【完結】異世界転生したら合法ロリの師匠に拾われた俺の勝ち組ライフ   作:ネイムレス

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今回のヒロインはおねーちゃん。
可愛く書けていると良いなぁ。


第二十四話

 その日の少年は午前中の家事仕事を終えると、農民少女に連れられてまた村の教会におもむいていた。教会の裏庭に作られた花壇の世話をする為だ。傍にはもちろん、六本腕の司祭も一緒に作業をしている。今日のお面も何時もの笑顔の奴だ。もう一つは説法用の真摯な表情らしい。閑話休題。

 

「いつもありがとうございます。おかげさまで、ここもだいぶ立派になりました」

「水臭いこと言いっこなしです! お祭りで使う為なら私達にも関係あるんですから、手伝うのは当然の事ですよ!」

 

 今日もおねーちゃんは元気溌剌です。発言が男前すぎて、おねーちゃんと言うよりもうアネキって感じですが。それでも顔立ちが可愛いとか、ズルいなぁと思う少年であった。思わず雑草をブチブチ引っこ抜いて八つ当たりする。

 そして少年はおもむろに懐から小瓶を取り出して、蓋を開けたそれをサクサクと花壇に逆さまにして差し込んで行った。

 

「それは、栄養剤ですか? そんな高価なものまで使っていただかなくても、それにお支払いが……」

「これは俺が作った奴だから、お値段はリーズナブル。それが何と、お茶の時間にお茶菓子が付いて来るとなんと脅威の十割引きになると来た。これはお買得!」

「それは素敵ですね! 買うっきゃないです!」

 

 司祭はともかくとして、少年少女はもうノリノリだ。遊びつつも手を動かして、土いじりを目いっぱい楽しんで行く。額に汗して共同作業をこなして行く喜びは、少年にとって何とも居心地が良い物だった。前世ではそもそも、そんな経験をした記憶はない。

 だからという訳では無いが、少年はこの作業に引っ張って来てくれた農民少女に感謝していた。知らない事を経験できるのは、今の少年にとっては何物にも勝る喜びなのだから。いや、師匠の事を知るよりは劣るかもしれない。嘘つきました!

 

「よし、草むしりと剪定もしたし、後は水やりすれば今日は終わりだな」

「それではその水は僕が汲んで来ましょう。お二人はその間、少し休んでいてください」

 

 力仕事は得意ですからと、有無を言わせず労働を買って出る巌の様な仮面司祭。司祭はにっこりと微笑みながら、ドスドスと重い足音を響かせて井戸のある水場へ向かってく。

 必然的に二人残った少年少女は、なんとなく手持無沙汰になり教会の壁に背を預けながら座る事にした。

 

 ふぅ、なんて年寄り臭い声を出しながら座り込むと、少女が自分の方をジーッて見ている事に気が付く少年。はて、何かしただろうか。セクハラは師匠以外にはしていない筈なのだが。少年は心当たりが全く無いので、素直におねーちゃんに何かあるのかと尋ねてみた。

 

「また背が高くなってるですね。どんどん成長して、まるで植物みたいです」

「俺は大根か何かか。まあ、再会してからそれなりに経ったし、もうすぐ誕生日だしな。なんせ通常の三倍だし、俺」

 

 少年の身体は今もなおメキメキと成長していた。少年の体にとっては四か月で一年ほどの成長率なのだから当然だろう。今は八歳ぐらいだろうか。すぐに衣服もきつくなるだろうし、また手直しをしなければならないだろう。

 そして少年は、農民少女が何だか不安げな表情をしている事に気が付く。もしかしたら、大きくなる少年に対して思う所があるのだろうか。早く大きくなりたいと思う子供にとっては、その体質は羨ましく思えるのかも知れない。

 

「おねーちゃんだって、すぐ大きくなるだろ。そんなに気にする事じゃないさ」

「そうかもしれないですけど……。でも、何だかモヤモヤするんです。よく分からないけど、背が高くなって行くのを見てると……」

 

 つまり追い抜かれるのが嫌だと言う事だろうか。少年は深く考えずにそう判断した。そもそも、比較対象が悪いのだ。だからその事も素直に告げてしまう事にする。

 

「しょうがないさ、俺は体質で体がデカくなりやすいってだけなんだし。背を追い抜いたって、おねーちゃはおねーちゃんだろ。俺を色んな所にぐいぐい引っ張っていく、パワフルなおねーちゃんは何も変わらないさ」

「ん……。ま、まあ、おねーちゃんだから当然です。これからもどんどん、任せておくが良いですよ!」

 

 やはり、沈んでいるよりも元気でいる方がこの少女らしい。可愛さ余って、思わず頭でも撫でてやろうかと思ったがやめておく。そんな事をしたら、おねーちゃん扱いをしない事にプンスカされてしまうだろう。

 だから少年は代わりに、懐をごそごそとまさぐって有る物を取り出した。ちなみにこれも少年のローブの機能の一つ、錬金術師必須の四次元道具袋である。師匠作なので、重さの軽減も収容能力もとんでもない代物でございます。

 

「それは……、手袋です?」

「そうです。渡すの忘れてたけど、思い出したからやるよ。薄手だけど滅茶苦茶頑丈になるよう作ってあるから、野良作業してもそうそう破れたりはしない……、筈だ。ダメだったらまた作り直すから、とりあえず使い心地を聞かせてくれ」

 

 少年の取り出した一組の手袋に視線を奪われる少女と、それについて説明しながらホイと無造作に手渡す少年。その手袋は純白で汚れがあえて目立つように作ってあり、細かな意匠も特にない無骨な物であった。こんな物、女性にプレゼントする様な物ではないだろう。実際、少年も作業に役に立てばと思って渡しただけに過ぎない。

 

 でも、彼女は……。

 

「っ……! そ、そうですか! この私に貢物とは良い心構えです! ありがたく受け取って置いてやりますよ!」

「はあ、まあ使ってくれるなら良いけどさ。あー、空が青いですねぇ、っと」

 

 そんな風に言って、顔を少年から見えない様にぷいっと反らしてしまう。そんな様子を見て、少年は肩を竦めて空を見上げてしまった。何時ものおねーちゃんぶった物言いで、弟分の行動を生意気だと思ったのだろうと呆れてしまったから。

 それ故に気が付かなかったのだ。少女の頬が、首筋までがまっかっかになっていた事に。

 

 そして、少年がボーっと空を見ていると、突然服の袖をくっと引っ張られた。引っ張られた方を見てみれば、未だに顔を背けながら、それでも少年の服の袖を抓む農民少女の姿が。何この可愛い生き物。

 抓んで来る指をジーッと観察して黙していれば、少女は手袋を胸元に抱きしめたままクイクイと袖を引いて来る。なんだろう、なんか言えって事なのだろうか。このお嬢さんは、童貞ボーイになかな過酷な事を要求するものである。

 

「あー……、何て言えばいいかよく分からないんだけどさ。気に入ってくれたなら、俺凄く嬉しいから」

「ん……」

 

 少年の視線の先で、言葉は無いが少女はしっかりと頷いて見せた。それは了承なのか、返答なのかは分かりかねたが、少年はしおらしくする少女の様子に自然と笑みを零すのであった。

 

「ど、どうしよう。戻りにくい……。というか、邪魔したくないですね……」

 

 ちなみに仮面司祭は結構前に戻って来ていたが、空気を読んで教会の壁の陰からこっそりと見守っていたりする。あの甘酸っぱい空間に踏み込むには、気弱な仮面司祭には気が重すぎた。むしろ、このままずっと見守って居たい気すらする。

 はわわわと困惑していた司祭たが、ふと名案を思いついたのでもう一度踵を返して今度は教会内部へ。水を汲むついでに、お茶とお茶菓子も用意して持って行こうと思い付いたのだ。

 

「せっかくですし、オーブンの様子も見ましょう。焦げていないと良いのですが……」

 

 そうと決めたら、水の満載されたバケツを軽々と持ちながら、ルンルンと弾む様に歩いて教会の厨房へと向かう。ついでに仮面も笑顔の物から、平静顔に変えておく。せめて、見かけだけでも冷静にならなくてはと思って。

 あくまでも気遣いであって、これは戦略的撤退では無い。そう言う事にしておく。悪魔でも恥ずかしいから!

 

 その日出されたお茶菓子は焼きたてのスコーンで、なぜか杏っぽい果物のジャムがたっぷりと添えられていた。甘酸っぱさを、たっぷりと。




この小説、女の子より野郎の方が料理してばっかりだな。
あ、司祭の性別は『性別:悪魔』です。

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