【完結】異世界転生したら合法ロリの師匠に拾われた俺の勝ち組ライフ 作:ネイムレス
特に師匠の話がなかなか思いつかない。
このままではタイトル詐欺になってしまいますね。
ここの所、少年は戦闘について考える事が増えた。言うまでも無く、数日に一度挑んで来る黒百合の魔法使の弟子、金髪巨乳のあの恥ずかしい格好をさせられた少女のせいである。
「あの女、この間やり合った時に魔法使えない様にしてやったら、鉄の杖でぶん殴って来やがった。それが思いのほか痛くて、顎砕かれたわ。魔法使いじゃなくてアマゾネスだろ、アイツ」
「なるほど、それで僕に接近戦の訓練をして欲しい、と。フフッ、君って意外と負けず嫌いだったんだね」
そりゃもう男の子ですから。殴られるのは別に構わないが、負けてばかりではいられない。そんな訳で、身近に居る接近戦の使い手、剣士少女の手を借りようと思い付いたのである。
提案された彼女は暫しウーンと軽く唸り、やがて決意と共に強く頷いた。
「うん、わかったよ。僕で出来る事なら協力する。お仕事が早く終わった後とかなら付き合えるから、訓練したくなったらあらかじめ予定を決めておこうね」
「おう、助かる助かる。あんがとな。本格的に剣を習ってる知り合いって、他に思いつかなくてさ」
そんな事だろうと思ったよ、と剣士少女は呆れたように笑う。それでも彼女は、それから直ぐに最初の訓練を開始してくれた。何だかんだで付き合いの良い彼女には、今度何か埋め合わせをしようと少年は思う。最近は錬金術で道具を色々と作れるようになってきたので、それらをプレゼントするのも良いかもしれない。
そして、最初だと言う事なのでお互いの実力を測る為に模擬戦をして見たのだが、少年は実にあっさりと負けてしまった。剣士少女がフェイントやステップを使いあっと言う間に距離を詰め、対応する事が出来なかった少年をあっさり追い詰めてしまったのだ。
もちろん少年も無策では無く、近距離用の衝撃波を放つ魔具で応戦しようとしたのだが、一瞬で懐に入り込まれてはどうしようもなかった。こればかりはもう、レベルが違うと言う奴であろう。
「うん、成る程、よく分かったよ。君はまず、戦闘経験が少なすぎるんだね。フェイントに良く引っかかるし、足捌きにも目がついていけてない。これは接近戦だとカモにされるのは仕方ないよ」
口調は優しいのに割と容赦ない。だがここまで一方的にやられたのなら、逆に清々しいと言う物だ。これだけ実力差があるのなら、得られるものも大きくなるに違いない。
その後も少年は徹底的に、剣士少女の攻撃に対処すると言う特訓を繰り返した。自分よりも素早い相手に追従し、反応速度を高めて的確に反撃する思考力を磨く。回避しながら反撃するなんて上等な真似が出来るとは思わない。狙うのはひたすらに、一撃で相手を沈黙させられるカウンターだ。
もちろん、たった一日でどうにかなるような話ではない。幾日も幾日も、少年の頑丈さを活かしたボコボコに打ちのめされる様な特訓が続く。最も称賛すべきは、何度も何度も食い下がって行く少年を、何度も何度も打ち倒した剣士少女の精神力であろう。
彼女は本当に容赦も手加減もしなかった。本当に一桁年齢なのか疑わしい程に。もしくは、剣を振ると言うのは、この程度の覚悟も無ければ続けられないと言う証左なのかもしれない。少年を打ち据えるのが嬉しいとかは……、無いよね? ね?
そして、一月ほどそんな生活を続けた所で、その成果が漸く実を結んだ。
「おおーい! やってやったぞー! あの金髪巨乳に目に物見せてやったぜ!!」
「ああ、おめでとう! これでもう、接近戦でボコボコにされる事は無くなりそうだね」
一月開けて油断しきった所に魔法封じの魔具を使って見せ、案の定接近戦を仕掛けて来た所にカウンターを叩き込み勝利した。その間も色々と戦法を変えて対決はしていたが、カウンターを見せたのはこの会心の勝利の時だけだ。魔法使いの娘の悔しがる顔が、少年に最高の笑顔を浮かべさせてくれる。
「あー! やってやったぜ! でも、アイツの事だから次は対策してくるだろうしな。油断せずにこっちも作戦練らねぇと」
「フフッ、それならこの特訓もまだまだ続けた方が良いかな?」
その問いかけには、もちろんイエスと答える。彼女との訓練は、実力の底上げには充分役立つ。それに、まだ勝てていないのは、魔法使いの娘だけではないから。少年は意外と、負けず嫌いなのだ。
それから程なくして、少年は剣士少女に二振りの剣を贈った。細身の剣に頑強の属性を付与しただけの、商用的に価値の低い剣ではあったが。少年が錬金術で初めて作った、誰かの為の専用の武器だった。
「前に言ってただろ? 普通の細身の剣だとすぐ壊れるって。だから壊れない様に頑丈にしてやっただけだけどさ、とりあえずその……特訓に付き合ってくれた礼だ。これからもっともっと腕を上げてすげえ武器作ってやるから、今はそれで我慢してくれよな」
少年としては、現時点の精一杯ではあるが、納得の行く作品ではない。だからこそ、腕を上げてもっともっと良い武器をお礼にしたかった。だからこれは手付程度のつもりだったのだ。
でも、その剣を受け取った剣士少女は、俯いた状態から瞬間的に少年の懐に飛び込んで来た。トレードマークの帽子が脱げても構いもせず、訓練の時よりも早い動きで一直線に。殆どタックル同然に少年に飛び付いて来て、少年を押し倒しながら彼女は言うのだ。
「ありがとう!! すっっっっごく、うれしいよ!!」
花が咲く笑顔とはきっと、この事を言うのであろう。
たまにはこういうあざとさはいかがでしょうか。
楽しんでいただけたのなら幸いです。