【完結】異世界転生したら合法ロリの師匠に拾われた俺の勝ち組ライフ   作:ネイムレス

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第九話

 友情っていいよね。特にこの世界娯楽が少なくって、お話してくれるお友だちとか超貴重。そんな訳で、本日は最近仲良くなった例の姉妹と一緒に、森の中の散策に来ている少年であった。

 

「いいですかー? 迷子にならない様に、おねーちゃんにしっかりついて来るんですよ?」

「ふっ、姉さんあんまり張り切ってると危ないよ。ここら辺だって、弱いモンスター位は居るかもしれないんだから。でも君は安心していて良いよ、例え襲われたとしても僕が蹴散らしてあげるからね」

 

 ふんすふんすと勢い込んで先頭を行く姉と、その後ろをやれやれってな感じで着いて行く妹。少年はその後に続きながら、ちらりと肩越しに背後を振り仰ぐ。

 果たしてそこには、フードを目深に被りゴゴゴゴゴっと黒いオーラを発する師匠の姿が。こっわ、師匠こっわ。なんかのゲームのラスボスみたい。闇の衣纏ってませんか!?

 

「どうかしたのかい? 後ろばかり気にして、何か……居た?」

「二人とも遅いです! ほらほら、日が暮れる前に目的地に急ぐんですよ!」

 

 背後ばかり気にしていたら、いつの間にか姉妹が両側に来てサンドイッチ。その瞬間、背後からの闇のオーラがその圧力を増した様な気がする。

 右手に農民少女、左手に剣士少女、そして背後には三人を見守るラスボス少女と来たもんだ。

 

 お察しの通り、姉妹には背後の師匠は見えていない。ただ、魔具を使って存在を希薄にして居るので、最初から居ると知っている少年以外には発見されにくい状態になっているのだ。盗人の指輪? もしくは霧の指輪なんですか師匠。

 

 なぜこんな胃痛ハイキング状態になっているかと言えば、そもそもの発端は師匠に森での採集を命じられた事がきっかけであった。

 何でも錬金術師は採取の際には、知り合いに護衛を依頼して野山に赴くのが常識との事。それなら丁度知り合いも出来た事だしと、このちぐはぐな姉妹に話を持ち掛けたのである。姉は野良作業の経験から植物に詳しいらしく、妹はこの年齢で狩りの手伝いもした事があると言うので適任だろう、とそう思っていたのだが……。

 

 姉妹を誘った事を報告したら、師匠も付いて来ると言い始めた。村の周辺は子供でも勝てる様なモンスターしか生息していないとはいえ、絶対の安全などこの世界にはありえない。平凡な採取だと思ったら、『おおっと!?』なんて突然襲撃されるかもしれない。

 つまり、保護者同伴じゃないと先生許しません、という事らしいです。過保護かな?

 

 その事を知っているのは少年だけで、先程から無言の圧力で胃が痛い。どうしてこうなったと悩んでいるうちに、そうして三人とラスボスは採取エリアに到着していた。

 

「さあて、張り切って探すですよ! 錬金術師のお師匠さんに依頼されてるのは、確か怪我に効く薬草でしたよね?」

「姉さん張り切り過ぎだって。転んで怪我しても知らないからね」

 

 何だかんだで仲の良い姉妹が先行し、少年はその後をテクテクついて行く。気になる後ろはと言えば……。どうやら、師匠は黒のオーラを収めてくれたようだ。というか姿自体が見えない。流石に、作業中ずっと威圧し続けるような真似はしないようですね。

 ならば、今は期待された働きをこなすのに集中した方が良いだろう。少年は小走りに姉妹二人の後を追った。

 

「ふう、思ったよりも順調に集まったです。モンスターも全然出て来なかったし、らくしょーらくしょーですよ!」

「姉さん調子に乗り過ぎ。まあ、普通は何回か雑魚に絡まれると思うんだけど、今日は運が良かったみたいだね」

 

 小一時間ほど薬草の群生地を練り歩いてみた結果、目当ての薬草の他にも解毒や熱冷ましに調合できる薬草などもたっぷり集める事が出来た。普段から採り慣れているのか姉の方は薬草の生えやすい場所の知識を持っていたし、妹の方は姉と少年が集中できるように周囲の警戒を担当してくれている。短時間で採り終えたのは、二人が共に優秀だったお陰だ。

 これは、これからもたびたび同伴してもらった方が仕事が楽になるかもしれない。そう思った少年は、とりあえず今日の分の日当は弾もうと決定した。

 

 さて、ここまで順調だと、やはり気になるのは付いて来た筈の師匠の事である。あの後も全く見かけなかったが、一体全体どこに行ったと言うのだろうか。ここまで静かだと、逆に心配になってくる。

 だとすれば、この周囲をもう少し探索したい所なのだが、姉妹二人にはどう切り出した物だろう。

 

「なるほど、途中まで気配を感じていたのに、ここに来て急に気配を感じなくなったのが気になる、と。それは確かに、このままだと気持ち悪いね」

「それで後ろを気にして遅れてたんですね。そうならそうと言ってくれたらよかったのに。気になるなら探してみれば良いんですよ」

 

 少なくとも嘘は言っていない。ただ、その気配の正体が師匠と言う事を言っていないだけだ。心苦しくはあるが、今は師匠の安否を確認するのが最優先なのである。

 

 さて、この薬草の天国とも言える群生地は、森の木々の中に出来たちょっとした広場に存在していた。少し深入りすればすぐに深い森の中。それゆえに、獣や魔物の類も潜みやすい環境でもある。流石に森の中まで、運よく接敵しないなどと言う事はないだろう。

 剣技を習う剣士少女を先頭として、戦闘力皆無の姉を真ん中に、護身用の魔具を持たされた少年が殿を務めて森の中を進む。

 

「……ん、獣臭い。この先に何か……、居る」

 

 先頭を進む剣士少女が確信した様子で呟き、腰の剣を一本だけ引き抜く。障害物の多い森の中では、二刀流は自殺行為だと知っての行動だろう。つまりは、戦闘が起こると言う事だ。

 少年は自ずと農民少女の前に庇い立ち、そこからはさらに慎重になって先を進む事になる。最悪の場合は、頑丈な自分が盾になってでも姉妹を逃がそうと強く決意した。

 

 はたして、そこは倒木が無数に苔むした、木漏れ日の落ちる薄暗い空間であった。採取場と違って日が当たっていないので、菌糸類などが良く採れそうだが今はそんな場合では無い。

 その空間の中心には土が小山になった様な場所があって、側面が掘られてちょっとしたひさしの様になった部分がある。雨露をしのげるようになったその場所に、その生き物は悠々と横たわっていた。

 

 それは白い――いや、銀の毛並みを持った狼だ。ただし、その大きさは下手な小屋より大きい。何某かの理由で力を得た魔獣の類だろう。悠然と横たわりながらも、頭だけは高く上げてこちらをじっと見つめてきている。近寄れば容赦はしないと言う強い意志を、知性あるその瞳からこちらに投げかけてきているのが分かった。

 だが、三人が気になったのはそれよりも、その巨大な狼の傍らにモコモコと積み重なっている物。傍らの存在に安心しきったように腹に頭を突っ込んで眠る、ころころとした幾匹もの魔獣の子供達だ。子供なのに下手な犬よりデカいと来ている。流石、親がデカいだけはあるようだ。

 

 そして何よりも、そんな小狼達を布団にしてうつ伏せになって乗っている、何だかとても見覚えがある様な白いローブの人物が居るのが一番目についた。

 

「師匠……。何でこんな所に居るんですか」

「はっ!? しまった、眠っちゃった!!」

 

 少年の呆れた様な声を聞いて、白いローブの人物――居なくなったと思っていた師匠はがばりと跳ね起きた。何やってるんだよ師匠!! 眠るんじゃねぇぞ……。少年はとりあえず心の中でそう思っておいた。大声出したら狼に襲われそうだし。

 

「……こほん。どうやら、無事に採取を終えられたようだな。魔獣の調査をしながら待っていたが、中々の早さで感心したぞ」

 

 絶対嘘だ。もうちょっと時間掛かると思って子狼と戯れたら、もこもこにやられて一緒に寝ちゃったんだろう。ローブのフードを被って仕事モード口調になっても、赤くなった顔を誤魔化そうとしているのはバレバレですよ。でも、少年は慈悲の心を持って、思い至った真実は口にしなかった。だって赤面した顔が可愛かったから。

 

 その後に師匠の口から語られた言い訳は、要約するとこんな感じだった。

 まず到着してからすぐに周囲に魔物の気配が全くない事に気が付いた師匠は、監視を止めて周囲の調査を実行し程なく巨大な狼を発見。どうやら周囲の魔物はこの狼が子育ての為に排除したのだと結論付ける。討伐も検討したが子供が小さすぎたので、魔具の力で交渉する事でこうして懐柔したのだそうだ。

 フフフ、と不敵に笑う師匠に、狩人の経験のある剣士少女は若干引き気味の様だ。

 

「よく、野生の魔獣がここまで懐きましたね……。僕は怖くてとても近寄る気にはなりませんよ」

「なに、この子は賢いのさ。敵意を向けなければ、相応の実力者にはむやみに仕掛けないだけの知恵がある」

 

 つまりそれって、師匠は少なくともこの巨大な狼より強いって事ですよね。何だか母狼が師匠を見る目に敬意みたいのが宿っている気がするし。一体全体、どんな『交渉』をしたのやら。気にはなった少年だが、自ら藪を突くのはやめておいた。

 

 その後、恐る恐ると言った様子で二人の姉妹も小狼に触らせてもらい、そのあまりのモコモコ具合と暖かさに二人とも即堕ち。暫し女子三人がきゃっきゃっうふふと動物たちと戯れて過ごす事になる。動物と触れ合い笑う少女達。ここは天国かな?

 少年はと言うと、そんな少女達の様子を離れた所で見ながら、摘んだ薬草を種類ごとに選別して束ねる作業に勤しんだ。そして、しみじみと思う。

 

「最高だよな……。この世界に生まれて本当によかった……」

 

 やっぱりロリは最高だぜ!! そんな邪な思いを浮かべる少年を、小狼の一匹が小首を傾げて不思議そうに見ているのであった。

 




動物と戯れる師匠。
さる方に依頼されたお話ですがこんな形になりました。

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