【完結】異世界転生したら合法ロリの師匠に拾われた俺の勝ち組ライフ   作:ネイムレス

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師匠の可愛いカワイイ話を見たい人ごめんなさい。
師匠単独回は次回なんだ。ほんとうにもうしわけない。


第十九話

 それは、本当にただの、なんとなく思いついた疑問であった。何時もと変わらない日常の、食後のティータイムでの出来事である。

 

「師匠って武勇伝とかあるんですか?」

 

 師匠にだってもちろん過去がある。ここ暫くの王兄や黒百合と言った師匠の旧友との再会を見て、少年はそれを強く意識するようになっていた。だが同時に、少年は師匠の事をあまり知らない自分に気が付く。

 だからこそ、師匠が過去にどんな事をしていたのかが知りたくなったのだ。

 

「どうしたの、藪から棒に。私は錬金術師なのだから、別段武勇に優れるなんて事は無いわ。せいぜいが、アナタも前に聞いた通り、王国に国宝等級の薬を収めた位なものよ」

「いや、だっておかしいじゃないですか。もし師匠が本当にそんな薬を作ってて、他にもいろいろな便利な魔具を作っているんだとしたらですよ? こんな田舎の片隅で、のほほんと平和に暮らせるもんなんですかね」

 

 師匠は基本的に過去の話をしたがらない。だからこそ、少年は今まで師匠の過去に触れる事は無かった。しかし今回に限っては、知的好奇心を押さえられずについつい食い下がってしまう。どうしても知りたいと視線で訴えかけると、師匠はわざとらしく大きく溜息を吐いて手の中のカップをソーサーに置き直した。

 そして、フードを被って気持ちを切り替え、じーっと見つめて来る少年に改めて向き直る。どうやら食後のティータイムは、授業の時間になったらしい。

 

「しょうの無い奴だ……。と言ってもな、大して面白い話でもないぞ?」

「そんな事は無いですよ! お師匠さんのお話なら、絶対に面白くなるに決まってるです!」

 

 気が付いたら、少年の隣に農民少女が生えていた。そのあまりの唐突さに少年は固まるが、師匠には全く動揺は無い。もしかしたら師匠は、彼女の存在を検知してフードを被ったのでは? 少年は訝しんだ。

 そして師匠は何事も無く話を続ける。え、この状況はスルーなんですか? どうやらその様でございます。

 

「ふむ、私が何故色々と危険な物を作り出しているのに、こうしてのほほんと田舎暮らしが出来ているか。それは、私が王国に保護されているからだ。いや、同盟関係と言った方が適切か」

「同盟? 一個人が国と同盟結ぶって、やっぱり師匠って地上最強の生物かなんかなんじゃないですか?」

 

 同盟とは本来、強い者が弱い者を傘下にする建前か、もしくは同等の力を持った者同士の間に成立する不戦協定の様な物だ。それを圧倒的弱者であるはずの個人が、絶対強者たる国と同盟を結ぶなどありえない。つまり師匠には、それだけの何かがあると言う事だろう。国で保護されるほどの可愛さかな?

 

「国家錬金術師という訳でもないがな。ただ、私の創り出した物はまず国に預ける事になっている。国と言うか、王兄のアイツにだが。そこで秘匿するか世に出すかを判断して居るそうだぞ。代わりに私は、安穏とした日々を送っているという訳だ」

 

 だが、それだとこの国は良いとしても、よその国が黙っていないのではないだろうか。もしかしてこの家がトラップ塗れなのはその為の備えだったり? そのせいで風呂が覗きにくいのか、おのれ近隣諸国め許さん。少年は自分の所業も忘れて、他国の間者に恨み節を吐き出した。

 

「フッ、それだけではありませんよね。僕達の祖母が良く話してくれましたよ、お師匠さんのドラゴン退治のお話」

「ああ、その事か……。薬に必要な素材を取りに行っただけなのだがな。ずいぶんと誇張されている様だ」

 

 待って。またなんか生えたんですけど。室内なのに帽子を取らない剣士少女が、やはりいつの間にか少年の隣に座っている。気が付いたら姉妹に挟まれているとか、これはちょっとした恐怖ですよ。

 そして、師匠はやはり気にも留めずに話を続けた。

 

「別に、ドラゴンなんぞ薬で弱らせて、こっちを強化してればでっかいトカゲみたいな物だ。たまに凄く強くて喋る奴も居るが、そう言うのは私一人では無く複数人で挑んで倒したからな。私一人の武勇ではないよ」

「そんな事ないです! ドラゴンを単身で倒せるなんて、それだけで僕尊敬してしまいます! すごいなー、憧れちゃうなー!」

 

 少女剣士は元々厨二っぽい所があり、カッコよく英雄が活躍する武勇伝に目が無い。そのおかげでテンションの上がった彼女は、何だか話し方が姉にそっくりだった。やはり姉妹か。

 ちなみに姉の方は話を聞きながら、一心不乱に勝手に取り出して来た茶菓子を貪っている。ちょっ、零すんじゃありません! 少年はかいがいしく世話を焼いていた。

 

「そしてそのドラゴンの倒し方が非常に悪辣で、それを恐れて他国も滅多に手を出してこないのですわ。ね? そうですわよね?」

「悪辣とは言ってくれるな、黒百合の弟子。別に、私は錬金術師として出来る事をしているだけだぞ」

 

 やはり現れたか金髪巨乳魔法使い! 少年はもう達観の域に達していた。もうテーブルに椅子が無いので、アトリエの方から椅子を持って来るぐらいの余裕を見せ付ける。しょうがないからお茶も出してやろう。少年の気配りスキルは、師匠との生活で鍛えられているのだ。

 

「皮膚を軟化させる薬や、行動を鈍化させる薬。睡眠や麻痺等の状態異常に加え、何よりも複数の症状が出る猛毒の数々……。これらを同時に叩き込まれるトカゲが、魔物ながら不憫でなりませんわ。きっと、何処の国もそんな物を味わいたくはないでしょうね」

「前にも言ったが、状態異常に備えていない方が悪い。まあ、備えていればまた別のやり口で責めるだけだがね。完全無欠な存在なんて、この世には存在しないさ」

 

 ああ、師匠も家事は全滅ですもんね。確かに確かにと、少年は妙に納得してしまう。したり顔で頷いていたら、師匠の指輪から電撃が飛んで来た。今日も愛が痛い。

 魔法使いの娘は師匠の話を聞きながら、それを細かくメモしている。どうやら次の少年との対戦の為に、錬金術師の戦略を探っているようだ。なんとも抜け目の無い奴。少年が呆れた目で見ていると視線が合い、魔法使いの娘はフッと嘲るように笑って来る。次の対戦でも絶対負かしてやろうと、少年は固く固く決意した。

 

「むぐむぐ。ズズー……。ぷはぁ! つまりお師匠さんは、ドラゴンより強いからここで暮らしていられるって訳ですね! そこに痺れる憧れるぅ、です!」

「国を潰すのは疲れるからな。放っておいてくれるのなら、こちらからわざわざ動きたくもないさ」

 

 確かに敵に回したら国ごと滅ぼされかねないのであれば、めったやたらに触らない方が賢明なのだろう。今、まるで実行した事があるかのような言い回しをしていたが、きっと気のせいだと言う事にしよう。それこそ、触らぬ神に祟りなしだ。

 それからも、師匠と少女達のお話は、わいのわいのと続いて行った。

 

 それにしても、室内の女性率がずいぶんと高くなったものだ。まるでハーレムみたいだって? ハハッ……。少年の境遇は、その真逆であった。

 

「ほらほら、ぼさっとしてないでもっとお茶菓子を持って来るですよ! こんなんじゃぜんぜん足りないです!」

「ん、僕にはお茶のお替わりを貰えるかな。家だとちゃんとしたお茶なんて滅多に飲めないから、ついつい飲み過ぎちゃうよ」

 

 姉妹には執事の如くこき使われ、せっせと追加の菓子やお茶の用意をさせられたり。ここは喫茶店じゃないんですよお嬢さんがた。もちろん、少年の恨み言はニッコリ笑顔で受け流される。

 

「まあ、黒百合の二つ名は貴女様がお婆様に送ってくださったのですね。ライバルがお互いに送り合う称号なんて、素敵ですわね」

「ふん。この私に鈴蘭なんて二つ名を付けてくれたのは奴だからな。こちらからも相応の物を送り返すのが礼儀だろう?」

 

 自分の師匠が別の所の弟子と談笑するのを、むざむざと見せ付けられたり。魔法使いの娘は忙しく動いている少年に向けて、ハッと鼻で笑っているのでワザとだろう。ガッデム。

 師匠と二人きりのマッタリタイムが、一体どうしてこんな事になったのだろうか。ちょっとした知的好奇心の暴走が、少年にハーレムと言う地獄をもたらした形となった。これぞ正に、好奇心は猫を殺すと言う奴であろう。

 

「あーもう、お前ら全員覚えとけよ! 師匠以外!!」

 

 少年の精一杯の慟哭は、やはり少女達の笑顔で簡単に塗りつぶされる。ああ、この世は正に無常なり。でも、少女達にこき使われるのならそれはそれでアリかな。そんな風に思ってしまう少年でもある。ただし魔法使い、テメーはダメだ。

 結局女子会が終わるまで、少年は嫌がらせを受けつつこき使われ続けるのであった。

 




Q.結局師匠の強さが分かりにくいから他の師匠で例えてください。

A.東西南北中央不敗スーパーアジア位。

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