【完結】異世界転生したら合法ロリの師匠に拾われた俺の勝ち組ライフ   作:ネイムレス

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何故か書いていてすごく楽しかったお話です。
皆さんも楽しんでもらえると嬉しい限り。
あと、先に謝っておきます。ごめんなさい!


第十七話

 今日は厄日なんじゃないかと、少年は真剣にそう思った。

 それはある晴れた日の事。師匠に頼まれたお使いの帰り道を歩いていた時に、少年が後方から声を掛けられた事で始まる。

 

「そこの貴方! ちょっとこちらに、お向きなさいな!」

 

 如何にも高慢ちきそうな物言いの言葉だが、少年は素直に従い振りむく事にした。無視したらきっと、更に面倒な事になると思ったので。そして、その事を直ぐに後悔する事になる。

 

「やっぱり、その黒いローブに貧相な顔立ち……、貴方があの鈴蘭の錬金術師の弟子ですわね!」

「はいその弟子ですよ。俺に何か御用ですか、……ウツクシーお嬢さん」

 

 女はとりあえず誉めろと言う師匠のありがたーい教えを実行しつつ、社交辞令を吐き出した少年は改めて相手を観察した。

 癖のない金の髪を腰まで伸ばし、額にはサークレットを付けて中心に翠玉を光らせる。背は少年よりも高く顔立ちは大人びていて、実年齢はもちろん肉体的な年齢も上だろう。身に纏うのは露出の多いまるで羞恥心をどこかに置いてきたような水着の様な衣装。その上に漆黒のマントを靡かせ、更に刺々しい肩当てに皮の長手袋と来て、まるで悪の組織の女幹部と言う有り様だ。手にした金属の杖は身長よりも高く、背格好と合わさって更に強い威圧感を放っている。

 あと、少年には非常にどうでも良い事だったが、彼女のその胸は容姿に見合う程度に豊満であった。走るときっと、上下に跳ね暴れる事だろう。チッ……。少年は心の中で舌打ちした。

 

 親が見たら泣くか怒るか呆れるか。いずれにしても、この辺りでは見かけない人物には間違いない。それが少年にいかなる要件なのか、聞きたくはないがとりあえず訊ねてみた。それに対しての反応は、頭の痛い形で帰って来る事となる。

 

「オーッホッホッホッ! オオーッホッホッホッホッ!! よくぞ聞いてくれましたわね! この(わたくし)、黒百合の魔法使いの一番弟子が、わざわざこんな辺鄙な所にまで来た理由はただ一つ! わが師の永遠のライバルにして仇敵である鈴蘭の錬金術師の弟子、貴方と一対一の勝負をする為にやって来たのですわ!!」

「あっそっすかー、たいへんっすねー、じゃーがんばってー」

 

 巨乳、年上、高慢ちき、痴女、この時点で少年は彼女に対して完全に興味を失っていた。むしろ関わりたいと思うロリコンが居るであろうか、いや無い(反語)。

 踵を返してすたすたと歩き始めると、少年の黒いローブのフードをむんずと掴まれグエッとなる。地味にきつい事をしてくれるのは、もちろんさっきの高慢ちきな痴女である。

 

「敵前逃亡とは、かの大錬金術師の弟子ともあろう者が情けないですわね。それとも、大錬金術師様の名声なんて、所詮はその程度だったと言う事なのでしょうか? いやですわ、ライバルを名乗る私の師の名声まで堕ちてしまうではありませんか」

「ああっ……? なんだぁ、おめぇ……」

 

 どうやら、この痴女は少年の安全装置を外しちまったようでございますねぇ。少年本人はともかく、お師匠様を侮辱するとは無礼千万。こいつはめちゃ許せんよなぁ! と、少年は静かに激昂していた。

 

「取り消せよ、今の言葉ぁ! 俺の師匠はなぁ、可愛い上に凄く強くて立派で賢くて凄い可愛いんだぞ! それが解らねぇってのかよオラァ!」

「あらあら、それが本性なんですの? 粗野で凶暴で下品で、まったく野蛮ですわね。言われるのが嫌なら、最初から逃げずに話を聞いていれば良かったのではなくて? オーッホッホッホッ!」

 

 強い自信の表れなのか無駄に堂々と無駄な胸を張って来るが、少年は端正な顔の方を正面から睨み付けて抗議を開始。それを正面から受け止めつつ、高慢な巨乳は余裕の表情で皮肉を浴びせて来た。

 

「上等だ! 勝負でも何でもやってやろーじゃねぇかよ! 無駄な肉ぶら下げながら、無駄な争い吹っかけて来やがって! 自分がどんだけ恥ずかしい言動と格好してんのか解ってんのか? だから暴力的な争いが無くならないんだよ! 解らないなら、ぶって解らせてやる!」

「まあ! 珍しく人の顔を見て話せる殿方かと思えば、やっぱり見る所は見ているのですわね汚らわしい。殿方は私を見れば胸胸胸とうっとおしい事! こんな邪魔な物体のどこが良いんだかさっぱり理解できませんわ! その小さな頭には卑猥な事しか詰まっていないのかしらね! 上等なのはこちらの台詞です。正面から叩き潰して差し上げますわ!」

 

 売り言葉に買い言葉とはまさにこれ。お互いの言動でお互いがどんどんとヒートアップして行き、事態は既に臨戦態勢を超えた一触即発。じりじりとすり足で位置を調整しながら、お互いに何時でも飛び掛かれる様に間合いを測り出す。

 少年が懐に手を入れて魔具を取り出そうとし、それを見て高慢な魔法使いが杖の先を突き付ける。

 

「こんな道のど真ん中で、何をやっているんだお前らは……」

 

 すわ決戦かと言った時、横合いから声が掛かった。その鈴が転がる様な愛らしい声の持ち主は、誰あろう少年の師匠その人である。ここには偶然通りがかっただけで、別に弟子の帰りが遅いから迎えに来たとかではない。あと猫耳も無い。残念でしたね。

 師匠はフードを目深に被ったままで、テクテクと少年の傍に歩み寄って来る。その弟子は、前に出ようとする師を腕で遮って、止めてくれるなと訴えた。

 

「シッショー!! 後生ですから、止めないでください! この女には、ぶって解らさなきゃいけない道理と言う物があるんです!」

「何を言っとるんだお前は。心配しなくても喧嘩をするなとは言わん。だが、決闘するなら審判位用意しろ。お前達は殺し合いでもする気か?」

 

 流石に命まで取るつもりはない少年は、師匠にこうまで言われると二の足を踏んでしまう。振り上げた拳の下ろし所に困っていると、代わりという訳では無いだろうが相対者が口を開く。言うまでも無く、先程まで言い合っていた高慢な魔法使いである。

 

「お初にお目にかかります、鈴蘭の錬金術師様。そのご活躍はわが師から聞かされております。私は黒百合の魔法使いを師と仰ぐ者ですわ。どうぞお見知りおきを」

「ふん、道理で見覚えのある格好だと思った。まさか弟子にまで同じ格好をさせるとは、流石に思っていなかったな」

 

 フードの下でクツクツと師匠が笑う。いや、嗤っているのか。彼女の思い出の中では、一体どんな光景が思い起こされているのだろう。隣で困惑する少年にはわかりえない。

 

(わたし)の弟子が無礼をしたようですまない。だが、あの女の弟子ならわざわざ挨拶に来たという訳でもあるまい。私に何か用件があるのだろう?」

「いいえ、鈴蘭の錬金術師様には本当にご挨拶のみを……。私の目的は、貴女様のお弟子さんとの一対一の決闘。近年になり弟子を取った鈴蘭様の様子を窺うついでに、その弟子をぶっ飛ばして来いとのわが師からの命令ですの」

 

 そりゃあ大した挨拶だ。鈴蘭師弟は同時に思った。要するに、弟子を使って喧嘩を売りに来たのだろう。今の会話の流れだけで、鈴蘭と黒百合の二人の険悪さを察すると言う物だ。

 

「そう言う事なんですよ師匠。じゃ、これからあの女をぶっ飛ばす系の仕事が今からあるんで、これで……」

「馬鹿弟子。御使い帰りで護身用の魔具程度しか持ってないお前が、旅慣れた完全装備の魔法使い相手に何ができると言うんだ」

 

 少年が腕まくりせん勢いで前に進むが、すかさず師匠がフードを引っ掴んで引き留める。確かに師匠の言う通り、少年の持っている魔具は総動員しても、正面からならこけ脅しがせいぜいだろう。出来るならば、一度準備する時間が欲しいとは少年も思う。

 だが、そんな事を相手が認めるだろうか。

 

「構いませんわよ? わが師からも言われております。互いの持ち得る物全てを使って、対等の勝負で撃ち負かせ、と」

「うん? 奴がそんな事を言ったのか、本当に? ルール等には言及していなかったのか?」

 

 師匠が高慢な魔法使いの言葉に反応し、魔法使いは師匠の質問に頷いて答えて見せる。それを見た師匠はフムと小さく呟き短く思案すると、何を思ったのか高慢な魔法使いに手を差し出し握手を求めた。

 

「そちらの寛大な心遣いに敬意を表しよう。お互いに、良き戦いが出来るよう健闘を祈る」

「まあ、稀代の英雄にそう言ってもらえるのならば光栄ですわ」

 

 女性二人が握手を交わし、にいっと唇を歪めた好戦的な笑みを浮かべ合う。まるで二人が決闘するかのようだが、実際戦のうのは少年である。なんだかこれでは置いてけぼりにされている様ではないか。

 

「さて、では万全の準備をした錬金術師の戦い方と言う物を、幼いお嬢さんにご教授して進ぜようか」

 

 師匠は彼女と握手した方の手を見てほくそ笑みながら、テトテトと先を行って自らの家に戻って行く。少年も一度高慢な巨乳女を一瞥してから、慌てて師匠の後について行った。目を合わせた魔法使いは、フフンっと少年を嘲笑う。もう勝ちを確信しているかのような、やはり高慢ちきな態度である。

 

「あったまくんなあの女……。絶対泣かせちゃるけんのう」

「落ち着け馬鹿弟子。わざわざ色々と贈り物をくれた相手に、そんな事を言っては失礼だろう。なんせ、これから勝ち星も譲ってもらうのだからな」

 

 少年の怨嗟の籠った呟きに対して、師匠は涼しい顔でフフッと軽く笑みを零した。そして、少年に対して見せ付ける様に、ひらひらと手を振って見せる。何時も通りに、指輪型の魔具が幾つも填められた手を。

 少年は此処で確信した。あ、これもう勝負始まってるわ、と。

 




前後編にしようかとも思いましたが、まあいいかとそのままぶつ切りにしました。
果たして勝負の行く末はいかに。続きはまた次回でございます。

しかし、ロリでお客を呼んでいたのに巨乳キャラを出してよかったのだろうか。
生粋のロリコンの皆さま、どうかお許しください。

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