【完結】異世界転生したら合法ロリの師匠に拾われた俺の勝ち組ライフ 作:ネイムレス
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長時間馬車に揺られた経験はありますか?
少年は今、王都へと向かう長距離の乗合馬車に乗り、そのあまりの乗り心地の悪さに辟易としていた。道が悪ければガタガタと跳ねあがり、サスペンションなど無いので振動が直接尻に突き刺さる。怪我は直ぐ治る少年だが、断続的な痛みとなると話は別だ。最初の内は周囲の風景などに目を輝かせていたが、今はもう痛いやら疲れたやらでぐったりとしていた。
「ししょー……、王都まだぁー……?」
「ふふっ、情けない声を出すな。最初ぐらい、馬車の辛さを味わっておくのも旅の醍醐味と言う物だぞ」
弟子が情けない声を上げるのを、涼しげな顔で窘めるのは白いローブを纏ったお師匠様。フードを目深に被りながら、今日はお仕事モードで話している。まるで顔を弟子以外に見られたくないかのように。恥ずかしがり屋さんかな?
ちなみに最近気が付いた事だが、師匠は家に居る時以外は大体フードを被って仕事モードになっていた。何でも、家の外に居る時は自分は常に錬金術師であるから、対外的にそれを示す為にフードを被っているらしい。ケジメと言う奴だろう。
ならば今度こっそりフードに猫耳でも付けてみようか、と少年はわりと命懸けの計画を思いついていた。どんな反応をするのか楽しみでしょうがない。その後のお仕置きは多分、ギリギリ致命傷で済むはずだ。死ななきゃ安い!
と、そんな所で少年は唐突に、師匠の座る座席に違和感がある事に気が付いた。師匠が座席に敷いたピンク色のクッション。それから微弱な魔力を感じ取ったのだ。錬金術師として魔力を扱う事を叩きこまれた少年は確信する。あれは魔具だ。
「師匠。もしかして自分だけ馬車旅が楽になるグッズを使用してませんかね。ズルいですよ、俺にもくださいよ!」
「ああ、使用しているよ。私はもう嫌と言う程、馬車の辛さは知っているからな。そして答えは拒否だ。錬金術師たるもの、求めるならば自身の知恵と力で手に入れなければならない」
つまり、欲しければ自分で錬金しろと。畜生、可愛い顔して言ってくれるじゃないかこのロリ。絶対に、気づかない内に猫耳フードにしてやるからな。少年は固く固く心に誓うのであった。
そんなこんなをしている内に、乗合馬車は王都の城門を潜り停留所へたどり着く。王都に近づいた時には、ぐったりしていたはずの少年も再びに窓に張り付いて目を輝かせていた。今はもう、早く馬車から降りたくて堪らない様子だ。
「師匠、師匠、師匠! 王都、王都、王都!!」
「くすっ、解った解った。私は御者に帰りの日程を確認して来るから、アナタは先に降りて待っていなさい」
はい、よろこんでー! 元気よく返事をして、少年は馬車の扉を誰よりも早く飛び開けて外に踊り出した。なんと言ってもこの世界は娯楽が少ない。野山で駆け回って友人たちと遊ぶのも良いが、現代日本の娯楽を知っている身としてはとにかく刺激に餓えていると言っても良い。だからこそ、少年はその欲求を知的好奇心に転換していた。その被害は主に、師匠が被っている。好きな娘の秘密の場所とか、めっちゃ知りたくなっちゃうからね!
馬車から降りて直ぐは、停留所と言う事もあり周囲に見えるのは馬車と馬ばかり。だからそこから人の流れが進む先、王都のメインストリートへ視線を走らせる。はたして、初めて見やる異世界の王国と言う物は、少年の心にワッと走り抜ける風の様に広がった。
「……おう、いっつぁふぁんたじー……」
街並み自体は奇抜という訳では無い。レンガや漆喰、木造などの多様な建築物が立ち並び、そこを縦横に人々が行き交っている。人並みの規模だけなら、日本の都市部の方が余程ごみごみしているだろう。
ただ、行き交う人々の中にはエルフが居る。ドワーフが居る。小人はホビットだろうか。動物その物と言った頭部をした獣人だっている。多種多様な種族が集まって、アニメやゲームでしか見た事の無かった世界を形作っているのだ。
そして、少年の視線は自然とさらに遠く、果てにそびえる王城へと向かう。西洋風の城ならばネットなどで目にした事は幾らでもあった。だが、今は目の前にそのどれとも違う本物の光景がこうして存在している。その事を思うだけで、少年の胸から心臓が飛び出しそうになった。色々な感情が溢れ出して来た為に。
今彼は、異世界に居るのだ。そう、強く思わされた。
「こら、ダメだろう一人で勝手に動いたら。ここは田舎の村と違って人も多い。逸れて迷子にでもなったらどうするつもりだ。って、どうしたのその顔……! はしゃぎ過ぎて転んだりしたの?」
背後から師匠が追いかけてきて、少年を見つけるとお説教を始めた。だが、その言葉は少年の横顔を見た所で、少年の良く知る優しい声色に変わる。師匠は街中だと言うのにフードを外して、心配げな表情で少年に気づかいの言葉をかけ続けた。
少年は、自分でも気が付かない内に涙を零していたのだ。
「いやぁ、ちょっと街並みを見たら感動しちゃって。怪我とかは全然してないですよ。大丈夫大丈夫、こんなのすぐに収まりますから。ほんと心配とか、無用ご無用問答無用ですよ。あはははははっ……」
自分がまるで世界に独りぼっちになった様な気がしたから、とは素直には言えなかった。師匠にはそもそも転生の事は話していないし、異世界に居る事なんて今更じゃないか。それで泣いてるなんて恥ずかしくて、少年は服の袖でぐしぐしと強引に涙を拭う。こんなの格好悪くてしょうがない。特に、師匠に見られるのは情けなくて死にたくなるじゃないか。
「…………、んっ!」
強がる少年に対して、師匠は暫し黙考してから勢いよく腕を突き出した。少年に差し向けられる師匠の小さな掌。魔具である指輪のハメられたその可憐な指先を、少年は困惑して様子で眺め師匠の顔と何度も視線を行き交わせる。この手は何ですかホワーイ?
その答えは、師匠が直ぐに答えてくれた。
「迷子になりそうだから、そうならないように手を繋ぎましょう? ……どんな時でも、私はアナタを一人になんてしないわ」
やだなぁ師匠、そんな告白みたいなこと言われたら嬉し過ぎて泣いちゃいますよ。実際に少年の目からは、また涙がいっぱいに溢れて来ていた。このタイミングでそれはヤバいわ。うん、結婚しよ。
少年は再びグシグシと目元を拭ってから、差し出された手に手を重ねる。握った手が暖かくて、もう涙は溢れて来なくなった。師匠もそれを見て、にっこりと満足そうに微笑む。
「さあて馬鹿弟子よ、せっかく王都に来た以上はたっぷりと買い物に付き合ってもらうぞ。目的の期日までは、まだ日があるからな」
「もう、どこまでもお供しますよ、シッショー!! ……あれ、目的ってなんでしたっけ?」
「おいおい、馬車の中でもしっかり説明しただろう。今回王都に来たのは、この間の手紙の友人に――」
フードを被り直して仕事モードに戻った師匠に手を引かれ、少年はとっても嬉しそうにしながらぐいぐいと引っ張られて行く。口調は固いままではあるが、師匠もしっかりと口元を笑みに歪めている。やっぱり恥ずかしがり屋かな?
結局その日は大量の素材を買いあさったが、その間も二人の手はしっかりと繋がれたままであった。
ネタのストックは細かくメモに取った方が良いですね。
とりあえずは11個ほどは書き続けられそうです。