【完結】異世界転生したら合法ロリの師匠に拾われた俺の勝ち組ライフ   作:ネイムレス

34 / 43
ここに来て新キャラを投入すると言う、狂気!


第三十三話

 少年はその日、庭の土いじりをしていた。最近、教会の花壇と言い、土ばっかり弄っている気がする。だが、これは師匠命令なので仕方がないのだ。

 

「錬金術の素材に使うマンドラゴラを、家の庭に花壇を作って育てて欲しいの。大変だろうけど、お願いできないかしら?」

「はい、解りましたー! 誠心誠意、心を込めて作らせていただきます!!」

 

 あんなお願いのされ方をしたら、そりゃあもう断るなんて選択肢はありません。少年は張り切って鍬やら鎌やらを持ち、庭の日当たりのいい場所にてまずは草むしりから始めた。

 師匠の為ならえんやこら。丁寧に丁寧に草を毟っては、根っこまで掘り起こして駆逐する。この時、絶対に雑草などと言う単語は使ってはいけません。雑草などという草は無い! って、おねーちゃんが言ってました。

 

 ある程度の範囲の草を取り切ったら、次は地面に適当な線を引いて花壇の大まかな形を描く。描いたらそこからは鍬の出番で、ザックザックと土を深めに掘り返して行った。

 箱状に掘り返した土を適当に鍬の先で弄って、上から用意しておいた腐葉土をかけて混ぜ合わせる。この世界に生まれてから娯楽と言えばもっぱら本だった少年は、意外と土いじりが楽しいと言う事に気が付き夢中でコネコネし続けた。農民少女には、全く良い娯楽を教えてもらった物である。おねーちゃん感謝。

 

「ふう、一人だと小さい範囲でも結構疲れるな……。でも、こんな小さい花壇の為に、おねーちゃんをわざわざ呼び付けるのも悪いしなぁ。一人で、なんとか頑張らないとね」

 

 少年のささやかな思いやりで、一人の少女の出番が減りました。悔しいでしょうねぇ。

 

 植物のベッドたるふかふかの土が用意出来たら、後はその土の周りに区切りとしてレンガを敷いて囲いを作る。そこまでして漸く、花壇らしくなって来た。後は種を撒くだけだ。

 

「ふんふーん、師匠の為に種を撒く~。師匠……種……はっ、ひらめいた!」

 

 言わせねぇよ!? そんな調子で等間隔に土に指で穴を空けて行き、そこへぱらりぱらりと種を落として行く。後は上からそっと土を掛けて、ぽんぽんと優しく均してやる。あまり強く固めてしまうと、芽が出ずに土の中で腐ってしまうのだ。これもおねーちゃんからの教えである。

 これにて種蒔き終了。あとはジョウロで優しく水を撒いてあげましょう。

 

「伸びやかに、健やかに育ちなさいねー。そして、大トリはこれ!」

 

 水を土が軽く吸う程度に振りまきおわると、少年はローブの中から手の平大の小瓶を取り出し蓋を開けた。その中身は栄養剤。錬金術師にとっては、無くてはならない必須アイテムである。

 

「あー、師匠が可愛い声で『えいようざい~』とか言ってくれねぇかなぁ……。心のおしべがニョキニョキしちまうのになぁ……」

 

 残念、好感度が足りない。少しだけ足りない。

 そんなこんなで、植物が快適に育つ環境は整った。後はじっくりと毎日水をやって観察を続けよう。きっと汚い絶叫を上げるマンドラゴラが沢山育つに違いない。メルヒェンな事じゃないですか。

 そんな事を思いつつ、少年は使った道具を洗う為に水場に向かうのであった。その背後で花壇の土が、モコモコと盛り上がるのに気が付かずに。

 

 そして次の日の朝。少年は植物の強さと言う物を、文字通り肌で感じていた。

 

「ハハッ、確かに触手とか大好きだけどさ。男に絡み付いてる絵面とか誰得って感じだよね」

 

 そう、少年は今細長い植物の蔓でがんじがらめにされている。両手両足はもちろんの事、胴体にもまるで包み込む様に優しく巻き付いていた。そして、蔓は細いわりに意外な力強さで、少年の事を宙吊りにしているのだ。

 その原因は、少年の目の前で元気にウネウネしていた。

 

「あのー、熱烈な求愛は凄く嬉しいんだけど、自分心に決めた人がいるって言うかなんと言うか――うぷっ!?」

 

 少年は唐突に引き寄せられて、何か柔らかい二つの物体に顔を挟まれる。それは色こそ植物らしい緑色ではあるが、まごう事無き女性の乳房。つまりは、おっぱいだ。そして、それは豊満であった。

 羨ましいって? 確かに世の男性の大半には、大きいおっぱいは神の賜物だろう。だが、少年にとっては地獄の宴以外の何物でもないのだ。

 

「あいえええええええええっ!! 離せ離して離してください!! 師匠! 助けて師匠ー!! はやくきてー! はやくきてー!」

 

 思わず助けを叫ぶ少年をその胸に抱き寄せていたのは、花壇から生え出した女性であった。豊満な肢体を惜しげも無く晒し、身体の各所に申し訳程度の樹皮の様な物を張り付け秘部を隠している。長い髪の様に見えるのは葉や蔦の集まりで、その両足は先日少年の作った花壇に大きく花開く花弁に埋もれさせている。そして全身の色は艶やかな萌葱色をして、その両目だけが例外的に真紅に染まっていた。

 そう、彼女は人間では無く、人間そっくりの姿をした植物なのだ。

 

「朝っぱらから騒がしいと思えば……、アルラウネとは珍しい魔物が居た物だな。マンドラゴラの種の中に混じっていたのか」

「来た! 師匠来た! メインロリ師匠来た! これで勝つる!!」

 

 やかまし過ぎる位に少年が騒いだために、その場に白いローブ姿の師匠が姿を現す。少年は待ち望んでいた師匠の姿に、喜色満面の大歓迎状態だった。

 それとは対照的に、師匠は物凄く不機嫌そうな顔である。フードを目深に被っていても分かる、全身から発せられる不機嫌オーラに少年はもうタジタジだ。

 

「あ、あの師匠。なんでそんなに怒っているんでしょうか? あの、割と真剣に助けて欲しいんですけど。できれば可及的速やかに……」

「ふーん……。そーなんだ、すごいね」

 

 いかん、師匠が完全に不貞腐れている。全部、全部巨乳が悪いんだ。この巨乳が少年の顔を挟んでいるから! 畜生!

 そうこうしている間にも、少年の体は地面から生えてきている触手によってギチギチと締め付けられ、ますます植物女人に引き寄せられる。必然的に押し付けられる乳。うずまる少年の顔。引き攣る師匠の口元。

 植物女人は師匠の方をジーッとみると、フフンと言った様子で邪悪に笑んで見せる。自分と師匠のプロポーションを比較して、絶対的な勝利を確信したのだ。ブチっと師匠のこめかみの辺りで、とても危険な音がした。

 

「……おい、菜っ葉風情があまり調子に乗るなよ。そいつは私の弟子だぞ。菜っ葉にくれてやれるほど、安い存在じゃない」

「し、師匠……。俺の事をそんな風に――うひいいい!? 待って待って、入っちゃいけない所に入ってきてるから! そこは入り口じゃないよ出口だよ! 早く助けてシッショー!!」

 

 服の裾から触手が入り込んでいるだけですよ? それでも、少年にとっては一大事には変わりない。そして無視された形になった師匠はついに実力行使へと移った。少年ごと、叩き潰す方向で。

 師匠のしなやかな指にはまる指輪の一つが煌めいて、少年と植物女人に向け特大の風の刃を打ち放つ。

 

「避けろ! 菜っ葉ぁ!!」

 

 拘束されたままの少年が全力で叫び、それに反応して植物女人はユラリと柳の様に揺れて風の刃をやり過ごす。胸に挟まれたままの少年が、師匠に向けて半泣きになりながら声を張り上げた。

 

「師匠師匠! 顔、顔狙ってた! おっぱい狙ってたのかも知れませんが、今はここに俺の頭があります! はい、ありますね! 輪切りは不味いですよ!! っていうか、躊躇なく殺しに行くとか容赦なさ過ぎぃ! でも好きぃ!」

「チッ……。ではどうする? そのまま苗床にでもなるつもりか? このままだと、体中の穴から侵入されて魔力を吸い取られるぞ」

「それもイヤー!! 初めては全部師匠が良いのー!! 師匠何とかしてぇー!!」

 

 助けられたいのか助けられたくないのか、弟子の言動に師匠は深い溜息を吐く。我儘ばかりを言う弟子だが、助けない訳にも行くまいと師匠は再び指輪型魔具を発動させた。

 今度の攻撃は大きな刃では無く、小さなカマイタチを無数に飛ばす物。小さくても効果は十分で、蔓を的確に斬り裂き少年の拘束を解いて行く。

 そして、そのまま一気に本体を倒すのかと思われたが、師匠はそのまま踵を返して家の中へ向かってしまった。束縛を逃れて地面に降り立った少年は、縋る思いで立ち去る背中に問い掛ける。

 

「おわ、っと。師匠、いずこへ?」

「殺したくないなら自分で何とかしろ。拘束されてないお前なら、十分対処できる相手だろう」

 

 言うだけ言って、師匠は本当に家の中に戻ってしまう。取り残された少年は師匠の言葉に、反射的に反応して懐に手を入れる。再び引き抜いた時には、その手の中には一つの薬瓶が握られていた。

 蔦を斬り裂かれた植物女人は特に痛みを感じていない様で、少年に向けてにっこりと笑みを見せている。でも、斬り裂かれた触手は再び少年を捕らえようとして、少しずつだが少年を取り囲み始めていた。やはり、どんなに人に似ていようとも、彼女は魔物だと言う事なのだろう。

 植物女人は両手を広げて、触手と共にいよいよ包囲を狭めて来た。まるで、少年を求める様に。

 

「ごめん、俺ロリコンなんだ。あと、貧乳派。だから、俺は君の物にはなれないんだよ」

 

 およそ最低な事を口にしながら、少年は手にした薬を植物女人にぶちまける。さよならは、言わなかった。

 

 

 さらに次の日。

 花壇にはマンドラゴラの紫色の花がいくつも咲いていた。この調子なら直ぐにでも、人間に酷似した不気味な根っこも大きく育つ事だろう。

 そして、そのすぐ隣には一つの植木鉢が置いてあり、そこには土から直接大輪の花弁が花開いている。更にその中央には、緑色の肌をした人間そっくりの植物の女の子がニコニコとした笑顔で存在しております。なお、その胸は平坦であった。

 おめでとう、植物女人は植物少女へと退化した!

 

「……説明」

「いえすまむ!」

 

 昨日に引き続き庭の花壇前に居る師弟。師匠はとりあえず弟子に解説を求め、弟子である少年が最敬礼で返答する。

 とは言え、何も難しい理屈がある訳では無い。少年の使用した薬は、なんと言う事も無い若返りの薬であったと言うだけだ。少年が作れる程度の物なので人間にはほとんど効果は無いが、植物を一日前の姿に戻す程度には役に立った。

 そして、後はその種を鉢植えに移して、薄めた栄養剤を軽く振りかけておいただけである。それが少年のした事の全てだ。

 

「いやー、思った通り一度に吸収する栄養が少なければ、あんなに大きく育ったりはしないみたいですね。土の面積を減らした分、実に理想的な姿になってくれました。ガーデニングって奴ですよ師匠」

「はあ……。お前のその執念は一体どこから沸いて来るんだ、まったく……」

 

 魔物をまさか飼い慣らしてしまうだけでなく、品種改良までしてしまうとは師匠もびっくりである。身体が小さくなったのでその分力も弱くなったのか、もう少年が蔦で一方的に拘束される様な事も無い様だ。相変わらず、少年が近づくと触手や腕でベタベタと触れ、猫の様に体や頬を擦り付けている様だが。

 と、それまでニコニコしていた植物少女が、師匠にだけ見える様に視線を送って来る。そして、ハッと鼻で笑うかの様に邪悪に笑って見せた。間違いなく同じ個体の様だ。

 

「……燃やすか」

「まってー!? 何で突然殺意マックス!? お願いちゃんと育てるから! 毎日お世話するから! 燃やさないでー!!」

 

 そんなこんなで、師匠の家に新しくペットが仲間入りしました。

 




はい、ショタ触手でした。これもとある方からのリクエストです。
え、こんな触手は望んでいなかった?
すみません、投石は甘んじて受け入れますので許してください。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。