【完結】異世界転生したら合法ロリの師匠に拾われた俺の勝ち組ライフ   作:ネイムレス

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新しいゲームを買ったのですが、まったく手付けずに小説を書いている日々。
でも、楽しくて仕方がないのです。
読者さんにも楽しんでもらえると良いですね。


第三十二話

 その日も少年は自身のアトリエで高笑いをしていた。そう、またもや錬金術を悪用し禁断のアイテムを作りだしてしまったのである。自分の才能が怖くて、思わず笑ってしまう少年であった。

 

「でけた! でけたぞ! ピコピコピーン! 動物変身薬~! てーって、れーって、てれれれー! てってん!」

 

 ちなみに徹夜明けなので、少年は相当にテンションが高くなっている。何時もの二倍ほどだ。ただでさえうるせーテンションが、倍増してもう騒音となっていた。

 

「前回は発動時の魔力を感知されてばれたが、飲み薬なら発動魔力も何もないだろう!! どうやって作ったかも覚えてないが、こんな素晴らしい物は一つあれば十分! 後は実際に効果を試すだけだヒャッハァ!!」

 

 こんなに騒いだら師匠に筒抜けなんじゃないかって? 大丈夫、少年が騒がしいのは何時もの事だし。朝の師匠の寝起きの悪さは、冬眠した熊よりも酷いのだから。一度眠ったら、少年がセクハラしない限りは起きやしない。

 そんな訳で、少年は早速人体実験する事にした。自分自身で。

 

「ん……、ごくっ、ごっ、ごっ、ごっ……ぷはぁ! まずーい、もう飲みたくない!」

 

 腰に手を当てながら、風呂上がりの牛乳もかくやと一気に飲み干す。紫色のやばい匂いのする飲み物など、徹夜テンションでも無ければとてもじゃないが口には出来なかっただろう。

 そして、変化は直ぐに起こり始めた。ポンッと全身を包み込む煙が唐突に表れ、その煙が腫れた頃には既に変態は終了している。少年の姿は、一匹の子犬へと完全変態を遂げていたのだ。

 

「『ふっふっふっ、どうやら成功しちまったようだなぁ! 自分の才能が怖い! 怖すぎるぜ!』」

 

 なお少年は普通に喋っているつもりだが、犬の口からはヒャンヒャンと犬語しか流れてはいない。今後の少年の台詞は全て、犬語同時通訳でお送りいたします。

 外見は柴犬の様なハスキーの様なコロコロとした子犬が、尻尾をブンブンさせながら小さなアトリエを走り回る。実験成功と徹夜テンションの相乗効果で、現在の少年はもう枷から解き放たれた子犬状態だ。主に物理的に。

 

「『うわはははは! さあ、実験を続けるぞー!!!』」

 

 そうして、一匹の獣がアトリエどころか家を飛び出し世に放たれたのだった。当初の目的は既に忘却の彼方である。

 

 少年が住む師匠の家はとある小さな村の外れにある。森に囲まれたその村は村人達によって開墾され、それなりの広さの畑や牧場を作って生業としていた。家々は各農家ごとにこじんまりとした物が点在しており、大きい建物と言えば宗教の資金力で建てられた教会か、集会場代わりにされる村長の家ぐらいな物だろう。牧歌的な片田舎。形容するならば正にその言葉がふさわしいだろう。

 そして、そんな村の舗装もされていないあぜ道を、一匹の獣となった少年が爆走していた。

 

「『ヒィィィィィハァァァァァァァァッ! きっもちいー! なんと言う爽快感! えくすたすぅぃぃぃぃぃっ!!』」

 

 外から見れば子犬がヒャンヒャン鳴きながら駆けているだけだが、当の本人は四足歩行の快速に酔いしれている。もうどうにも、自分自身ですら彼を止める事は出来ないだろう。

 と、そんな爆走をしていた矢先、少年は視界の端に見慣れた人物の姿がある事に気が付く。

 

「うおおおおおおおっ! 野菜よ、美味しくなりやがれです!!」

 

 訂正、見慣れてる人物の見慣れない姿があった。口調から御察しの通り、農民少女でございます。

 それはまるで、人の姿をした重機の如し。彼女は鍬を手にして、畑の一角を滅茶苦茶な速度で耕していた。畑には他にもちらほらと人の姿はあるが、農民少女ほどの異彩を放っている者は他には居ない。これがNOUMINと言う物か!

 

「ふいー、この手袋のおかげで、どんなに力を入れても手が荒れなくて快適です! このまま今日は種蒔きまで終わらせてやるですよー!!」

 

 おねーちゃんは今日も元気です。独り言だって青空に響き渡るってもんですよ。

 元より豪胆で活発な性格だとは思っていたが、まさか重機顔負けで土を掘り返すとは思っていなかった。こうして働いている所を見るのは初めてなので、やっぱりこの世界はファンタジーなのだなぁと少年は改めて思う。普段から腕力すげえと思ってはいたが、きっと彼女の筋力のステータスは大人顔負けなのだろう。おねーちゃんパワー、実際凄い。

 

「『…………、邪魔したら悪いし別の所も見に行ってみるか』」

 

 実際は少年と遊ぶ時間を作る為に必死になっているだけなのだが、そんな事を知らない少年は友人の知らない姿にちょっとだけ疎外感を覚えてその場を立ち去るのであった。

 

 続いて少年が辿り着いたのは、炭焼き小屋や動物の解体小屋のある林業エリア。辺りには既に濃密の木々の香りと、長年の作業で染みついた獣臭が漂って来ている。そして、ここでも少年は見知った顔を見かけるのであった。

 いや、見かけたと言うのは語弊があるかもしれない。だって、その人物――剣士少女は森の中から少年の目の前へ、唐突に飛び出して来たのだから。正に、脱兎が如く。

 

「……っ!? はっ! とぅっ!!」

 

 森の木々を縫う様にして跳び出して来た少女は、少年(子犬)に気が付くとぶつかる寸前で高く跳躍する。そして、中空でくるりと向きを変えると腰に差した二本の剣を引き抜き、その片方をもと来た森の方へと勢い良く投げつけた。

 高速で回転し円盤状になった剣が少年の目前へと迫り、そしてあっさりと通り過ぎて森との境目の地面へと突き立つ。そして、森の中からもう一体、少年の方に向かって来ていた巨大な獣がそれに驚きその足を止めた。

 それは、立派な牙と体躯を持つ大猪で、どうやら剣士少女はこれから退却する為に森を突っ切って来ていた様だ。大猪は足を止めた勢いを殺す為なのか、後ろ足で立ち上がり大きく鳴き声を上げる。それは、自らの腹部を敵前に曝け出すと言う大きな隙に他ならなかった。

 

「つええぇぇりゃああぁぁっ!!」

 

 その一瞬の隙を見逃さず、地に降り立った少女が一足飛びに接近し大猪の懐に飛び込み、残ったもうひと振りの細身の剣をその胸に突き立てる。彼女の闘い方を何時も良く見ている少年は改めて思う、このロリ絶対そこら辺の大人より強いだろうと。あの姉にしてこの妹在りと言った光景であった。うわ幼女強い。

 肋骨の隙間を縫って心臓を一突き。硬直する猪の下から抜け出しつつ、剣を引き抜いてヒュッと血を払いつつ剣を鞘に納める。そこで硬直していた大猪が倒れ伏して、数度痙攣するとそのまま動かなくなった。文句の付けようも無い一撃必殺だ。

 

「ふう、君……、大丈夫だったかい?」 

「『あ、はい。色々垂れ流しになりそうでしたが、自分は大丈夫であります』」

 

 一仕事終えた少女が、もう片方の剣を拾い鞘に納めながら声を掛けて来る。語り掛けられた少年は直立不動で返答するが、悲しきかないまは四足歩行の獣でありワフワフとしか聞こえない。そんなケダモノを見下ろして、少女はクスっと静かに微笑む。

 

「っと、すまない。あまり時間を置かない内に、この猪を血抜きしておかないと……」

 

 微笑んだ顔のまま、少女が抜打ちで猪の首をスパンと斬り付ける。そして、そのまま返す刃で、お腹や四肢の付け根にも切れ込みを入れて行く。そりゃあもう、幼女とは思えない様な手際の良さです。色々溢れてきます。十八禁です。

 友人の巻き起こしたすぷらったぁな光景とその臭気に、少年は再び上からも下からも垂れ流しそうになって一目散に逃げだした。犬になっているので嗅覚も鋭敏だし、なによりもグロ耐性がありませんので仕方なし。

 

「あっ、ビックリさせちゃったかな、悪いことしちゃった……。それにしても残念、何処かで見た様な子だったのにな……」

 

 剣士少女は少しだけ残念そうにすると、ずるずると猪引き摺って解体小屋へと向かうのであった。

 

 そうして、少年は全力で帰路の道を走って行く。なんと言うか、普段見ない村の様子と言うのは、新鮮味はあるが何とも言えない感触だった。仲のいい姉妹の仕事姿が独特過ぎて頭から離れない。特に妹の方。色んな意味であの妹はヤバいって本当。属性盛り過ぎだろう、誰がやったんだ。起訴も辞さないよまったく。

 

 いまはもう、只管に師匠の顔が見たくて仕方がない。あの薄い胸に飛び込んで、何もかも忘れて癒されたくて仕方ないのだ。

 時間的に師匠はそろそろ起き出してくる頃だろう。起きた後の師匠は、必ずあの場所へ向かう。ならば、後はこの体の成果を達成するのみよ。

 

 住み慣れた師匠の家が見えて来ると、少年は玄関では無く一路浴室への窓へと向かう。その周囲にある罠に関しては心配いらない。魔物や人間には反応するが、小動物には一々発動しない様に設定してある故に。

 だからこそ、少年は浴室の窓に向け飛んだ。換気の為に少しだけ開けてある隙間に前足をねじ込み、押し広げながら身体をねじ込む。無理矢理入り込むと、そこには湯を浴びながら驚いて目を丸くする師匠が居た。背中を向けてはいるが、確かに全裸で。

 やった! 勝った! 仕留めた! そう確信した瞬間に、少年は窓と師匠の間にある湯船に墜落し盛大に水柱を立てる。ごぼごぼと口から泡が漏れるが、溺れてる場合じゃねぇと全身に力をみなぎらせて二本足で立ちあがった。

 

 そう、師匠と同じ目線の高さまで立ち上がったのだ。見事にギリギリの所で薬が切れて、元の姿に戻ってしまいました。暫し、無言で見つめあう二人。シャワーの流れるザーッと言う音だけが、沈黙に支配された室内を彩り続ける。

 

「……おかえり」

「ただいま……」

 

 先に驚愕から復帰した師匠が少年に向けて言葉をかけ、少年もまたそれに応えてなんとなく全開になった窓を閉める。そして、そのままざぶざぶと湯船を抜け出すと、師匠の方に視線を向ける気になれずにそのまま浴室から飛び出してしまった。そのあっさりとした逃走は、とても勝利者とは言えない態度であっただろう。

 

「変身薬で罠を潜り抜けて来る……、か。錬金術師としてずいぶんと成長した様だが、誉めるべきか叱るべきか……」

 

 それを見送った師匠は、背中とは言え裸を見られた事に少しだけ頬を上気させ、動揺を誤魔化す様に独り言を呟くのであった。

 

「ああああああああああっ!! ああっ! あっ!! うああああああっ!! わあああああああっ!!!」

 

 そして、ずぶ濡れの格好で廊下まで退散した少年は、そのままガツンガツン壁に頭をぶつけて、感情のおもむくままに叫び始める。そこに秘められていたのは、じっくり見なかった事への後悔と情けない自分への怒りと後悔、そして何よりも只管な羞恥心であった。とめどなく溢れる感情が、少年の熱情を叫びにして発散を求めるのだ。ある意味、自罰的な行為である。

 

 結局、少年は寝不足と頭の痛みと疲労とかもろもろで、頭を打ち付ける格好で気を失うのであった。

 




少年は恥ずかしくなると、つい自分で自分をヤっちゃうんだ。
という訳で、初浴室侵入成功話でした。
苦労して得た物は、師匠の後ろ姿ぐらいの物でしたね。
お題では『指輪の時のリトライ。村の中の様子と姉妹の普段の様子』でした。

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