すいませんでしたっ!!
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緑光石
魔力を吸収する性質を持った鉱石。魔力を溜め込むと淡い緑色の光を放つ。
また魔力を溜め込んだ状態で割ると、貯めていた分の光を一瞬で放出する。
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「ま、まさか、これは!?」
「その、まさかだ」
「いや、だがアレを作るのにはまだ材料が足らないな……」
「取り敢えず、他の魔物の肉食べるついでに探してみるか」
このダンジョンかなりの難易度を誇る筈なのだが、この二人にとってはもはやタダの食料庫でしかない。聖夜の料理の腕があればの話なのだが…
ハジメと2人目的の鉱物を探しつつ、ウサギや狼を調理しつつその技能をモノして言った。
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燃焼石
可燃性の鉱石。点火すると構成成分を燃料に燃焼する。燃焼を続けると次第に小さくなり、やがて燃え尽きる。密閉した場所で大量の燃焼石を1度に燃やすと爆発する可能性があり、その威力は量と圧縮率次第で上位の火属性魔法に匹敵する。
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「この鉱石、アレを作るためだけに存在するような鉱石だな…」
「まさか、これほどまでにピンポイントに存在するとは……」
「どれくらいで作れそうだ?」
「うーん……作ったことないから何百千回と試行錯誤してだが、幸い聖夜がいるおかげで、食料には困らないし、3日で仕上げる」
「了解、ならそれまで俺は階層下に降りてって新たな技能を取ってくるわ」
「今サラっととんでも無いこと言わなかった?」
「言ってない」
という訳でここからは別行動。まぁちゃんと日帰りだが。
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次の階層まで来たのだが……何これ?暗っ!
取り敢えず自作、『緑光石で作ったカンテラみたいなもの』、を左手にもち先へ進むことにした。
暫く進んでいると、通路の奥でキラリと光った。
「暗闇で光を出すなんて自殺行為してんじゃねぇよ!」
それをお前がいうのが!というツッコミはハジメがいないので無し。
とまぁ、その光源に向かって、《ヴラド・ツェペシの杭》に変形させたルービックキューブを投擲。
鳴き声が聞こえるでもなく、グシャッ!と、何かが潰れるような音がした。
近づいて見てみると、体長二メートル程の灰色のトカゲのような生き物だった。頭部を粉砕されているので、即死したようだ。
「……収納するか」
時間にしておよそ数十時間そんなこんなで、他にもフクロウと、六本足の猫の収穫が出来た。
あまりにも真っ暗過ぎたので、途中フクロウを調理して食べ、技能の夜目を手に入れた。
フクロウには夜目があるって聞くし、そう思い食べたら大当たりで喜んだのは別の話。
「下に行く階段も見つけたし、そろそろハジメのとこ戻るか」
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「という訳でただいまー」
「どういう訳だよ?」
「進捗の程は?」
「試作の段階だが…一つ問題が発生した」
「というと?」
「形は出来上がったし、これで飛ぶ筈だし、実際に飛んだ……のたが……」
そう言って、差し出してきたのはリボルバー式の拳銃。
「問題は?」
「弾が脆すぎて発射の瞬間が耐えられない」
「あ、ならこれ使ってみたら?」
そう言って聖夜はある鉱石を取り出す,
「これは!?」
「階段の近くの壁にこれがあった。鑑定したら使えそうだったし持ってきてみたのだが……俺の判断は当たりだった様だな」
「まじか、まじか!まじですか!!流石、聖夜!今すぐに作る!何がなんでも作る!というか明日にはもう完成してる!」
「まだ1日経ってないぞ?というより先に飯だ」
「あ、そっちから頂きます」
「あ、そこは素直に従うんだ……」
飯の力は偉大である。
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タウル鉱石
黒色で硬い鉱石。硬度8。衝撃や熱に強いが冷気には弱い。冷やすことで脆くなる。熱を加えると再び結合する。
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「それで?そっちは?」
「下の階は真っ暗だった。だから、緑光石を加工してカンテラモドキを作って、進んでたのだが……」
「だが?」
「フクロウの魔物がいてなこいつの技能に夜目があった、これのおかげで更に下に続く階層は見つけといた」
「じゃあ俺の新武器のお披露目はその下の階層からだな!」
「思ったんだが、この洞窟の魔物に地球来の銃の威力が通じるのか?」
「それなんだが、あの狼の技能の纏雷のおかげで小型レールガンとしてやってみようと思う」
「オーバーキルかな?」
「敵は殺すだけだ」
「同感だな」
「………………………」
「………………………」
「…………………美味」
そいつは有難い。今夜のメニューはサラダが無いのが痛いが、トカゲの唐揚げにフクロウの胸肉を使ったステーキ。
「米……欲しいなぁ」
「わかるぜその気持ち。まぁ普通以上に美味しいから、感謝しか出ない」
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南雲ハジメ 17歳 男 レベル:20
天職:錬成師
筋力:450
体力:550
耐性:350
敏捷:550
魔力:500
魔耐:500
技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物系分離]・魔力操作・胃酸強化・纏雷・天歩・風爪・夜目・石化耐性・言語理解
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神韋聖夜 17歳 男 レベル:25
天職:器用貧乏
筋力:ERROR
体力:ERROR
耐性:ERROR
敏捷:ERROR
魔力:ERROR
魔耐:ERROR
技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物系分離]・魔力操作・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地]・風爪・夜目
・言語理解
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「石化耐性ってことはあのトカゲ、バジリスクか何かか?」
「サーチアンドデストロイだもんな。聖夜。」
食後、ハジメは弾丸を作成するため錬成を始めた。
弾丸は一発作るのにも途轍もなく集中力を使うらしい。超精密品であるし当たり前なのだが。
ドンナー(ハジメ命名)に刻まれたライフリングが無意味にならないようにサイズを完璧に合わせる必要がある。炸薬の圧縮量もミスは許されない。
何度も繰り返す失敗のおかげで、錬成の熟練度がメキメキと上昇していく。
御蔭で、鉱物から不純物を取り除いたり成分ごとに分けたりする技能が簡単にできるようになったし、逆に融合させるのも容易になった。実際、今のハジメの錬成技術は王国直属の鍛治職人と比べても筆頭レベルにある。
ハジメは黙々と錬成を続ける。聖夜も錬成の技能があるので、その隣でハジメ用の弾丸を作成していく。
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一方その頃、ハイリヒ王国王宮内。
の、時間を少し遡る。
ハイリヒ王国王宮内、召喚者達に与えられた部屋の一室で、八重樫雫は、ひとり、枕に顔を埋め悶えていた。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁ!!聖夜!ほんとになんてものを最後に残していってくれたわけよ!!」
それでいて思い出される、聖夜との深いキス。そして、ほとんどプロポーズと言っていい告白。
それを思い出しては顔を真っ赤に染め上げ、枕に顔を埋め身悶えをする。
更に思い起こされるのは、聖夜が奈落に向かって飛び降り、その姿が見えなくなった後、暫く感傷に浸り。振り替えるとニヤニヤ顔の香織と鈴、そして明らかにソワソワしてるクラスメイト。
それを見た瞬間、雫は顔に血が登っていくのを生まれて初めて感じた。羞恥心で。
自分でもよく叫ばなかったと思う。そして、それを隠すように出来るだけ表情を真顔にして、メルド団長に早く戻るように進言し。そのまま撤退したのだが……
その帰り道香織と鈴に、初めてのキスの味がどうとか、今どんな気持ちとか、根掘り葉掘り聞かされ……一言で言うと地獄だった。それはそれはベヒモスを相手にしてる以上にきつかった。
この場に聖夜はいないし、もう五日も会ってないから夢なんじゃ無いかと思うこともある。しかし、左手の薬指にはめられた、グランツ鉱石がキラリと光る指輪を眺めてはあの時のことが夢なんじゃないって事を思い起こさせてくれる。
「はぁ……聖夜……逢いたい……」
あの日、迷宮での死闘と喪失を味わった日から5日は過ぎている。
あのあと、ホルアドにて一泊し、早朝には王国へと戻った。最後の最後で、カップルどころか夫婦誕生の瞬間を目の当たりにしてしまったクラスメイト達だが、ハジメが落ちたという事実に聖夜が妻(雫)を残して飛び降りたという現実(ハジメを助けるためだが)に、どう考えても生存は絶望的であると考えていた。
そのため、とても、迷宮内で実践訓練を続行できる雰囲気では無かったし、ハジメという無能と聖夜と言うと無能(事実を知っているのはメルドと雫など近しい人間だけであるため王国からの評価は無能)が死んだという勇者の同胞が死んだ以上、国王にも教会にも報告は必要だった。
帰還を果たし、聖夜とハジメの死亡が伝えられた時、王国側の人間は皆愕然としたものの、それが無能の聖夜とハジメと知ると安堵の吐息を漏らしたのだ。
そして、悪し様に聖夜とハジメを罵る者が出た瞬間。雫は激情に駆られ何度も手を出しそうになった。というか聖夜を、罵しった者には天罰をくだした。
正義感の強い光輝は真っ先怒った。光輝が激しく抗議した事により、国王や教会も悪い印象を持たれてはマズいと判断したのか、彼らに処分をくだした。
一部のクラスメイト達は影で雫の事を未亡人扱いしている事が判明した時は、そのクラスメイトに手を出しそうになった。香織のおかげでなんとか踏みとどまれたが……。
その香織自身はハジメが生きていると確信しているようで、自分も彼を探しに行く!と、強くなる為に頑張っているようだった。
直接その話を香織から聞いた時に、頑張って付き合うことにした。雫自身、聖夜を探しに行くことも考えていたからである。聖夜には待ってろと言われたが、こちとらそんなに待っている気は無い。
光輝は完全に聖夜とハジメが死んだと思っているようで、空回りの励ましを会うたびに香織と雫に掛けていた。初めてそれを聞いた時は、まだ聖夜は死んでいない!とビンタを喰らわしたのもつい最近の話である。
光輝はというと、雫があの場であんなことを言ったことは何かの気の迷いだと思っているようで何も気にしていない。
聖夜に逢えなくて落ち込んでいた雫に、クラスメイトが死んだことに胸を痛めていると勘違いした、なんちゃって勇者は、本人が居なくなっている以上自分がその代わりだって務めると言わんばかりに雫に積極的に話しかけていた。
「はぁ……聖夜……」
はめられた指輪を、胸に抱きながら雫は眠りについた。