【完結】異世界転生したら合法ロリの師匠に拾われた俺の勝ち組ライフ   作:ネイムレス

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初めて評価のバーが青色に行きました。
多大なる評価をありがとうございました!


第二十九話

 弟子の様子がおかしい。きっかけは些細な事だが、半日を過ごした時点で師匠はそう判断した。今日は何時もと何かが違う。それも、少年がらみの事柄に違和感があると。

 

 朝、何時もは声を掛けに来るはずの少年がやってこなかった。そのおかげでたっぷりと眠る事が出来た師匠は、昼に差し掛かりそうな時間にもぞもぞと起き出す。その時点では特に違和感は感じなかった。

 

「んー……? ふぁぁぁぁ……」

 

 生あくびを噛み殺しながら、とりあえず目を覚ます為にシャワーを浴びに行く。何時もであれば、この時点で弟子である少年があらゆる手段を用いて覗きに来るはずだ。でも、今日はその気配が無い。

 何も考えずにぼんやりと湯を浴びるのは久しぶりだった。魔具で温められたお湯で身を清めるうちに、次第に覚醒して行く意識がとうとう違和感を感じ始める。

 

「居ない……、のか?」

 

 温風の出る魔具を使って髪を乾かし、何時も通りの格好に戻った師匠は、弟子の姿を探してとりあえずリビングに向かう。何時もならシャワー上がりに合わせて朝食が用意されているのだが、今日に限ってはその様子が無い。念のために台所も覗いて見たが、人の姿どころか料理をしていた気配すらなかった。

 

「おーい、居ないのかー?」

 

 フードを被りつつ、慎重に家の中を探して行く師匠。ここまで少年の姿を見ないと言うのは、ここ数年ではありえない事態であった。もしかしたら、何かあったのではないか。そんな可能性を考え付き、自然と気持ちが逸って行く。

 

「探さなければ……」

 

 元開かずの間だった少年のアトリエも、念のために自分のアトリエも調べたが少年はいなかった。それ処か、家の中のどの部屋にも居ない。それならば外に出掛けたのだろうか。

 師匠は村の方にも足を延ばしてみる事にした。焦燥感でその足取りはやや早くなっている。

 

 基本的に師匠が自ら村に赴く事は少なかった。元々人付き合いを好む方ではないし、用事でもない限りは滅多に出掛ける事すらない。弟子が出来てからは、それすらもほとんど任せきりになっていた程だ。

 久方ぶりに会う村の人々はまず師匠の姿を見て驚き、それでも再会を喜び歓迎してくれた。だが、肝心の弟子の行方については、誰も知っている様子が無い。

 

「そう……、でしたか。ありがとうございます、後は自分で探してみます」

 

 丁寧に礼を言っては村人達と別れ、別の村人に訊ねて行くのを繰り返す。それ程の規模でも無い村なので、あっと言う間に全ての住人に聞き終えてしまった。でも、誰一人として弟子の行方を知るものはなかった。

 六腕の悪魔の司祭も、弟子と仲のいい姉妹二人も、今日は弟子の事を見ていないと言う。ここまで来れば、もう少年は村の外に居るとしか思えなかった。

 

「一人で素材集めにでも行ったのか……? それとも……」

 

 最悪の場合は、少年が自らの意思に反して外に連れ出された可能性がある事だ。もし、そうであるならば、考えれば考えるほどにザワザワと胸の内が騒ぎ始める。酷い苦しさで、思わず服の上から手で抑え込みたくなる程に。

 もしも本当にそんな事になっていたとしたら、その時自分はどんな行動に出るだろうか。師匠自身も、それが分からなかった。国一つで済めばいいのだが。切に思う。

 

 とぼとぼと肩を落として、自身の家にまで戻って来る。最悪の場合を想定して、家にある通信機で昔馴染みに連絡を取らねばならないと思い立ったからだ。まだ、もしかしたら王都に出掛けている可能性だってある。黒百合に連絡を取るのは不服だが、この際背に腹は代えられない。

 

 そこでふと、視界に入って来た自身の家に違和感を覚えた。村中を歩いたので、時刻は既に夕刻に差し掛かろうとしている。そのおかげで、家の中に明かりが灯っている事に気が付いたのだ。

 少年が家に戻っている? それとも、他の何物かが侵入したのだろうか。様々な考えを巡らせるが、その思考は家の中から響いてきた叫び声で中断させられた。

 

「んおおおおおおっ! 離せ、離してくれぇ!!」

「ちょっ、大人しくなさい! そんなに暴れたら――」

 

 確かに、少年の声が聞こえた。声だけではわからないが、どうやら拘束されているらしい。それが判明した時点で、師匠は靴に仕込まれた加速の魔具を作動させていた。

 風景を瞬間的に無数の線にしながら駆け抜けて、一直線に目指すは開け放たれたままのリビングの窓。ここから声が聞こえて来た。ならば、後は突撃してから考える。

 小柄な師匠の体が窓をあっさりと潜り抜け、着地と同時に両手を周囲に向けて構える。五指に嵌められた複数の魔具が、その気になれば部屋一つぐらい幾らでも制圧できるだろう。

 

「待ったです! お師匠さん止まってくださいですっ!!」

 

 今まさに、部屋の中に嵐が吹き荒れそうになったその時、それを必死で静止する声が部屋に響き渡る。それは、先程村で会った筈の馴染みの姉妹の姉の方であった。それ処か、周囲を見れば妹の方も黒薔薇の魔法使いの弟子も居る。

 最後に、何故か椅子に縛りつけられた弟子の姿も見付ける事が出来た。

 

「……説明」

「はっ! 了解であります!」

 

 低く短く命令され、縛られたままの少年がすくみ上りながら声を張り上げる。少年が朗々と始めた説明によれば、今日一日の出来事はつまりこう言う事だった。

 

「サプライズパーティ……?」

「そうですそうです。少し前から今日の為に、じっくりと用意をしていたんですよ!」

「フフッ、村の皆にも手伝ってもらったんだ。そのおかげで、お師匠さんをこの家から離せていただろう?」

 

 オウム返しする師匠の言葉に、姉妹がそれぞれ補足を加えて行く。要するに、村ぐるみで欺かれたと言う事か。少年が事の発起人であると言う話だが、それならばなぜその張本人は椅子に縛り付けられているのだろう。

 その理由は魔法使いの娘が説明してくれた。

 

「途中までは上手く行ってましたのよ? でも、この男が急にもう我慢できないとか言い始めて……」

「半日も師匠に触れてなかったんだぞ! それに、やっぱり師匠を少しでも悲しませるとかぜってー無理だから! 無理過ぎて死ぬから! 殺す気か!」

 

 つまり少年は、発起人であり裏切り者でもあったのだ。せっかく用意したサプライズを、自分一人の都合で台無しにしようとすれば、それはまあ縛られても仕方ないのかも知れない。

 今日一日の顛末を聞かされた師匠は、ハァっと深く溜息を吐いた。なんとも、隣国に攻め入る事まで考えていたと言うのに、なんと言う馬鹿馬鹿しいこの始末。

 

「まったく……、この馬鹿弟子が……」

「えっ、ちょっ、師匠? 嬉しいけど他の人がいる所だと恥ずかしいから! ここじゃイヤー!!」

 

 呆れ果てた師匠は人目もはばからずに、拘束された弟子の頭を胸に抱く。少年の方は嬉恥ずかし大慌て。周囲の少女達もその光景に、クスクスと笑って呆れ気味です。私刑かな?

 

 その日の夜は、集まった面子で囁かな夕食会と洒落込んだ。その席での料理がおいしかったのは、きっと半日何も食べなかったからだけではない筈だ。

 師匠はその宴の間中、弟子の隣の席に座って彼を独占していた。師匠特権と言う奴である。




今回のお題は『師匠へのサプライズ』と『いつもとは違うアプローチ』の二つを足してみました。
この弟子君は絶対に師匠を悲しませることは出来ないだろうなと思ったのでこんな形に。
お気に召していただけましたら何よりです。
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