【完結】異世界転生したら合法ロリの師匠に拾われた俺の勝ち組ライフ 作:ネイムレス
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今回は残念ながら微エロはありません。残念でした。
少年はこの世界の遊戯にはあまり馴染みが無かった。暇を潰すには師匠の家の本を読めばいいし、身体を動かしたい時はいつもの姉妹が連れだしてくれたからだ。ここ最近では、特訓だの勝負だの錬金術だので遊んでいる暇もないのが現状である。
だからこそ、金髪巨乳の魔法使いの娘にカードでの勝負を挑まれた時には、この世界にもトランプがあるのかと大変驚いた物だ。
「へぇ、これがカードかぁ……。初めて見たわ。ちゃんと五十三枚あるんだな」
「ええ、そうですわ。って、初見にしてはカードの扱いが手慣れていませんこと? ああっ、そんなに乱暴に切ったらカードに傷がついてしまいますわ!」
この世界では、確かに初めて見た。慣れた手つきでカードをシャッフルし、何種類かの方法で丁寧に丁寧に混ぜてやる。魔法使いの娘の反応からして、カードを痛める様な切り方は歓迎されないようだ。
後は最後に、肝心な事を確認せねばなるまい。少年の知識の中では、カードでの遊戯は無数にあるのだから。
「じゃあ、ルールを教えてくれ。出来れば役と禁止事項の方も詳しく」
この世界のカードは貴族の暇つぶしとして流行った物。庶民や片田舎にはあまり伝わっていない娯楽である。それ故に初心者をカモにしようと思っていた魔法使いの娘は、少年にカード勝負を持ちかけた事を非常に後悔する。
そもそも彼女自身がカードが得意という訳でも無く、性格的に正々堂々を好む為に向いていないのだ。そんな人間が、手先が器用で勝つためなら何でもする錬金術師をこの手の勝負に誘うと言う愚を、この後これでもかと彼女は味わう羽目になったのであった。
そして、その日の夕食後。金髪巨乳娘をコテンパンにした少年は、その勢いに乗って自らの敬愛する師匠にカードをしないかと持ち掛けた。ちなみにカードは魔法使いの娘から巻き上げた戦利品である。後日返却する予定です。その方が絶対悔しがるからね!
そして、唐突にカードに誘われた師匠はと言うと、そのカードを手に取って何処か懐かし気に目を細めていた。
「まあ、懐かしいわね……。昔、黒百合や王兄達に教えられて良くやったわ。初めの方はぜんぜん勝てなくて悔しかったな……」
「師匠もやった事あったんですね。俺も今日教えてもらったばっかりで、良かったら一緒にやりませんか?」
嘘である。少年は生前の経験も合わせれば、カードゲームは一通り経験していた。戦績はそれなりに重ねており、伊達に平凡な人生は送ってはいない。先程の魔法使いの娘に圧勝した経験も、少年の自信に繋がっていた。
そんな少年の誘いを受けた師匠は、直ぐには返答せずに手にしたカードを徐にシャッフルし始める。大雑把に山を二つに分けて重ねるのを繰り返したり、山同士を擦り合わせて一枚ずつ隙間に挟ませるようにしてまた一つに戻したり。二つに分けた山をベベベベっと音を立て、やや乱暴に交互に重なる様にさせたり。成りは小っちゃいがやけに熟練した一連の動作は、彼女の事をまるで一流のディーラーの様に見せていた。
このロリ、相当にやり込んでいる! 絶対に初心者では無い!
「そうね……、久し振りに一勝負しましょうか。それで、我が弟子君は一体何を賭けるのかしら?」
「っ……。そうですね、具体的には思いつきませんし、まずはこのコインをお互い同じだけ賭けませんか?」
師匠が自分から賭けについて言及してきた。思わず目の色を変えそうになったが、少年は必死になって自分を押さえつけた。見えすいた揺さぶりだ、飛び付けばむざむざ食い破られるだけだろう。ここは自らをクールに律する場面だ。
師匠は弟子の渡して来たコインを受け取ると、グッドと親指を立てて見せた。なんと言う余裕だろうか。何時も通りの表情で、とっても可愛らしい。
「それなら、このままカードを配ってしまうわね。これでもカード捌きには、ちょっとは自信があるのよ」
「はい、それじゃあしっかり見させてもらいますね。師匠の得意な事とか、凄い興味ありますから」
何でも無い会話だが、師匠は自然と主導権を握って来た。それに対して少年は暗に、不正は見逃さないと言ってのける。ほんわかとした雰囲気を装って入るが、もう既に二人は鍔迫り合いに入っていた。
本当に慣れた様子で師匠は良く切った山札から、無造作に五枚ずつの手札をそれぞれに配った。そして、その手際の中に不審な物が無いのもしっかりと少年は確信する。この時点ではまだ師匠は何も仕掛けてはいない。
「じゃあ、俺は二枚交換をしますね」
「ええ、解ったわ。そう言えば、交換も私がやっても良いのかしら?」
「はい、それで大丈夫ですよ。師匠にお任せします」
この世界のカードのルールはスタンダードなポーカーであった。山札からカードを交互に引いて、手札で役を揃えその配点が高い方が勝つ。役さえ覚えてしまえば、実にシンプルなゲームと言ってもいいだろう。
だからこそ、必要になってくるのはその後の駆け引きだ。
「そうですね、それじゃあ俺はまずは半分賭けます」
「あら、ずいぶんと強気なのね。そんなに良い手札が揃ったのかしら」
「ふふっ、それは内緒ですよ」
少年は不敵に笑って見せた。強気で自分を鼓舞させて、如何にも大きな手が出たかのようにして見せる。ワザとらしいぐらいに見せ付ける事で、強い手札が手に入ったかの様に振る舞う振りをしている、と思わせるべく振るまった。実際の手札は、同じカードが三枚と二枚それぞれ揃ったなかなか強い物。その上で、まずは半分と言う保険をかけて少年は師匠の反応を見る事にしたのだ。
それに対して師匠は、にっこりと微笑んでから答えて来る。
「なら、私は全部賭けるわ」
「なっ、に……!?」
強気どころか勝負を賭けに来た。そんなに自分の役に自信があるのか、はたまたそう見せかけたブラフなのか。たった一言で少年は窮地に立たされてしまった。師匠の顔色を窺っても、にっこりとしかしていないので何も分からない。可愛いことしかわからない!
「どうしたの? 汗が酷いみたいだけれど……」
「い、いや、いきなり全部賭けるなんて師匠が言うもんでビックリして……。っっっ!?」
そこで少年は気が付いてしまった。師匠が手札を手に取っていない事と、交換の宣言をしていない事に。それどころか、むしろ最初に配った位置から微動だにもしていないでは無いか。それで師匠は今の宣言をしたのだ。これはまさか、いかさまを仕掛けられていた!? 馬鹿な、最初から最後までカードを配る様子は見ていたがそんな隙は微塵も無かったはずだ! 少年は沈黙したままで葛藤し続ける。目の前のちっこい人が、何を企んでいるのかがさっぱりわからない。
「し、師匠。アナタまさか……」
「それから、この家の権利を上乗せして賭けるわ」
「はぁっ!?!?」
ここに来て上乗せ。しかも家の権利と来た。幾らなんでもベット料が高すぎる。そんなに高い物を賭けられても、少年には出せる物がないではないか。少年は自分の目に自信がある。絶対にイカサマはしていない。むしろしているのは自分の方だ。事前に服用しておいた、幸運のステータスを上げる薬品。それこそが事前に仕掛けておいた少年の罠に他ならない。
後はイカサマを封じておけば、絶対に負けは無いと少年は確信していたのだ。だが、師匠のこの自信はなんだ。何故触りもしていない手札に家まで賭けられる!?
「更に、私は私自身の体を賭ける」
「はっ!? あ……、ええええ……。っ!?」
状況からも、自身で仕掛けた罠から言っても、これはブラフに過ぎない。ここで少年がコールと、受けて立つと言えばそれこそ全てが手に入るではないか。だが、師匠の自信に溢れた表情が、少年の喉をカラカラにさせ張り付かせる。全身から冷や汗が噴き出て、ガクガクと笑う膝が止められない。
追い詰められた少年は、少年は――
「……コール。受けて立ちますよ師匠」
「あら……、いっぱい虐めてあげたのに、かかって来るのね。素敵よ……」
自身の勝ちを確信して勝負を受けて立った。何よりも、師匠の全てが手に入るのに止まれるわけがないではないか! 欲望の為だったら、目でも心臓でもくれてやる!
そして、運命の、手札公開!
「こちらの手は、あら五枚ぞろえだったのね。……残念だったわね、私の勝ちよ」
少年は目の前が真っ暗になった。何故、何故、ありえない、こんな、こんなはずは……。ぐにゃぁっと世界が歪み、そのまま椅子から滑り落ちてばたりと床に倒れ伏してしまった。完全なる戦意喪失、再起不能のリタイアだ。
それを見守っていた師匠は、ずっとテーブルの下に隠していた物を取り出す。それは、中に僅かに薬品を残した小さな注射器であった。ぴゅっと残りの薬品を噴出させ、それを見て師匠はクスクスと笑う。否、嗤う。
「幸運を上げる薬を使っているのが自分だけとは限らない……。そして、同じ薬でも等級の高い方が、より幸運を呼び込むのよ。テーブルの上だけを警戒している様じゃ、私の相手をするのは十年は早かったわね。まあ、賭けの負け分はツケにしておいて上げるから、せいぜい頑張って返済しなさいな」
錬金術師は勝つためなら何でもする。それを少年に教えたのは、他でもないこの師匠なのだ。少年は、勝負を仕掛けた時点で既に、負けていたと言う事。げに恐ろしきは、合法ロリの老獪さよ。
師匠は使い終わった注射器を処分する為に立ち上がり、無様な敗者となった少年を放置して立ち去って行く。でも、後で毛布を掛けには戻って来てくれる。師匠の優しみが染みる少年であった。
今回のお題は「師匠とのカード勝負」ですね。
頂いたネタをちょっとアレンジしたものがこれから続いて行きます。
まだまだ沢山ありますが、ある程度消化出来たらそれからやっと最終回かな。
どうぞ最後までじっくりとお付き合いくださいませ。