転生するのは2回目でした!?   作:T・紫

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月下の語らい

「ハジメ、お前本当に明日ついていくのか?なんだか、嫌な予感しかしないんだが…」

 

「うん、確かに危険だけど、ここまで来たら腹を括って冒険しないと」

 

「命の危険があるのにそれでもか?」

 

「それでもだよ…」

 

夕食後、ここはハジメの部屋。明日からいよいよオルクス大迷宮への遠征が始まることが告げられたついさっき。少しハジメと話がしたくてお邪魔させてもらっていた。

 

「そうか……そこまで言うなら俺は何も言わない。ただし、無理はするなよ?」

 

「うん、それにクラスのみんなは強いし、聖夜に至ってはチートみたいなものでしょ?」

 

「ははっ!違い無いな!ちゃんとハジメも守ってやるよ!ところで!ルービックキューブどうなった?」

 

「あぁ!それなら……ほら!あのあと直ぐに完成させられたよ!昔バラバラにしたことがあってね……思い出したらすぐ作れたよ!……でも本当にこれ武器になるの?唯のルービックキューブだよ?」

 

「まぁまぁもうすぐお披露目する機会があるから待ってなって」

 

「うーん、なんかのアニメでルービックキューブを武器にする奴があったような気がするんだけどなぁ……思い出せない……」

 

「いや、そこまで出て来てるならもうわかった様なものだろ…」

 

「ヒント頂戴!」

 

「そうだなぁ……じゃあ大ヒントだ。これ以上は言わないぞ?」

 

「うん!当ててみせる!」

 

「じゃあ……Next Conan's Hint!『呪い』!次回はハジメの作ったルービックキューブが変形して活躍!」

 

「ゔぇぇえぇぇ!?何今のSEとBGM!?というかもうほとんどネタバレ!」

 

「おぉ!ナイスツッコミ、ハジメ」

 

「というか今ので、もうわかっちゃったよ……確かに、カッコいいよねアレ、凄い厨二心をくすぐるワード」

 

ちなみに、BGMとSEは禁忌の獄をプチ展開して音だけ流してみた。万能なのねあれ。

 

コンコン。

 

「ハジメ来客だぞ」

 

「そうみたいだね、どうぞー!」

 

「南雲くん、起きてる?白崎です。ちょっと、いいかな?」

 

開いた扉の先には白崎が立っていた。ネグリジェにカーディガンを羽織った姿で。

 

「……なんでやねん」

 

「おっと俺はお邪魔みたいだし部屋に戻るわ……ハジメ。」

 

「何?」

 

「避妊はしろよ?」ぼそっ

 

「しないよ!!」

 

「しないって!?ハジメ!?お前、ヤル気なのか……?」

 

「そういう意味じゃ無い!あぁ、もうとにかくややこしくなるから聖夜は部屋に戻ってて!」

 

「そういうことだ、白崎」

 

「なにかな?」

 

「good luck」

 

「無駄に発音良いね!でも頑張るよ!」

 

お互いにグッジョブサインを出す。

 

扉を閉めて、部屋に戻った。

 

 

そこからどれくらい時間がたったかわからない。ウトウトと微睡んでいると、

 

コンコン。

 

 誰か来たな、この時間だとハジメか?なんか俺忘れ物でもしてたか?

 

扉に近づきとドアノブに手をかける。

 

「はいは〜い、白崎とは上手くやれたかハジメ……」

 

「私よ、聖夜。それより南雲くんが香織と上手くやれたってどういう意味よ…」

 

「いやいやこっちの話…別にやましい事は無い……ことも無さそう?」

 

「へ?」

 

「いや、白崎のやつ薄いネグリジェにカーディガン羽織った姿でハジメの部屋を訪問してだな……まぁ本人にその気は無いんだろうが……」

 

「香織には後でちゃんと言っておかないと……」

 

「にしても白崎も大変なやっちゃなぁ〜ハジメは気付いてないぞアレ」

 

「いつかは報われるわよ……きっと」

 

「それより、どうしたんだ雫も」

 

「あ、そういえば用事があって来たんだったわ……」

 

「おいおい……で、どうした」

 

雫は一息入れると、口を開いた。

 

「あなた、何処にも行かないわよね?」

 

「へ?急にどうした?」

 

「夕食前に少し仮眠をとった時、夢を見たのよ」

 

「どんな?」

 

「あなたが、自分から、私の元から私を置いて去って行く夢を。中学の頃離れて行った時みたいに……」

 

「……俺はその時何か言ってたか?」

 

「……確かに、何か言っていたような気がする……でも、覚えてない……ただその後…っ!」

 

「どうした急に顔真っ赤にして?は!?俺もしかしてそんな恥ずかしい事言ってたの!?」

 

「いえ…なんでも無いわ」

 

そうよアレは夢だったのなんでも無いわ。ぶつぶつと呟く雫。

 

「まぁ、なんだ、俺から雫の元を離れるなんて事はそうそうないぞ?それこそ雫が嫌とか言った場合その限りでは無いが……」

 

「私がそんな事言う訳ないでしょ、あなたにはずっと側にいて貰いたいくらいだわ」

 

「!?いや、まぁずっとは分からないぞ、いつかは雫も結婚するだろうし」

 

 やべ、ウェディングドレス着た雫を想像してしまった。結婚しよ。

 

まだ、付き合ってもいないし、二人とも両片思いなので、いつになることやら。

 

「まぁ……そうね」

 

 しゅんとしないでくれ、罪悪感が、が、が、

 

ギクシャクとしてしまった空気を正そうと、一つ咳払いをする。

 

「まぁ、明日からオルクス大迷宮に遠征だしな、不安があるのは分かるが、俺の強さは雫も知っているだろ?俺が逆に雫の事守ってやるから」

 

「守っ!そ、そうよ!あんなに強いだなんて聞いてないわ!さぁキリキリ吐きなさい!」

 

「確かに、黙っていたのは悪いと思ってるが、特に自分から話すようなことでも無かったしね」

 

「あの強さは何処で手に入れたのよ!」

 

「まぁ生まれた時からだな」

 

 嘘は言ってない

 

「生まれた時って、あなた……確かにあまり他人に言いふらしたく無いのも分かるわ……私はそんなに信用ならない?」

 

「いやいや!嘘は言ってないし、雫の事は世界で1番信用してるし信頼してる!だけどこれはかなり重い話だから詳しいことはまだ雫にもあまり話せないかなって」

 

「世界で1番……///」

 

 おっとどうやら違う所に反応したみたいだぞ?

 

「まぁ、なんだ?そのうち話してやるよ。今日はもう遅いし部屋まで送って行くよ」

 

「はっ!!…う、うん、ありがと」

 

 

部屋を出て雫の隣を歩きながら雫の部屋へ向かう。道中言葉は無いが、それでも居心地悪いわけではなく、むしろ心地よい静寂が流れていた。楽しい時間は長く続かなく、すぐに終わりを迎える。

 

 

「じゃあ、雫。おやすみ」

 

「うん、聖夜もおやすみ。ここまで送ってくれてありがとう」

 

「気にすんなよ、あそこで別れて1人で送り出すにはこの世界は物騒だからな」

 

「あっちの世界では送ってくれないのかしら?」

 

「なんだか、今日は珍しくしおらしいじゃないか……そんなこと無いさ、雫の為なら何処にでも行く」

 

「あっ……」

 

「こうやって頭を撫でるのも久しぶりだな……昔と変わらない綺麗な髪だな、それにこのシュシュもまだ使ってくれてたのか。嬉しいよ」

 

「……ずるいわ……他の誰でも無い、あなたから貰ったものだもの大切にしてるわ」

 

2人して顔を真っ赤にしてるのはいつもの事。

 

「今度こそおやすみ雫」

 

「うん、おやすみなさい」

 

 名残惜しいがここは別れよう。どうせ明日も会えるのだから。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

雫SIDE

 

 

 この世界に飛ばされた時、私はとても不安だった。戦争をしなきゃいけないんだって。でもそんな気持ちも直ぐに吹き飛んだわ。

彼が、聖夜がずっと側にいてくれたから。どういう訳か、彼はものすごく強いみたい。それこそ何かのアニメを見てるような感じ。

 

彼なら私の事を守ってくれると思った。小さい頃に夢見た王子様みたいに。だって強すぎてステータスプレートにエラーと表示されるくらいだもの。

 

だけど、そんな思いもある夢を見て不安が止まらなくなった。聖夜が私の事を置いて1人で何処かに行ってしまう夢。その時何かを喋っていたのを覚えている。でも内容はあまり覚えていない。だってその後に、キ、キスを、してくれた事の方が衝撃的だったから。あの時彼は私に愛してるって言ってくれてた!

 

私の願望だって事くらい分かるわよ?それでも期待してしまうじゃ無い……

 

それを聖夜に話したら、勿論キスの事は伏せてよ、そしたら彼、私の事守ってくれるって。つい恥ずかしくて強さの方を言及しちゃったわ。強さの方が気になるのも事実だったしね。

まぁはぐらかされてしまったけれど。それでも、彼は私の側に居てくれるって言ってたわ!勿論結婚だって彼以外とは考えていないわ。

 

その後だって私って結構強いけど、ちゃんと部屋まで送ってくれたし……私の胸はずっとドキドキしてたわ……音聴こえてないわよね?

 

久しぶりに頭撫でてくれたり!!彼から、大好きな彼から貰ったシュシュだもの!

 

おやすみの言葉が今は悲しい。

 

あぁ、なんか1人でここまで興奮して、何か少し虚しくなってきたわ……私は大好きだけど、彼は私の事どう思ってるのかしら……少しは私の事意識してくれているのよね……それこそ魔法を使って知りたいものね……




ここまで読んでくださりありがとうございました!

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