【完結】異世界転生したら合法ロリの師匠に拾われた俺の勝ち組ライフ   作:ネイムレス

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水着回です。


第三十六話

 その日は朝から暑かった。じりじりと日差しが照り付けてきて、容赦なく肌と目を焼いて来る。庭の植物たちも思わず花壇から抜け出して、自主的に木陰に退避する始末だ。残暑ってレベルじゃねーぞ!

 

「おーい、お邪魔するですよー! 生きてるですかー!?」

「お邪魔します。これ、母からのお土産です。夕食にでも召し上がってください」

 

 邪魔するなら帰ってー。と返す元気もない少年の所に、いつもの幼馴染姉妹が訪ねて来た。姉の方は何時も通り豪放磊落だが、妹の方は手土産持参の様なので許してやろう。そんな事を思いつつ来客の対応を師匠に任せ、少年はまたリビングのテーブルに突っ伏す仕事に戻る。

 本来なら接客など弟子の仕事ではあるのだが、今は師匠の方が元気なのでやむを得ないのだ。少年のローブが黒いから余計暑いと言うのもあるが、師匠は絶対に一人だけ魔具で温度調節しているに違いない。狡い、可愛い、ズルカワイイ!

 

「この暑さなのに、相変わらず元気だなお前らは。生憎とお目当てのうちの馬鹿弟子は、そこで茹で過ぎたパスタみたいになっているぞ。水風呂にでも突っ込まんと、このままじゃ来客の相手も出来んな」

「そりゃーないですよしっしょー……。ヴェぇぇぇ……、あぢぃぃぃぃ……」

 

 何時もの抗議の声も、途中から潰れたヒキガエルの鳴き声よりも酷い事になる。今日の少年は暑さのせいで、本当に使い物にならなくなっていた。

 そんな少年の醜態を見て、二人の姉妹は呆れるどころかそろってニヤリと不敵に笑う。師匠が思わず首をかしげると、姉妹は口をそろえて宣言するのだ。

 

「「近くの湖に、涼みに行こう!」ですよ!」

「「はい?」」

 

 師弟はその言葉に、思わず互いに顔を見合わせるのであった。

 

 

 師匠たちが暮らす小さな村の程近くには、山間からの湧水が溜まる湖が存在する。村での活用方法は主に淡水魚目当ての釣りや漁などで、魔物の害もあるのでそうそう遊び場などには使われない。

 だが、今回ばかりは話が違って来る。なんと言っても、同行者に師匠が居るからだ。

 

「ししょー! 魔物避けの御香設置し終りましたー!」

「ん……。次は日傘を立ててくれ。なるべく早く頼む」

 

 この辺りの魔物なら師匠特製の魔物避けグッズで滅多に近づいて来ないし、もし襲って来たとしても師匠であれば指を鳴らすような気軽さで華麗に瞬殺できるだろう。正に素晴らしき師匠である。

 そんな訳で、師匠を含めた四人は思い切り湖を避暑地にする事が出来るのだ。

 

「いーっやっほーう!! ですー!!」

「うおおい、おいおいおい!? 準備運動位させてぇ!! がぼぼぼぼぼっ!?」

 

 農民少女が少年の腕を掴んだまま駆け出して、勢い良く湖に飛び込んで行く。風に揺れる旗の如く弄ばれる少年は、碌に抵抗できずに頭から着水する羽目になった。相も変わらず、力任せなおねーちゃんだ。

 ちなみに彼女は、緑のフリルを沢山あしらったビキニタイプの水着を身に付けている。控えめなロリボディでも幾層にも重ねたフリルでボリュームアップ。胸元を黒い小さなリボンでワンポイントに飾って上品さも引き出していた。

 湖に涼みに行くと聞いて、少年が秒で作り上げた渾身の一作だ。

 

「ふふっ、大丈夫かい? 姉さんも、嬉しいからってはしゃぎ過ぎだよ」

「ごほっ、がほっ! あー、窒息は流石に俺の体でもどうしようもないんだな……。ありがとう、助かったよ」

 

 姉の不始末フォローするのは何時だって妹の方。今日は帯剣して居ない剣士少女が、溺れかけた少年の手を取って助けてくれた。少年が水を滴らせながら礼を言えば、にっこりと太陽みたいな笑顔を返してくれる。

 そんな彼女が身に纏うのは、スポーティーな動きやすさ重視の青い水着であった。露出控えめではあるがちゃんと上下に分かれているし、何よりもピッチリと体に張り付いているのでボディラインが強調されている。色気を押さえている筈なのに、下手な水着よりもなんというかエロイ。

 これもまた、少年が目視でサイズを的中させて作った会心の一作である。

 

「はあ、まさかまたこの湖に放り込まれる事があるとは思わなかったな」

「ん? ああ、この間の薬の……、あっ!?」

 

 少年は以前に不定形生物になった時にも、この湖に投げ込まれて世話になっていた。その時の事を思い出してか、剣士少女の顔がボッと赤く染まる。彼女にも大変お世話になりました。

 

「あー……、前みたいな事はもう無いと思うから、そんなに心配しなくていいぞ?」

「えっ、もうしてくれないの? っ!? いや、ちがくて……。その……」

 

 何言ってんだこのロリ。言ってから自分の言動に気が付いて、顔を更に真っ赤にしてモジモジし始める。少年は無言のままススーッとゆっくり肩まで水の中に沈んで、水の冷たさに身を任せる事にした。心頭滅却。

 

「ほぉら! 二人ともなにぐずぐずしてるんですか! せっかく泳ぎに来たんだから、もっと深い所まで行くですよ!!」

「ちょっ、まっ! 今は、今はダメだから! お願いまってえええええ!?」

 

 そして、微妙な空気を全力で破壊して行く姉。いつも助かっています。ちょっと歩くのが大変な事情のある少年と、恥ずかしがって赤くなっている妹の手を引いて、農民少女はザバザバと豪快に水の中を突き進むのであった。

 

「あいつらは元気だな……」

 

 そんな涸れた老人のような言葉を呟くのは、誰であろう我らの師匠である。師匠も無論の事、少年の作った最高の水着を着用しているのだ。が、しかし! 何時もの白いローブをその上から羽織っているので、その中に隠された至高の水着はまったく見えません。紳士諸君、残念でした。

 

「というか、あいつらの水着、私のとかなり違うな……。馬鹿弟子め、一体私にだけ何を着せたんだ」

 

 師匠だけは水場に近づかずに、大きなパラソルの下でデッキチェアに横たわって寛いでいた。直ぐ近くに置いたテーブルの上には、氷の浮ぶ飲み物のグラスも完備だ。格好はともかくとして、一人だけ完全にバカンスモードである。

 元より弟子のたっての頼みで付き添いに応じただけなのだから、水に入るつもりは毛頭ない師匠であった。水着に着替えたのだって、弟子が泣いて縋って来たからしょうがなくである。別に、一人だけ弟子の手製の水着が着れないのは寂しい、などと思ったからでは無い。無いったらないのである。

 

「こんな……、こんな水着を……。悩ましい……」

 

 悩ましいのは水着を見せてくれない貴女です。この場にそれを言える人物は、残念ながら居なかった。

 もう弟子の事で一々と悩むのも馬鹿らしい。せっかく涼し気な所にまで来ているのだから、せめて順当にリラックスの一つでもしなければ損と言う物だ。師匠はそう考えて、改めてデッキチェアに身を任せた。

 湖面を撫でて来た風が涼しくて、パラソルの影の下は非常に快適だ。目を閉じているだけで直ぐに睡魔が迫って来る。幸いな事に、睡眠を邪魔する様な騒音は何もしない。これならのんびりと午睡を楽しむ事も――

 

 と、師匠は唐突に目を開けて、がばりと上体を起こした。静かすぎる。騒音が無いのは構わないが、先程まで騒いでいた弟子達の騒ぎ声まで聞こえないとはどういう事か。

 師匠は湖面に視線を走らせ、弟子と姉妹達の姿を探す。だが、水上にはその姿を確認できなかった。であれば、居るとすれば水中になる。

 そこまで認識してから、師匠は纏っていたローブを脱ぎ捨てた。

 

 途端にあらわになるのは、純白に輝くスクール水着(旧型)。胸の部分には、師匠には読めないがひらがなで『ししょう』と書かれたゼッケンが張り付けられている。もちろん水抜き用の穴も完備してあります。師匠の体系にぴったり当てはまるかのような造形は、正に彼女の為にあつらえられた至高の逸品である。少年は、その魂を込めてこの水着を錬成したのだ。

 どう控えめに見ても犯罪です。本当にありがとうございました!

 

 そして師匠は、一足飛びに湖に向かって飛び出した。水面を一歩、二歩と蹴り進んで距離を取り、最後に弟子たちを見かけた場所まで飛んでから、華麗なフォームで頭から水中へとダイブする。一気に身長の何倍も水中に潜り込むと、周囲に視線を彷徨わせ弟子達を探す。はたして、水底に程近い場所にそれ等は居た。

 

 形は無数に生えた触手をわさわさと蠢かす不気味な軟体生物。この触手は……、間違いなくイカだ。本来は海に生息する大きな魔物、クラーケンに相違ない。そして、無数の触手の内の二本に、見知った二人の姉妹が捕らわれている姿も確認できた。

 淡水の湖の中に何故イカが居るのかは知らないが、現実として存在しているのならば対処するしかないだろう。

 

 師匠は両手の五指に嵌る指輪の一つを発動させて、両掌から水流を断続的に発生させる。そして、その水流を後方に向けて推進力とし、水中にも拘らず高速で移動し始めた。水の抵抗を全く受けない体型を利用して、ウォータージェットで突き進む。さながら、今の師匠は一発の魚雷に他ならない。

 

 驚異的な速度で接近して改めて見れば、そのクラーケンはそれ程大きな個体では無かった。だが、人二人を水中に引きずり込めるというのはやはり驚異的だ。手加減は無用。せっかくの高速移動の勢いを利用して、師匠は頭からイカのどてっぱらに突っ込んだ。

 ちょっとした魚雷の様な体当たり受けた巨大なイカは、碌な抵抗も見せずに怯んで距離を取ろうとする。その隙を見流す師匠では無く、追いすがる様にしての二発目の体当たり。効果はバツグンだ!

 そして、さらなる推力アップで巨大なイカを道連れに、師匠はそのまま水面へと向かって急速浮上して行く。

 

 水面に到達しても師匠の突撃は止まらない。そのまま水中からイカを跳ね上げさせて、自らも中空へと躍り出る。そして、大気中であれば、風の刃で触手を斬り裂いて姉妹二人を救出するのは簡単だった。何よりも水中でなければ、何の気兼ねも無く何時もの電撃が使えると言う物だ。

 触手から姉妹が解き放たれたのを確認すると、師匠は間髪入れずに大放電を解き放つ。行け師匠、十万ボルトだ!

 

「師匠!? ちょっと、待って! 俺ですよオレオレ、オレオッ――んぎゃあああああああっ!!」

 

 電撃が当たる寸前のクラーケンから弟子の声が発せられるのを聞いた師匠は、その瞬間に全てを悟り取り合えずもう一発電撃を放っておいた。それはきっと、八つ当たりと言うのが妥当であろう。

 

 

 そして、場所を陸地に移して、師匠による事情聴取が執り行われた。

 

「魔物に変身する薬と水中で呼吸が出来るようになる飴を使って、水中探索をしていただけ、か」

「ハイ! やましい感情はこれっポッチしかありませんでした!! あと弱点属性だったせいか、何時もより電撃が強力に感じて新鮮でした!! アヒィッ!! なんか気持ちよくなってきたぁ!」

 

 そうかそうか、じゃあもう一発くれてやろう。師匠、無慈悲な三発目の電撃。きゅうしょにあたった! 効果はいまひとつの様だ。最近はますます、弟子の人間離れが進んでいる気がする師匠であった。

 

「水中散歩も楽しかったけど、いきなりお空まで飛びあがったのも面白かったです!」

「……僕は、もうちょっと締め――いや、水中散歩でもよかったかな」

 

 姉も妹も相変わらずですね。正座させられている少年とは違い、二人の姉妹は少年を挟む形で左右で体育座りしている。片や元気いっぱいにニコニコして状況を能天気に楽しみ、片や水底でのことを思い出して指先を触手の痕に滑らせ頬をほんのり染めていた。

 もうやだこの姉妹。でも可愛いから許したい。

 

「というか師匠! 大変な事に気が付きました! 白いスク水は、水に濡れると透けるみたいです! おうふ……、鼻血が……」

「…………、ッッッッ!?!?」

 

 裏の生地がしっかりしている胸元やクロッチ部分はともかくとして、お腹周りはそれはもうヌレスケであった。興奮のあまり鼻からリビドーを溢れさせた少年は、顔を真っ赤にしながら両手に電撃を纏わせる師匠を見ながら思った。

 クソッ! ビデオカメラがねぇ!!

 




誰か異世界までスマホを届けてくれる方はいらっしゃいませんかああああああ!!

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