【完結】異世界転生したら合法ロリの師匠に拾われた俺の勝ち組ライフ   作:ネイムレス

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時系列的には十話の直後になりますね。


第三十一話

 これは師匠とその弟子が王都に訪れていた時のお話。

 せっかく王都に来たのだからと、二人は着いて早々観光旅行を楽しむ事に。そうしてお手て繋いで駆け出して、やって来たのは人でごった返す露店広場であった。円形の噴水を中心として、それを取り囲む様にして露店が立ち並び、ひっきりなしに客引きの声が響いている。

 

「おー、エキゾチックな魅力あふれる異国情緒って奴ですねぇ。良く分かんないけど、とりあえずワクワクしますね師匠!」

「そう逸るな。もし迷子になったら、そう簡単には再会出来なくなるぞ。手は離さないようにしろよ」

 

 もうワクワクが止まらない少年を諌める為か、師匠が小っちゃいお手てでぎゅっとして来る。言われなくても絶対離さないし、例え離しても直ぐに繋ぎ直しますから大丈夫。少年の心臓は色んな意味でバクバクしていた。

 ついでに長旅で疲弊した身体が、栄養を求めて腹の虫を騒がせ始める。くぅくぅお腹がなりました。

 

「ふふっ、しょうのない奴だ。よし、まずは軽く食事をとろう。せっかくの露店市なんだ、王都の品揃えの良さを見せて貰おうじゃないか」

「了解です師匠! 食べ歩きですね! 行きましょう行きましょう、すぐ行きましょう! あ、あそこからいい匂いがしますよ師匠! 行ってみましょう!」

 

 繋いだ手をブンブンと、まるで犬の尻尾の様に振り先導して行く少年。無理に引っ張られているわけでも無く、歩調も合わせてくれているので師匠の方はヤレヤレと苦笑する程度で着いて行く。妙に大人びている様子の少年が、珍しく子供に戻った様なはしゃぎぶりを見せて、師匠としては安心したやら呆れるやらで複雑な思いだ。

 

 適当な露店で少年が所望した品物を購入し、少々行儀悪いが少し離れた所で立ったまま食べる事にした。二人が今手にしているのは、焼きたてで湯気を立てる細長い形をした腸詰めである。要するにソーセージの様な物だ。渡されたばかりのそれは、こんがりと良く炙られて木の串に刺されていた。顔を近づけるとふわっと香草と肉の薫香が漂って来て、もう見ているだけでは辛抱堪りません。

 

「わー、何の肉使ってるか分からないけどめっちゃおいしそうな匂いですね師匠。た、食べても良いですか? 食べますよ、食べ――もごもご」

「あーもう、解ったから大人しく食べなさい。どれ、私も……」

 

 少年の方は許可を取る前に既に口に放り込んでおり、それに続いて師匠も小さなお口で先端にカプリ。外側のパリッとした皮を破れば、途端に口の中に熱々の肉汁が流れ込んで来て、二人してハフハフと冷まそうと喘いでしまう。熱さを乗り越えれば次にやって来るのは、濃厚な肉の味と少々強い塩気が舌の上で踊るのだ。

 

「ンマァイ! 焼き立てだからか、香りも強いし。ちょっとしょっぱいけど、それがまた後引く感じで良いですね」

「んむ……、こう言った露店は肉体労働者が良く利用するからな。塩分補給もかねて味付けを濃くしているんだ。はふ、んむ……。こういう味付けには、エールやミードが良く合うんだ」

 

 酒。そう言うのもあるのか! 師匠の家で暮らして数年、酒など口にした事は無い少年だったがこれは確かに飲みたくなってしまう味付けだった。しかし、この世界の飲酒には年齢制限はないのだろうか。疑問に思ったら質問だ。

 

「師匠、お酒って師匠や俺でも飲んでも良い物なんですか? 俺達の見た目だと、大人にならないと飲んじゃいけないとか言われそうなんですけど」

「明確な年齢指定などは無いが、子供が大っぴらに飲酒をすると言う事は無いな。一番は金銭的な理由だ。子供に飲ませる金があるなら、普通は親が飲んでしまう物だからな」

 

 少年の素朴な疑問に返って来たのは、何とも世知辛い庶民の懐事情であった。だがまあ、つまりは金があればどうとでも出来ると言う事でもあるのだろう。

 

「貴族の子供ならば、食事時にワインを嗜む位はしているだろう。もっとも、素直に果実の搾り汁でも飲んでいた方が、子供の舌には優しいだろうがな。ちなみに街中での飲酒はお勧めしないぞ。金を持っている子供なんていうのは、一部の人間からすればご馳走に見えるだろうからな」

 

 確かに。酒を飲めるような子供が居れば、そいつから奪ってやろうと考える奴も居ると言う事か。治安が悪そうには見えないが、絶対にそんな輩はいないという保証もないだろう。君子危うきに近づかず。ロリコンも危うきには近づかない。NOタッチ。

 

「む、もう食べ終わったのか。暫し待て……」

 

 ぼんやりと考え事をしていた為に、少年はいつの間にか腸詰めを完食してしまっていた。それを見た師匠が食べるペースを上げるが、いかんせん一口が小さいのであまり捗らない。かぷり、もくもく、かぷり、もくもく。本人は必至なのだろうけど、申し訳ないが可愛くて仕方ない。子リスかな? 少年は別の意味でドキドキしてきて、思わず鼻を押さえてしまった。

 

「ん、待たせたな。……どうした?」

「いえ、リビドーが鼻から溢れそうになっただけです。何とか耐えたから心配は無用ですよ」

 

 もう少しで、せっかく食事で増えた血が噴出する所であった。危ない危ない。危ない師匠。そんな師匠は口元をハンカチで拭って、女子力の高さを見せつけて居る。そして何を思ったのか、少年の方にも手を伸ばして無造作に口元を拭って来た。安心してください、ちゃんとハンカチは折り畳んで綺麗な所で拭いてくれています。

 

「むぐ……、師匠……」

「ほら、大人しくしていろ。ふふっ、まったくしょうの無い奴だ。成りは大きくなっても、やはりまだまだ子供だな」

 

 何この嬉しい恥ずかしい桃色展開。やっべ、良い匂いする。せっかく収まったけど、また鼻の奥からリビドーが飛び出しそうになっちゃうじゃないですか。少年は空を仰ぎながら、首筋を手刀でトントンした。

 

「ふう……、お待たせしました師匠。貴方の弟子は今日も絶好調です。……師匠?」

「ん……。いや、少し視界の端に鼠が映ったものでな。気にするな、もう居なくなった」

 

 少年が大量出血の危機を乗り越えると、師匠は雑踏に鋭い視線を向けていた。少年が訝しんで声を掛けると、師匠はフッっと笑って少年の方に顔を戻す。

 ああ、これだけ大規模な街だとやはり鼠とか出るんだ。少年は素直に言葉を受け取り、衛生状況とか大丈夫かなとか考えていた。

 

「さて、王都はまだまだ広いぞ。次は何処に行こうか」

「じゃあじゃあ師匠! 次はアレ、あれが食べてみたいです! ほら、あの赤くて丸い小さな……」

 

 そんな風に、二人は暫しの王都観光をまだまだ楽しむのであった。

 

 

 所変わって、王都のとある場所にて。後に少年達が合う事になる王兄殿が、直属の執事から報告を受け取っていた。それは、久方ぶりに王都に姿を現した鈴蘭の錬金術師を発見したという報告であり、しかもその詳細は――

 

「鈴蘭の錬金術師が、幼い男と手を繋いで花咲く様な笑顔で逢引していた? よし、明日にでも余の下屋敷に招待しておけ。くれぐれも怒らせるような真似はするなよ。街が滅びかねんからな」

 

 あの人嫌いで不愛想で引き籠りな鈴蘭の錬金術師が逢引とか、そんな事を言われたら是非とも自分の目で見たくなってしまうのが人のサガと言う物。直接会ってからかうのを楽しみにしつつ、王兄殿はサクサクと残りの政務をこなして行くのであった。

 自分自身が盛大に遅刻して、師匠を激怒させるとはつゆほども思わずに。

 




お題は『王都でのデート』ですね。一応メシテロ注意です。
王都はせっかくなのでもう一度ぐらい書きたいと思っております。

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