【完結】異世界転生したら合法ロリの師匠に拾われた俺の勝ち組ライフ   作:ネイムレス

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本当はよるに投稿しようと思ったのですが書けてしまったので投下。


第二話

 外見こそ黒焦げにはされたが、少年には肉体的損傷はほぼなかった。だから大急ぎで部屋を片付けて、とりあえずまずは朝食の用意を優先する。部屋の大掃除などしていたら、せっかくの師匠のシャワーシーンが終わってしまうではないか。

 

「シッショーのシャワー時間は大体二十分。今日は埃っぽいって言ってたからまず間違いなく時間いっぱい入る筈。急げ、急ぐんだ俺!! チャンスを掴み取れ!!」

 

 ちなみに、剣と魔法の世界なのに魔法で作った道具のおかげで、この家にはシャワーや湯沸かし器などが完備されている。だからこそ毎日のお楽しみとして生きる活力にしたいと言うのに、掃除などでチャンスを逃すなんてもったいなさ過ぎだ。

 急いでパンを温め直して、昨日の夕餉のスープの残りに火を入れる。その間にフライパンに油を引いて、鶏卵っぽい何かを二つ割り入れた。師匠の好みは片面焼きで、尚且つ黄身は固めなので火加減が難しいのだ。

 

「よし、出来た! 後は皿に盛り付けて……、良し! 良いぞ、これなら間に合う!!」

「あら、もう用意してくれたの? 何時もより早く上がったのに、頑張ってくれて嬉しいわ。本当、間に合ったわね」

 

 !? 少年の動きが一瞬止まる。だが、不屈の精神で硬直をレジスト、すぐさまにこやかに微笑んで愛しの師匠を迎え入れた。対する師匠はタオルで濡れた長い髪を拭っている最中だ。これは全く下心無く完全な善意で、お手伝いを申し出るしかないだろう。

 

「早かったですね師匠。あ、髪乾かすの手伝いますよ」

「あら、良いのよ。後は魔具を使うから、アナタは朝食を並べていてちょうだい?」

 

 さりげなく髪に触れようとする。が、駄目! さりげなく師匠に断られ、彼女がドライヤーっぽい物で髪を乾かしている間にせっせと給仕を続ける。泣いてない。ロリコンは泣かない。

 

「ふう……。さて、頂きましょうか。アナタも早く席に着きなさい?」

「はいはい、今スープをよそってますから、これが終わったら直ぐに……」

 

 ふぅ、とか言いたいのはこっちの方ですよエロイため息つきやがってこのロリ。そんな考えを微塵にも表情に出さず、二人分のスープの皿をテーブルに乗せて自分も対面に座る。

 いただきますと二人で一緒に言い合って、漸くその日の朝食が始まった。この数年で身に付いた、二人の習慣である。

 

 そう、拾われてからまだ数年。正確には三年ほどしか経っていない。だと言うのに、拾われた赤子は既に少年の体へと成長していた。すくすくと育つにも程があると言う物だ。

 これは正しく、赤子の頃から毎日飲まされていた師匠特製の薬の効果であった。複雑な調合と製薬に長け、更には魔法を使った道具――魔具の作成もこなしてしまう少年の師匠。彼女は愛らしい姿をしては居ても、名うての錬金術師と呼ばれる存在だったのだ。キャーステキー、主に容姿が。少年は素直なロリコンだった。

 

「うん、今日も私の好きな焼き加減だね。優秀な弟子を取って正解だったよ。うん、ウマしウマし!」

「どうせなら錬金術の成果で誉めてくださいよシッショー。家政婦として誉められたって、あ割とうれしい!(ビクンビクン)」

 

 薬のお陰で一年ほどで三歳児になってしまい、ほぼ三倍の速度で成長し今は八歳ほどか。このままだとあっと言う間に、前世の年齢を追い越してしまいそうだ。

 ちなみに師匠の年齢は知らない。知りたくも無い。なにより、女性に年齢など訊ねてはいけないのだ。

 

「ん、ごちそうさま。今日もおいしかったよ。それじゃあ午前中の内に、お互いの仕事を済ませてしまおうか」

「おそまつ様でした。わかりました。師匠がアトリエにこもっている間に、他の場所の掃除をしてしまいますね」

 

 食事を終えて直ぐ、師匠はイソイソと仕事部屋に引っ込んで行ってしまった。愛しい師匠と暫し離れ離れで少年は気落ち、しませんよ? だってほら、今日は合法的に師匠の私室に入れる約束をしたじゃないですか。

 かーっ、命令なら仕方ないよなー。命令ならなー、かーっ! 少年は流れる様な手さばきで皿を片付け、水の出る魔具を使いながらテキパキ皿洗いを済ませた。

 

 そしていざ出陣の時。鍵が開いたままの師匠の部屋にカサカサと忍び込み、ごくごく自然な流れで衣装ダンスに忍び寄る。この中には、プラチナの様な師匠のあの愛らしい身体に最も近い布地――ラーンジェリーが収められているのだ。その価値、値千金である。

 無心だ。無心になれ。邪念が無ければ罠は作動しない筈。そう、少年は無我の境地でその手を差し出し、黄金郷への扉に触れた瞬間吹っ飛んだ。

 

「な、なぜだああああああっ!? ぐへぇっ!?」

 

 ばーん、どかーん、とギャグみたいな勢いで部屋の壁に激突しズルズルとゆっくり床に落ちる。畜生今日もダメだった。それも当然、ここに仕掛けられた突風の罠は、持ち主以外が触れると発動するように設定されていたのだから。流石師匠だ隙が無い。

 

「…………よし、仕事しよ」

 

 少しの間だけ天井を眺めて大の字になっていた少年だが、何事も無かったように立ち上がり自身が散らかした部屋の後片付けを始める。ボールの様に弾け飛んだと言うのに、毛ほどにも痛痒を感じてはいなかった。

 これもまた幼少からの投薬の結果で、師匠の薬は彼を実に強靭な肉体へと変貌させていたのだ。だから多少の罠など恐れるに値しない。でも、罠自体を壊すと怒られるので深追いは致しません。怒られること自体はご褒美だが、拗ねて口を利いてもらえなくなるのは困るのです。

 

 ところ変わって師匠のアトリエ。試験管やビーカー等の調合道具や、魔女の巨釜みたいな鍋やら竈やらが併設された独特な趣の仕事場である。この部屋には日光を嫌って窓が作られていない。代わりに壁の殆どが棚で埋め尽くされ、薬品やら素材やらが無造作に突っ込まれていた。

 

「ふむ……、今日も順調に罠に引っかかったか。突風の罠程度では足止めにしかならないようだな。行幸行幸」

 

 独り言をつぶやきながら、巻き癖のついた用紙にカリカリと羽ペンを走らせる。そこにはびっしりと、弟子の発動させた罠についての詳細が書き記されていた。

 

「電撃の護身具は良好だったな。やはり一度弾き飛ばす効果は有用だ。これからの罠の魔具にも、随時付与させて行った方が良いだろうな」

 

 それは彼女の仕事に関してのメモ書きでもあった。自身の作った魔具や薬品の効果効能。そして、人体に及ぼす影響についてを子細に記録しているのだ。

 

「ふふっ……。本当に、使える弟子を拾えて助かっているよ。次は何を試してもらおうか、迷ってしまうな……」

 

 白のローブを普段着として着用する師匠は、自身の育てた馬鹿弟子を思い起こしてにっこりと微笑む。それはそれは、愛らしくも邪悪に満ちた人でなしの表情でありました。彼女は、とても自分本位な性格をしていたのです。るんるんしながら人体改造に思いをはせるのがこのお方の真骨頂。でもそこが良い!

 

 そしてお話は、午後の二人っきりの錬金術のお勉強へと続きます。

 




師匠邪悪カワイイ。可愛くない?

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