【完結】異世界転生したら合法ロリの師匠に拾われた俺の勝ち組ライフ   作:ネイムレス

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忙しくて書き溜めをする時間が無い。
せっかく新サクラ大戦を買ったのにやる時間も無い!

今回はちょっと長めです。


第三十四話

 ある日の気だるい昼下がり。その悲しい事件は起こった。相も変わらず少年用のアトリエでの出来事である。

 

「でけた! でけたぞ! ふはははは、この薬はなんと――」

「じゃまするですよー! こんにちはです! お、美味しそうなジュースですね、一口貰うですよ!」

 

 悲報、完成した新薬、突如乱入してきた農民少女に飲まれる。腰に手を当ててごっくごくです。

 

「おおおおお!? ま、まあ一口位なら効果は発揮しきらないだろうし別に――」

「ぷっはー! 美味しいけど色と味が合って無いです! 紫色なのに牛乳の味がするって、何ですかこのジュースは! ビックリして思わず、全部飲んじゃったじゃないですか!」

 

 一口どころか全部飲まれました。そもそも紫色した液体をよく美味しそうとか言ったな。そんなつっこみもしきらぬ内から、展開は更に進んでしまう。

 

「ぬあああああ! だがまだだ、薬を飲み干しただけならまだ何ともない! キーワードを口にさえしなければ――」

「もっと甘いのは無いんですか! チェンジです、チェンジ! チェーーーーンジ!!」

 

 キーワード言っちゃったぁ! 途端に農民少女の口から光線が放たれる。アレに当たれば薬の効果が発揮されてしまう、なーんてこったぁ! 光線が少年の口めがけて飛んで来るー! 

 

「こんにちは、入らせてもらうよ。ここに姉さんが――危ない! 避けて! うわあああああっ!!」

「そして唐突に現れる妹の方! お前等ノックぐらいしろよホントにもう、いらっしゃい!!」

 

 挨拶は実際大事。そんな訳で唐突に表れた剣士少女が、光線に当たりそうな少年を突き飛ばして代わりに光線に当たってしまった。そして、いよいよ薬の効果が表れる。

 

「お前等落ち着いて良く聞けよ、その薬の効果は――」

「ううん、あれ? 目の前に私にそっくりな、超絶美少女が居るです」

「ううっ、おや? 目の前に僕にそっくりな、カッコイイ人が居るね」

「お前等、話を聞けぇええええええ!!」

 

 薬の名は身体入れ替え特選薬(牛乳味)。その効果によって、姦しい姉妹はその肉体と精神が入れ替わってしまったのだった。少年はもう、辛すぎる現実に耐えきれず膝から崩れ落ちて慟哭したが、話がトントン拍子に進んだのでまあ良しとしよう。

 この後、少年の叫び声を聞いて駆け付けた師匠に、事情を説明させられた挙句に滅茶苦茶説教された。

 

 それから師匠命令で、少年は二人の姉妹の世話をする事となった。姉妹の親には師匠が事情を説明しに行ってくれたので、少年と姉妹達は今現在師匠の家で待機中である。

 薬の効果自体は夜にでもなれば切れるだろうが、どうせなら早い方が良いだろうと少年は薬の調合を進めていた。

 

「むーん、この服窮屈ですねぇ。良く毎日、こんな服装で走り回れるものですね。首筋も髪が短くてスースーするし、何だか背中が寂しい感じがするです」

「僕は足元がスースーして落ち着かないよ。髪が長いせいで頭も重いしさ。姉さんこそ、良くこんなヒラヒラで過ごせるものだね」

 

 そして、姉妹達も少年のアトリエの中に椅子を持ち込み、彼の背後できゃいのきゃいのとお互いについて語り合っている。これがまたうるせーのなんのって、集中できずにイライラしてしまう。だが、嫁入り前の娘さん方にとんでもない事をしでかしたので、少年は我慢して作業に没頭しようと努めた。

 

「せめて服だけでも交換したいな。ねえ、今からでも着替えちゃおうよ」

「ええ? ここでですか? 別に構わないですけど、そっちの体にこの服が入るか解らないですよ?」

「一歳位しか差がないのに何言ってるのさ。僕の体より、姉さんの方が太いって言うなら分かるけど」

「姉に対して良い度胸ですねぇ。姉より優れた妹は居ねぇんですよ!」

 

 努めて、努めていたのだが……。ちょっと会話が生々しいというか、ここで着替えるとか正気の沙汰なんだろうか。男だと思われていないのか、ワザとやっているのか。どちらにせよ、少年の集中力は限界寸前だ。

 

「むむ、なんですかこの下着は。いくら動きやすいからって、こんなのばっかり付けてたら形が崩れてしまうですよ。今度街の方まで行って、しっかりしたのを選ばないといけないですね」

「やめてよ姉さん、恥ずかしいなぁもう。それに、僕は姉さんみたいに付け心地の悪いのは遠慮したいかな。確かにデザインは可愛いとは思うけど、剣を振るならそう言うシンプルな奴の方が楽なんだよ」

 

 もう既に脱ぎ始めている……、だと……!? 彼女達の羞恥心って奴は何処に行っちまったんだ。異世界転生して、別の世界にでも行っちまったんじゃなかろうか。何よりも、衣擦れの音が耳に響いてまったく集中できない少年である。

 

「む、姉さんちょっとこれは……。見えない所もしっかり処理しないと、いざという時困ると思うんだけど」

「か、勝手に見るなですよ!? 自分だってほら、こことか結構処理が甘いくせに! ひとの事言う前に、自分がしっかりする事ですねー」

 

 声がデカい! 何言ってんだこいつら、何やってんだこいつら。とにかく後ろを振り向きたくてしょーがない! 少年はもう、薬作りとかしていられる様な精神状態では無かった。

 

「ふふん、やっぱり胸は私の方が大きいですね。これでも成長期って奴ですからねー」

「……それは喜んで良い事かな。あんまり浮かれてると、足元を掬われる事になるよ」

 

 いやいや、膨らみ掛け位ならぜんぜん許容範囲ですよ。もう少年は薬作りを止めて、腕組みしながら姉妹二人の話にうんうんと相槌を打っていた。巨乳と普通の境目がまた難しい。そんな拘りを脳内展開しているのだ。やはり安パイは貧だろう。

 というか、そんな事が話題に出ると言う事は、もしかして少年の背後は既にユートピアなのではなかろうか。思わず、ゴクリと生唾を飲み込んでしまう。もう振り向いちゃっても良いんじゃないかな。少年の心の中で、天使と悪魔が肩組んでサムズアップしていた。

 とりあえずは、ちらっとだけでも背後の様子を確認しようと、少年はそーっとそーっと肩越しに後ろに視線を送る。

 

「あ、やっと振り向いたね。思ったより粘ったけど、やっぱり気にはしてくれるんだ。ちょっと嬉しいな」

「あーああー、乙女の柔肌を覗こうなんてふてえ野郎ですね。そんなに私達の裸が気になったんですかー?」

 

 ちらっと後ろを見た瞬間、こちらを凝視していた双子と目が合った。無論二人とも裸などでは無く、服を交換などもしていない。ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべて、振り向いてしまった少年の事を弄ってくる始末である。恐らく最初から、謀られていたのだ。

 これだから師匠以外の女は……。少年は血涙流しそうな勢いで、痛烈に数分前の自分を呪っていた。

 

 結局、姉妹の肉体交換は日が暮れる頃には元に戻る。からかわれて不貞腐れまくった少年の代わりに、師匠があっと言う間に同じ薬を作り上げてくれたからだ。チェーーーーンジと再び叫んで口から口へと光線を発射する姿は、やはりシュールな光景であった。

 そして今は、遅くなった村への帰り道。少年と師匠が、姉妹二人を送って行っている最中である。

 

「もー、まだ拗ねてるんですか? ちょっとしたお茶目心なんですから、いい加減機嫌を直してほしいですよ」

「ふふっ、本当にごめんね。でも、あまりにも僕達の方を向いてくれなかったからさ。ついつい、意地悪したくなっちゃったんだ」

 

 少年を真ん中にして、右に姉左に妹が引っ付いて各々が少年の腕を掴んでいる。先程から話しかけられているのだが、少年は無言ですたすた歩くばかりだ。

 

「今回は大事にならなかったが、そもそもあんな危険な薬を勝手に作ったのが原因なんだからな。不貞腐れる前に、しっかりと反省をしないとな」

「うぐっ……、はい……」

 

 三人の後ろからしずしずと付いて来る師匠にまで言われてしまい、少年はもう滅多撃ちである。自然と気落ちして、がっくり項垂れてしまう。

 

「そうだね、どうせなら少しは責任を取ってもらおうかな」

「ああ、それは良い考えですね。ツケの支払いはしてもらわないとです」

 

 既に村の中に幾分か入り込み、二人の家が見えてきた頃合いに、姉妹が口をそろえてそんな事を言い始めた。またぞろ嫁に貰えとでも言うのだろうか。正直、勘弁してもらいたいと言うのが本音なのだが。だって少年には、もう心に決めた師匠が居るのだから。

 少年が何を言われるのかとげんなりしていると、不意に姉妹は歩みを止めて更に体を擦り寄せて来た。腕を掴まれている少年も動きを止めて、その間に姉妹の顔がゆっくりと少年の顔に近づく。

 チュッと軽く吸い付く様な音と共に、少年の両頬に柔らかく暖かな感触が同時に訪れた。

 

「よし、今日はこれぐらいで勘弁してやるです! 寛大な処置に、感謝してむせび泣くと良いですよ!」

「ん……。次に何かされたら、もっと凄い事するからね……」

 

 そうして、二人の姉妹は同時に離れて、たたたたーっと残りの家路を一緒に駆けて戻って行く。それを見送った少年はしばらく動く事が出来ず、それでもなんとかゆっくりと背後に居る筈の師匠へ視線を向けた。

 

「…………、良かったな。可愛い姉妹二人に好かれてるみたいだぞ」

 

 師匠は怒ってはいなかった。でも、少年には解る。これは結構拗ねてる時の師匠であると。あの姉妹は最後に、とんでも無い物を残して行きました。師匠との気まずい空気です。

 少年は泣きたい気分になりながら、とりあえず流れるような動作で師匠に向けて土下座するのであった。まあ、自業自得じゃないかな。

 




ネタが古すぎてないか心配ですが、伝わっていると良いなぁ。
あと拗ねてる師匠の可愛さも伝わってると良いなぁ。
師匠の可愛さを伝える為に、ゲームなんかやってる場合じゃねぇですね!

今回のお題は『姉妹の入れ替わりと師匠の嫉妬』でした。

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