて来て胸ぐらを掴んでくる天之河、それを止めようとする雫。南雲くん大丈夫!とハジメに近寄る白崎。

 

「雫は黙っててくれ!さぁ答えろ神韋、彼らをこんなにして何をしていたんだ!」

 

「何って稽古だよ稽古。檜山に聞けよ、あいつがハジメを稽古してやるって言ってハジメをボコボコにしてたから俺がその相手を務めたまでだ」

 

「稽古でも、ここまでする必要は無かっただろ!」

 

「いや、ここまでって言っても一撃でのしたから、追い討ちをかける様な事はしてないぞ」

 

 ハジメのことは無かった事にするのか残念勇者。

 

俺が檜山の名前を出したからか、嘘は言っていないのでバツの悪そうな顔をする檜山。

 

「だが気絶するくらい強くする必要は無かっただろ!」

 

「あいつらが先に魔法を撃ってきたり槍で突いて来たから反撃しただけだぞ?」

 

「だとしてもだ!!」

 

ギリギリと力を強めていく天之河。

 

「光輝!聞いていたでしょ!檜山君の顔を見て分かる通り聖夜は嘘を言ってないわ!早く離しなさい!」

 

「そうだよ、天之河君。聖夜は僕を助けてくれただけなんだ」

 

しかし、力を弱める素振りを見せない天之河。

 

 はぁ、しょうがない

 

「少し頭を冷やせ、残念勇者」

 

胸ぐらを掴んでいる手に、両手を添えると。グルンッ!と天之河ごと回して地面に倒す。

 

「なっ!がはっ!!」

 

「天之河、俺を憎む気持ちは理解しているが、せめて雫やハジメの言う事くらいは信じてやれよ」

 

 雫に至っては檜山の顔からと、天之河にも分かるように説明していたのに。

 

「白崎、あいつらも治療してやってくれ。今はお前しか治癒魔法使えないからな」

 

「う、うんわかった」

 

「え?聖夜もモガッ!」

 

 余計な事を言うなハジメ。面倒くさくなるから。ほら、雫とか俺のことめっちゃ凝視してくるし。

 

「俺達は先に部屋に戻ってるから、雫また夕食の時にな」

 

「まったく……ここは任せなさい」

 

「ありがとな、雫。助かる」

 

 

 

夕食の時間には、ハクションカルテットはちゃんと復活していて、天之河も不機嫌そうな顔をしていたが、メルド団長の話を聞いて意気込んでいた。雫は俺の隣で黙々と食事を摂っていた。なんか席近くない?俺としては嬉しいけど。

 




ここまで読んでいただきありがとうございます!
誤字報告ありがとうございました!

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