【完結】異世界転生したら合法ロリの師匠に拾われた俺の勝ち組ライフ   作:ネイムレス

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ネタを貰ったので早速書いています。
ストックが幾つかあるのでもう少し先になりそうですけどね。


第二十五話

 その日も少年は勝っていた。もちろん金髪巨乳魔法使いとの対決での話である。

 

「ずるいですわ! ズルすぎますわ! 汚いですわ! 汚いな、流石錬金術師汚い、ですわ!」

「良いかよく覚えとけ、汚いは誉め言葉だ! 錬金術師って物は、何でもするし何でも使うんだよ!」

 

 そして、戦いの後にやっているこのやり取りも、もはやここ最近では恒例の物となっている。最初の内こそ戦いになれていなかった少年は連敗を喫していたが、剣士少女との特訓を始めてからは次第に勝ち星を重ねて行った。そして今では、師匠直伝の卑怯な戦術やら道具やらで勝ち星を独占しているのだ。

 無論道具は自分で作り出した物だけではあるが。広域散布型の無色無臭の毒ガスとかは、流石にドン引きします師匠。

 

「だからって限度と言う物があるでしょう!? それを貴方と来たら、握手の時に痺れ薬を仕込むわ、戦場に事前に罠を仕掛けるわ……。やりたい放題し放題ではないですか! プライドって物が無いんですの!?」

「師匠の言う事は絶対だ。例え汚い卑怯と言われようが、最終的に勝てばよかろうなのだァ!! プライドだって錬金術の材料にしてやんよ!」

 

 対する魔法使いの娘の戦い方は実に直情的。脳筋とも言えるほど真正面からの、魔法での一撃必殺を狙った物ばかりだった。無理を通せば道理が引っ込むと言うが、魔法耐性のある防具やレジストポーションで身を固めた相手には分が悪い。だが、彼女の性格ゆえか、その師の教えの為なのか、彼女は戦法を変える事は無かった。

 それがこの連敗を招いているのだから、頭が固いにも程があると言う物である。

 

「ぐっ、ぎぎぎ……、恥も矜持も無い男なんて最低ですわ! 誇りある決闘をなんだと思っていますの!? さいってぇ、最悪、言語道断の下賤男!!」

「戦闘に卑怯もお経もあるか! 俺は戦うのが好きなんじゃねぇんだ……、勝つのが好きなんだよォ!! 悔しかったら連敗記録を塗り替えてみやがれってんだ、ヴァァァァァッカ! ヴァッカ! ヴァァァッカ!!」

 

 段々語彙が尽きてきて、子供の喧嘩じみて来た。実際二人とも子供ではあるのだが、高名な師の元で学ぶ弟子達とは思えぬ醜態である。何が楽しいのか、このやり取りはその後小一時間ほど続いた。

 そして精根尽き果てた二人は一時休戦、手ごろな木陰に避難してぐったりと休息をとる事になる。

 

「はぁ……はぁ……。おら、レモネード入ってるから……、あと傷薬も……」

「ふぅ……ふぅ……。あ、ありがとうと言っておきますわ……、一応……」

 

 魔法使いの少女は木に寄り添う様に座り、少年はその辺で大の字になって倒れ込む。その状態で、少年が金属製の水筒と幾つかの小瓶を取り出して投げ渡し、受け取った魔法使いの娘は憮然そうな面持ちで礼を言う。蓋がコップにならないタイプなので、蓋を外してそのまま口をつけコクコク喉を鳴らす。疲れた体に酸味と甘みが心地よかった。

 

 その後は互いに体力回復の為に黙り込むのだが、これがまた気まずい空間を作り出してしまった。それに耐えきれなくなって、魔法使いの娘はとりあえずと言った様子で話しを切り出す。

 

「そ、そういえば、貴方は私の目をしっかりと見て話をしますわよね。下賤で愚かで最低な男の癖に」

「んだぁ……? 二回戦がしたいなら木にでも喋ってろよ……。つーか、お前の顔を見て話すのは当たり前だろうが。なに言ってんだオメー。むしろ他に何処を見て話せってんだよ」

 

 だって、顔をガン見していないと絶対に、視界に巨大な脂肪の塊が入ってしまうから。目だってしょうがないブツを回避する為に、少年としてはごくごく当たり前の行動なのだ。

 そんな事を知る由もない魔法使いの娘は、少年の言葉に何を思ったのかほんのり頬を赤くする。

 

「意外と紳士的ですわよね……。口は悪くて、粗野で乱暴でドクズですのに……」

「だから、木にでも喋ってろって……、ああもういい。それより、水筒のレモネード俺にもくれよ」

 

 赤くなったままモジモジしてぶつくさ言っている魔法使いの娘。少年はもう本当に疲れていて、相手もしたくないと顔すら向けていない。その代り、水筒を寄越せと倒れたまま手を差し伸ばした。

 

「あ、はい……。って、あの、これをそのまま返すんですの?」

「ああ? なんか問題でもあんのか? 良いから返してくれ、喉乾いてんのよ。腰に手を当てて、ゴキュゴキュしたい気分なの」

 

 これに対して、なぜか更に顔を赤くする魔法使いの娘。その間も少年は、ほれほれと手招きして水筒寄越せと催促し続ける。何が気に入らないってそりゃあ、飲み口が一つしかないからでございます。お年頃のお嬢様にはなかなかどうして、思わず葛藤してしまう重要な懸案ですね。

 少年には、そんな葛藤は全く関係ないが。

 

「ほ、他の物とかは無いんですの? その、これは私が口をつけてしまいましたし……」

「有ったら言ってねぇよ。ええい、良いから返さんかい! お前はどんだけ傍若無人なんだよ!」

 

 しびれを切らした少年がついに起き上がり、水筒を奪うべく行動を開始する。そして、それに対して魔法使いの娘が取った行動は、妨害であった。水筒を思わず背中に隠して、差し伸ばされた少年の手を掴んで邪魔をする。

 第二ラウンド、ファイッ!

 

「ったくよぉ! お前なんなん!? マジなんなん!? なんなんなん!? そもそも貰い物にそんなに固執するとか、何時からそんなに卑しい根性になりやがったの!? 金持ち貴族が固執するなら、もっと立派な物にしてくださいませんかねぇ!!」

「ち、違いますわよ! 別に固執しているから拒んでいる訳では無くて、そ、その一度口をつけてしまったから……。ああああっ! もう面倒くさいですわ! そんなに欲しかったら、力づくで奪ってごらんなさい!!」

 

 最早売り言葉に買い言葉。喧嘩売ります買わせます。押し売り上等値引き無し。やってやんよと構え合い、お互いの魔具と魔法が至近距離で炸裂した。情け無用の残虐ファイト、泥仕合とはまさにこれ。

 その勝負の行方は、突然始まった近距離戦と言う事もあり少年が優勢であった。元より魔法使いの娘は水筒を庇う為に防戦になりがちで、自由に攻められる少年は遠慮の欠片も無く攻撃を繰り返す。両の手を魔具で保護させて、剣士少女の動きを真似た徒手空拳の速度重視の連撃。詠唱する暇を与えられない魔法使いの娘は、片手も塞がって居る為に鉄の杖でいなすしかない。

 そして、とうとう魔法使いの娘は態勢を崩し、攻撃の勢いに負けて尻もちをついてしまう。その隙を見逃さずに、少年は奇声を上げながらピョイーンとジャンプして襲い掛かった。

 

「ヒィィィィィハァァァァァァァッ!! 貰ったぁ!!」

「クッ! このおっ!」

 

 そこで悲劇が起こった。

 一撃で斬り殺されそうな雑魚っぽく飛び掛かった少年に、ヤケクソで突き出した魔法使いの娘の杖の先が見事にぶち当たったのだ。飛び上がった事で無防備になった、少年の足と足の間の宝物に。

 

「あ、あれ……? 一体何が……? ヒッ!?」

 

 何時までも襲い掛かってこない少年を訝しみ、思わず閉じてしまっていた目を開けた魔法使いの娘の目前で、少年は潰れたヒキガエルの様に地面に倒れ込んでいた。流石にその絵面にビクッとしてしまう。

 顔面を蒼白にしてパクパクと口を何度も開閉させて、瞳孔が完全に開いた両の目からはぽろぽろと大粒の涙が零れ落ちる。全身を小刻みにブルブル震わせて、お腹を抱えてそのまま無様に地に伏せるしかない。先程まで優勢だった少年は、完全に無力化されていた。

 幾ら傷が直ぐに治ろうが、その痛みまでは消す事は出来ない。そしてこの痛みは、味わった者にしか解らない、生温く絡み付く様な鈍痛だ。その辛苦は、暫くの間少年を苛み続けた。

 

「あ……。ヒッヒッ……。あっ……。ヒッ……。おあ……、あうあああ……」

「あ、あの……。大丈夫……、では無いですわよね……。あの、ごめんなさい……。ごめんなさいね? 本当に、ごめん……、ね? 痛いよね? ごめん、ごめんね?」

 

 今までにまったく見た事の無いシリアスな表情で苦しむ少年を前に、魔法使いの娘の中には勝利した実感など微塵も無かった。思わず自らの口調を忘れる位に心配して、恐る恐ると言った様子で腰のあたりをポンポンしてあげた。脂汗を浮かべる少年の額を、ハンカチで甲斐甲斐しく拭ってあげたりもする。終いには、あれほど嫌がっていた水筒も気遣いながら飲ませたりしてくれた。普段からは想像がつかない、至れり尽くせりな献身ぶりである。

 そんな調子で、少年が復帰するまで魔法使いの娘は優しくしてくれたのだった。

 

 その後、急所への危険な攻撃は禁止しようと言う、紳士協定が二人の間で結ばれる事となる。やはり、戦争にもルールと言う物は必要なのだと、歴史の教訓と言う物を改めて実感させられる出来事であった。




ヒュンってなった?
宝物は大事に守って大切にしましょうね。

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